6話
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ゴブリン村に行くって?そんなフラグ立てるから~
その日はストレッチと走りこみを終え、ゴブリン村までデンを連れて行くためにデンを空中に浮かせて移動する練習をしていた。
ぶっつけ本番でうっかり落としてしまったらしゃれにならないからな。
途中で休憩していると、遠くに船の形をしたものが見えた。遠見で確認してみると立派な船が漂っていた。
黒船か!?
「デンッ、人が乗っているかもしれないぞっ!!見に行こう!!」
「うぉふ!!」
警戒されて弓矢を射掛けられても困るのでゆっくりと慎重にいく……かと思ったが、とにかく話をしてみたいのでさっさと乗り込む作戦にする。
「高所から一気に甲板に着地しよう」
近くまできてみるとかなり大きな船だ。
ガレオン船ってやつかな?
黒船なら蒸気船だが煙突は見えない。デンに乗ったままスタッっといきなり着地する。
上陸準備をしていたのだろうか、作業員に気づかれた。
「だ、誰だっ!?どこからきたっ!?」
おっ、言葉がわかるのか、ありがたい。ゴブリンの言葉もわかるのかな~?
「あの島から飛んできました~」
「ふざけてんのか!?」 「物見はどこを見ていたっ!!」 「誰か船長呼んで来いっ!!」
わかっていたが、取り囲まれてしまった。みんな剣やナイフを持って警戒している。
デンもうなりながら威嚇し、角からパチパチと音がしている。
人の見た目は様々だ。
人間はもちろんだがあれはドワーフか?ひげもじゃのちっこいおっさんがいるな。
あっちはなんだろう?リザードマン?うっすらと腕にうろこのようなものが見て取れる。
しかし見事に男ばかりだ。
まぁいい、先に挨拶だ。
デンから降りて挨拶をする。
「こんにちは。いきなり乗り込んで失礼しました。こちらには何しにきたんです?」
「てめぇ……なにもんだ?」
「質問しているのはこっちですけど~」
「おいっ!!他に仲間はいるのか!?」
こっちの質問を無視しててリーダーっぽい男が周りに尋ねる。
「他には船もなにもありませんっ!!」
「単独できたのかっ!?度胸のあるやつだな。いや……、まさか雷狼か?なんてやっかいな……」
男はデンに警戒しながら隙を見せずにらんでくる。
デンって雷狼って種類なんだ?そのまんまだな~、かっこいいけど。
それよりもだ、男に長い間見つめられてもうれしくない。
「勝手に乗り込んだのは詫びますが。こちらはそっちが何をしにきたのか確認したいだけです。危害を加えるつもりはありません。そちらが攻撃してこなければですが……ね。教えていただけませんか?」
そのとき囲みが割れてガタイのいい日に焼けて、背の高い帽子をかぶった中年男が現れた。
「こいつが空から降ってきた奴か?一人なのか?へぇ~」
そういいながらこちらの様子を睨むように見定める。
「見慣れない服を着ているな。ボウズ、あの島から来たといったか?」
「はい、島からきました。あなたが船長?」
「島か……。船長のザンテだ。ボウズの名前は?」
名前……か。自分の名前名乗ったことないからすっかり忘れてた。名前何にしよう。草原にいて……島だから……島草?ステップ……アイランド……ステランド?もうちょっとこう……。
「名乗れねぇのか?」
「名前がわからないもんで、なんて名乗ろうかと」
「名前がわからないって……おめぇな~」
「ちょっと待ってって、今考えるからっ!!」
ええい、なんかいい名前はないか?
デンをチラッと見て思った。
島と狼でランドルフでいいか。知らん、テキトーだっ!!
「ランドルフに決めました。ってことでよろしくお願いします。こっちの雷狼はデンです」
「……そうか」
船長は胡散臭い目でこちらを見ながら話を続けた。
「で、ランドルフは俺たちが何をしにきたかってことだが……。船の性能を確かめるついでに海洋探査してたら予定していた航路を外れてしまってな。そしたら地図にない島を発見したんでな。確認したかったんだ。」
「海洋調査ですか?魔物が出る海で?すごいですね~」
「最新鋭の船でな。辺境伯様と商人との共同で作った鉄とミスリル銀を使った船だ。そう簡単には沈まねぇよ」
「船長!?」
ミスリル!?やっぱりあるのかっ!!でもこの船は表面はゴツゴツとして重そうで速そうには見えない。
帆船みたいだし、魔物から逃げ切れるのか?
