それが出来るのは私だけ…。
「…ダサイ。」
私の情けない声に、キャロルさんが笑いを噛み殺しながら
「で、でも、この者よりお似合いだと思います!」
いやいや、この男と比べてでは…レベルが低すぎです。
「ロザリー様。この者の服は、ローラン国の兵士の服。ダサイと思われるのなら、チャンスです。後々ロザリー様自ら、デザインされて変えられたら良いんですよ。」
「えっ?」
キャロルさんは、にっこりすると
「兵士の服のデザインを変える為にも、必ずローラン国をルシアン殿下と一緒に、治めてくださいませ。吉報をお待ちしております。」
「…キャロルさん…。」
「もう行かれてください。この者はロザリー様が縛り上げてくださってますし、私は大丈夫です。」
なんだか胸がいっぱいで、上手く声が出なくて…俯いた。
キャロルさんがクスリと笑い
「きっと、待っていらっしゃいますよ。」
「えっ?」
キャロルさんは私を見つめながら
「ロザリー様は、剣でルシアン殿下の御身を守り、愛でその御心も守る騎士。もう最強の騎士ですもの。この危機に、ルシアン殿下がロザリー様をお側に置きたいはずです。」
剣で…そして胸の中で溢れるこの思いで、ルシアン王子を守る事が…もしできるのなら…もしそうなら…私は…私は…あの方の背中を、唯一守る事を許される騎士になりたい。一番信用して頂ける騎士になりたい。
見えてきた気がする。
私がルシアン王子のお側でやるべき事が…見えてきた。私にしか出来ない事が見えてきた。
「ぁ…!。」
「ロザリー様?」
「キャロルさん…どうやら殿下に遅れをとったようです。」
小さな音だったが、私の耳には聞こえた。
口元が緩む。
「えっ?」
キャロルさんの唖然とした顔に、私が微笑んだら大きな音がした。キャロルさんも気がついたのだろう。
唇だけ動かし
(お見えになられたんですね。)
頷く私に、あの方が私の名前を呼ばれた。
「ロザリー!!」
2m程の高さから叫ばれた、その声は狭い馬車の中で響き、そして私の心に響いてくる。
荒い息を吐きながら、私の名前を呼ぶルシアン王子に微笑んで、私もルシアン王子の名前を呼んだ。
「ルシアン殿下!」
私の様子を見て、柔らかい笑みを浮かべたルシアン王子だったが…突然…キョトンとした顔で私を見られ、ハッとしたように、頭にバックを被った下着姿の男へと視線を移し、一瞬だったが眉を顰められたが…クスリと笑うと
「…準備はできているようだな。」
「はい。殿下をお待ちしておりました。」
私の返答に、またクスリと笑われると、手を伸ばして
「ならば、存分に剣を振るってもらうぞ!」
「御意!」
ルシアン王子のその手に、自分の手を重ねた。
大きな手が、私の細い手を握ると、上へと引っ張り上げて下さる。
きっと、この手は違う女性の手を掴めば、もっと楽に歩める人生かもしれない。
そう思っていたから私は…動けなかった。
愛している人が苦しみ、悩む姿を見るのが辛かったから…でも…私の手を握る大きな手は、どんな困難も乗り越えられると言っているかのように、力強く私を上へと上げて下さる。
付いて行こう。ううん、この手を信じ付いて行きたい。
そしてもし、ルシアン殿下のこの大きな手に、受け止めるのが困難なほどの出来事があったら、私も一緒に手を差し出して、受け止めるんだ。一緒に戦って行くんだ。
それが出来るのは私だけ…。
この方を愛し、その心を抱きしめ、剣にも盾にもなることが出来るのは、私だけだから。
もう逃げない、もうあきらめない。
ルシアン殿下を愛しているから、もうこの手を離さない。




