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83話

最近投稿間隔が空いて申し訳なく(;´Д`)

次回は早いはず……。


 迷宮に潜ると決めた翌朝。


 「え? 足が筋肉痛で動けない?」


 コクリ


 「やっぱり待ってる?」

 「いや」

 「じゃあどうすんのさ。デンの上にずっと座ってる?」

 「それでいい」

 「あんまり無理すんなよ。ちょっと様子見で潜るだけだから」

 「わかった」


 パトリームが動けないようなので、もし敵に襲われたら固定砲台になってもらうことにした。

 ランクイロは昨日、カナンカに倒されたダメージは残っていないようだ。流石の回復力といったところか。

 カナンカに朝からお酒は飲まないようにと言い聞かせておく。

 昨日の伯爵から貰ったワインが気に入ったのか、いつもと違って味わいながらチビチビと飲んでいた。


 「わかっとるわい! いっつもおぬしはクドクドとしつこいのじゃ!」

 「いつもお酒を飲みすぎなければ言うこともないんだけど」

 「ぐっ……」


 ランドルフの一言に、少しは自覚があるのか言葉を詰まらせた。

 まだ眠そうなアマレットをしっかりと起こして朝食を食べる。

 伯爵と一緒になり、朝食を食べて準備が整ったら部屋まで来てほしいと言われた。

 装備を装着点検し、問題も無いのでノックをして伯爵のいる部屋に入る。


 「こちらをお持ちください。迷宮を監視している兵士に渡せば、昇降機の使用や地図に必要な装備をくれるはずです。現地で迷宮での詳しい説明をしてくれと書いておきました」

 「ご配慮感謝いたします」


 蝋を垂らしてそこに家紋の入った指輪を押し付けた封筒を渡された。


 「守護竜様もいらっしゃるので大丈夫かとは思いますが、十分にお気をつけて」

 「二三日潜って様子見るつもりですが、できるだけ早く事件が解決できるようにしたいと思います」

 「頼みましたぞ」


 その言葉に満足そうに頷いた伯爵様。

 カールを巻いた前髪が一緒になって揺れた。

 屋敷を出ると馬車と共にジオラスが待機していた。


 「おはようございます」

 「おはようございますジオラスさん。いい情報は手に入りましたか?」

 「それは道中馬車の中で話しましょう」


 見送ってくれる伯爵に挨拶をして馬車とデンに乗る。

 パトリームとジャカードはデンの上だ。パトリームは馬車と揺れ方が違うので負担は少ないだろう。

 やはり馬車の後ろを歩くデンの姿は目立つ。どうしてもすれ違う人々の視線が集まってしまう。


 空から行ったほうがよかったかな~。でも馬車をわざわざ手配してくれたのを断るのも悪いし……。

 最初に行っておけばよかったか。


 後悔もそこそこに、ジオラスから話を聞くことにする。


 「古い知り合いに最近の様子を探っていたら何度か襲われました」

 「え?」

 「相手はわかりませんが、連中は外から来たやつに対して敏感なようです。その知り合いに匿って貰い、大事には至りませんでしたが」

 「過激なお出迎えですね、無事でよかったです。この馬車も監視されてるかもしれません。やはり空から行くべきだったか」


 失敗したと少し悔やむ。


 「例の魔物の影響で、今なら下層は独占状態かもしれませんしね」

 「そこに外部から猛者がやってきて荒らされたらたまらないって所でしょうか」

 「狩人同士でいざこざはないんですか?」

 「それなのですが、どうもその下層を独占したい連中が、何組かで結託して力ずくで追い出しているようで、ずいぶん不満を漏らしていました」

 「ふむ」


 ここぞとばかりに同盟でも組んで独占か。

 潰すなら内部に不和を起こすような情報を流せればいいけど……。


 「それらが襲った連中と関係あると?」

 「ええ。これは予測ですが、下層に行けば連中が襲ってくると思っています」

 「迷惑で悪質極まりないが、背後に商人や貴族の影は無いのかな?」

 「一つ、気になる情報が」


 なんだろ。どっかの貴族が絡んでたりしたらメンドー何だけどな~。


 「最近一つの組の羽振りがいいようです。豪遊こそしていませんが、いい装備を整えたり薬や道具も買って回っているそうです」

 「下層を独占している連中?」

 「そのうちの一組ですね」

 「そのことを伯爵には?」

 「伝えてはおきました」


 う~む。そいつが中心になって悪さをしているのかな?


