31話
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アプスは異変があったのに気づいてその場所へ向かった。すると、一匹の雷狼が発光しながらものすごい速さで駆けていくのが見えた。
なんでこんなところに雷狼がいるんだっ?外から進入してきたとは考えにくい。街で自由にするなんて、飼い主は罰金どころでは済まされないぞ?
ありえないと思っていると、雷狼が電撃を放つ。すると魔道具が壊れたのか、いきなり姿を現した二人の元仲間がいた。
犯人を追っていたのか……。まさか王国が飼っている魔獣か?匂いで追いかけているのか?こちらも危ないかもしれない。
電撃を浴びてもたついたが、元仲間の二人組みは逃げながらも、一人が雷狼に短刀を投げ、その間にもう一人が魔法を唱えて応戦していた。だが投げた短刀はことごとくかわされ、風魔法も放たれたがそれもかわされた。そしてまた電撃が飛ぶ。飛ばしながら間合いが近づき、やがて追いつかれ、短刀で切りつける元仲間達。
兵士達も駆けつけてきたが、短刀や魔法が飛び交う戦闘に参加するのは、邪魔になりそうだったので、見守るしかなかった。
抱えてる金貨が重いのか、投げ捨てて戦うも、やはり短刀はあたらず、あたっても電気を纏った硬い毛に弾かれている。
やがて二人は痺れて動きが鈍り、浴びせられた電撃に耐え切れず、倒れこんだ。雷狼が上に圧し掛かって抑える。勝利の遠吠えをする雷狼。兵士達が近寄るも、雷狼は獲物を取るなといわんばかりに威嚇する。
なんだあの雷狼は……。絶妙な距離感で相手を電撃でけん制しながら戦うとは。大きさも普通ではない。あんなに人の間合いを理解している雷狼なんて……。
警戒して遠くから眺めていると、合図と思われる光が上がり、雷狼の飼い主だろうか? 3人組がやってきた。そのうちの一人の子供に近づきペロペロと顔を舐めている。
やがて捕らえられた二人は連行された。
あんな子供が雷狼の飼い主?幼少の頃から飼いならしていたのか?警戒しなければ。だがあいつらが動いたということはどこかにトクルマティアもいるはずだ。少しでも情報がほしいが……。この機会を逃せば……、危険だが行くか……。
アプスは悩んだ末、危険だが詰め所に忍び込み、外から尋問の内容を盗み聞きすることにした。
「ん~……。隠れている敵を探す方法ね……。デンはあの時匂いを覚えてたから追えたけど……。かなり集中して探らないと、魔道具の放つ魔力を感じるのは困難だしな~」
「普通の人はこれだけ騒ぎになってるんだし、さっさと脱出したいと思うか、ほとぼりが冷めるまで隠れて待つか。でも兵士総出で探し回ってるから脱出のほうだろう」
「確かにそうかもしれませんけど……」
「荷馬車は点検されるし、重たい金貨を一気に運ぶとばれるよね。しかもダークエルフとわかっているんだ」
「でも馬車を二重底にして金貨を運ぶとか、人に頼んで金貨を運ぶとか方法はあります」
「……二重底ね。調べさせておこう。それと、他人に頼むことはないと思うが」
「ちょろまかされたり、つかまればすぐに情報を吐いたり、とにかく大金なのに、信用のないものを使うとは思えないな~」
ランドルフ、ジュレップ、ミード子爵の三人が話し合っている。
う~む。たしかにそうだけど……。
「事故を装って、一時だけわざと隙を見せる。罠だとわかっていてもそこを通り抜けようとするはず」
「門の様子を見張ってるやつがいるかもしれないから、そこを狙えばいいかもしれない」
「相手はこちらが見破れるのをわかっていないと思うしね」
でもそれはあくまで外に逃げる前提の考えだ。その可能性が高いわけだが、なんだか不安を感じる。
「頭痛覚悟で空間把握をします。それなら隠れててもすぐにわかりますので」
「大丈夫かい?この前は寝込んでたけど」
「何とかがんばります。反応はあるのに姿が見えていないなら一発でわかりますから」
なんとなく試しに使ってみる。……ん?誰か外の二階の窓に一人だけ……まさか?
「ジュレップ様。二階の窓に誰か張り付いてます」
「「何!?」」
「姿を隠して探ってきますね」
「ちょっとまって、私も行く。気づかれないようにしてくれ」
「はい」
外へ出て反応のある場所まで、ばれないように姿を消して行く。
「あそこですね……。姿は見えませんが確実にいます。極々微弱ですが魔力の反応も」
「あそこは……尋問している部屋だな」
「証拠隠滅の為に殺しに来たとかでしょうか?」
「かも知れないな」
「捕らえることはできるかい?」
「やってみます」
そろりと後ろから近づく。空間把握で見えなくても三次元で形がわかるので便利だが……女性か?
