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幼なじみは噛みつき魔  作者: 山石コウ
二章
21/32

2

 私と要は、店が多い駅前に向かう道すがら食べたいものを相談して、けっきょく要が強く主張したお好み焼き屋でお昼ご飯を食べた。

 鉄板の前に座るだけで汗だくになってしまったけれど、濃厚ソースに青のりと鰹節をたっぷりかけたお好み焼きは素晴らしく美味しかった。

 二人で店を出てから、お互い自分の制服や髪に染みついた香ばしい匂いに気づいて笑いがこぼれる。

「こんなにお好み焼きの匂いを振りまいてたら、お昼に何食べたかすぐわかっちゃうね」

「しかたない。しばらく歩いて匂い飛ばすか」

 私たちは、のんびりと歩きだした。日差しが強く、じりじりと肌を焼く。それでも、テスト明けの解放感でハイになっていた私たちは、特に目的地も定めない散歩が楽しかった。

「あ、そういえばあの店ってちょうどこの辺にあったような気がする」

「ん? 行きたい店があるならこのまま寄るか」

 耳ざとい要は、私の小さな独り言を拾ってそう言ってくれた。

 以前スーパーで三百円を貸した男性の名刺を取り出し、要に事情を説明した。たしかこの辺りに店があるはずだ。

 行ってみようかこのまま放置しようかかなり迷っていたが、近くまで来たのなら少し寄ってみてもいいかもしれない。

 しかし、男性の容姿を話した段階で要が渋い顔をして難色を示した。

「そんな怪しい男の店に行って大丈夫なのか?」

「んー、悪い人ではなかったような気はするけど」

「お前一人で行くのは心配だから俺も一緒に付いて行く。でも、もしも見るからに怪しい店だったら中に入らずにそのまま帰ろう」

「分かった」

 要が一緒に来てくれるなら安心だ。それに、あの個性的な男性を彼にも見せたい気持ちがあったので、二人で名刺の店を探し歩く。

 予想に反して、件の店はすぐに見つかった。メイン通りから道は一本外れているものの、看板も出ていて間口が広い店だった。

 しかし、私はまったく別の事に驚いていた。そこは、由佳理ちゃんと一緒にナンパ男たちから逃げるために飛び込んだアクセサリー店だった。

「私、ここに一回来た事がある」

「じゃあ、一応怪しい店ではないんだな」

 要は訝しみながらも店のドアに手をかけようとしたので、私は慌ててそれを止めた。

「やっぱりやめよう。怪しい店じゃないけど、すごく失礼な店員がいるから」

 顔だけはやたらと整っていたが、ものすごく辛辣な物言いをするあの店員ともう一度顔を合わせるかと思うと、たった三百円を受け取りにいくのも嫌になってきた。ここまで一緒に来てくれた要には悪いが、私は彼の手を引っ張って回れ右して店に背を向ける。

 しかしタイミングの悪いことに、そのときちょうど店のドアが開いて、中から例の眉を剃りあげた男性が出てきた。私たちが店の前で話しこんでいたのを見て、出てきたのだろう。

 彼は強面の顔に不釣り合いなほど人の良さそうな笑顔を浮かべている。

「いらっしゃい! 君、前にスーパーで助けてくれたこだよね。訪ねて来てくれてよかったよ。あれからぜんぜん音沙汰ないから、今度あのスーパーで待ち伏せしようかと思ってたとこだったんだ」

 笑うと細い目がさらに細く糸のようになるが、目じりに皺が出来ているので怖い印象が薄れる。相変わらず唇にはリング状のピアスが光っているが、ニコニコしていればちょっと個性的なお兄さんと言えなくもない。

