88話
明日は投稿できそうにないのでがんばった。
でも無駄に話が伸びた気がする(´・ω・`)
ランドルフ達が再び大穴を飛び降りる四日ほど前。
ここは六階層。
数人の男達がその入り口付近に集まってなにやら話をしていた。
「どういうことだ? 四階層にいた奴らの連絡では、とっくの昔にここに着てもいいはずなんだが」
「戻ったという連絡もないしな。五階層で狩っているのか……いや、それにしてもここに報告に来た連絡員が目撃していてもおかしくないはずだ」
「でっかい狼がいるんだろ? すぐにでもわかりそうなはずだが」
でっかい狼とはデンのことであろう。
どうやらランドルフ達を待ち伏せしているようである。
しかしそのランドルフは四階層を抜けたところで大穴に飛び降りたのだ。
その現場を目撃していた人もいるのだが、彼らは知らないようだ。
「流石に二日も待って何もないのはおかしいぞ」
「ああ、ゲチェクトさんになんて報告すればいいのか……」
「どうする? 持ち場を離れて探索しに行くか?」
「「「………」」」」
その一言に黙って考え込んだ男達。
「警告ついでにちょっかい出すだけだったのにな~」
「お前の場合ちょっかいですまねーだろうが」
下卑た笑みを浮かべながら答える。
「だが、めんどくせーことになった」
「まっ、嘆いていても仕方がない。半分に人数を分けよう。片方が五階層と四階層の探索だ。今日一日あればくまなく探し回れるだろう。残りはここで待機だ」
事態が進展しないので仕方なくチームを分けることに全員が賛成した。
見つけたら監視員を残して合流することを確認して行動を開始した。
その翌日。
「探し回ったがどこにも見当たらないぞ。四階層を見張っていた奴らも戻っていないといっている」
「見逃しているかどこかでくたばったのか? でっかい狼がいるのに?」
どちらにしてもそれはないだろうと考え込むが、ないとも言い切れない。
だが少なくとも探し回った男達から死体があがったとの報告はない。
「謎だな。十一階の奴らに連絡して下層にいるゲチェクトさんに知らせてもらおう」
「そのほうがいいな。だがどう説明する? 忽然と消えましたじゃ間抜けすぎるだろ」
「しかし、そう報告するしかないぞ」
「だな。しゃーねぇ、お小言覚悟でまた半分に分けて十一階層へ行くか」
ランドルフが飛び降りたことによって、彼らの行動予定が狂ってしまったようだ。
移動を開始しようとしたその時、連絡員が数名やってきた。
「まずい事態になった」
「どうしたんだ?」
「下層の素材が昨日流れたようだ」
「「「なに!?」」」
大きな狼は見かけなかったが、その一行と思われる人物が三人荷物を抱えて売りに来たと説明された。
一人跡をつけてみたがその三人は宿に泊まったが大きな狼はいなかったという。
「だがまさか三人で狩ったというわけではあるまい」
「たぶんな。翼竜の素材があったから、三人で普通は倒せないだろう。そこまで手練には見えなかった。それに三人で狩ったにしては流れた量が多い」
実際にはほぼ二人で狩ったのだが彼らは知る由もない。
「ますます謎だらけだな。俺達の監視の目を掻い潜って下層まで降りたと」
「それこそふざけるなよって話だ。降りたにしてもそんな短期間で下層まで降りられるわけがねぇ」
「狩りをする時間も入れて、街まで戻ってきたことを考えてもおかしい事だらけだぞ。きっと別の奴じゃないのか?」
「「「……」」」
まったく理解の範疇を超えたことに黙り込んでしまう。
「とにかくゲチェクトさんに報告するしかねぇ。十一階層の奴らもゲチェクトさんも見かけなかったのならお手上げだ」
静かに頷き、今度こそ報告に行くために移動を開始した。
ランドルフ達の考えではすぐにでも接触してくると思っていたのだが、大穴を飛び降りた行動のおかげで入れ違い、食い違いが発生していたのだった。
「ふむふむ。ここが二十階層か~」
二十階層の入り口に降りて中へと入る。
十九階層とほぼ同じような地形である。
