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44話

お時間いただきましてありがとうございます。


 「ランドルフ様、続きの報告をよろしいでしょうか」

 「はいよ」

 「もう、ランドルフ様、機嫌を直してくださいよ」

 「誰のせいだよ!!」

 「癒して差し上げようとしただけじゃないですか」

 「余計なお世話だっ!!」

 「よろしいでしょうか?」


 エスドゴが報告の続きを話そうとするもアプスの言葉で流された。もう一度確認するエスドゴ。


 「残った二隻の船ですが、牽引して持っていくことは可能です。損傷も少なく、荷を分ければ負担も減るかと」

 「鹵獲できるのか、それは思わぬ収穫だな。乗せてあった荷物の確認はした?」

 「ほぼ終わっております。私達と会う前にひと稼ぎしていたのか、金品が多いようですね」

 「ふむ。島に持って帰っても役に立たないぞ」

 「一部はお屋敷に飾られてはいかがでしょう」

 「まあそうするか」

 「船長!!」


 そのとき船員の一人が報告にやってきた。


 「なに!?」

 「それはまずいね。アプス、ブルグロットに頼んで介抱してあげて」

 「わかりました」


 部屋の中に奴隷が混じっていたのを発見したようだ。獣人の子供と籠に入れられた妖精の二人だ。

 綺麗に身なりを整えて連れてこられた。妖精のほうは籠に入れられたままだ。


 「体は大丈夫なのかい?」

 「はい。このたびは助けていただいてありがとうございます」

 「気味の悪い人間はいなくなったんでしょ!!早くここからだしてよ!!」


 獣人の子供は男の子で、大人しく礼儀正しいようだ。妖精は女性のようで、どこかおてんばな雰囲気がある。


 「妖精族は魔族の一種と認識されてるんだっけ」

 「いえ、その線引きは曖昧ですね」

 「あなたが一番偉い人なのね?子供にしか見えないけど……お願いっ!!ここからだしてよ~」

 「出してもいいけど暴れたり邪魔をしなければいいよ」

 「別にそんなことしないって。珍しいからあちこち飛び回るかもしれないけどね」


 だめじゃん。言った意味を理解しているのかこの子は。


 「このような調子で話が通じているのかどうか分からないので籠のまま連れてきました」

 「大変だったなブルグロット」

 「なにそれ、あたしが馬鹿って事!?訂正しなさいよおばさん!!」


 ピキッ


 一瞬空気が凍った気がした。ブルグロットはがっしり籠を掴んで、今にもぐちゃぐちゃに丸めてしまいそうな雰囲気だ。


 「まぁまぁ、ブルグロット。俺は君の若々しく艶のある耳や尻尾が好きだよ」

 「ランドルフ様はそこばかりですね」


 慰めようとしたがあまり効果はなかったようだ。


 「それで、名前を教えてもらえないかな。私はランドルフ・プレイリー。一応貴族で位は子爵だよ」

 「わ、私はランクイロと申します子爵様」

 「ランドルフでいいよ」

 「私はアマレットだよランドルフッ!!よろしくね!!って事で早く籠から出してよ」


 逆になれなれしいなこの妖精は。


 海の上で逃げ場はないと思うので出してやることにした。


 「う~ん。ひっさびさの外だっ!!」


 甲板の上をビュンビュンと飛び回るアマレット。デンがうっとおしく思ったのか小さな電撃を飛ばし、見事に命中させた。


 「ふぎっ!!」


 確かにうっとおしかったけどさ、電撃はひどくないですかデンさん。小さな妖精に当てるとは、命中率もあがってるようで成長が著しいですな。