「少し時間ある? こんな所で話すのもなんだし、良かったら寄って行って」

 私と要は顔を見合わせたが、私が「それじゃあ、少しだけ」と答えたので、私たちは店の中へ招かれるまま入って行った。

 店の中は、以前とあまり変わらないように見える。ドクロやクロスをモチーフにしたアクセサリーが多い。

「へー、すげえな」

 要はそれらの品が気に入ったのか、物珍しそうに顔を近づけて眺めている。学校で禁止されているので、彼が装飾品を付けているのを見たことがないが、もしかしたらこういう物が似合うかもしれない。

「そのへんのは高校生のガキにはまだ手が届かないだろうけど、こっちなら値段も手ごろでお薦めだよ」

 男性は店の奥から缶コーヒーを三つ手にして戻ってきた。それを私たちに配ってレジ横のスツールに腰掛ける。

 要は『ガキ』と言われたことにムッとしていたようだが、男性に他意はなかったらしく、ニコニコしながら「こんなのどう?」とシルバーのリングを指さしている。

 私は、店の奥からあの失礼なことばかり言ってきた店員が出てこない事を確認してから、本題に移った。

「とつぜんお邪魔してすみません。あの、お名前、青木さんで合ってますか?」

「ああ、あの時は名乗る暇もなくて悪かったね。この店の店長をしている青木慶吾です。助けてくれて本当にありがとう」

「石脇スミレです」

 私が名乗ると、彼の短い眉がピクリと動いた。

「石脇スミレ? え、本当に君、石脇スミレちゃんっていうの?」

「はい。そうです」

 彼があまりにも驚いているので、なにかまずいことでも言ったかと不安になる。しかし、どうもそうではないらしく、彼は興奮した様子でぐっと身を乗り出してきた。細い目を大きく見見開いて、唇に付いているピアスがシャラシャラと音を立てる。

「実は俺の親父ね、今度再婚することになったんだよ。俺もこないだ相手の女性に会ったんだけど、その人、石脇京子さんっていうんだ。それで、彼女の娘さんがスミレちゃんっていう名前らしいんだ」