「ここは十九階層に加えて『森の暗殺者』に気をつけなければいけない」
「パトリーム起きたのか。んで、なんぞそれ?」
簡単に言えば巨大な蟷螂である。
しかも周囲の色と同化し、じっと獲物が通るのを待ち構えている。
だが鈍足というわけではない。
素早いし空も飛んで鋭い鎌で相手を切り裂く恐ろしい敵である。
「さらに螺旋土竜がいる」
「説明!」
鼻がドリル状になっているモグラである。
モグラと言ってはいるがワイバーンと同じ亜竜である。
硬い鼻に鱗、そして爪。
地中から地上の振動を感知して獲物を突き上げ、空高く吹き飛ばす。
もちろん普通に戦っても手ごわい相手である。
「おぃ。そんなのどうやってここにくる狩人達は狩ってるんだよ……無理ゲーじゃね?」
「襲ってくるときには前兆がある」
攻撃してくるときは地面が振動し、盛り上がるのだ。
「普通なら神経使う狩場なんだろうな」
あえて全員を宙に浮かせることはせず、進む道に絨毯を敷くイメージで結界を張ってその上を歩く。
「これで大丈夫だよ」
「「出鱈目だ……」」
近衛の二人がつぶやくが聞こえないフリをする。
「十九階層の敵にさらに厄介なのが加わったことによって難易度があがってる。みんな攻撃するとき結界からでたら注意してね」
十九階層よりは木々の密度が薄い。
広い道幅の真ん中を十分ほどテクテクとひたすら歩いていく。
敵が全然現れない。
「暇じゃ。ランクイロ、おぬしが餌になって敵をおびき寄せるのじゃ」
「ひどいです!」
暇すぎて滅茶苦茶なことを言い始めた。
「む~、かなり広い範囲を探っておるのじゃがまったく敵がおらんぞ。どうなっておる」
「前みたいに誰か狩ってるとかじゃないの?」
「血の匂いもないし魔物の死体もない。戦っている反応もないぞ」
「確かに。じゃあ単純にいないだけじゃね?」
先日は森の中にたくさんいた万年妖樹も、階層が違うためか今日はまったく見かけない。
さらに進んでも何も起きないのでアマレットとデンが同じタイミングであくびをしていた。
「ね~、あたしの出番まだ~?」
「出番が欲しいならアマレットも敵を探してくれ」
「しょ~がないな~。精霊さんおねが~い!」
ダンジョンの中でも精霊っているのかよ。
どうやら敵を発見したようだ。
「あっちのほうへしばらく行くと、池があってそこに角の生えたでっかい奴がいるって言ってる~」
「恐らく一つ目巨人の亜種である一つ目鬼と思われる」
アマレットの指し示す方向を向くと、森の中を突っ切らなければ敵に遭遇しないようだ。
「却下だな」
「え~、せっかく探してもらったのに~」
「何故じゃ!」
なんでわざわざ好き好んで森の中に入るんだよ。
道を歩け道を!
「しかしこの道も緩やかに下って曲がってるんだな」
「地図によると道をそれない限りはずっと同じ風景のようです」
ジオラスが地図を見ながら教えてくれるが、そのことに不満を漏らす守護竜様。
「せっかく楽しみにしておったのに!」
「僕は安全に進めていいと思いますが」
「ばかもん! ただ進むだけならランドルフに一気に最下層まで降りてもらうわい!」
どうしても戦いたいようである。
「森の暗殺者? だっけ? そいつって擬態してるなら見逃してる可能性もあるしね」
「……かもしれない。でも遭遇したら攻撃してくるはず。螺旋土竜も現れないのは少し変」
「あ、モグラが出ないのは俺のせいかも。今結界の上歩いてるから振動が地面にいってないと思う」
「なんじゃと! すぐに解除するのじゃ!」
「ダメに決まってるじゃん……」
うるせ~守護竜様だな~。何でもいいから敵さん現れてやってくれ。
だが結局一戦もせずに五時間ほど歩いて出口に着いてしまった。
「あらま~」
「出口が見えましたね」
「つまらんぞ!」
何か異常があったのか、それとも狩られた後なのか。
敵が出現する頻度もわからんしな。なんともいえない。
仕方ないので遅い昼食を食べた後、二十一階層に突入した。
ここも一緒で森の中である。
「敵は?」
