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36話

評価、ブックマークありがとうございます。


パトリームさんがじっと見つめてくるので、予定はなかったのにこの話を入れてしまった。


 パトリームの後に続いて研究室にはいる。


 「ジー」


 部屋には怪しげな薬品がたくさん置いてあり、紙が散乱していて足の踏み場がない。入ってすぐに振り返りランドルフを見つめるパトリーム。


 「あの、もう日も暮れているので手短に用件を済ませてくれるとありがたいな~?」

 「ジー」


 こっちの話を聞いているのかいないのか……。


 パトリームはランドルフを見つめながら近づいてきた。そしていきなり体をぺたぺたと触り始めた。


 「ちょ、ちょっと!!なにするんですかっ!!」

 「じっとして」

 「何で触るのか教えてください!!」

 「調べてるだけ」


 意味が分からん。何この不思議ちゃん。


 体をぺたぺた触り終えて今度は顔を両手で掴んだ。じっと目を見て頬をぺたぺた触る。


 「……」

 「人の顔と掴みながら無言はやめてください」


 目を見つめながらススッとパトリームの顔が近づいてきた。あわてて手を払い、離れるランドルフ。


 「今何しようとした!?」

 「……接吻」


 何だと!?キスするつもりだったのか!!


 「ちょっと意味わかんないですって!!」

 「触っても体の事がわからなかった。なので内側から分かればと……」


 キスで何が分かるんだっての!!


 「他に方法があるでしょう!!」

 「解剖?」

 「なんでそういう考えになる!!」


 怖い。この人美人だけど怖い。残念美人どころじゃない!!


 「私は帰ります!!」


 そう言って部屋から出て行こうとするランドルフ。逃がさないとばかりにガシッと手を掴まれた。


 意外と力強いぞこの人!!振りほどけないし!!


 「ぐぬっぬ~!!離せ~!!」

 「少しでいい。せめて血だけでもちょうだい」


 ヒィー!!やべぇ!!真顔でそういうこと言うのやめて!!真顔じゃなくてもやめてくれ!!


 「嫌ですって!!貴方怖いからっ!!何されるかわかんないって!!手を離せー!!助けてー!!」


 叫ぶといきなりパッと手を離された。勢いあまってバランスを崩した。


 「いててっ、手首に痣できてるし。どんだけ力強いんだよ」

 「ジー」

 「それはもういいから」

 「貴方はそれだけの魔力を持っていても器が割れることは無い」

 「器って体の事?」


 コクリと頷いた。


 「それが分かれば人は魔法に対して強くなれる」

 「そもそも大人になってから魔力が増えるのは極僅かだって聞きましたけど?」


 大人になっても成長しないわけではない。だが子供の頃に比べるとその成長率は悪い。生まれ持った魔力も種族によって違う。


 「そうじゃない。魔力をそれだけ持ちながら平気だということは。魔力に耐性があると考える」

 「耐性?」

 「そう。魔法を受けてもその威力を和らげる事ができるかもしれない」


 ふむ。つまり内側の魔力の放出を抑えられるなら、外側からに対しても抵抗できると。ありえなくは無い。


 「なので血を」

 「だめ」

 「じゃあ皮膚を」

 「もっとだめ」

 「せめて唾液」

 「気持ち悪いわっ!!」


 も~やだ。早く帰りたい……。


 「あのさ~。もしかしたら普段からばれないように魔力の放出を抑えてるんだけど、それが関係してたりしない?」

 「……あるかも」

 「心臓の近くに魔力を生み出す臓器があるじゃない?」


 コクリッ


 なんて名前の臓器かしらないけど、それくらいは知っていて当然か。


 「それを圧縮して押し固めて、さらに包み込むように放出を抑える様に意識してるの」

 「異常。やはり解剖を」

 「や・め・ろ」


 イメージとしてはダイヤモンドができるように圧縮してそれをアルミホイルで包むとかそんなとこだろうか。


 「すでに臓器が結晶化してたりしてね。なんてな」

 「圧縮……」


 こちらを見たまま一言も話さなくなり、じっとしているパトリーム。疑問に思っているといきなり倒れた。


 「ちょっと!!大丈夫ですか!?」


 返事がない。というか息をしていない。手首を持ち脈を測りながら胸に耳を当て、心臓の音を聞く。


 こいつ馬鹿じゃね!!圧縮と聞いて心臓を止めやがった!!なんという手の込んだ自殺!!


 あわてて電気ショックで心臓を動かす。胸に手を当てて心臓マッサージ。あごを上げて舌が喉につまらないように気道を確保して注意しながら息を吹き込む。


 ゴホゴホッ!!