 目の前の彼が、どうして私の名前を聞いて驚いたかのかようやく分かった。

「……私の母も近々再婚します。相手は、青木さんっていう方でした」

 一瞬の無言のあと、要が混乱した顔で口を開く。

「それじゃあ、二人は兄妹になるってことか?」

 私は思わず眉を寄せて目の前の男性をまじまじと見上げた。まさか、この人があの青木さんの息子だったなんて夢にも思わなかった。

 そう言えば、青木さんと初めて顔を合わせの日に母が彼の息子さんのことを『慶吾君』と呼んでいたことを思い出した。

 未来の兄になる青木さんも、感慨深そうにため息を吐く。

「驚いたな。まさか、こんな偶然がおきるなんて。きっと、俺の親父と京子さんに縁があったように、俺たちにもなにか不思議な縁があるんだろうなー」

「ちょっと待てよ。それじゃあ、本当にこいつがスミレの兄貴になるってことなのか!?」

 私たちの会話を黙って聞いていた要が、ブルブルと震える指先を彼に付きつける。かなり困惑しているのか、初対面の男性をこいつ呼ばわりしていることに気づいていない。

 青木さんは目を糸のように細くしながらにこにこしている。

「いやー、妹が出来るとは聞いてたけど、まさかこんなかわいい子だったなんてびっくりだ。『お兄ちゃん』って呼んでいいんだよ」

「いえ、それはちょっと遠慮したいです」

 私だって兄が出来ることは承知していたが、会って二度目の人を『お兄ちゃん』と呼べるほど神経が太くはない。

 私がきっぱりと断ると、彼は多少残念そうに筋肉で盛り上がっている肩を落とした。

「そっか、じゃあ『慶吾さん』って呼んでくれるだけでいいや」

「慶吾さんなら、まあ、なんとか大丈夫です」

 名前を呼ぶと、慶吾さんは目を細めて嬉しそうに頷いている。

 私を見る彼の目付きは、まるで小さな子どもを見るように温かい。よっぽど『妹』に対して憧れを抱いていたのかもしれないが、たぶん私はそれに応えられない。

 自分で言うのもなんだけど、私には可愛げとかそういう物がごっそり欠けている。

「ところで、親父の家に引っ越す日にちはもう決まった? 人手は多い方がいいだろうから、引っ越しの日には俺も手伝いに行くよ」

「え、青木さんの家に引越しですか?」

「そう。スミレちゃんの学校が夏休みになったら、うちに引っ越したいって京子さんに相談されたって親父から聞いたけど……違うの?」

 慶吾さんは、みるみる不安そうに顔を曇らせる。

 私は驚きすぎて口もきけない状態で、ブンブン首を横に振った。青木さんの家で同居を始めるなんて、一言も聞いていない。母はいつも大事なことはひとりで決めて、もう決まったことだからと後から私に伝えるのだ。

 青木さんや慶吾さんにまで話が伝わっているのなら、この引っ越しはもう覆せないに違いない。保護者である母がやりやすいように引っ越しを進めるのは仕方ないが、せめて私にも一言相談してほしかった。

「ちょっと質問いいすか?」

 私の引っ越し先が母の再婚相手の家だと知ってから、要は目が異様にギラギラしていて戦闘モードになっている。

「その家には、あんたも一緒に住んでるんですか?」

「ん? そっちの君はスミレちゃんの彼氏?」

「そうです」

 憮然として返事をする要。

「安心していいよ、彼氏君。俺はとっくに親父の家を出て独り暮らしをしてるし、ちゃんとかわいい恋人もいるから」

 ニヤリと笑う慶吾さんの言葉に一応安心したのか、要がホッとした顔で肩の力を抜いた。やっぱり、自分の彼女が若い男と一緒に暮らすのは心配だったのだろう。

 私は慶吾さんから見えないように、要のシャツの裾をそっと掴んだ。どんな形にせよ、私の事を心配してくれているのは単純に嬉しい。

 私のアクションに気づいた要は少し驚いた様子でこちらに視線を向け、シャツを掴む私の手を彼の大きな手で包み込んだ。

 慶吾さんにバレないようにとかそんな配慮はいっさいなかったので、あっという間にそのやり取りを目撃されてしまったが、慶吾さんは微笑ましいものを見るような目をしていた。

「そうそう。スミレちゃんに来てもらったのは、あの時のお礼をするためだったね。はい、まずはこれ」

 差し出されたのは小さな封筒。開けてみると三百円が入っている。あの日貸した金額と同じだ。

 私はお礼を言ってそれを鞄にしまう。これで貸し借りなしということでそのまま帰ろうとすると、慶吾さんに慌てて止められた。

「あーちょっと待って、まだ行かないで。頼むからきちんとお礼をさせてくれ。スミレちゃんくらいの年の女の子が何をもらって喜ぶのかよく分からなかったから、だいぶ迷ったんだけど――」

 そう言って、彼はレジの奥から銀色の缶を取りだしてくる。中でジャラジャラとなにかがぶつかる音が聞こえた。

 蓋を開けると、ブレスレットやらリングやらネックレスがたくさん入っていた。店に並んでいるようなゴツイものではなく、もっとシンプルで繊細なデザインだ。

「けっこうかわいいデザインもあるし、若い子にも気に入ってもらえると思うんだ。この中から好きなのを選んで」

 どれもとても綺麗だが、今までアクセサリーの類とは無縁の生活を送ってきた私にはちょっと手が出にくい。急に選べと言われても困ってしまう。

「これなんかお薦め。翼をイメージしたカジュアルなリングだから普段でも付けられるよ」

「綺麗ですね。でも私、アクセサリー選ぶの初めてだから、なにが自分に似合うのかよくわからなくて……」

 私がそう言うと、要が缶の中からきらきら光るブレスレットを選びだした。

「俺はこれがいいと思う」

「あ、かわいい。花がついてる」

 要から受け取ったブレスレットを眺める。華奢な小さな花が三つ連なっていて、その一つ一つに淡い紫色のストーンがあしらわれている。その可憐な姿と色合いは菫の花を連想させ、一目見て親近感が湧いてしまった。

