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45話 閑話 ジュレップのささやかな苦悩?2

ブックマーク登録ありがとうございます。


もう一話閑話を挟む予定です。



 ジュレップはランドルフが手を振りながら去っていく船を見送っていた。


 「本来は私の仕事じゃなかったんだけどねぇ」


 将来的には跡を継いで、このパンターナ辺境伯領全体をまとめることになるが、彼は現在は辺境伯の騎士達をまとめて指揮する立場である。時には自ら魔物の討伐にも加わる。政治的なことはあまりやったことがなかった。


 島からこの街に着てからの事を思い返していた。







 島から戻り、宰相補佐官であるパティスが先に王都に戻り、陛下に報告することになっていたので、島とランドルフについての報告書を先に渡しておいた。

 その後、ランドルフのところへ仕えたい者がいないか希望を聞くようにと、家令のヘレスへと手紙を書いて送った。ヘレスなら手紙を読めば色々推測して下準備をしてくれるだろう。


 普通ならそれで終わり。後は特に多く追加で報告することも無く、無事に家へ戻り、そこから王都へ向かうだけであった。


 自宅に戻ったときに高速便を使って報告書に対する返事がきていた。その内容は、嘘か真か早く会って確かめたい。それほどの人物ならばますます早くこちらへ引き込まなければならないとの事だった。

 私の報告書を半信半疑だが、どちらかというと信用してくれている。そんな感じの内容だ。

 時間をかけて、じらしたのがよかったのかもしれない。スプモーニは悔しがってくれたようだしな。


 陛下とは何度かお会いしたことがある。王都の軍事学校へ通っていたときに私が首席で卒業し、そのときの陛下と会話する機会があった。それから気に入られたのか、度々呼び出されて質問されている間に冗談を言い合えるほど親しくなれた。


 「お前が将来辺境伯になるならば安心していられるな」


 そう言われたときはとても光栄に思ったものだ。


 だからだろうか、そんな私がおかしな報告書を作ったものだから興味を引いたのであろう。飛空挺まで用意してくださった。


 飛空挺に乗れるとランドルフに言ったときは特に大きな驚きはなく、ただ揺れのひどい馬車に乗らなくてよかったと安堵するほうが大きかったようだ。それよりも飛空挺の事情についてのほうに興味があったようだ。


 我が家へ帰ると、ヘレスが初対面のランドルフに対して厳しい言葉を言っていた。期待していたが覇気の無い子供でがっかりしたのだろうか?

 メイドの事についても馬車から降りて、ヘレスに屋敷に移動する最中に少し聞いたが、希望するメイドがランドルフの事を知りたいというのでお付きにすることを許可した。

 希望したメイドはブルグロットという、若い頃からここで働いてくれている人物だ。腕前としては中堅どころ。経験は豊富である。

 何も彼女じゃなくてもと思うが、新興貴族のところへ行くならそれくらいでないとだめかと思った。我が家としては痛いところではあるが、ヘレスが判断したのだから妥当なところであろう。むしろ納得の人選だ。

 新興貴族であれば、今移れば人がいないので、その家でメイドとして頂点に立てるわけだし、何より彼女自身の希望である。我が家で仕えるのが嫌というわけではなく、挑戦する意欲があるといった感じで大変よろしいことだ。やはり手放すのは惜しい。

 そして彼女はランドルフの事を気に入ったようだ。仁王立ちになってメイドに体を洗わせる子供なのだが……。一人新たに雇わなければ……。






 食事の席で家族を紹介した。妻と娘を魔法の腕前と雷狼をうまく使って懐柔したようで、ランドルフはすぐに仲良くなれた。息子は敵意を隠そうともしていなかったが、それでいい。


私の前で妻を口説くような台詞を平然といいやがって……。


 だが雷狼に乗って庭を駆け回る妻と娘の姿を見れたのはよかった。実に楽しそうにはしゃいでいる。そこはランドルフに感謝しないといけない。

 領内を巡回していると家を空けることが多いのでかまってやれることも少ないが、あの笑顔を見るためなら耐えられる。


 娘のエレインのいい遊び相手になってくれているのはかまわないが、それ以上の関係にはならないようにな。何がとは言わないが、つい手が滑ってしまうかもしれない。


 その辺りは息子のナダンのほうが敏感か。ナダンは一歩引いた性格で私と違って甘えん坊だが、ランドルフのおかげでよい方向へ変わろうとしている。姉を取られると思っているのだろう。負けまいと必死に抵抗して魔法を覚えようとしている。