 「お前馬鹿だろ!!自分で心臓を止める奴なんて初めて見たわっ!!」

 「ポッ」


 目を覚ましたパトリームは、すぐ目の前にランドルフの顔があると分かると頬を赤く染めた。


 「ポッじゃねぇわ!!今貴方心臓止まって死んでたの!!」


 叫ぶランドルフにいきなりパトリームはランドルフの顔を掴み、強引に唇を奪った。


 「んっ、ちゅっ……はむっ……、ぷはぁ」

 「ぷはぁ!!何すんの!!」

 「接吻」

 「そういうことじゃねぇよ!!」


 先ほどからあまりの出来事に思わず口が悪くなっているが、ランドルフは文句を言いたい衝動を抑えられなかった。


 「わからなかったのでもう一度」

 「しねぇっての!!なんで心臓止めた!!いや、理由は大体分かるけどさ」

 「残念」


 もしあのまま死んでたら、俺が殺したと思われても仕方がない。


 「ちょっと圧縮する場所を間違えた」

 「そんなことで死なないでください。もうやるなよ?」

 「大丈夫、覚えた。今圧縮を試している」

 「手遅れだった……」

 「心臓と同じ大きさだったから」

 「二分の一ではずれ引いたのか」


 コクリッ


 だが心臓と同じ大きさって、前に魔物で調べたときは心臓よりかなり小さかったはずだが……、エルフだから魔力も多いしそれが関係してるのかねぇ。もう一つそれより小さいのがあったはずだけど結局それはなんなのかわかってないんだよな。


 「これで私の魔力も多く蓄えられて分かりにくくなる」

 「それはよかったですね!!私は帰ります!!」


 やってられないとばかりにやけくそになって叫ぶ。


 「待って」

 「いいや待たない」

 「助けてくれてありがとう」

 「死なれたらこちらも困るので」

 「お礼に私を好きにしていい」


 またそれか。アプスもそうだけどパトリームもなんか極端すぎる気がするな。エルフの中ではそれが常識なのか?


 「いらないから。危ないことはもうするな」

 「わかった」


 そういってさっさと外に出て扉を閉めた。「あっ」という声が聞こえた気がしたが、足早に城へ戻ることにした。


 ふぅ、寝よう……。今日はもうだめだ衝撃的な一日だった。


 ランドルフは布団に入るとすぐに眠ってしまった。







 それから数日。パトリームになるべく会わないように、気配を消しながら研究所へ行き、紙の出来を確かめに行く。たまにパトリームが来ていたようだが、居ないといって追い払っていた。


 王都の鍛冶屋へ行き、家紋入りのナイフだけ作る許可を得たと伝え、焼きゴテができてるか聞いたが、まだ時間がかかるとの事。

 そのとき王都の様子を見て回ったが、どこもかしこもお触れを見た人達は、カナンカの話題で持ちきりだ。


 組合に行って移住希望者がいないか探そうと思ったが、やめておいた。配下は自分の裁量で好きに決めていいらしいが、今手元にお金がない。支度金はもらえるけど、どれくらいかまだ分からないし、島の開発の為のお金も考えておかなければならない。当分はダークエルフ達にがんばってもらおう。


 そのダークエルフだが、各地に住める土地を探しに行っていた人達が帰ってきた。宿に伝言を残していたので、こちらにいる仲間に会いに来た。ジュレップの屋敷へ行き、メイド修行をしているアプス達に会わせる。アプスの説明が終わるとこちらを向いて跪き「我々も貴方様への忠誠を誓います」と言った。

 合流した彼らに当面の生活費を渡し、紙作りを手伝ってもらうことにした。


 しばらくすると今度は、ダークエルフの族長様がやってきた。事件のあらましを聞いたが、アプスの口から直接話しをさせる。ひたすら感謝の言葉を涙ながらに述べられた。王様への謁見もした。事件は一人は取り逃がしたものの、解決したということで政務室での話となった。


 「この度は私の息子が多大なるご迷惑を」

 「よい。既に捕まえたものはこちらで処分した」

 「ははっ」

 「そなたが責を負う必要はない。どうしてもというならランドルフの為に尽くせ。それが巡ってこの国の為にもなる。ほとんどランドルフが解決したようなものだからな」

 「わかりました。ランドルフ様に全身全霊、お仕えすることをお約束いたします」

 「うむ」


 こうして族長の首を刎ねることなく無事に終えたのである。だが王都でやることがあり、ランドルフはまだ島へ帰るわけには行かないので、先に島へ行ってもらうわけにも行かず、こちらで滞在してもらうことになった。お金が飛んでゆく。紙を作ってもらおう。


 紙の出来もだいぶよくなった。決めた枠よりはみ出た部分を裁断して形も整えられて、厚さもほぼ均一。一月もたってないのにこの腕前はなかなかのものではないだろうか?

 出来た物がたまってきたので、商店に売りに行ってもらう。紙一枚鉄貨五枚だといわれた。一枚500円である。質もばらばらなのに、これにはちょっと驚いた。何枚かまとめて鉄貨一枚かなと思っていたがうれしい誤算だ。原価はほぼただに近いのでぼろ儲けである。そのお金はダークエルフ達にすべて渡し、飲み代にしてもうことにした。


 がんばったのは彼らだからな。


 他にも泥棒たちが持っていた魔道具について聞きたいことがあると呼び出されたり。パトリームから逃げたり、チェルベに呼ばれて遊びに行ったり、またパトリームから逃げたり。


 そんなこんなで、忙しくすごしているうちに、カナンカをつれてくる日がやってきた。

パトリーム:「ジー」


お時間いただきましてありがとうございます。

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