 「何するのよこの犬は!!」

 「うぉふ!!」

 「ヒィ!!」


 犬ではないと言いたげなデンはひと吼えする。驚いてランドルフの頭に隠れた。


 「ふむ。小僧、ただの獣人ではないな。おぬしのようなやつを昔見たことがあるぞ」


 カナンカが突然話を切り出した。


 「なんだ?ランクイロの事で何か知っているのか?」

 「うむ。何度も我に挑んできてな、厄介な種族だったと記憶しておる。確か獣に変身できるんじゃったかの」

 「ッ!?」


 言い当てられ当てられたのか驚いた様子を見せるランクイロ。話を聞いてみた。

 秘密にされていたのだが、見た目は普通の獣人と一緒で、カナンカの言うとおり獣に変身できるらしい。

 それが珍しくてどこからか情報が洩れて奴隷狩りにあい、つかまってしまった。両親は抵抗したために殺されたらしい。


 「奴隷狩りとか胸糞悪いな」


 魔族に分類されるようだが、隠していれば違いが分かりにくいので、普通に人間と一緒にされることが多いようだ。


 「はいは~い。次私ね」


 まだ聞いてもいないのに自ら話し出す妖精娘。

 この娘も森で花粉を集めているときに攫われたようだ。


 「ん?それだけ?」

 「そうだよ?」

 「お、おう」


 とにかく二人の首輪をはずして解放する。首輪は特に何かの呪いがあるというわけではないようだ。だが、妖精の首輪はかなり精巧に出来ていた。切って捨てるのももったいないので取っておく。


 「ありがとうございます」

 「ありがとね~」


 涙ぐんでお礼を言うランクイロに対して適当にお礼を言うアマレット。


 「アマレットは何か得意なことはないの?」

 「え?えっとね、魔法は使えるよ。念話が出来るとか~、植物の気持ちが分かるとか?あとこれは秘密なんだけど、あたし精霊とお友達なんだ」

 「秘密を自分でしゃべってどうするよ」

 「あっ……。やっぱり今のなし、忘れてね」


 お茶目にウインクしてごまかそうとする。

 みんなうすうすは感じていたのだろうが確信した。こいつはあほの子だと。


 やはり精霊っているのか。エルフは関わりがありそうだが、そういう話は聞いたことがないな。パトリームはハイエルフだから関係ありそうだがな。


 その後も秘密だと言っていたわりにはボロボロと精霊についてしゃべりだした。普段目に見えない存在で、魔法とは別の力を発揮できる存在だそうだ。契約するのかと聞いたが別にそういうのは無い。友達になれば力を貸してくれるらしい。妖精たちには精霊が見えるのだとか。


 「まぁ妖精は存在そのものが珍しいよね」

 「清らかな水の流れる森の奥深くにしかいないからの~。たまに興味を持って外に出てくるやつもいるがの」

 「そういえば王都の酒場で一人見た記憶があるな。ってカナンカは知っていたのか」

 「うむ、精霊も知っておるぞ。地凱竜が暴れておったせいで、このレスタイトにはほとんどいなくなったがな。海の向こうにはたくさんおったはずじゃ」

 「へぇ~、伊達に歳は食ってないな」

 「最後の一言は余計じゃ!!」

 「まぁまぁ、ほら、杯が空いてるよ。ほらっ」

 「おっと、すまんの」


 空いたグラスにワインを注いでやる。機嫌が一発で直った。


 「あなたよく知っているのね。やけに詳しいじゃない」

 「クックック、無知(・・)とは恐ろしいことじゃの~」

 「なんか喋りが歳よ、うぎゅっ!!」


 しゃべってる途中で体を両手で捕まえて押さえ込む。


 今何言おうとしたっ!!機嫌直したのに、ブルグロットの比じゃない怒りが爆発するぞ!!死にたいのか!!


