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29話

お時間いただきましてありがとうございます。


 王都方面へ向かうためにカナンカの背中に乗る。バサリと羽ばたきその巨体が浮かんだ。飛んで行くというよりも、滑空すれば着きそうな距離だろうか。


 コンコンッ


 ランドルフは飛んでいるカナンカの背中を軽く叩いてみた。鱗が硬い音をだした。


 『なんじゃ?』

 『いや、ドラゴンの鱗ってどれくらい硬いのかと思って』

 『なんと例えていいのやらわからんが……、そこな狼が爪でひっかいても、傷つかないじゃろうな』


 デンの攻撃がきかないって、かなり頑丈だな。


 『それで、どのあたりに向かえばよいのじゃ?』


 王都郊外とは聞いていたものの。どのあたりなのかまではハッキリ聞いていなかったために遠見で探す。

 すると、飛空挺発着所に向かう数台の馬車を発見した。きっとあれだろうか。


 『カナンカ、あそこに建物があるんだけど、そこ広い場所があるでしょ?そこに行ってくれ』

 『わかった』

 『言っておくけど、俺が良いって言うまでしゃべらないでね?』

 『何故だ?』

 『いいからお願い』

 『む~、わかった』


 ランドルフの言葉に従って、カナンカは移動する。発着所に着いてしばらく待っていると、馬車が到着した。騎士達がぞろぞろと先に降りて辺りを警戒し、その後にジュレップに近衛騎士団長のクレイブル、そして鎧を着た知らない猫耳のいかつい獣人が降りて、最後に国王と宰相が降りた。

 姿を消しているためにこちらには気づいていない様子だ。


 「ランドルフはちゃんとここに来るのだろうか」

 「すみません。郊外としか伝えてませんでした」


 失態だといわんばかりの表情をするジュレップ。


 「きっとランドルフならわかってくれるだろう。山から飛んでくるならわかりやすいのではないか?」

 「ええ、わかりやすかったですよ」

 「「「「っ!?」」」


 いきなり、何もないところから発せられた声に驚く国王達。とっさに騎士達が国王の前に出て身構える。

 カナンカの上から飛び降りたランドルフとデン。そしてランドルフとデンだけ姿を現し、挨拶をした。


 「ランドルフか。驚かすなよ」

 「すみません陛下。お久しぶりでございます」


 身構える騎士達を押しのけて前に出る国王。


 「うむ、元気そうだな。それで守護竜様は?」

 「えっと。すぐ目の前にいるんですけど。ここにいる人達に見せても大丈夫なのでしょうか?」

 「かまわんぞ。ここにいる騎士達は皆近衛騎士と元帥だ」

 「わかりました。それでは」


 あのいかつい猫耳獣人がこの国の元帥なのか?こういっちゃ何だが、獣人って脳筋だから重鎮ってのは向いてないと思っていたが。偏見だったな。


 ランドルフは魔法を解いた。突如現れた大きく銀色に光る姿のドラゴンに、皆驚きを隠せないでいる。


 「「「おお~」」」 「なんて神々しい」 「美しい」 「綺麗だ」


 恐怖よりも先に、美しさに眼がいっているようだ。

 姿を現しても、何も言わないカナンカに、ランドルフは声を掛けた。


 『ごめん。もうしゃべってもいいよ』

 『そうか。我が霊峰ジャスタに住む守護竜と呼ばれし者。カナンカである』


 自分で守護竜って言っちゃったよ。認めてないんじゃなかったのか?


 発せられた言葉に対し、国王が跪き、祈りでもささげるようなポーズで礼をする。それに伴い、他の皆も跪いた。ランドルフだけが立っている。あわててランドルフもジュレップの横に向かい、跪こうとする。


 『ランドルフは跪かなくてもよい。我の友である』

 「でも国王様が跪いてるのに俺だけってのはね?」

 『よいな?』

 「ははっ」


 カナンカの問いかけに国王が返事をする。


 良くねぇ~よ。パワーバランスおかしくなるだろう!!