 いいぞ、もっと怒るんだ。父はお前の成長を応援している。







 そして王都へ出発するために飛空挺へ乗り込んだ。まさかあんなことになるとは思いもしなかった。

 やはりランドルフは普通ではなかった。

 まさか存在するかも怪しいドラゴンを、伝説の守護竜を呼び寄せるとは思いもしなかった。誰も予想なんてできるはずがない。


 突然こちらに向かってきて飛空挺に接近し、並走して攻撃は体当たりだけ。

 まだ何とか平静を保っていた私はおかしいと思った。普通であれば、縄張りに入れば問答無用で炎を吐いて焼き落とすだろう。それをしない……。

 すると、こんな状況にもかかわらずボーっとしていたランドルフがドラゴンから話しかけられているという。

 半信半疑だったが飛空挺をとめて会話することになった。

 圧倒的存在感。見たことも無い銀色に反射して光る体。大きな口からのひと吼えで我々は塵になるであろう。そんな存在が目の前にいる。

 頭の中に声が響いてきた。なんでも御伽噺で聞いたことがある守護竜様だというのだ。

 普通のドラゴンではないと思っていたが伝説の存在。嘘のようだが目の前の銀色に輝く体が有無を言わさずその存在を証明していた。

 何とか存在感から来る精神的威圧に耐えていたが、理解させられてしまうと屈服し自然と跪いていた。


 そんな存在にランドルフは、古く親しい友人のように失礼な発言も平気な顔で話をしていた。

 わけが分からなかった。お前は目の前の存在が恐ろしくないのか。何故そんなに偉そうにできる。何故だ。

 ランドルフが、ドラゴンである自分と同じくらいの魔力を持つのでやってきたと守護竜様は言う。

 私はランドルフという存在が分からなくなった。途中の会話の内容も半分以上が頭に入ってこなかった。

 ランドルフに呼ばれて現実に帰り、混乱が残る中返答すると、思わず配慮の欠けた発言をしてしまった。

 しかしランドルフの一言で許され、そして去って行った。


 そのときはまだ混乱していたと思うが、何とか秘密にするように船員達に言い聞かせたのは、よくやったと後から自分を褒めたほどだ。追加の報告書になんと書こうか頭が痛くなる。今度こそ信じてもらえないかもしれない……。







 それから王都についてもランドルフには驚かされてばかりだ。

 いきなり陛下が自分で実力を確かめるという話をもらったときは驚いた。だがランドルフは体格の良い自分より大きな大人を投げ飛ばしてしまった。

 島でも槍を振り回して、足の運びはうまいと思っていたが、うまく相手の足を引っ掛けて倒したように見えた。

 色々な技を持っていてまだまだ何をするか分からない、底の知れない男だと改めて思った。


 分からないといえば、宰相に島の運営方針について尋ねられたときだ。いつの間にそんな考えを持っていたのだろう?

 本人は咄嗟に思いついたといっていたが、それにしては具体的過ぎるしおかしい。その知識はどこから来るのだろうか?

 紙の作り方や温泉とやらの効能など、調べている様子も無かったし最初から知っていたとしか思えない。

 王様はランドルフの事に元々興味を持たれていたが、益々興味をもたれたようだ。

 そして宮廷魔法士の話になったが、ランドルフの実力を見ていたので特に何も思わなかった。


 その後も陛下から今後の話を詰めつつ、根掘り葉掘り報告書に書いていたことも聞き返された。とにかく常識では測れない、湯水のようにわく知識があるので大事にしたほうがいいとだけは伝えておく。


 陛下はランドルフに対して寛容になった。やる気のなさそうな、だが人当たりのよさもよかったのであろう。基本的に言ったことには従ってくれるし、知識や発想は沸いて出るし、魔法の腕前も想像以上であったようだし、そうなるのも分かる。ドラゴンの友となっても増長しないし野心も持たないのも好印象だ。


 王都を騒がせていた泥棒も捕まえてくれた。ランドルフの実力なら出来るとは思っていた。だが相手は姿の消える魔道具というを使う泥棒達。文字通り見たことも無い事件にも、どこからか来る知識と魔法でうまく乗り越えた。普通ならどうしようもなくお手上げ状態だったので、その評価を陛下には伝えておく。

 その後のダークエルフの存在を従えることになるとは、さすがのランドルフも予想できなかっただろう。運もあるのだろうが、ダークエルフ達にとっては渡りに舟で、助かったと恩を売れたはずだ。