「なるほど、うまくいけば一儲けできるかもってことですか。しかし分の悪い賭けじゃないですか?兵士の様な方もおられないようですし?」
「兵士共は軟弱でな、みんな中でくたばってる。分の悪い賭けかどうかは俺たちはわからん。船の性能を試せたらそれでいい。海洋調査はついでだ。」
船の事情はよくわからんが、兵士なのに軟弱って辺境伯なんだからそれはまずいのでは?もしかすると商人の船にあとから無理やりねじ込んできっといったところだろうか?
「船長っ!!ちょっとしゃべりすぎですぜっ!!」
「この程度なら大丈夫だろうよ。それに先に友好的にしておけばこの島のことも教えてくれるだろう?なぁ、ボウズ。今度はこっちの質問だ」
船長がそういうと周りはじっとこちらを睨みつけて威嚇してくる。有無を言わさずしゃべれってことか。
「ガルゥー!!」
負けじと威嚇するデンを撫でて気を静めながら返答する。
「何が知りたいんです?」
「まず、島の規模だな。どれくらい人が住んでて街の大きさはどれくらいかとか、わかる範囲でいいから教えてくれ」
「えっと、島の大きさはどう表現していいのかわかりませんが結構大きいです。基本山に囲まれて西側には森と湖が、真ん中は草原で今いるここは島の南東ですね。人は恐らく私だけしか住んでませんので街はありません。森には小鬼の村がありますが……」
「あそこに見えるのは街じゃないのか?……ちょっと上陸してもいいか?調べてみたいし、できれば食料を分けてほしい。まだ余裕はあるが腐ってしまったものもあるんでな。帰り道も大体検討はついているが万が一もある」
「あれは砦です。私とこのデンしか住んでません。食料は山菜と魚と鹿肉を干したものぐらいしかありませんがいいですか?水は大丈夫です?」
「すまないな、対価は払う。水は魔道具や魔法使いがいるから心配はない。」
魔道具!!そういうのあるんだな~。しかし上陸か。港なんて造ってないぞ……。しょうがない。
「上陸は港がないので停泊できる場所を造りますね?」
「造るっておぃおぃ、無理なら座礁しないところから小船で降りるから大丈夫だぞ?時間はかかるが」
何を言ってるんだ?というような目でこちらを見てくる。
「まぁまぁせっかくですし、船をあの岩山の近くに近づけてください。あそこの水深は深いはずです。先に行って待ってますねっ!!」
俺はデンに乗り空を飛んで岩山に向かうことにした。
「あ、おぃ!!しゃーねぇ、魔法使い乗せて小船先行させろっ!!底に気をつけながら岩山に向かうぞっ!!」
船長は水先案内人を行かせ、上陸準備をし始めた。
俺は初めて人に会って浮かれていた。外のことを知るチャンスだ、逃したくない。快く迎えてあげないとっ!!
周りに魔物がいないか、そして深さも調べる。出っ張った絶壁があるので、これをL字に空間魔法で切り取る。
これだけでも十分に埠頭の役割を果たしていると思うが、念のため切り取った岩を魔法で浮かせ、削って形を整えて端に貼り付け、土魔法で固めた。
砂浜を削って造ってもいいが、景観を壊したくなかったために無理やり作ってしまった形になった。
すると様子を探りにきた小船が近づいてきた。
「埠頭はこんな感じでいいですか?水深大丈夫ですかね?」
「あ、あぁ……。信じられん……」
ん?埠頭がめずらしいのか?世界、国の常識がよくわからないからな~。
「そんなにすごいです?」
「あ、あぁ……。普通はあんなに大きく岩を切るなんてことは大変なことなはずなんだが、それよりもその後の岩を持ち上げてゆっくりと海に沈めたことだ……。君は楽に岩を浮かせて加工しただろう?あの大きさを動かすなんてやったらすぐにぶっ倒れてしまうのが普通だと思うんだが……。そもそも動かせないだろう……。その上あんなにあっさりと加工なんてとても……」
って魔法の事かぃ!!まぁ、別に誰が困るわけでもないしいいだろう。やってしまったんだし、過ぎたことは気にしないことにする!!
少し距離はあるが飛びながら簡単な少し広い道を、砦の家まで作った。それから船長のところに戻り伝えにいった。
「船長っ!!埠頭を造りましたんで、あそこに泊めてください!!」
「ボウズ……おめぇ……。まぁ今はいい、野郎共ッ!!しっかりやれよっ!!」
「「「へ、へぃ!!」」」
こうして我が家に初めてお客が来たのである。
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