 「ランドルフ、こう言っておられるのだ。立ちなさい」

 「はい」

 『そっちではなくこっちにこぬか』

 「うぇ!?」


 ちらりと国王を見ると頷かれた。仕方なくカナンカの横へ向かう。


 『してランドルフよ。ここに我を連れてきてどうするのだ?』


 どうするんだろう?


 「申し訳ありませぬ、守護竜様。国王である私めがランドルフに頼み、御呼び立てした次第でございます。まずはそのことに関して謝罪をさせていただきたく存じます」

 『ふむ、許そう。……して何用なのだ?』


 国王の言葉に対し、許すとは言ったものの、どこかカナンカの態度に若干の怒りを感じる。


 「ありがとうございます。ランドルフから聞いたのですが、寝床を移されるとか」

 『それがどうした?我がどこで寝ようと関係なかろう』

 「勿論その通りでございます。ですがそのことに関してお願いしたいことがございます」

 『ほう?何を願う』


 願いと聞いて、カナンカの態度が変わり、興味をもった感じがした。


 「この国の守護竜として、変わりなき加護をお願いしたく」

 『ふむ。先ほど守護竜と名乗ったが、特に守護してきたわけではない。人との争いなどには参加はせぬ』

 「存じております。貴方様がこの国の守護竜であるということが大事なのでございます」

 『それが何の役に立つのかわからぬが。わかった認めてやろう』


 えっ?認めちゃうんだ?カナンカなら関係ないとか言うと思ったけど。加護の部分大事だよ?知らないよ?でもあとで俺からも頼んでおくか。


 「ありがとうございます」


 国王はこれで、ランドルフ個人だけではなく。国全体にカナンカの加護を得たと正式に言いふらせるのだ。 元々あった無いにも等しい希薄だった関係を、強く確認し繋がりを持つことに成功したと言えるだろう。


 「ささやかではありますが。お礼と友好の証としまして、様々な品をお持ちしました。お納めください」


 宰相が前に出て、品を持ってこさせる。


 『気持ちはわかったが、我が物をもらっても何も思わぬ。他のドラゴンのように光るものを集めるわけではないのでな』

 「お酒もご用意いたしました。よくできたワインがございますので是非ともご賞味いただければと存じます」

 『酒とな。久しく飲んでおらぬが……。どれ、興味があるな。用意せい』

 「ははっ!!」


 騎士達が酒の入った大樽を運び込み、フタをあける。それをカナンカはコップに入った水を飲むかのようにヒョイッと一気に飲み干す。


 俺酒飲んだことないけどあれはもったいないよな。もっと味わって飲めよ。


 『うむ、なかなかの味じゃ。昔飲んだ酒とはぜんぜん違う。気に入ったぞ。他のものはいらぬから酒だけを持ってまいれ』

 「畏まりました」


 そういって次々と運び込まれてくる酒樽。


 昔飲んだ酒ってどんなんだよ。そもそもお前の言う昔に酒なんてあったのか?ってかどれだけ飲むんだよ。


 『おい、カナンカ。こんなところで飲みすぎるなよ?』

 『この程度で酔っ払うものか』

 『また島に行くときに運んでもらうから、ほどほどにしておけって』

 『むぅ~。わかった。久々に酒が飲めたのでな、楽しんでしもうた』


 楽しむって余興もなんもないし、ただ一人で勝手に飲んでただけじゃん。


 『うまかったぞ。……それで国王よ、そちの名前はなんだったか』

 「こ、これは名前も名乗らず大変失礼をっ!!シュタルク・ジャスタ・ルネ・レスタイトと申します。シュタルクと御呼びいただければ幸いにございます」

 『よい、気にしておらぬ。それでシュタルクとやら。何か災いがあれば手を貸すという具合でかまわんのか?』

 「それで十分でございます」

 『わかった。その代わりまたこうして酒を持ってきてくれ。管理はランドルフに頼むとしよう』

 「うぇ!?」

 「わかりました。島へ運ぶようにいたします」


 カナンカめ、余計なことを。


 恨めしい目を向けると。「ククク」と笑いやがった。何わろてんねんっ!!


