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35話

だいぶ前の事なのですが。活動報告で簡単な地図を載せていますので、興味のある方は見てやってください。


 『と言うわけなんだけど……』

 『なんじゃそれは、我は酒が飲めると言うからいくだけじゃぞ?なぜ見世物にされねばならぬ?』


 念話でカナンカと話しながら、王様と話していた内容をカナンカに伝える。不機嫌な声が返ってきた。


 『お酒はたっぷり飲めるよ。見世物じゃないよ、カナンカの神々しい姿を見せてあげてってだけ。ただこっちに来るときに隠れずに飛ぶだけだから。特に何かするってわけじゃないと思うし』

 『……ふむ。わかった』


 まだちょっと不機嫌そうだが。


 『その代わり我と遊ぶのじゃ!!』


 ……遊ぶって貴方歳いくつよ?何でそうなった。


 『遊ぶって何するの?』

 『我と勝負するのじゃ!!』

 『何の勝負?』

 『我と戦うに決まっておろう?それしかないじゃろうに』


 さも当然の事のように言うカナンカ。


 決まってねぇし!!死んでしまうわっ!!


 『それ遊びって言わないから』

 『しかし、我に挑んできた人間は多かったぞ?』


 まじかよ。どんな時代なんだよそれは。


 『痛いの嫌だしやらないよ~』

 『むぅ~。腕試しだなんだと結構人間が挑んで来おった覚えがあるのじゃが……』

 『ちなみにその人達は?』

 『軽くひねって返り討ちにしてやったわっ!!』


 当時はかなりの人間が、守護竜と言われるカナンカに挑んできたらしい。だがあるときからぱったりと誰も来なくなった。ちなみに死人は出さずに追い返したとか。


 それでどんどん噂を呼んで挑む人が増えたんじゃ……。想像でしかないけど、来なくなったのはこの国を作った人が止めたんじゃないかな~?守護竜だし、無礼なことをするな~とか言ってさ。


 静かになったので眠りに着いたというわけだ。


 『普通は遊ぶって言ったら……。でもドラゴンだし体格あわないしな~。カードゲームとか卓上遊戯もドラゴンの手じゃ大きすぎて持てないし……』


 ワインの入った大樽を、片手でヒョイッと持ち上げて飲むような奴だ。


 『鬼ごっこなんて俺が襲われている様にしか見えないよ』

 『ふむ。いろいろと遊びを知っておるようじゃな』

 『だけどやはり種族というか大きさがね』

 『本格的におぬしの言っておった術を考えようかの……』

 『遊びの為に研究するとか……。でももし小さくなれたり人化できたら、お酒を飲む量も節約できて、もっと味わえるかもね』

 『っ!?なぜもっとそういうことを早う言わんのじゃ!!』


 お、おぅ。えらい食いついたな。そんなにワインが気に入ったのか。


 『さっそく考えてみることにするぞ!!ランドルフよ、礼を言う!!』


 プツリと通信が途切れてしまった。







 今までランドルフがカナンカと別室で一人念話していた。


 「と言うことで、一応は来てくれるみたいです」

 「おぉ、そうか。ではさっそく大々的に知らせることにしよう」


 終わったので部屋に戻り、会話の内容を王様に伝えた。


 「あいつはたぶんずっと暇でしょうけど、日にちは決まったら教えてください」

 「せめて一週間前には連絡することにしよう」

 「そうですね。お酒は多めに用意いておいたほうがいいと思います」


 ワイン気に入ってたみたいだしな。


 「わかった。他には何かないか?」

 「いえ、とくには」

 「日程を調整しなければな」

 「私はこれで失礼します」

 「ご苦労であった」


 部屋を後にして、ジュレップと分かれた。子爵の位を戴いてから、ジュレップはランドルフに付いて回ることは少なくなった。今回は恐らくカナンカの話があるから付いてきたのだろう。

 なので自分で色々とやらなければならない。だが特に何かしなければならないことがあるわけではない。

 本音を言えばさっさと島に戻りたいところではあるが、人材や物資を確保を整えなければならない。ダークエルフ達の人数は100人ほどだと言う。街としては少々少ない人数だ。それに彼らは山で暮らす。


 う~ん。人材確保ってどうするんだろう?さっぱりわからないな~。でも自分で考えていかないと……。やっぱり先にダークエルフ達だけでも島に送ろうか。そのほうが安心も出来るだろうしな。


 考え事をしながら廊下を歩いていると、前からお供を連れた、如何にも身分の高そうな女性が歩いてくる。

 誰だかは知らないが、端に避けて頭を下げる。するとその女性はランドルフの前で止まった。


 「あなた、もしかしてランドルフ子爵?」

 「はっ、先日、身に余る御配慮をいただき、子爵の位を賜りました。ランドルフ・プレイリーと申します」


 突然話しかけられたので、顔を上げて返答する。金髪ロングの柔和な顔をした女性だ。歳は30くらいだろうか?


