46話 閑話 隣国の思惑
前回は会話が無かったので今回は会話を多くしてみた。
少し短いかも。
~ルガガルナ帝国~
レスタイト王国の北東に位置する国だ。南北を山に挟まれ、寒く険しく人が住むには厳しい国だ。
質素で頑丈な造りを思わせる部屋で男が二人話をしていた。
「レスタイトの守護竜とやらは実在したのか?」
「はい。偵察に向かわせた者の話ですと、銀色に輝く竜だったそうです」
「本当に存在したのか……、こんなときに厄介な。せっかくパブチスカ王国を攻め取れると思ったのだがな」
「国から脱出している民衆による被害を理由に奪い取れればよかったのですが……」
パブチスカ王国から逃げ出した人々は北にも逃げてきた。我が国にも難民がやってきている。こんな寒い北国に来ても何も無いというのに。
それを抑えきれないパブチスカ王国に、被害に対する保障やあれこれ無理なことを言って難癖をつけ、戦争を吹っかけるつもりであった。
「奪い取っても飛び地になるが、あそこは肥えた土地だ。植民地にして食料を手に入れられればよかったのだが……」
「仕方ありません。まだまだ疫病被害や復興で時間がかかりましょう。今手に入れても荒れているだけです」
「そんなことは分かっている」
「同盟国のレスタイト王国も黙ってはいないでしょう。そうなれば文字通り泥沼と化してしまいます」
「だがやつらは南西の復興に力を貸している。西側からなら東に来るには、土地も荒れているし時間がかかるはずだ。その間に被害の少ない国の北東部にある首都を押さえて切り離せばいけただろうに。レスタイト王国めっ!!」
拳を握り締め、わなわなと震える男。
「東半分だけでも取れれば我が国の食糧事情は改善できたことは確かでしょう」
「竜に出てこられたらあっという間に飛んで東へやってこれる。あきらめるしかないのか……」
「他国まで来るとは思えませんが、万が一竜がやってくる可能性も考慮しなければなりません」
その言葉に顔まで歪んで怒りをあらわにする。
飛空挺をすべて戦艦に改造して抵抗すればいけるかもしれないが、竜相手にそれは分が悪すぎる賭けだ。落とされる未来しか予想できない、金をどぶに捨てる行為だ。
ルガガルナ帝国とパブチスカ王国の間にあるミブクスレンド共和国は少々野蛮な国だが、外側には興味が薄い。外からの攻撃から守るために共和国と名乗っているが、内部はギスギスしているので放って置いてもいいだろう。
「守護竜はどの程度の強さかわかるのか?倒せるなら倒してしまえば国の活気も落ちよう」
「ただでさえ強大な国です。確かに倒してしまえば兵士達の士気は落ちるかもしれませんが、一枚岩ではありません」
「その岩が二枚にも三枚にも増えてしまったのだ」
「それが必ずしも良いこととは思いませんが……」
「何か弱点とかはないのか?」
「私もそのことを気になったので世界各地の竜にまつわる伝説を調べてきました」
男は資料を取り出して、竜について書いてあるページを探す。書いてあることはそう多くはなかった。
「南の大陸に住む黄金に輝く竜の話です」
「ハムシンカム教国か?」
「はい」
「砂漠と家畜と牧草地帯しかない国にそんなのがあったのか?いや、確か国教として国全体で崇めているのは――」
「そう、竜です。土地を巡る争いで、大昔そこに住む人々が怒りをかってしまい、大陸の一部が削り取られて分かれ、本来は王都があった場所が大きな島になって孤立しまったとか」
「……今回の事もある、その竜が実在したらどうしようもないな」
「分かれた島に残る伝説です。砂漠もそのとき大きくなったとか」
「地形が変わる処の話ではないな……。その後にも尾を引くのか……」
思わず息を呑んだ。もしレスタイト王国に現れた守護竜も同じ力を持っていたとすれば……。考えたくも無い。
「余計な手出しをして我々がその二の舞にならんとも限らん……」
「その後、元々争いを良しとしなかった人々が供物を捧げて怒りを沈め、その生き延びた人たちが今の教国を造ったそうです」
「そんな話だったな。首都も移したんだったか」
うまみの無い国ゆえに興味が薄かったが、おぼろげに思い出してきた。
「はい。それと、レスタイトの守護竜ですが、人語を話したと報告があります」
「話の出来る竜だと?聞いたことがない。あいつらはただの爬虫類じゃなかったのか?」
「守護竜が特別なのかどうかはわかりません。獣人と獣を一緒にすれば非難されるのと同じことでは?教国は供物を捧げたとありますが、話をして和解した可能性もあります」
「だがこっちは話をしても懐柔は無理そうだがな」