 ちょっとだけ付けてみようかと思った瞬間、要が私の手からひょいとブレスレットを抜き取る。こんな所で意地悪するのかと戸惑ったが、どうやらそうではないようだ。

「慶吾さん、これ俺に売ってくれませんか」

「え? 別にいいけど、スミレちゃんにはタダでプレゼントするよ」

「いえ。これがこいつにとって初めてのアクセサリーになるなら、慶吾さんからじゃなく、俺からプレゼントしたいんです」

 慶吾さんは要の答えに目を丸くする。

 私も、要がまさかそんな事を言ってくれるとは思っていなかったので、ものすごく驚いた。

 彼氏になったとたん、いままでの面倒くさがりでドライだった要はなりを潜め、すっかり甘い顔を見せるようになっていた。

 今までサボりにサボっていた私の女の部分も、人並み程度にはロマンチストだったらしく、じわじわと嬉しさがこみ上げてくる。

 私だって、初めて身につける物を贈ってもらうなら、要からプレゼントしてもらいたい。

「ああ、なるどほね。そういうことなら彼氏君に格安で売ってあげるよ。良かったねスミレちゃん。でもなあ、それじゃあ俺がお礼をした事にならないんだよなあ」

 慶吾さんはひとしきり腕組みをして悩んでいたが、なにか良い案を閃いたらしい。

「分かった! スミレちゃんは彼氏君のために、この中からメンズのアクセサリーをひとつ選んであげればいいんだ。それなら俺もお礼を受け取ってもらったことになるし、彼氏君の独占欲も満たされて、めでたしめでたし」

「でも、本当にそれでもいいんですか?」

 私に異論はないが、慶吾さんの案に従うと、私へのお礼の品は最終的には要が使うことになってしまう。そうなると、慶吾さんとしては少し複雑な心境なのではないだろうか。

「細かいことは気にしなくていいよ。いやー若いっていいね」

 どうやら青臭いと思われたらしい。少し反論したくなったが、やっていることは青臭いことこの上ないので、私は黙って要に似合う物を探す。

 何がいいだろう。彼のイメージに合った物で、できれば少しお揃いの要素がほしい。

 私は缶の中から、シルバーのチェーンで作られたブレスレットを見つけた。少し太めのチェーンはごつごつしているけれど、それがかえって武骨な要の手首に似合いそうだ。

 一見するとシンプルだが、留め金の所に薄紫色の小さな石の飾りが付いている。それは、動物の牙の形をしていた。

「これにします!」

 一目見た瞬間にピンときた。

「ああ、それ紫水晶を使ってるんだ。いいものを選んだね。ちなみに、彼氏君が選んだこっちの花の飾りにも同じ石が使われている」

 お揃いだね、と言って慶吾さんはニタリとからかうような笑みを浮かべる。

 要は、さっき選んだ私へのプレゼントの金額を提示され、一瞬顔をこわばらせていたが、鞄から財布を取り出して千円札を五枚、慶吾さんへ手渡した。

 本物の水晶を使った品にしては安い金額なのかもしれないが、高校生にとっては十分な大金だ。

 私は要に申し訳ない気持ちになって、半分出させてほしいと提案した。しかし、要は首を横に振って断る。

「いらない。俺が全額支払わないと意味ないだろ」

「でも……」

「いいから、変な遠慮しないて黙って受け取ればいいんだよ」

 要は少し強引に私の手首に菫の花を想わせるブレスレットを巻きつけた。三連の花が、腕を動かすたびにシャラシャラと涼しげな音を立てる。

「気に入った?」

「うん! ありがとう要」

「どういたしまして」

「あ、じゃあ要のは私が付けてあげる」

 牙の飾りが付いたブレスレットを要の腕にはめると、想像以上に彼によく似合った。ちょっと強面の男前だったのが、悪い男の魅力が上がったというか、ちょっと危険な雰囲気が追加される。