 「それに群がるように他の狩人達も従っているのだとか。知り合いは不気味がって近づくのはやめたようですが……」

 「金の出所は下層の素材を売り飛ばして儲けてるってことだよね」

 「最近頭角を現したようで、組合には売らずに商店に卸しているようですが、売る店もバラバラだそうです」


 ギャング予備軍って感じかな~。

 どんどん値段が上がっていく素材を自分達だけで売って、仲間や装備を増やし、戦力を整えて同業者をたたき出すってか。まぁ、そんなところだろう。

 バラバラに売っているのも商店を見定めている感じかな。

 物はあっても販売ルートが無いと捌けないわけだし、都合のいい商店を選んでるんでしょうね。

 まっ、概ね予想通りでよかった。


 「ってことはそいつらだけに気をつければいいのかねぇ~」

 「かもしれませんが油断はできません」

 「となると、問題は例の魔物だな。話を聞いてそんなやつらは正直どうでもよくなったよ」

 「お役に立てたようで」

 「助かりました」


 でも狩りすぎると強い魔物が出てくることは知っているはず。

 ハイリスクハイリターンだが、現れないぎりぎりのラインを見極めているってことか?

 あえて接触して話を聞いたほうがいいか。


 カナンカもランクイロもアマレットも、退屈な話だったのか黙して語らず、終始馬車の中では暇そうにしていた。

 やがて迷宮の入り口がある、宿場街へと付いた。











 伯爵の手紙を見せると屯所の中へと案内された。


 「ようこそいらっしゃいました。子爵様方があの魔物を退治していただけるなら喜んで協力させていただきます」


 隊長っぽい人が挨拶をしてきた。簡単な説明をされる。

 まず、昇降機は四階層までしか行き来することができないことを言われる。

 デンが大きいので何回かに分けて降ろしてもらうことになった。

 次に地図だが、二十一階層まではあるが、それ以降は降りた人がほとんどいないので正確なことはわからないと注意されて手渡された。

 それとランタンかカンテラのような道具を貸し出された。

 ランドルフ達は魔法で明かりを何とかするつもりだったが、一応何かあったときのために松明は用意していたのだが、こちらのほうが性能はいいだろう。ありがたく借りておくことにした。

 他にも鉱物や植物採取などの道具など、様々な物を貸し出すかと聞かれたが、今回は様子見で、そもそも他の狩人達と同じように潜りに来たわけではないというと、「そうでした」言われ、少し残念そうな顔をされた。