思わずため息が出る。人語を話す知能があるとなるとますます危険性が増す。誰かによって手なずけられていたなら、その人物を脅しでもすればと考える。だが竜そのものが考えて行動するとなると、何をされるかわからない。
「西の海を渡った先にある魔族共の住む大陸にも、すべてを飲み込む黒い竜の噂は聞いたことがありますが、こちらは情報をつかめておりません」
「ふむ、結局詳しいことはわからずか」
顔を手で覆い、どうしたものかと考える。
「レスタイトの迷宮も欲しいが……、レスタイトをこのまま増長させるわけには……、はぁ……」
「もはや打つ手なしです。下手に手を出せばこちらが滅びる可能性まで出てきました」
「レスタイトへ攻め込むのも、もはや無理か。どうせなら迷宮だけでも奪えればよかったのだが」
「真に残念です」
迷宮は理由は解明できていないが、無限に魔物がわいて出る。管理が大変だが、食料となる魔物もいるのでそれらを狩れれば食糧事情も少しは改善できるかもしれない。
だがカナンカの出現で意図せずにルガガルナ帝国の思惑は潰え、レスタイト王国とパブチスカ王国は戦争を回避していたのであった。
「何とかできないものか。我が国の食糧事情を改善するのは昔から言い続けられてきたことだ」
食料が少ないから人が増えない。消費も生産性も増えないし、ずっと停滞が続く。もし何かパブチスカ王国のように被害があれば全滅するのは目に見えている。
「そういえばレスタイトに向かわせていた、開発工作員達はどうした?」
「王都で騒ぎを起こして貴族の一人から金貨を奪うのは成功したようです。新たに魔道具を開発し、実験のついでにやったそうですが、うまくやったようで」
「おお、その魔道具があれば何とかなるのではないか?」
「姿を消す魔道具を作り開発に成功したのですが、謎の子供に姿形を把握されたそうです」
姿が消えているのに把握できる?意味が分からず疑問に思った。それが顔に出ていたのか男が答えた。
「本人もどういうことかわからないそうです。周りにいた兵士達にはまったく見えている様子はなかったのに、その子供だけがこちらを捉えていたと」
「ふむ?それは……、その魔道具は結局成功なのか失敗なのか?」
「姿を消すのに成功したのは確かです。捉えられた理由は分かりません」
「その子供だけが例外ということか?」
「そのようです」
「ふむ……、褒美を出しておけ。量産できるなら兵士達に回せばいつか活躍できるかもしれない。レスタイトもあるいは……、いや、蜂の巣を突くのは危険か」
「はい、諜報用として使用するのがよいでしょう」
なかなかうまくいかないものだ。竜に続いて謎の子供とは。落馬させられたところに矢を射掛けられたような心境だ。
「何か景気のいい話はないのか?」
「もう一つ開発に成功した物がございます」
「ほう?」
「魔法式飛行翼です。出力も高く、先ほど申し上げた金貨を奪うのに成功したときに使用したようでして。金貨の入った大きな袋6つと成人一人を運ぶことに成功しました」
「すばらしいではないか。小型でそれだけのものを運べるとは!!」
単純に考えて1000㎏以上は運んでいるのではないかと考えられる。物資の支援投入などに使えるし便利だろう。
「荷を持たなければ機動力もあるようでして、羽を折りたたんで丸まっての急速降下や、丸まったときは矢や魔法を翼が弾くので防御にも使えます。旋回速度もすさまじいものだと報告には書いてあります」
「大変よろしい。が、問題がないわけではないのだろう?」
それだけの代物だ、何か問題があるのに違いなかった。
「はい。まず単純に資金が必要です。材料は色々ございますが、その中の一つに翼には飛竜の革を使用しています。それと扱う者の熟練した操作ですね」
「魔法を弾くのだから飛竜の革は分かるが他の素材も高そうだな。操作に関しては時間がかかるのは分かっている」
「一つ造るのに金貨三千枚はするそうで、開発資金のほとんどが現地で無くなり、金貨を奪ったそうです。素材の一部も奪ったと報告が」
「資金がかかるのは困るが、有用だしな。徐々に数を増やしていくしかないな。勿論だが我が国の工作員の仕業とはばれてないだろうな?」
「そのために姿を消す魔道具を作ったと書いてありますが、後からのこじつけでしょうな」
「ばれてなければいい、好きにやれ。だがもしばれた場合は我が国は一切関知せんぞ」
「そこは徹底して言い聞かせてありますので」
「だといいがな」
今回は守護竜の出現で見送ったが、いずれ技術が進歩すればひねりつぶしてくれる。レスタイトめ、パブチスカを手に入れそこなった報いは受けさせてやる。
お読みいただきましてありがとうございます。
逆恨みじゃないですかやだー
次回から島のお話です。