 いまさらながら、要のカッコ良さに気づいてしまった私は、心の中で焦っていた。

 そんなとき、店のドアが開いて男性が一人入って来た。色素が薄い茶色の髪をさっとかきあげると、彼は店の中をぐるりと見回す。

「なんだ、珍しく客がいるのか」

「ああ、湊人みなとか。今日はずいぶん来るの早いな」

「講義が面倒だったからサボって来た」

 男性は慶吾さんと親し気に話し、私たちに向かって明らかに不機嫌そうな舌打ちをして、じろりとこちらを睨みつけた。邪魔者は早く去れと言わんばかりの態度だ。

 そのとき初めて、私は湊人と呼ばれた男性と目があった。

「あ、あのときの嫌な店員」

「あ? なんだケンカ売ってんのか?」

 虫けらでも見るような目で私を見下ろしているその人は、以前この店で出会った最悪な態度の店員だった。相変わらず顔だけは無駄に綺麗な男だが、態度が本当に感じ悪い。

「ここはガキが来る店じゃないって前にも言っただろ。学習能力ないのかよ」

「今日は慶吾さんに用事があって来たんです。あなたに指図されたくありません」

「お前、慶吾に何の用だ!」

 慶吾さんの名前を出したとたん、彼はとつぜん般若のような顔で私に詰め寄ってきた。要が慌てて私を守るように背にかばってくれたので何もされなかったが、胸倉でも掴まれそうな勢いだった。

「俺の慶吾になんの用があるのかって聞いてんだよ!」

「落ち着け、湊人。彼女は前に話したスーパーの恩人だよ。お礼を渡したかったから寄ってもらったんだ」

「お前が? まさか、慶吾に下心があって親切なふりして近付いたんじゃないだろうな」

「そんなわけないだろ。いいこだから、湊人はちょっと黙っていような」

 まるで毛を逆立てている猫のように手がつけられない。慶吾さんが湊人というを落ち着かせようと彼の頭をそっと撫でる。

 慶吾さんの目が妙に優しくて艶めいていて、私はあっけにとられてしまった。そういえば、その人さっき『俺の慶吾』って言っていたし、二人はそういう関係なんだろうか……?

 思わず要を振り返ると、彼もその事に気づいたらしく、口を開いたままぽかんとしている。

「驚かせてごめんね、スミレちゃん。こいつ一之瀬湊人っていうんだけど、ちょっと女性が苦手なところがあってね。あと短気で口が悪くて嫉妬深いところがあるんだけど、本当はそれほど悪い奴じゃないんだよ」

 慶吾さんには悪いが、彼を紹介してもらってもこっちが困る。これ以上関わる気もないし、嫌悪感をむき出しにして睨んでくる人に、好意的な感情なんて抱けない。

 もうこの場はスルーして帰ろうかと思ったが、空気を読まない要がとんでもない事を口にした。

「もしかして、さっき慶吾さんが言ってたかわいい恋人って、この人のことですか?」

「ん? そうだよ。キャンキャン吠えるわんこみたいでかわいいだろ」

 そう言われてみれば、図体は大きいが威嚇して吠える犬に似ていなくもない。でも、私にはまったくかわいいとは思えない。

 同じ犬でも、うちの噛みつき癖のある野犬の方が絶対にかわいい。

「慶吾さんってそっちの人なんですね。いや俺、正直あなたがスミレの兄貴になるの心配だったんですけど、ちょっと安心しました」

 心から安心したせいで急に饒舌になった要に、慶吾さんは申し訳なさそうに頭をかく。

「んー、せっかく安心してもらったとこ悪いんだけど、俺どっちもイケちゃう人なんだよ。女の人も大好きだし、かわいいと感じたら性別は関係ないんだ」

 要は絶句して固まった。

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