「ほぼ一緒。さっきの敵に毒蛾蝶と鋏角蜂、それとヤムーバがいる」
「説明よろ~」
毒蛾蝶はそのまま毒を撒き散らす蛾と蝶が混ざったような見た目をしている。
「どっちも元々同じようなもんだろうが!」
文句を思わず言ってしまった。
鋏角蜂は鋏の形をした針を持つが、挟むことはできないらしい。
普通に敵対する相手に突進して突き刺すのだが、針が鋏状なので鋏角蜂本人は刺しているつもりなのだが、相手は真っ二つに切れてしまうようだ。
「蜂の針って元々卵管じゃなかったっけ?」
「それは別にある」
よく分からん生物が多いな。
「んで山姥みたいな名前のヤムーバは?」
「山姥ですか?」
「気にしないでくれ。パトリーム、説明を」
パトリームの解説によると、山姥ではなく鳥類のようである。
鋭い嘴と爪を持った大きな鷹のようなものだという。
「名前はともかく普通の敵って感じがするな」
「でも空高くから垂直に急襲してくる」
「へ~」
結界に自信を持っているのでまったく気にしていない。
むしろ先日のワイバーンのように激突してくれれば儲け物である。
「鱗粉欲しい」
「たぶん焼いて終わりじゃないかな」
「……」
毒蛾蝶の鱗粉をねだったが回収はできそうにないようだ。
表情は変わらないがシュンとして落ち込んだように見えた。
「クックック、今度こそ仕留めてくれるわい」
「ご安全に……」
「私もそのくらいの相手なら戦えそうですね」
カナンカが前に出て再びやる気を見せ、ランクイロは控えめに下がる。
アプスは戦いに参加しないようだが、もし戦ったとすればと想定しているのだろう。
だが同じような道を歩くもやはり敵が出てこない。
「敵はおらぬが……かなりの人数がおるの」
魔物とは別の反応を察知したようだ。
「狩人じゃない?」
「じゃと思うが、人数が多くないかの?」
ランドルフも察知したが、その人数は七十人ほどいるようだ。
「独占している奴らとか?」
「だとしたら接触しますか?」
「そうだね。詳しく話を聞いてみるのもありだね」
そう答えたランドルフは不敵な笑みを浮かべた。
やがて反応があったと付近に近づいた。
どうやら大物を狩っている途中らしい。
道を塞いでいるために横を通り過ぎるなら、森の中に入るしかないようだ。
何人かがこちらに気が付いた。
「巨大な狼? 最近やってきたとか言う奴らか!」
「こら! 余所見をするな! 今はこいつを倒すほうが先だ!」
エリマキトカゲのようなエラに額と目の横の辺りから角が生えている巨大な蛇がいた。
「何あれ」
「あれは恐らくこの階層の主」
図鑑をペラペラとめくって確認している。
「あった。『揺れ動く者』と呼ばれているらしい」
超音波を発し、毒液を吐き出すわ噛み付いてくるわ、締め付けに尻尾攻撃に体をバネのようにしての体当たりもあるらしい。
ワイバーンもどこからともなく現れて、上空から襲ってきたようだ。
「体勢を変える! 後衛! 援護してくれ!」
リーダーと思われる人物が声をあげ、すぐさま反応してワイバーンに対して攻撃を開始する。
前衛が横一列に隊列を組んで大きな盾を構え、巨大な蛇の攻撃に耐えている。
後衛を信じているのか、ワイバーンを無視して巨大な蛇に向かって攻撃を仕掛ける切り込み部隊。
負傷したものは下がって治療を受けている。
少しずつではあるが確実に相手にダメージを与えていっている。
「ああやって戦うのが普通なのかね~」
「そうですよ。子爵様と守護竜様の戦い方がおかしいのです」
「一人でこの人数を完璧に守る盾と、確実に敵をしとめる攻撃を同時にこなし、それに加えて守護竜様が遊撃に出られるのですから……」
できちゃうんだから仕方ないね。
俺ってば天才だからさ。
普通の戦い方を見て調子に乗り始めたようだ。
そんな普通の戦い方をしている彼らに、追加で魔物がやってきたようだ。
「ヤムーバまできやがった! 少しずつ下がりながら……まて! 螺旋土竜だ!」
その言葉を聞いて全員が一斉に下がり始めた。
すると、地面が盛り上がって螺旋土竜が現れた。