 この隊長さん人がいいんだろうな。説明するときも活き活きしてたし、田舎の駄菓子屋のおばあちゃんがあれもこれも持って行けって言ってるみたいな印象だな。


 例の魔物は二十階層辺りから見かけたとのことだ。普通に進めば二十階層までたどり着くにはベテランで一週間ほどかかるとか。


 往復で二週間。狩りをしている間に一月は経ちそうだな。


 外に出て兵士に案内され、迷宮の大穴の前にやってきた。

 その途中で色々狩人を見つけては声を掛けている人たちがいる。

 忘れ物を補充するための雑貨屋さんや、荷物運びをするために自分を売り込む人々。

 宿屋の呼び込みにここでもいい匂いをさせた屋台が並んでいる。

 屋台や人ごみを抜けて、街の外に出るとぽっかりと街一つ入ってもまだあまりそうなほど大きい穴がある。


 「うわ~……、底が見えない。真っ暗ですね」


 高いところは苦手なのだろうか? 若干腰が引けているランクイロ。


 「すごいおっきい穴だね~。ランドルフの街なんて、まるまる入っちゃうんじゃないの?」

 「確かにそれくらい大きいな」


 アマレットはランドルフの周りをビュンビュン飛んではしゃいでいる。


 「久しぶりに来たな」

 「前に入ったのはいつだったか」


 ジオラス、ジャカードも入ったことがあるようで、昔を思い出して懐かしんでいる。


 「風がきついですね」

 「遮蔽物が無いからの~。それにしても下のほうから心地よい魔力の流れを感じるのじゃ」

 「……ここから歩くの?」


 その大きさに圧倒され、それぞれ思い思いつぶやくが、パトリーム以外怖気づいているものはいないようだ。

 いや、パトリームも怖気づいているわけではない。歩くのが嫌なだけである。

 昇降機に乗って四階層まで降りる。

 ちなみに一階層から三階層まではゴブリンや蝙蝠。大きなナメクジにムカデにゴキブリなどが生息するようだ。


 ゲテモノは別の意味で怖いっす。昇降機万歳だな。


 「ランドルフ」

 「なに?」

 「抱っこして」

 「なっ!」


 デンが一匹だけで昇降機に乗らないと重量がやばいそうなので、パトリームが降ろされた。

 そしてその本人は歩きたくないのでランドルフにおんぶしてもらうことをせがんでいる。


 「私も旦那様にそんなことしてもらったこと無いのに! 旦那様に背負わせるなら私が背負います!」

 「む~。お前邪魔」


 実際にはランドルフがアプスを担いだことはあるのだが、そのときは気を失っていた為、本人は覚えていないようだ。

 火花を飛ばす二人を放っておいて、カナンカとランクイロとランドルフが先に昇降機に乗って降りていった。


 「「あっ!」」


 放っておかれたので仕方なく自分で歩く。残りの護衛二人と一緒に降りた。


 「この先が四階層になります。ここを通るとぐるっと回って、また大穴の内円に出ますので、階段を下りると五階層の入り口に着きます」

 「なるほど」


 事前に聞いていたが、大穴の周りに迷路のように洞窟があるんだな~。

 洞窟も滅茶苦茶大きいし、ドラゴンに戻ったカナンカでも余裕で通れるんじゃないか?

 しかも階層の間が分厚いし場所もどんどんずれていく。


 イメージとしてはトイレットペーパーの芯を思い出せばわかるだろうか。

 筒状に線が入って徐々に底の方まで螺旋状に降りて続いている感じだ。

 そして階層の入り口でも商売をしているものや、運び屋を探している人がいないか声を掛け合っている。

 ランドルフも何人かに声を掛けられたが、デンが荷物をたくさん持っているのを見て諦めていった。


 「で、四階層の魔物は何がいるの?」

 「三階層の魔物に加えて、特殊な魔物のヒマシオオトカゲがいる」

 「何それ」

 「体から可燃性の油を発汗して飛ばしてくる。転倒注意」

 「はぁ? よくわからんな」

 「油はそれなりの値段で取引されているらしい」


 パトリーム博士が教えてくれた。


 ひまし油(?)なのに燃えやすいのか……。


 「燃えるなら燃やしてはいかんのか? 火を噴いてもよいのであれば我がやるぞ」

 「だめ。周りに被害が出る。そこらじゅうに油がしみこんでいて、どこが燃えるのかわからない」

 「それは嫌ですね。私の出番が制限されてしまいます」


 火を放てばそこらじゅうが燃えて火達磨になる可能性がある。可燃物注意だ。

 松明の仕様も気をつけなければならない、地味に嫌な相手である。


 なるほど、そのために魔道具で明かりを灯すのか。


 さらに油ですべるため、元々でこぼこした地形に加え歩きにくくなっている。

 流石のダークエルフでも油ですべるような地形は始めてらしい。


 「それに洞窟内で火を燃やせば酸欠にもなるか」

 「酸欠?」

 「息ができなくなるってこと」

 「それは怖いですね」


 今はまだ入り口だから大丈夫かもだが内部では気をつけないといけない。


 「それにしてもアマレット」

 「んえ?」

 「さっきから大人しいけどどうした?」


 最初の内は「暗い! 広い!」などと騒いでいた。


 「別に何も無いけど、少し寒いな~と思って」


 確かに少し肌寒いが……。


 「異変があったらすぐに言うんだぞ」

 「わかった~」


 返事をしてデンの頭の上に着地した。


 「我々が皆さんの後ろを歩きます」

 「頼みます」


 ランクイロが生贄をして先行を、その近くにアプス。

 その後ろにカナンカとランドルフとデン。デンの上に乗ったパトリームとアマレット。

 最後に護衛の二人が後ろを固めてくれた。


 さて、初のダンジョンアタックだ。油断せずに、でも楽しんでいこう!


 槍杖を掲げて全員に向かって声をかけた。


 「それでは行きましょうか!」

 「「「「はい」」」」 「うむ」 「……」 「は~ぃ!」 「うぉふ!」


 まずは四階層を攻略するために歩み始めた。

お読みいただきましてありがとうございます。

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