4話
ゴブリン。それはファンタジーの定番の魔物である。
子供のような体系で顔は醜く肌が緑というのが大体の共通した印象ではないだろうか?
例に漏れず目の前にいるゴブリンもまさにそのような容姿をしている。
う~ん、ゴブリンがいるならスライムもいてほしいな~、怖いけど。
いてもあのねずみ共に喰われてるのかな?
やっぱりここはファンタジーの世界なんだなと改めて実感した。
村を川の反対側の木の上から様子を見ているが、結構な文化があるのではないだろうか?
柵で覆われており、入り口の門番は石でできた斧と槍を持っている。
見張り台もあり、弓を持った奴もいる。火を使う文化もあるようだ。
知能も高そうだが、会話が通じるなら接触して助けを求めたいところではあるが、大体は敵対されて襲われるのが普通である。
どうせ森ならエルフの村だったらよかったのに!!とにかくここを離れるか。
危険がある以上うかつなことはできない。数の暴力は危険である。
魔法をもっと練習して自衛できるくらいになればまたくるか。
とにかく今は人里を探そう。生活に余裕を持って練習できる環境を作らないと。
そう思い歩みを進めてさらに2日ほどすると森を抜けた。
風や火魔法で虫除けしたり、途中でトラのようなもが川で水を飲んでるところに遭遇したり、狼に追いかけられたり、空を飛んで楽しようとしたらでっかい鳥が襲ってきたりなどもあったが、森に逃げ込み、結局川沿いをぴょんぴょん飛び跳ねて移動しなんと無事だった。
森怖い。
森を抜けるとそこはまたしても草原だった。
しかし前回とは違い山も見える。
周りに何もいないのを確認しながら今度こそ空を飛んで川を下ることにした。
さらに3日後、海を見つけた。
「しょっぱい。間違いなく海だな~、人里なんてなかった~」
川を反対方向にいけばまた違ったのかな~?後悔しても遅いか。
わからないんだからしょうがないよね、もうこのあたりに拠点たてて生活するか~。
土魔法で一瞬でプレハブ小屋を作る。
もはや手馴れたものだな~。
土魔法は腕前がどんどん上昇している気がする。
細かい作りにもこだわれるようになってきたし、石の剣や槍も作ってみたり、壁を頑丈にしてみたり、弾丸のように飛ばしてみたりもできた。同じように火や水も飛ばしたりできるようになった。
ここでしばらく魔法の練習でもしてみるか。森では大変だったしな。
それから一月ほど魔法の練習をしまくった。海に向かって竜巻を起こし、雷を落とし魚を取り、火炎放射を放ち、土魔法で小高い丘を作り砦を建設したり、土を耕して森で手に入れた木の実を植えて育ててみたり。
うまくはいかなかったが、木の枝を苗木にしたのは順調だった。
最近はその苗木に魔力を与えるイメージで水をやり育てるのが楽しみになった。
海岸を走りこみ汗だくになったら風呂に入って、さっぱりしたら魔法の練習。風呂に入ってるときに水面に映った自分の顔を見たが、子供だった。10歳くらいだろうか?
俺ってこんな顔だったんだ。目元はキリッとしていて将来はイケメンになるんじゃないだろうか?
ちょっと期待が膨らむな。
山にも登ってみた。といっても500mの高さはありそうだが、そこまでの大きさは感じない。
さらにその奥には岩山がいくつもならんでいる。海岸に沿うような形だ。
そこで木の実を収穫し、育てられそうなものを持って帰って腐葉土と一緒に畑に植えた。
弱酸性の土壌がいいんだっけ?農業なんてわからんけどなっ!!
他にも山菜ができればいい、という安易な気持ちで山の幸を育てるために、山にも小さな畑を作った。
風魔法で木を切り加工して柵を作り、そこを耕して適当に埋めて放置した。
たまに魔力をこめた水を撒きに来ればいいだろう。
できた山菜を魚と一緒に焼いたり煮込んだりして食べるのだっ!!
出汁は昆布である。拾ってきた海草を洗って天日干しにするだけでお手軽楽チン。
それ以外知らないというのもあるが・・・。
人に聞かないとわからないことだらけだ。魔法をもっと練習して移動方法や、自衛の魔法や調節などがうまくなればまた街を探すか。
それから一年ほどたった。
魔法もさらに上達し、山にいる鹿やらイノシシ、岩山にいる鳥などを狩り狩猟にも慣れてきた。
海からわけのわからない二足歩行する、ぬめぬめしたトカゲ生物が出たときにはびっくりしたが、言葉も通じず襲ってきたので電気をあびせて感電死させた。
それよりも草原に狼がいた時は感動した。まさに一匹狼。
この何もない草原でどうやって生き延びてきたのかと疑問に思いながらも近づくと。当然のごとく襲い掛かってきた。
大型犬のような大きさ、爪と牙は鋭く、小さな角が生えていた。放電しているのか小さな音と光がバチバチと聞こえる。……などと考えているとすばやい動きでジグザグに迫り、あっという間に間合いを詰めて体当たりをしてきた。
それをさっと一歩斜め後ろに下がりながら、すれ違いざま回転させながら投げ飛ばす。
背中から地面に叩きつけられた狼はすぐに起き上がりまた突進してきた。タフである。
だが、森で怪鳥に襲われた時の突進スピードに比べたらまだ遅いし、あの時は空中移動になれてなかったからよけて森の中に逃げるのに苦労はしたが、今は地に足が着いてる状態で、体も成長し体力も筋力もついた。
「あたらなければなんてことはないっ!!」
叫んで威嚇してみた。するとまたもや転ばされ、背中を打ちつけた狼はあきらめたのか、そのままお腹を出して万歳状態になりおとなしくなった。
近づいてお腹をなでるとうれしそうに尻尾をふった。何せ何もない草原を生き延びてきた猛者なのだ。
ペットとして飼おうと思った。ぜひそのサバイバル知識を教えてほしいものだ。
「お前に名前をつけてやらないとな~。何がいいだろう?」
「うぉふ?」
こちらの言ってることがわからないのであろうが。コテッとクビをかしげながらこちらを見る姿は反則である。頭を撫でてやる。
角が生えてる狼か~。放電してたように見えたが今はしてないな。威嚇するときに放電するのかな?電気の狼……電狼……デン……。デンでいいか。
「よし、お前の名前はデンだっ!!」
「………?」
また小首をかしげるデン。
名前はぼちぼち覚えさせていこう。エサは鹿の肉とかでいいかな?狼だし肉食だろう。
鹿の繁殖力はすさまじいって聞いたことがあるしな。木の皮を食べて木が腐り禿山になるとか。
草食なんだから草原の草を食べてればいいのに……。
岩山付近の禿山はたぶんそれが原因じゃないか?そんなになるほどいるのなら狩猟しても問題ないかな?草原に狼が今までいなかったし外敵も少なかったことにも原因があるだろうしな。
何より山にある畑をあらされたら困る。前からたまに狩ってはいたがこれからはまめに狩ることにしよう。
こうして新しい仲間が増えたのであった。
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