だが螺旋土竜は巨大な蛇に攻撃され、毒を食らったようだ。
まるで邪魔をするなといわんばかりである。
「よし! 螺旋土竜は無視してあいつを攻撃だ! 後衛は引き続き上空の敵を攻撃!」
すぐに判断を下し、再び攻撃を開始する。
「えげつないなあの蛇。螺旋土竜って鱗があって硬いんでしょ? 普通に噛み付いてるんだけど」
流石は階層の主といったところか。
北の海で見た怪獣大戦争みたいなのとは違うがこれも結構迫力あるな~。
もし彼らが体勢を崩して崩壊すればこちらに敵が来るのにも関わらず、他人事のような事を考えているようだ。
「しかし彼らは中々にいい動きをしています」
アプスは感心して見ている。
カナンカもランクイロも黙って狩人達の動きを観察して動きを学んでいるようだ。
「ね~、ランドルフ~」
「おぃ、人がいるんだから隠れてろって」
アマレットが不安そうにランドルフに声をかけた。
「子爵様。敵です」
ジオラスが教えてくれた。
「あたしが先に気づいたのに!」
先に言われてしまい文句を言う。
ジオラスは少し申し訳なさそうだ。
目の前の戦闘に気を取られていたのか、背後から近づいてくるものに気づくのが遅れてしまった。
「お、ようやく見れたな~。本当に一つ目だ」
ギガンテスが二体現れたようだ。
「ランクイロや」
「はい」
すぐさまランクイロが飛び出し、攻撃を開始した。
先ほどまで戦いたがっていたカナンカは狩人達の戦闘を観察することを優先したらしい。
狩人達も後ろで戦闘が行われているとわかって警戒するも、ランクイロが相手にしているのを見て大丈夫そうだと思っていた。
だが……。
「って! 何故魔族がここに!」
「何! 魔族!? 例の奴か!」
人狼姿のランクイロを見て魔族と判断し、その叫びを聞いて狩人達の気が逸れた。
「「うわっ!」」 「「ぐはっ!」」
援護が薄くなって一気に前衛数人が負傷した。
「まずい!」
戦線が崩壊しそうになるも、指揮していたリーダーと思われる人物が自ら前に出て一人で巨大な蛇に向かっていった。
「大丈夫だ! 例の奴じゃない! 気をそらすな! 後衛! さっさと空の敵を落とせ! 荷運び! 治療班のところへ負傷した奴を下がらせろ!」
攻撃しながら指示を出す。
すぐさま指示通りに動いて体勢を立て直し、何とか再び拮抗状態にまで持ち直した。
あ~、なんかすんません。悪気はないんですよ。
ってか、勝手に勘違いしたのそっちだしね。俺達は悪くないよ。
などと思いながらも狩人達に援護することはせず、じっと見守っているだけであった。
アプスと近衛二人はちゃんとランクイロの方を見守っていた。
パトリームはそんなこともお構いなしに図鑑のページをめくる。
どうやらどんな素材が取れるのか調べているようだ。
見守っている間にランクイロはギガンテス二体を無事に倒し終えたようだ。
倒れた二体の腹に風穴が空いていた。
「カナンカ様の技をやってみたのですが、威力の低い不完全な状態でも何とか倒せました」
「おつかれ~」
「よくやったぞ」
ランクイロを褒めながらもその視線は狩人達を観察している。
ほっと一息ついて血に濡れた手を洗い流すランクイロ。
近衛の二人が戦いぶりを褒め、アプスがタオルを手渡していた。
「「「うぉおおおおおおおー!!」」」
歓声が聞こえると、リーダーと思われる人物が、巨大な蛇の口から脳天を突き抜けるように剣を貫通させ、止めを刺していた。
ずしんと重い音が聞こえて獲物が横たわる。
「あっちも終わったようだ。こっちも素材を回収して先に行こう」
「ギガンテスの素材はその分厚い皮だけ」
らしい。三人でせっせとナイフを使い回収した。
向こうはまだ回収しているようなのでその横を通り過ぎようとした。
「待ちな」
やっぱり~。この人たちが当たりだったらいいんだけど、違ったら違ったで厄介事だよな~。
先ほど巨大な蛇に止めを刺した人物が、ランドルフ達の前に現れた。
お読みいただきましてありがとうございます。




