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王子様と過ごした90日間  作者: 夏野 みかん
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豚も煽てりゃ木に登る…な~んてわけない!

「よぉ!シリル。」


「よぉ……エイブ。」


いろいろ考える事があるのに…ルシアン王子の部屋はすぐそこなのに…まったく…ついていない。

目の前にいる、従兄のエイブ、そしてエイブの金魚の糞1号、2号に向かって大きな溜め息をついた。


あの後、急いで屋敷に戻り、胸に晒を巻いて、よしっ!!と気合を入れて来たのに、一気に力…抜けそう。なんでこんなところに従兄のエイブがいるの…。


あぁ…中庭を通らなきゃ良かった。遠回りでも…北の塔の台所を回って…

なんて、考えていたら…

エイブを入れた3人に、言いたいことを言いたいだけ遠慮なく言われていた。

…まぁ言いたい放題だったわけで…


「ほんとに、こいつがルシアン王子の警護をするのか?」


「見ろよ。あの細い腕、剣だって持てないんじゃないか?」


「おいおい…俺の従弟殿を、そうバカにするなよ。」


あぁ…エイブが顔を赤くして、ますます得意げになってるよ。



「お前は体が弱いんだから、田舎に引っ込んでりゃ…良かったのになぁ。伯父上に無理やりに、ルシアン王子の警護に付かされて…気の毒なこった。」


「しかし、従兄弟同士でも、お前たちってずいぶん違うよな。」


「エイブは体も大きくて、いかにも騎士って感じだけど…こいつは体だってエイブの半分しかないんじゃないか?」



豚も煽てりゃ木に登るっていうけど…



エイブが…ほらほら…やっぱり…

袖をまくり、力瘤を見せようとしてる。だけど、あれ筋肉じゃないから…


お見せできないけど、私だってシックスパックなんだから。フン!

それにしても、どうして…王宮のど真ん中の中庭なんかに?それもこんな早い時間に?



その疑問をエイブは、得意げに話しだした。


「体が弱いお前が、騎士としてやって行けないだろうから、俺がお前と変わってやろうと思って待っていたんだ。」


「変わる?」


「そうだ。俺が、ルシアン王子を警護する騎士になってやろうって言っているんだ。」


「はぁ~?」


「なんだよ。その《はぁ~?》は!」


いや、ほんと…《はぁ~?》という気持ちなの。


あれは…私が7歳、エイブが11歳、剣の練習を始めた頃。

あの頃はまだエイブは頑張っていた。泣きべそをかきながらも、どうにか剣の練習には来ていたが、だがだんだんと厳しくなる剣の練習に、とうとうエイブは、剣の練習に来なくなってしまった。まだ幼かった私は、厳しい剣の練習を一緒にやる同士だと思っていたから、励まそうと、エイブの屋敷を訪ねた時があったのだ。


『そう簡単には、剣は上達はしないさ、落ち込まないでお互いがんばろう。』と言った私に…


『おいおい、何言ってるだよ。あまりにも俺が優秀だったから、先生がエイブには練習など必要ないと言ったから、行かないんだぜ。』

と、袖をまくり、脂肪の塊の太い腕を自慢げに見せたんだった。


もちろん、その時も私は言いました。大きな声で

『はぁ~?』とね。


何言ってるのと思ったけど…だんだんと付き合いも長くなるとわかってきた。

辛いことがあると、どうやらエイブの脳細胞は妄想するらしい…と言うことを…。


あっ…そう言えば、馬もだ。

エイブは13歳までひとりで馬に乗れなかったなぁ。


「なんだよ…。」


「お前…馬に乗れるようになったのか?」


「シリル!!」


「お前、太りすぎで馬にまたがろうにも、腹が邪魔をして足が上がらなかったじゃないか…あれから体型も変わっていないし…できるのか?」


「それは子供の頃だろう!」


「俺が9歳で、エイブお前が13歳の時だったよな。」


「…子供だ。」


「うん、俺はな。だけど…13歳は微妙だよな。騎士の学校に入学した頃だ。大変だったろう。乗馬は出来て当たり前の世界だったもんな。」


「う、うるさい!なんだよ、今まで一度だって、言い返したことなんかなかったくせに、ルシアン王子付きになったら、急に偉そうになりやがって!」


今までは、面倒だったから…言い返さなかっただけ。

でも…私は今日からはルシアン王子を守るために騎士になるんだ。私がバカにされるのは、騎士と認めてくださった、ルシアン王子をバカにするのと一緒だもの。ルシアン王子の名誉の為にも、言うべき事は言う。


真っ赤な顔で、憤慨していたエイブだったが、突然、猫なで声で不気味な事を言った。


「体が弱いお前の代わりに、俺があのロザリーを嫁にして、侯爵家をついでやってもいいかと、思っているのに…。その為には騎士にならなくてはならないだろう。だからお前は、俺にルシアン王子の騎士を譲れ。」


「お前…何言ってんだ?」


「だ・か・ら、ロザリーはあんなんじゃ嫁に行けないだろう。」


「…どうしてだよ。」


「あいつもお前同様、体が弱くて…ブスだしな。あはは…」



マジ、切れた。



「エイブ、教えてやれよ。そのチビに、騎士なんかお前に務まるはずはないことを!」


「そうだよ。ガツンと一発かましてやれ。」


「おおっ、そうだな。教えてやる、どっちが騎士にふさわしいかな。」



豚も煽てりゃ木に登る…っていうけど、そんなわけないってことを…


さぁて、教えてやりますか!


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