 「今度はぜひ我が城にお越しください。ランドルフを迎えにやりますので、お酒を用意してお待ちしております」

 『うむ。わかった』


 たっぷりとお酒を飲んだカナンカは、気分を良くしてジャスタ山に帰っていった。


 ちょっとふらついてた気もするが大丈夫かな~?








 カナンカと別れ、発着所から帰る時、国王に呼ばれ一緒の馬車に乗せられた。デンは外を歩いている。

 馬車の中に子供一人と大人3人。国王、宰相、ジュレップ。そしてランドルフだ。むさくるしい。


 「宝石などの貴金属類を受け取ってもらえなかった時はあせったが、うまくいってよかった」

 「ええ、概ね想定どおりに事が運んだと見てよいでしょう」

 「どういうことです?」


 国王と宰相の言葉に疑問がわいた。


 話からすると、俺だけじゃなく王国に加護を貰うために来たんじゃなかったのか?


 「これでランドルフ君は、カナンカ様との繋ぎ役としての大役を任されることになったのさ。なにせ御伽噺のような存在が実在したということが証明されたんだ。関係を強固にした立役者ということで、爵位をもらってもおかしくない状況になったってわけ」


 なんですと?


 「お前だけでなく、王国が加護をもらったことで発表しても問題はなくなったしな。むしろ関係性を強調することで他国への牽制にもなる。さらに守護竜様の友といわれているお前にちょっかいを掛けるやつも出ないだろう。やりたいほうだいじゃないか?」


 クックック。と笑う王様。


 「ついでに言うと、ランドルフ君を寄り子にしてるパンターナ家も強い姿勢に出れる」

 「ジュレップ殿、わかっておられるとは思うがやり過ぎないようにしてくだされ」

 「承知しております」


 宰相に釘を刺されるジュレップ。だがやりすぎるとは一体何なのか、ランドルフは怖くて聞けなかった。


 「これでまぁ。ランドルフの事を公表できるというわけだな。守護竜様のおかげで一気に解決だ」

 「もしかしてお城に呼ぶってその時に……」


 ニヤリとする大人たち。悪い顔してますわ~。


 確かに何か言ってくる奴に対しては、ものすごく有効だ。一発で黙らせることができる。守護竜のお気に入りってのをアピールするんだろう。

 それでも何かやってきそうなありそうな気がする。むしろ嫉まれるんじゃないのかな?こんな子供に任せるのはおかしいとか何とか。それもカナンカが言えば済むか。難しいことを考えるのは大人に任せよう。


 「それとは別なのだが。こそ泥の件はちゃんとやってくれよ?こちらも調査はしているが、これ以上捕まえられず、被害がでるなら本格的に王国軍も動かさねばならぬ。それはハッキリ言って恥だ。こそ泥一匹捕まえられないと笑いものにされてしまう。もしもの時には情報だけでなく、捜査にも協力しよう」

 「ありがとうございます。あれから大人しくしているようで、今日から上空から見下ろして探索することにします。そろそろ月明かりも暗くなる頃ですしね。暗くなっても私なら魔法で見ることができますし、動くなら明日、明後日あたりでしょうか?」

 「警戒を強めておこう。しかし、暗いのに周りがわかるというのは便利なものだな。ぜひその魔法を教えてくれ。大学にも研究させよう」

 「はぁ……。私もあまり原理は詳しくわからないのですが。一応紙に書いてお渡ししますね」

 「頼むぞ。それとこの馬車の振動を抑えている魔法も頼む」

 「でしたら、許可をいただければ、馬車を好きに改造させていただきたいです。できたならそれを献上しますので」

 「許可しよう。落ち着いたら一台手配する。失敗してもかまわん。ラルゴは年寄りだから、あの振動は辛かろう?」

 「ええ、ですのでめったなことでは馬車に乗らなくなりましたな」


 ホホホ、と笑う宰相。


 やっぱり需要あるんじゃないの?がんばって作ってみるか。


 「紙を作ることもお忘れなく」


 ぐぬぬ。それもあったな。泥棒捕まえて、紙を作って、馬車も改造。やることが増えてきたぞっ!!


 頭を掻きながら屋敷へと戻り、夜に備えることにした。

お読みくださいましてありがとうございます。

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