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27話

おかげさまでユニーク1000人を超えました。訪れて下さった皆様に感謝を。ありがとうございます。


お話は別の人の視点です。


 「また勝手に盗んできたのかトクルマティアッ!!十分な食料は集まった、もうやめるんだっ!!これ以上余計なことはするなっ!!」

 「しつこいぞアプス、俺はもうあんなしみったれた暮らしはうんざりだ。これほど楽に金が手に入って、気兼ねなく自由に楽しく暮らせるんだ。それの何が不満なんだ?」


 黒い衣装に、褐色のとがった耳をした、顔を隠したダークエルフと思われる集団が居た。その中のリーダー格と思われる二人の男女が言い争っている。


 「罪を重ねるなと言っている。我々は故郷の皆の為にやってきたんだっ!!それに、今までは順調だったが今後はどうなるかわからない。本格的に王国も捕まえに来るだろう。もしつかまれば、一族皆殺されるかもしれないんだぞっ!?」

 「俺は、そんなへまはしない。あいつ等がくれた魔道具もあるし、俺たちの正体はばれていないじゃないか? 万が一ばれてしまったとしてもうまくやるさ。それに、盗んで手に入れた金でこれだけ食料が買えたんだ。……なんならここでお別れしよう。それでお前には関係あるまい?俺が勝手にやったことだからな。おいお前ら、俺についてきたい奴はついて来い。ここでお別れだ」


 その言葉に周りの人たちは、覆面をしていても動揺の色が窺える。


 「そんな簡単な問題ではないと言っているっ!!その魔道具をくれたやつらだって、何を企んでいるのかわからない怪しいやつらだぞ!?魔道具の実験に利用されてるだけだと何故わからない!?」

 「そんなことは俺もわかってる。あいつ等が利用しているように俺も利用してやるのさ。盗んだ金を渡しておけば、さらにいい魔道具を作ってくれるみたいだしな」

 「そんな言葉を信じるのか!?すぐに切り捨てられて終わりだぞっ!!」

 「お互いに利益があればそう簡単には切り捨てられることはない。なんならそのときはこちらが切り捨ててやればいい」

 「あいつらはそんなに単純なやつらじゃないと何度言ったらわかる!?得体の知れないおかしなやつらばかりだっ!!」


 アプスは謎の集団のことを思い出す。食糧不足に陥った私たちにあいつ等は『面白い魔道具があるから試してみないか?これを使ってひと稼ぎすれば故郷は救える』と声をかけてきた。


 トクルマティアは乗り気で、私は反対し盗みに協力はしなかった。話を聞いて調べてみると、お互いに利用できるから集まっているだけの、得体の知れない集団だということぐらいしかわからなかった。行動はまったくばらばらで、邪魔となればすぐに切り捨てるのが当たり前なやつらだ。


 「ちっ、しつこい……もういい。これ以上は話をしても無駄だ。お前ら、さっさと俺に付くかアプスに付くか決めろ。俺はここでお別れして自由に暮らす」

 「何を馬鹿なっ!!本気で故郷はもうどうでもいいというのか!?」

 「食料を運んだ事で義理は果たした。もういいだろ。おいお前ら、どうするかさっさと決めろ!!」


 皆動揺していたが、次第にトクルマティアに元々従っていた者達だけが離れていった。


 「くっ、お前達本当に仲間から離れるのか!?」

 「山の中で静かに暮らすのはもう飽きたんだ。これからは俺達の強みを生かして生きていくことにするよ。じゃあな」

 「おいっ!!」


 去っていくトクルマティアを追いかけようとすると、肩に手をかけられ止められた。


 「もうあいつ等は仲間を捨てたんだ。無理に戻したとしても今まで通りとは行かない。あきらめろ」

 「しかし……くっ!!」

 「ひとまず荷を運ぼう。その後どうすればいいのか考えればいい」


 この集団の長は私だが、トクルマティアは族長の息子だ。故に、その行動が冗談だったでは済まされない。それに今は、待っている仲間のためにも、荷を運ぶほうを優先しなければならない。


 「……わかった」


 私は渋々したがった。






 トクルマティアは王都のとある薄暗いある場所にやってきた。


 「やあ、トクルマティアさん。どうです?首尾のほうは」


 素性を知られたくないためか、杖をつき深く頭巾を被っている、黒くゆったりとした外套を羽織った男が声をかけてきた。


 ちっ、相変わらず薄気味悪い野郎だ。まっ、俺達が言えた口ではないが……。名前は確か……ゲザケインと言ったか?


