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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん


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1日目③

「ロザリーって、あなたの恋人?」


「えっ…?」


「いい加減にしろよ。ジャスミン。

女が男の持ち物に、刺繍をして送るという意味は、お前だって女なんだから、わかってんだろう。野暮なことを聞くな。」


何とも言えない空気の中、

男はジャスミンの頭をポンと叩き


「まぁ、ジャスミンの気持ちもわかる。確かに、ルチアーノのあの身のこなしに、心を奪われるだろうな。だが、やめとけ、ルチアーノは、どう見たって育ちの良いボンボンだ。惚れたって、どうにもならんぞ、」


「…お兄ちゃん。」


ジャスミンの泣きそうな声に、クスリと笑った男は


「なぁ、ルチアーノ。あの身のこなしなら、剣の腕前もかなりなんだろうな。だが、実戦で使える剣なのか?どうなんだ? 」


そう言って私を見ながら…ポツリと、

「見たいな。おまえが人を切る時の顔を…そりゃ…綺麗だろうな。」




…殺気!


この男…何者だ。



男はクスクスと笑い

「なーんてな。冗談!」


何が…冗談だ。


殺気をこんなに出しながら、よく言える。


でもこの男…いったいなぜ、こんなところで殺気を出してくる。


それもわざとらしく…


私を挑発している?でもなぜ?


なぜ?!


「…冗談ならば、殺気は出さないでください。」


「えっ?」


「その殺気に、思わず剣をぬきそうになるので…」


そう言った私を驚いたように、見ていた男はクスクスと笑うと

「一流の腕を持つ者は感が鋭いなぁ。悪かった。挑発するような事を言って。やっぱりおまえも最強剣士トーナメント戦に出るつもりなのか?」


「…そのつもりです。」


「金か?」


「えっ?」


「おおかた、良いところのボンボンのおまえが、その刺繍をした貧乏なロザリーという女と一緒になるために、金が欲しいんだろう?」


…はぁ?

なにを言ってんだ。


呆れた顔で男を見た。


「俺が賞金の倍を出そう。だから俺と手を組まないか?」


…いったい。何が目的なんだ。


えっ?!


一瞬、男の体を闇が包んだような気がした。


先ほど感じた殺気どころではない。

深い闇を…ドロドロとした闇を…感じた。


この男……なにかある。



「…お金がほしくないわけじゃない。でもそれよりも強い相手と剣を交えたい。」



男は大きな声で笑いだすと


「なら最強剣士トーナメント戦に出るより、もっと強い奴と戦えるぞと言ったらどうだ?」


「強い男?」


「あぁ最強だ。今までに何度かその男を狙ったが…その男に近づくことさえできなかった。その男の前に、もうひとり老騎士がいてな。それがまた強い。みんなその老騎士の前で殺れる。」



なんだか嫌な予感がする。




「老騎士とは…まさか…ウィンスレット侯爵。」


男は口元を緩めると


「あはは…。わかるよな。老騎士と言えば、あの御仁しかおらんからな。あの歳であの強さはバケモンだな。だが…それ以上が…」


「…ルシアン殿下ということ…。」


「あぁ、最強だろう。」




息がつまりそうだ。




「どうだ?強いぞ。あの男らは…」


「…どうやってやるんですか?」


「計画は…仲間に入ってからだ。どうだ…ルチアーノ?」


そう言って、小さな声でジャスミンに聞こえないように

「本当に見たい。おまえのような育ちの良いガキが、綺麗な顔を血で汚すのを…」


男は私の顔を覗き込み

「な~んてな。」と笑った。



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