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79話

後ほどもう一話投稿します。 1/2


 翌朝。

 ランドルフとアプスは慣れたが、酒臭い匂いをさせるカナンカにパトリームが顔をゆがめる。


 「夕べはいつもと違ったおいしい料理を堪能できてよかった。たまには外食というのもよいものじゃな」

 「二日酔いにはなってないか? 酒が抜けてない状態で飛ぶのは勘弁してくれよ? 最悪解毒するからな」

 「大丈夫じゃ。問題ないぞ」


 こいつの場合、いい加減な感じだけど嘘のようで本当に大丈夫なんだよな~。


 思わず胡乱(うろん)な目でカナンカを見つめてしまう。

 アプスが全員にお茶を振る舞い、堪能しているとノック音が聞こえる。


 「ランドルフ様。起きてらっしゃいますでしょうか?」


 この声はジャカードか。


 「ええ、起きてます。どうぞ」

 「失礼します」


 綺麗に敬礼して挨拶をされる。


 「すみません、野宿してもらって」

 「これも任務の内ですからね」


 気さくに笑って気にするなといった表情をする。


 「それよりも森の街道の様子がおかしいです」

 「厄介事か……」

 「原因はわかりませんが、こう言っては何ですが、よくない勘が働いてどうにも落ち着きません。さっさとこの村を離れたほうが良いかと」

 「でも何か災いだとしたらこの村を見捨てるのはね……」


 せっかくクローイを助けたのに見過ごすのも後味が悪い。


 「しかし、ランドルフ様の任務は迷宮の探索、そして原因の究明、さらには対象の討伐です。そちらを優先されるほうがよろしいかと。いらぬ怪我を負って任務遂行の妨げになったとあれば問題になります」

 「まぁそうかもだけど……」


 正直この面子で何があっても負ける気はしないんだが……。

 ゴブリン退治で似たような経験もしたしな。

 いや、この気持ちは油断か。だが見捨てるのはなしだな。


 「とにかく状況を調べよう。カナンカ、アプスと一緒に上空から偵察を頼む。たまには役に立て」

 「昨日もここまで運んでやったろうが! 十分役にたっとるわい!」

 「いいから行ってきて」

 「カナンカ様、行きましょう。この村に何かあれば後味が悪いです」

 「まぁ、料理もうまかったしな。(やぶさ)かではないぞ」


 お茶を飲み干して早速出て行った。


 「本当に守護竜様をアゴで使われるのですね……。それよりもよろしいので?」

 「何が?」

 「ここはすでにリントゥス伯爵領です。我々が無理にかまわなくてもよいのでは」

 「伯爵に借りが作れるいい機会だよ。迷宮の事に加えてさらに上乗せだね。あなた方には護衛として二仕事を増やしてしまうことになるけど……」

 「それはかまわないのですが、やはり王命を優先されるべきかと」


 やけに食い下がってくるな。


 「王命の優先度と人の命が関わってるかもしれない事件とどっちが大事なの? いや、王命は大事だ。でもそこまで急いでいないし、それこそ伯爵が抑えていればいい話だ。助けられる民を放っておいてまでやれというなら落胆するね。青臭い言い方だけど民あっての王でしょ」

 「それは極論です」

 「極論で結構。これは俺の判断だ。ところで、君の任務はなんだっけ?」


 ランドルフに睨まれながらそう言われてジャカードは口を紡いでしまう。

 彼らの任務はランドルフの任務の補佐であり、その護衛である。

 ランドルフのやり方に口を挟むのが仕事ではない。

 ましてやランドルフを選んだのは王自身だ。

 今回の事は王命の補佐とは関係ないが、護衛の部分は絡んでくる。


 「少し意地悪な言い方をしました」


 無理やり彼らを巻き込んだ形になったことに申し訳なく思う。


 「いえ、出すぎた事を言いました」


 ランドルフの意志と考え方を理解できたためか、納得した顔をしてそれ以上こだわることもなく素直に受け入れた。


 う~む。俺のことを見定めるために言ってきたのだろうか?

 俺の独りよがりとか思われてるだろうかね?

 でも、すでに人を助けておいて今さら言ってくるってのがおかしいよね。

 はぁ……。どうもジュレップという人の例があると疑ってかかってしまうな。

 ってか俺こんなんばっかだな。


 「ジオラスさんは外?」

 「はい。デンと一緒に外で待機しています」

 「偵察が戻ってくるまでいつでも戦えるように準備していてください。状況にもよりますが、万が一戦闘ならこちらから打って出て村に被害が出ないようにします」

 「わかりました」


 とりあえずジオラスさんの話も聞いて村長に声をかけておくか。


 宿屋のおばちゃんに挨拶をして、外に出るとクローイがこちらに向かっている姿を見かけた。


 「あ、ランドルフ君。様? メイドさんを連れているから偉い人だと思うんだけど」


 やっぱばれるよな。商人にしても荷馬車も何もないし……。


 「ランドルフで結構ですよ。それで、いかがしました?」

 「あのね、夕べオークのお肉をお父さんに食べてもらったら朝から元気になっちゃって、うるさいのなんのってね。あ、そうじゃなくてお礼に料理のおすそ分けを持ってきたんだ。皆さんで召し上がってね」