バチバチッとスタンガンをイメージして魔法を放つ。ビクンッと背筋を伸ばし、しびれている隙に魔道具をはずし正体を暴く。
「捕らえました」
「……ジュレップ殿。ランドルフ君はその……控えめに言ってすごいのだな……」
ランドルフの手際のよさに引き気味のミード子爵。その言葉に軽い笑みを浮かべるジュレップ。捕らえた不審者を浮遊させてゆっくりと地面に降ろした。
「な、なりが?」
しびれてうまくしゃべれない。わけもわからずいきなり捕らえられたということはわかった。
「お前は何者だ?ここで何をしている」
「ま、まっへくれ。わらしはやふらふぉとらへにきらんら」
「捕らえにきたと言っているのか?」
「ん~。ちょっと神経を正常にしましょう」
魔法で治療してやった。体のしびれもほとんど治してしまったので、足を土魔法で捕らえておく。
「どうです?うまくしゃべれますか?」
「一瞬で治った!?」
「なんであそこにいたんですか?」
「……このたびの騒動は、私達の仲間が起こしたことなんだ」
そういって頭巾を取る。すると、銀髪に褐色の肌をした美しい女性が姿を現した。
「やはりダークエルフか。詳しい話を聞かせてもらえそうかな?」
コクリと頷いたダークエルフ。中に戻って話を聞くことにした。
「ふむ。なるほど、自分達でけじめをつけたいと。捕らえられた仲間からそのトクルマティア?の場所を聞き出したかったわけだね」
「お互い協力し合えると思うがどうだろう?」
「それではだめなのです。私が捕らえて突き出し、その功績を手に入れないと」
「功績といっても身内の問題じゃないのか?」
功績功績って。もしかしたら移住したいがために、仲間を犠牲にしたマッチポンプを疑うレベルだな。そう思ってしまう俺は卑屈な人間だろうか。
「けじめをつけて首を差し出さねばならんのだ」
「なにやら事情がありそうだが。全部話してくれ」
「……わかった」
なんでこっちを見た?なぜにこっちを見て頷いたんだ?
パブチスカ王国の問題や、そのことで食料を得るためにここに来た事。怪しい集団の事などいろいろ話をしてくれた。
「まだ隠してることがありそうだが。だいたいわかったよ」
「信じるのかジュレップ殿?」
「嘘をついている様には見えないと思う」
「ふむ。その怪しい集団にたぶらかされてお仲間が金を盗んだと」
「はい。そして食糧に変えてやることで義理は果たしたから、と去っていきました。我々も事情が事情なので先に食料を持って帰り、けじめをつけるためにもどってきたのです。盗んだお金で得た食料なので、私が言えた事ではないのですが……」
「何故君はこれをもっているんだい?」
「この姿が消せる魔道具もそいつらのうちの一人がくれました。私も盗みを働くと思ったのでしょうが……。お願いします!!なんとかトクルマティアを捉える功績がほしいのです!!それで我々に住む場所を……。このままでは村のみんなが……」
ダークエルフの女性は、うなだれてへたり込んでしまった。
「協力者ということで、何とかできるかもしれない」
「本当ですか!?」
「うん、だから人数などの構成を教えてほしいな」
このことについて伝令が出され、陛下の耳へと届く。判断を仰ぐのだが悪いようにはされないだろうとの事。
さっそく得た情報を元に出発した。
協力してくれる女ダークエルフの名前はアプスといった。彼女の話によると、離れた人数は7人。そのうち3人捕らえたので残りは3人とトクルマティアだ。
アプス達が元々集合していた場所に三人いたので捕まえる。そして捕らえていたうちの一人を、アプスが説得し、トクルマティアの居場所を聞き出した。
「郊外で待っているのか。囲み込めれば良いんだけれどね~」
「なんとか門で封鎖しなくて済んでよかったよ。ご協力感謝する」
「いえ、元は身内の不祥事ですので……」
アプスは複雑な心境だ。郊外は遮蔽物もない広い平原なので、不審な者が近づくとすぐばれる。なのでランドルフの魔法で姿を消して近づくことになった。盗みでやられたことをやり返すのだ。
「それまで我々も寝よう」
「トクルマティアがつかまれば、別に族長が責任を問われることはないと思うから安心して」
「本当ですか!?」
「盗んだ本人が罰を受けるべきなんだよ」
「しかし……」
「その怪しい集団についても詳しく話をしてくれたらいいから」
「ほとんどわかってることはないので……申し訳ありません」
「いや、そういう集団がいるって事だけでも十分収穫だよ」
「そう……ですかね……」
「あまり気を負わずに!!まずはトクルマティアを捕まえましょう!!」
「……はい」
ランドルフがかけた言葉に頷くアプス。
それにしてもやたらとチラチラ見てくるなこの人?
「あの~、なにか?」
「いえ、その……。すごく魔力が多いのですね?あれほど大きな雷狼も従えているようですし、捕らえられた時の魔法もすごかったです」
なに、なんでそんなにしおらしいの?
「えっと。周りの人にはおかしい子供だとよく言われてます」
こんな返事で良いのか俺。
「いいえ、おかしくなんてありませんっ!!素敵ですっ!!」
そういっていきなり近づいてくる。
うぇ!?何なの!?あっ、これは雨にぬれた地面の匂いがする。山エルフ臭となずけよう。
何故興味をもたれているのかわからなかったが、そんな疑問も匂いにつられて吹き飛んでしまった。
ベネディッタさんとはまた違ったいい匂いだ。俺って匂いフェチだったのか?よくみると胸も大きい……谷間が……。
外套の下にはくびれのある引き締まった体に、立派な果実が実っていた。そんな様子をジュレップはニヤニヤしながら見ている。つい目がいってしまっていたのをあわててそらしたランドルフ。
「さ、さっさと行きましょう!!」
「夜が明けたらね?」
「うぐっ」
回りの男達もニヤニヤしながらこちらを見ている。正直気持ち悪い。
「それまで寝てていいから」
「私が膝枕をして差し上げましょうか?」
「うぇ!?なんで!?いいです!!デ~ン!!」
部屋を貸してもらい、デンと一緒に朝まで仮眠をとったランドルフであった。
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