 ランドルフの存在価値はさらに上昇した。ダークエルフをメイドとして教育したいというので了承する。

 最初のうちに恩を売っておいて、見返りを何倍にもなって返してくれる存在になるだろうと考えてはいたが、紙の作り方だけでも儲けは出そうだ。教育内容に少し手を加えて置くように指示をした。


 陛下にランドルフへ渡す船を用意してくれと言われた。人員も必要なので便宜を図ってやれと言われた。陛下が辺境伯から船を買い、それをランドルフへ下賜する形になる。


 さっそく領へ戻ってスプモーニ商会に連絡をとった。

 商船の改造、約束していた移民希望者とまでは行かないが、船乗りの斡旋などをたのむ。紙の作り方をランドルフから聞いたというと、張り切ってやってくれた。やはり根回しは大事だ。お金を使わずに一枚かませてもらうことで、私は何もせずともあがりをもらえるようになった。ランドルフ様様だ。


 守護竜様の存在を国中へと大々的に知らせたときにランドルフも紹介したので、ランドルフの顔も広まることだろう。


 王都で騒ぎになったばかりのランドルフに仕えたい者は多く出てくるであろう。普通に募集すればそこに他国に限らず、自国の間者や欲にまみれた者が紛れ込む可能性がある。寄り親であるパンターナ辺境伯が力にならないといけない。

 そう考えるとやはり我が家からメイドを送るのは正解だった。


 守護竜様が人の姿で現れたと聞かされたときはもはや驚かなかった。これからそういった事は「ランドルフ君だから」で片付けることにする。びっくり箱の存在にいちいち驚いてはいられないのだ。


 ランドルフ自身もやっと一人で色々と動き出したようだ。そのおかげか私がやれることも少なくなってきた。後は自分の力で頑張っていって欲しい。


 守護竜様を国中に知らせたときに私の顔を見られたためか、旧友に呼ばれたので軍事学校へ向かう。

 久しぶりに会った友は教鞭を振るっていた。生徒達へと紹介されて臨時の講師として教壇に立った。


 たまにはこういう時間もいいものだ。そういえば久しぶりにゆっくり出来た気がするな……。主に精神的にだが……。やはり私は体を動かしているほうが合っている。


 それから授業の内容が好評だったためか度々呼ばれることになった。確かに心は安らいだかもしれないが、何度も呼び出されるとさすがに嫌になってくる。そんな時ランドルフが島に帰ると言って来た。


 それを聞いたとき、ようやく机仕事から開放されると思うと同時に、少し寂しさを感じた。私もランドルフに興味を持ちすぎたようだ。

 ランドルフが独り立ちをする。我が家から送ったメイドもいるし、ダークエルフたちもいる。しっかりと周りの意見を聞ける子だから、まだまだ不安が残るが彼ならばやれるだろう。


 帰ると言ってからランドルフはリバーシという新しい遊びを思いついた。何故そんなときに思いつくのか。もう少しがんばらねばと思い、陛下の元へ向かい相談する。宰相様は財政が潤うと喜んでいた。王都での販売のほとんどの事を宰相がやってくれたので、私は参考にして領地に帰ったときに真似をさせてもらおう。……と言ってもスプモーニ商会に任せるだろうが……。


 ダークエルフたちを連れて領地へと帰ってきた。あらかじめ連絡しておいたのでダークエルフたちの達の宿を確保しておく。スプモーニ商会も手伝ってくれた。


 一度帰りはしたが、久しぶりに会った妻と娘は、ランドルフが来るので顔をにこやかにしていた。ランドルフが島に帰るのでまたすぐに会えなくなると言われても、なにかあったのかエレインは前回と違いどこか成長したように雰囲気が変わっていた。

 だがナダンは相変わらず敵意をむき出しだ。魔法の腕前は積極的に参加するようになっていたので上達が著しいといわれた。


 息子達の成長まで影響を与えてくれたランドルフ。紙や遊具等で儲けさせて貰ったし、少しは恩を返したつもりだろうか。

 こちらは貰いすぎている気もするが、そうなるように仕向けていたのだから当たり前といえば当たり前だ。


 だが前にも思ったが、打算などの損得勘定を抜きにして一人の男としても親しくてもいいと思える。むしろそうありたい。本当に不思議な男だ。







 やがて彼の乗る船が遠くに行って小さな点になり、消えて見えなくなったので馬車に乗り込む。


 「まだ魔物を討伐して治安を守ってるほうが楽だったよ。だが、なかなか楽しかった。またね、ランドルフ君」


 今回の事は将来辺境伯として統治するときの練習になったと思えばいい。


 揺れる中思い返して一人つぶやいた。

お時間いただきましてありがとうございます。

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