 鍋ごと持ってきたのか結構な量がある。


 「ありがとうございます。オークの肉は珍味といわれていますからね」

 「力がみなぎる料理よ。旅の途中なんでしょ? 疲れにくくなるといいんだけど」

 「後で美味しくいただきます」


 鍋ごともらってしまったので、部屋に戻って置いてくる。

 村の外に出た。


 「うぉふ!」


 デンがランドルフを見つけ、近くにやってくる。

 よしよしと頭を撫でて、デンの背中で寝ているアマレットの姿も確認しておく。


 「「おはようございますランドルフ様」」

 「おはようございますジオラスさん、ランクイロ。それで森の様子がおかいしいんですって?」

 「ええ、ざわついているようで静かです。生き物の気配が感じられません」

 「なんていうんでしょう。張り詰めたような空気感があります」

 「ふむ」


 空間把握で辺りを探ってみるが、森と街道があるだで動物の気配が感じられない。


 何もいない……ってのは確かにおかしいな。

 あれ? そういえば賊たちは?


 「情報を聞きだした後処分しましたよ」

 「ふむ。二人は有益な情報を何か得られた?」

 「残念ながら詳しいことはわからないようでした」

 「そうですか……」


 アプスにやってもらうつもりだったが……まぁいいか。


 その時、空からアプスが降ってきて、遅れてかなんかも降りてきた。


 「旦那様。オークの群れがこちらにやってきています」

 「はぁ? なんでまた突然……でもないのか。数は?」

 「100はいるかと」

 「ふむ」


 きっとクローイからもらった部屋においてきた鍋の中身が原因だろうと考えた。


 群れでやってくるほどって、どんな狩り方をしたんだろ。


 「村を囲みに来てる感じ?」

 「いえ、一直線にこちらに向かってきています」

 「正面から突撃か。じゃあ村に被害が出る前にこちらも打って出よう」

 「クックック。この姿でまともに魔物の集団とやりあうのは初めてじゃから楽しみじゃな」

 「はいはい。頼りにしてるよ」

 「うむ!」


 張り切っているカナンカは放っておいて、村長に事態を知らせにアプスに行って貰う。

 宿にいるパトリームにも声を掛けてもらって、村を守ってもらうようにと伝言も頼む。

 万が一のために村を封鎖して侵入を防ぐのだ。


 「オークですか。空の生き物でないだけマシですけど……うぅ、緊張するなー」


 ランクイロはエスドゴと共に島の周辺の巡回に何度も行っている。

 そのときに魔物とも戦ったことはあった。

 だが、人魚族を救出する際に怪我を負ったことがあったので、今度はそうならないようにと思っているようだ。


 「護衛のお二人には巻き込んでしまって申し訳ないですが」

 「いいえ、これも仕事の内です。それに民を守るのも騎士の務め」

 「その通りです!」


 ジャカードさん、さっきうんたらかんたら言ってたじゃんよ!

 何かっこつけたこと言ってんの!

 やっぱり試されていたんだな……王様の仕業に違いない。

 まあ今はいい。


 「じゃあ俺が全員を空から運ぶんで、ど真ん中にでも下りて強襲しますか」

 「思い切りのいい作戦で結構じゃな!」

 「普通ならそんなのは無謀もいいところなのですが……守護竜様がおられるのであれば」

 「何とかなってしまうところが容易に想像できてしまいますね」


 二人も無謀だといいながらもやる気のようだ。


 くそぉ。やはりカリスマではカナンカには勝てないのか……。


 そわそわし始めるランクイロに対し、デンはいつものごとくあくびをしてまったく緊張感がない。


 「むぇ~。な~に? 皆どうしたの?」


 アマレットが起きたようだ。


 「魔物の集団が迫ってきてるから退治しようって話てたんだよ」

 「え!? まずいじゃん!」

 「空から攻めるけど、アマレットはどうする? 宿で大人しく待ってる?」

 「ん~。ただ待ってても暇だし~、あたしも一緒に行く~。デンと一緒にいれば大丈夫でしょ」

 「まぁ、そうだろうけど……」


 意外とこいつも肝が太いな。


 「じゃあ、デンの頭の上で大人しくいててくれ。フラフラとどっかに行くなよ?」

 「は~ぃ!」


 いい返事だ。


 アプスが戻ってくるのを待っている間に準備運動をしていると、村長と思わしき人物と一緒に帰ってきた。


 「こちらの方がプレイリー子爵です」

 「どうも、村長」


 貴族の証を見せる。

 ある程度アプスから事情は聞いていたが、ランドルフが本当に貴族であるとわかると協力を申し出てくれた。


 「村を封鎖してもらって万が一に備えてください。これから我々は退治しに打って出ます」

 「しかし、いくら貴族様とはいえこの少ない人数でオークの集団を相手にするなどと……」

 「あ~、こう見えて私は末席ですが宮廷魔法士なのです」

 「ほほう」


 ランドルフをじっと見て感心したような声を漏らす村長。

 いや、近くにいるデンの事も見たからだろうか、大丈夫そうだと判断したようだ。


 「視線に気になる部分がありますが、今宿に宮廷魔法士第二席の方がいますので、その方には村の守りはお任せしようと思っています」

 「おお! それはなんとも心強い!」


 その言葉を聞いて安心そうな顔をする。

 一応近くの街に応援を頼んで置くようにお願いした。


 「ってことで行って参りますので。アプス、パトリームは?」

 「わかったと言っていました」

 「そうか。じゃあ出発しよう」

 「頼みましたぞ!」


 村長の言葉を背に飛び立った。





お読みいただきましてありがとうございます。

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