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7話

 砦に船長たちを招いて、ささやかだがおもてなしをするために外で鍋料理を作った。人数が多いので大きい土鍋を作り、具を掘り込んで煮たした。


 お酒は船員達が船から持ってきており、乾杯し各々が楽しみ始めた。俺は酒が飲めない。


 子供だしな!!


 デンも肉にかぶり付いて食べている。船員たちもちゃんと躾けられているデンには慣れたようだ。

 船長にいろいろ話を聞いて回ることにした。


 「船長の国はどんなところなんです?」

 「小さな国々はあるが、俺たちの国は世界の東にある大陸の中で、四大国と言われる内のひとつでな。名をレスタイト王国という。大陸の西側を大きく縦に切り取った形の国だな」


 船長は地面に指で形を書きながら簡単に説明してくれた。

 逆三角形の西側を半分近く切り残り半分の東側を三等分した。


 「一番大きいじゃないですか、すごいですね。どのあたりから来たんです?」

 「もともとは上のこの辺りから来たんだ。そこから陸沿いに南下して、いったんここにある街に荷物を届けてから、海流に乗って北上して帰るところだったんだ。海流ってわかるか?陸沿いに南に、外側は北に向かう海の流れのことなんだが」

 「ええ大丈夫です、わかります。その帰りに海流から外に外れたところこの島を発見したと?」

 「ああ、恐らくそんなに大きく外れてないだろうがな。辺境伯の兵士共が余計なことをしやがったおかげでな。だが、島を見つけられたのは幸運だった」


 行きより帰りはずっと長く海を漂う事になるので、海に慣れてない兵士たちのフラストレーションが溜まり、騒ぎ出して暴れたり喧嘩になったり大変だったようだ。

 船長の愚痴とイライラが静まってきた頃に他の質問をした。


 「他にはなにかないです?国の特徴とか」

 「基本的に豊かな国だ。見ての通り海に面しているから漁業は盛んだな。内陸は穀倉地帯がある。山からいい水が流れてくるんだ。北のほうは工業が盛んだな」

 「冒険者はいます?」

 「冒険者?」

 「はい、魔物とかを倒して素材を売ったり。薬草集めて売ったりとかする人たちです」

 「あん?狩人のことか?傭兵どもか?彼らは確かにそういうことをするのが仕事だが、違いは魔物を相手にするか戦争に参加して人を相手にするかだな。基本的にどっちも魔物を相手にするのは違いない」


 なるほど冒険者ないのか~。でも似たようなのはあるんだな。


 「国の南側は森は深く山は険しくてな、洞窟に巣くうやっかいな魔物達もいる。強い魔物が多いから珍しい素材目当てに行く奴は多い。まっ、帰ってこない奴も多いが……」


 ダンジョンとかかな?そういう場所ってやっぱりあるんだな~。


 「魔物の素材は商人たちの組合がいくつかあってそこに売りにいく。そこで出回らない素材などは依頼が出されていたりするな」


 あ、そういうのはあるのね。しかし聞いてる限り安定して物が供給されるシステムではないような……。

 魔物の牧場とかはないのかな?近くに来たデンの頭をなでながらさらに話を聞く。


 「船長の冒険譚とかないです?海の話を聞かせてくださいっ!!」

 「ん~、そうだな……。半年ほど前、航海中に海が荒れたときがあってな。そのときに飛び太刀魚が大量に―――」


 その話は盛り上がり、船員たちもこちらの話を聞きながらそれを肴にして酒を飲み、夜も更けていった。


 魔法のこととかもっと聞きたかったんだけど……焦ることはないか。

 海の魔物は恐ろしい奴だらけってことがわかっただけでも収穫だ。

 だが、ゴブリン村を訪ねるために備えていたものを全部だしてしまった。また備えないとな。


 砦にも部屋はいくつか作ってはいたが足りず、簡単に土魔法で寝床を提供したり、その後の後片付けをしてその日は寝た。




 翌朝、朝風呂に入り、すっきりしたあと船長に挨拶をする。すでに船員は数人を残し、船に戻っていった後らしく副船長であろう人と二人で話をしていた。


 「おはようございます。今日はどうされます?」

 「ああ、おはよう。兵士共を起こして山に狩りに行かせる。奴らも鬱憤が溜まってそうだし久しぶりの陸地だ。食料をとってきてくるぐらいの働きはさせないとな。いるんだろ?獲物は」

 「鹿やイノシシがいますね。たまに怪しい鳥もあらわれますが……大丈夫でしょう。畑があるんですが、荒らさなければ好きに狩っていただいてかまいません」


 昨日簡単に書いた地図を見ながら話をする。


 「この場所以外に拠点は作っていないのか?」

 「ええ、前にも話ましたが、この島には私しか住んでいないと思われます。なので作る必要もないのかな~と」

 「今後の調査しだいだが、この島にもしめぼしい物があったら人が出入りするようになるかもしれない。そうでなくても人は来るだろう。のんびり暮らしてたボウズには迷惑かもしれないが」