 「ぷはっ、何するのよ!!」

 「お前は黙ってろ。アプス、こいつに蜂蜜でも与えとけ」

 「わ~ぃ」


 ペロペロと与えられた蜂蜜を手につけて舐めだした。


 「それで、二人とも帰りたいなら出来るだけ希望に添えるようにしたいけどどうする?」

 「いえ、私は帰っても一人なので……、出来ればお仕えできないかと」

 「あたしは戻りたくな~い。こっちにいたほうが色々楽しいそうだし~。ペロペロ」

 「ふむ、分かった。じゃあランクイロは何かやらせて仕えて貰うことにしよう。エスドゴ、任せていいかな?」

 「わかりました」

 「よ、よろしくお願いします」


 エスドゴに任せておけば大丈夫だろう。実直そうな性格だし面倒見もよさそうだと思う。


 「アマレットは……。ん~、扱いはペットでいいか」

 「ペット……ですか?」

 「愛玩動物って意味ね」

 「わかりました」

 「あたし動物じゃないんだけど。ペロペロ」


 手についた蜂蜜をペロペロと舐める姿を見てみんなは思った。ペットで決定だなと。


 「よかったなデン。妹分ができたぞ」

 「うぉふ~ん!!」

 「まっ、何でもいいわ、よろしくね」


 デンの頭に着地し、角を面白そうにペチペチと触っている。

 だがデンは蜂蜜のついた手でべたべたと触ってほしくないようだ。綺麗好きなので迷惑そうにしている。


 「クックック、ランドルフの周りには面白い者達が集まるのぉ~」

 「お前も含めてな」

 「クックック」


 顔を赤くして酔っ払っているドラゴンはどこか楽しそうだ。


 「他には何かある?」

 「いえ、以上です」

 「そっか、ご苦労様。掃除し終えたら一杯やってくれ」

 「ありがとうございます」


 エスドゴは持ち場に戻っていった。ランクイロも付いて行き、ダークエルフのメイドたちも掃除を手伝っている。

 戦った戦士達を労い、ワインを振舞う。カナンカもワインを飲みながら戦いぶりを面白かったと評価していた。その言葉を聴いた戦士たちはグラスを掲げ元気に騒ぎ出した。船内に隠れていた人々も外に出てきて、みんな楽しそうに飲んでいる。

 ブルグロットは夕食の支度と新人達にその指導をしている。


 「デンの毛ってフサフサで気持ちいいのね。決めたわっ!!デンの頭の上はあたしの特等席とする!!」


 アマレットはデンの遊び相手になっているようだ。たぶん。


 やっぱり平和が一番だよね。さて、夕食まで寝ようかな。


 デンの体に横たわり、目を閉じるランドルフ。アプスがニコニコとした顔でその体に布を掛けた。


 三日後、島が見えてきた。なんだかんだあったが、無事島に帰れそうでほっとするランドルフだった。









 「あのガキなかなか面白かったな」


 ガブストンは腕に負った傷を治療しながらつぶやいた。避けたつもりだったが魔法の効果範囲が分からずに負ったものだ。かすった程度だったと思っていたが意外と深い傷だ。

 酒を掛けて消毒し血を拭って針で縫いつける。治療魔法士に治療してもらうまでの応急処置だ。


 「ガブストン。言われたとおりにやったぜ、次はどうする?」

 「一旦帰ろう。奪ったものはいくつか残ってるんだろ?それをまずは換金しようぜ」

 「分かった」


 男は出て行った。


 船長は海に落ちて死んだのか分からず行方不明。リーダー的存在がいないので、殿を勤めてくれたガブストンを船長とした。


 帰る方向は逃げ込んだやつらが分かっていたので何とか帰れそうだな。今はただの用心棒だってのによ。戻ったらちゃんと部下がいるのにな~……。仲間に入るかどうか聞いてみるか。

 ……またあのガキとやりあえるかね~。まだまだ未熟な動きだったがなかなかスジはよかった。それにあの魔法。ケッ、楽しみでしかたねぇ。確かレスタイト王国の旗印が立ってたな……。調べてみれば分かるか。


 ランドルフに一人強敵が増えたのであった。

お読みいただきましてありがとうございます。



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