 「まぁ、やっぱり!!貴方の事は夫からよく聞かされているわ。今日は一人なのね?」


 夫?誰だろ。


 ランドルフが疑問に思っていると女性が答えてくれた。


 「ごめんなさい。私シュタルク・ジャスタ・ルネ・レスタイトの妻。シャンタルよ」


 にっこりとした笑顔でお辞儀をするシャンタル。


 「これはこれは。王妃様とは存じ上げず、真に申し訳ございませぬ。なにとぞご容赦を」


 内心驚いてはいるが、平静を装い跪いて頭を下げる。


 「いいのよ、急に声を掛けた私が悪いわ。それに貴方は貴族になったばかりじゃない」

 「いえ、そのようなことは。私が不出来ゆえに失礼な振る舞いをしてしまいました」

 「そのように堅苦しいことは言わないで。夫に話しているように楽にしてくれていいのよ?」

 「ほんとですか?舌をかみそうで辛かったんですよね」

 「まあ!!」


 ランドルフの変わり身の早さにクスクスと笑いだす王妃。だがお供の侍女と女性騎士には不評のようだ。


 「一度会ってみたかったの。今度二人でゆっくりとお話しましょう」


 それはだめでしょ。二人でなんて、何のために後宮があるのかわからないじゃん。


 王妃のお供達も「なりませんっ!!」と苦言を呈す。


 「二人きりでなければいいじゃない?それランドルフはまだ子供よ?」


 そういう問題なのか?王様と一緒ならいいのかな?まだその辺はよくわからないんだよな~。


 お供達を見ると首を横に振られた。


 だよね。お偉いさんになれば会えるかもしれないけど、子爵じゃちょっと無理でしょ。いや、お偉いさんになっても無理か。


 「ありがたい事なのですが……」

 「……そうね。子供達が貴方の事を知りたがってたから少し話をしてみたかったのだけど……」


 王子と王女か。確か男二人女二人いるんだったか?名前は聞いたことあるけど覚えてないな~。その辺もちゃんと覚えていかないと……。


 「少しわがままを言ったわ。ごめんなさいね」

 「いえ、こちらこそすみません」

 「それじゃ失礼するわね。夫が居るときに一緒にお話しましょう」


 あきらめてなかったんかぃ!!


 王妃様は去っていった。


 う~ん。王妃様に突然声をかけられたから何考えていたか忘れてしまった。まあいいか。


 紙の製作はダークエルフに任せているので、その様子を見に研究所へ向かう。


 せっかくだしチェルベさん所にもいってみよっかな~。


 ランドルフは研究所に向かって歩いていった。







 「おお、おぬしか。入ってくれ」


 急な訪問にも関わらず、チェルベは快く迎え入れてくれた。お弟子さんっぽい人がお茶を淹れてくれる。部屋の中は色々な彫刻や石像が並んでいた。


 「その辺は私の趣味だな。こう見えて芸術もたしなんでいるのだよ」

 「すばらしく精巧な出来ですね。まるで生きてるみたいなものまである。ご自分でお造りに?」

 「うむ。ゴーレム研究について考えながら作っているといつの間にか数が増えすぎてな」


 説得力があるな。あの精巧な石像が動き出したらちょっとしたホラーだ。


 「おぬしの魔法の使い方を知りたくてな」


 チェルベが話を切り出してきた。


 そういわれてもほとんど独学だし、船にいた人に聞きかじったぐらいだからな~。


 こうすればこうなるというのを、理解してイメージすると使いやすいと言う位しか説明できない。簡単にだがそのことを話す。


 「まさか、世界の理を理解しておるのか!?」


 世界の理というか、科学的根拠をなんとなくだけど理解している程度です。学者じゃないんで。


 宮廷魔法士といっても、大学教授みたいなポジションだと言われた。その理とやらを研究して理解することで、優れた魔法を使えるからその地位が与えられているとか。


 でもそれが分かってるならイメージなんて簡単だと思うんだけど……。


 なんでも、実験を行い、成功した結果を見て初めて、そういうことができると理解するそうなので、成功するまではあやふやなイメージしかできないとか。


 そりゃそうかもだけど……。


 あやふやなイメージでは、無理やり実行しようとして魔力が大量に消費されるため、発動できなかったり、倒れてしまったりするそうだ。


 「今は人の動きを研究しておる。見ればその人の形どおりの土人形を作り出せるが、動かすとなれば、何故そうなっているのかを分からないとだめなのだ」


 何日も時間をかけてゆっくりと丁寧に作れば、まったく人と同じ形の土人形を作り出すことはできたそうだ。だが動かすには、筋肉の動きなどを理解しなければならない。ということらしい。


 なんだろ。ロボット工学的な分野の話なのかな。さっぱりわからん。


 チェルベは初めてゴーレムを動かして、力仕事などの様々な作業をさせることに成功したとか。今まで他の魔法使いは、土人形を生み出しても歩かせること事態が困難で、腕を振り回すなどの大雑把なことしかできなかった。それに維持することも難しいとか。そのためゴーレム研究は不人気だそうだ。


 「おぬしもゴーレムを作ってみるといい」

 「色々と思案はあったんですよね」


 ロボットみたいなものなら、魔法の力で無理難題なこともできる!!……と思う。


 「まず簡単な土人形を作ってみてくれ、人型であろうが動物であろうがなんでもかまわん」


 チェルベに教えてもらうことにした。


 実験なのでのっぺりとした何の特徴も無い小さな人形を作る。


 「そしたらまず手を動かすように、命令するように魔力を人形に向かって飛ばすのだ」


 ふむふむ。ラジコンみたいなもんか。ほっ……、こんな感じか?あっ!!