 「いいえ!とんでもない!むしろ一人ぼっちで右も左もわからず困っていたところですっ!!」


 むしろどんどん来てほしい。土地はあまりまくってる。でもこういうのってよからぬ人物がやってきて「この島はいただく!!」とかはありそうだな。


 「でも一応この島は私の島ということで、そのあたりはお偉いさんには言っていただくように配慮してください」

 「あぁ、わかってる。無理やり奪い取ろうなんて思っちゃいないさ。あんな魔法を使う奴とまともにやりあうなんてごめんだ。上陸する前に船が沈められちまう。」


 そ、そんなにすごかったのか?あれくらいできる魔法使いはいないのだろうか?その辺も聞いてみないと。


 「あれくらいできる魔法使いはいないのですか?」

 「いることはいる。が、そんなに多くはないのは確かだ。詳しくはうちの魔法使いと話をしてみな」


 そりゃいるよね。よかった俺だけじゃなくて。


 「ありがとうございます。船長はどのくらい滞在する予定で?」

 「今日の成果しだいだろう。ボウズにもいくつか頼むかもしれん」

 「ええ、かまいません。そのかわりもっといろんな話を聞かせてください」

 「ああいいぞ」

 「船長、そろそろ……」

 「わかった。じゃあなボウズ、また夜になったらくるよ」

 「はい。お気をつけて」


 そういって残りのみんなも出て行った。


 その間にこちらは海の幸をゲットする。大所帯なので食糧確保も一苦労どころではない。畑を広げたり森に行って果実なども手に入れる。

 寝床も即席じゃなくもう少しちゃんと整え、広場も整地する。

 さらに次の日から船長をデンに乗せて一緒に島を探索したり、木を切って教えてもらいながら加工する作業する。

 他にもいろいろな魔法の話や他の大陸の話、貨幣、常識などを教えてもらったり楽しい日々を過ごした。


 いろいろわかったことがある。まず、ガソリンなどではなく魔力をエネルギーとした飛空挺がある。魔石に魔力を溜めて動かすバッテリーみたいな感じだ。

 二日ほどしか持たないらしいが、領内を結構な速さで行き来することができる。空の航路を外れると魔物に襲われることもしばしばあるらしい。


 船長の乗ってきたガレオン船はその動力は積んでないらしく、自然の風と魔法使いが風を起こして帆に当てて移動させるものらしい。魔法使いの腕によって速さは違うとか。


 鉄とミスリルの素材で囲ってできた重そうな船なのに、帆船で早いとかよくわからん。人と自然のハイブリッドはすごいな~。


 貨幣は金貨・銀貨・銅貨・鉄貨を使った硬貨がある。日本円で大体、10万・1万・千・百といった感じだと思う。

 見た目の大きさは、百円玉・五百円玉・五百円玉・十円玉だ。含有量はわからない。

 一般家庭の月給は金貨一枚分だそうだ。今回のお礼として金貨10枚をくれた。

 一般家庭の10ヵ月分だが相場として多いのか少ないのかわからん。でもありがたくいただいておく。いろいろと教えてもらってるしね。


 種族も、人族・エルフ・ドワーフ・獣人族・龍人族・魔族・妖精などもいるらしい。


 ぜひともあってみたいっ!!


 中でも魔族は大きい括りらしい。話ができる知能があるのは魔族ということらしいが定義があいまいであまりいい印象をもたれていないらしい。

 たとえばエルフでも、ダークエルフやアマゾネスなど住むところによって変わってきたりするものだとか。


 魔法も教えてもらったが俺の魔法はちょっとよくわからないらしい。なんとなくできるんだからそれでいいじゃない?といった感じで、あまりちゃんと理解して使ってない人が多い。

 魔力はすべて物がもっているが、少し根性論っぽいところがあって、種族や環境などの生まれによって魔力量は違うが、ある程度鍛えて増やすことができる。だが中には生まれつき持ってない人もいるとか。


 魔法使いになりたい人もそうでない人も、魔法の危険性を教育されながら、日々倒れるまで魔法を使いまくるという過酷なトレーニングをするとか。

 その中でうまく扱える人は、なんとなく科学的なものを理解していて、今教えてもらってる魔法使いの人もそうだが、理解が深まると上手に発生させることができると考えている。経験によるところが大きいようだ。そういう考えができる人が魔法使いになるのだとか。

 このあたりは俺の予想と一緒だ。もっと知りたいなら様々な研究が行われている大学に行けといわれた。あとお前は杖もなしに使い方が上手なのもあるが、もっている魔力量が一番おかしいといわれた。


 魔力を感じることは、魔法使いなら誰でもできるらしい。うまく悟られないようにする方法も教えてもらった。

 自分を包み込む鎧を意識するのだとか。それを自然にできるように練習だ。

 今まで特に気にしていなかったが、人に触れる機会も多くなるなら習得しておいてそんはないだろう。

他にも精霊はいるのかとか、召喚魔法や文字を書いて発動するタイプの魔法、魔道具、杖のことなど色々教えてほしかったが、時間も多く取れないので簡単な説明だけしてもらった。





 一週間充実した日々をすごし。予定を少し過ぎたが、とうとう船長たちが帰ることとなった。


 「色々と世話になったな、ありがとよボウズ」

 「こちらこそ色々といいお話が聞けました。島のこと良いようにお願いします」

 「うまくやってはみるがな、俺にはそこまで偉い権限はないんだ。あまり期待しないでくれ」

 「十分です。ありがとうございました」


 そういって船長たちは帰った。


 「よし、人が来るなら島の環境を住みやすく整えないとな!」

 「ウォフッ!!」

名前を決めたのに名前で呼んでもらえない主人公。


お読みいただきましてありがとうございます。

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