 手を動かすのには成功したが、何度かやっていると土人形の腕が取れてしまった。


 「ぐぬぬぅ~」

 「最初はそんなもんだな。人形の動かし方や強度なども考えねばならぬ。そうなるとちゃんとした人形と作らねばならぬし、魔力も時間もかかる。複雑にしすぎると命令がうまく伝わらなくなるしな」


 意外と難しい。奥が深い。ショベルカーみたいに腕を油圧ピストンで動かして、足はキャタピラにしてみるか。腰も旋回できるようにして……。よし、イメージとしてはそんなものか。


 「細かく出来ているが、変わった形の土人形だな?」

 「これなら幾分かましだと思います」


 命令して動かしてみる。


 「動く部分は車輪か?腕は筋肉の動きを棒で……なるほど。腰はどうなっているのだ?」


 早速質問が飛んできたので簡単に説明する。


 しかしこれじゃ本当にロボットだな。制御が複雑すぎる。


 いちいち前に進むときは車輪を動かしてとか、手を伸ばすのはピストン部分を押し出してなどの細かい指示をしなければならない。それを同時にしようとすると制御が難しい。


 命令を人の頭だけでこれはしんどい……。魔道具の要領で一定の動きを制御して、魔道具についてる魔石に命令できるように出来ないかな?人工知能がほしい。


 小さな魔石をもらって、試してみる。魔石を核にして、人形を作り出すときにその周りに魔 法陣を刻む。前進と命令すればキャタピラを動かし、後ろを向けと命令すれば腰が旋回するようにしてみた。


 「いかがでしょうか。試しに簡単な事しか中の魔法陣に書き込んでいませんが。命令は簡素化できたと思います」

 「なるほどの~。命令を魔道具の要領で一定の行動を簡単にして、制御しやすくしたのか。人の動きをよりよく真似させるには必要だな。よく思いついた、さすがだな」


 とりあえず成功はしたが、これじゃ出来の悪いラジコンだな。


 いつの間にかお弟子さん達も交えて、議論を交わす。ゴーレムについてランドルフが持っているビジョンを伝えた。最終形態はロボットアニメのように動かすことだと話すとみんなが興奮し始めた。魔石を核にしてドリルやガトリングガンのような武器を持たせるのだ。


 熱く語っていると、いつの間にか日も暮れてきたのでお暇することにする。


 「いや~、なかなかよい議論ができて充実した時間であった」

 「私も楽しい時間をすごせました。私の言った発想はどうぞ自由に使ってください」

 「よいのか?かなり研究が進んで貢献したことになるが」

 「はい、他にやらねばならないこともあるのでお任せします。そうだ、魔石自体に魔法陣を刻むとかどうでしょう?もしくは魔石の周りに帯状にした魔法陣でがちがちに固めるとか」


 魔石を封印するかのごとく雁字搦めに包帯を巻くようにして制御するとかどうだろう。静まれ俺の魔石。あっ、何かを封印するときってそういうやり方なのか?


 「!!?それはいいかもしれないな!!早速研究しなければ!!礼を言うぞランドルフ!!」

 「いえ、完成したら一番に見せてください」

 「わかった。今度何か礼をさせてくれ」

 「ありがとうございます。ではそろそろ失礼します」

 「うむ。気をつけてな」


 チェルベの部屋から出て自分の研究室に向かう。紙の製作は順調か確かめに行く。


 「お疲れ様です」


 ダークエルフの男達が考えながら話をしていた。出来たものを見せてもらう。


 「う~ん。材料によって結構色合いや質感が変わるな。厚さと形はまだムラがありますが、このぐらいでいいと思います」


 まだ作り始めて二日目だがなかなかいい滑り出しではないだろうか。ダークエルフ達はなかなかに器用なようだ。出来を褒めて、引き続き色々試して安定して作れるようにお願いする。


 しかしダークエルフを紙を作るためだけに用途するのはちょっともったいないよな。何とか考えないと。


 今日はもう終わりにして休むように言う。ちょっと申し訳なさがあるので銀貨を渡して飲みに使ってもらうように伝えて部屋を去った。


 お城へ帰ろうとするとじっとこちらを見る人がいた。


 「……ジー」

 「こんばんはパトリーム様」

 「様はいらない。ただのパトリームでいい」


 静かに透き通る声で言われた。


 「こんばんはただのパトリーム」

 「……」

 「すみません、冗談です」

 「ん。来て」


 こちらの事にはお構いなしに、さっさと一人行ってしまった。


 これは……とてつもなく無視して帰りたい衝動に駆られるぞ。


 仕方なくパトリームの後ろをついてくランドルフであった。

お時間戴きましてありがとうございます。

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