 「今回もうまく言ったぜ。ほらっ、約束してた金だ」


 そう言って金貨の入った袋を渡す。


 「ありがとうございます。これでまた研究が続けられるというものです」

 「この姿が消せる魔道具ってのは便利だな。どこへでも気づかずに忍び込めるぜ」

 「それはどうも。ですが使用時間には気をつけてくださいね」

 「わかってる。一時間も姿を消せるならその間に盗み出せるさ」

 「それはそれは」


 満足そうにうんうんと頷く頭巾男。


 「そんなあなたの腕を見込んで頼みたいことがあるのですが」

 「なんだ?言うだけ言ってみろ」

 「あるものを盗んでいただきたいのです。新しい魔道具もご用意しておりますので」

 「……盗むものよりも魔道具が気になるな。それで何を盗めばいいんだ?」

 「ヌケーマ伯爵邸にあるという、飛竜の皮を盗んでいただきたい」

 「確か、一度盗みに入ったことがあったな。幼稚な警備で魔道具を使わなくても楽勝だったんじゃないか?」


 警備する人数は多かったが、屋敷の外ばかり警備して、中はほとんど警備してる人間は居なかった。姿が消せる魔道具で、警備しているやつの横を歩いて通り抜けるだけだった。

 

 「……わかった、やってやろう。それで新しい魔道具ってのは?」

 「ヒヒヒ、ありがとうございます。こちらになります。これは暗闇の中でも周りが明るく見える魔道具でございます」


 仮面のような物を差し出された。


 「ほう、我々ダークエルフは夜目はいいほうだが……どれ、これは顔に当てればいいのか?……おお~」


 薄暗い場所が昼間のように明るく見える。これで人や罠がわかりやすくなるし、盗む獲物もハッキリと捉えることができる。確かにこれは便利だ。


 「これは確かに使えるな。安心して任せてくれ。それでこれは……」

 「ええもちろん。報酬として差し上げますとも」


 その言葉にニヤリと笑うトクルマティア。これがあればさらに楽に盗みが働ける。


 「ただし、明るい場所での使用はだめです。明るすぎて目をやられてしまいますので」

 「わかった。注意しておこう。それで、いくつあるんだ?」

 「まだそれを含めて2つしかありません。なにぶん、今回もらった資金で量産は可能ですが、少し心もとなく……」

 「追加で資金を渡すから人数分作れ」

 「ありがとうございます」


 頭巾の男がにやりと笑った気がした。


 またこの場所で会う約束をし、その場を離れた。トクルマティアは付いてきた者達の元に戻り、早速話し合うのであった。








 王都を出て、買った食糧を運ぶアプス達は、王都の南側にある西の山から東へ流れる川を利用し、夜にまぎれて荷を運び出す。普通の商人として買ったので、別にコソコソとしているわけではないのだが、川の上は大きな魔物がいないし、早く食料を仲間の下へ届けたかった。だが盗んだ金で手に入れたものもあるので後ろめたい気持ちはある。

 レスタイト王国の真ん中を流れる北の川と合流し、南へと流れ、パブチスコ王国の近くまで運び込む。そこから歩いて故郷へと持ち運んだ。


 2ヶ月ほど前に起こった嵐が水害を引き起こし、嵐は去ったあとまた雨が降り、その雨が降り止むことはなかった。

 ダークエルフは山で暮らす。山で暮らしている環境のおかげか、俊敏で瞬発力のある動きができるし、悪路もなんのその、夜目も利くし魔法も得意だ。狩をしたり畑を作って暮らしていたが、山が土砂災害を起こし、畑は流された。獲物も少なくなり、狩だけでは暮らせなくなったので、仕方なく山を降りて、薬や木で作った工芸品を売ったお金で食料を買おうとしたが、先日の嵐のせいでどこも皆食糧不足だ。さらに悪いことに疫病が蔓延し始めていた。

 私たちダークエルフは誰も感染せず、山の上に住んでいたために被害は皆無だったが、街に住む獣人や人間達は、それはひどいものだった。


 混乱していた街を見渡していた時に声を掛けてきたのが、例の怪しい謎の集団だった。あれは私が見ても異常な犯罪者集団だ。利用されていると感じたが、彼らはダークエルフの身体能力を生かしたいい仕事(・・・・)を提示してきてくれた。トクルマティアがお金を盗み、そのことで味を占めたのか、盗んだお金を食糧に買えて分かれてしまった……。


 やつらは、病人を治療という名目で人体実験をするもの。亡くなった人の死体を使って実験をするもの。盗賊や海賊と一緒になって暴れまわるのが好きなもの等々、まともな感性ではできないことをやっている頭のおかしなやつらだ。それにトクルマティアは着いていくのだろうか?私は族長になんと報告すればいいのだろう……。もうすぐ村つく。








 「族長、ただいま戻りました」

 「帰ったか。予定量の食料は手に入ったか?」

 「はい、予定以上に手に入れてきました」

 「それはよかった。任務ご苦労様だったな、これでこの村もしばらくは安心だ。それでトクルマティアはどうした?」


 当然だが、いきなり答えにくいことを言わなくてはならないようだ。


 「トクルマティアは……仲間を……仲間を離れるといって出て行きました」

 「なに!?」


 驚いた様子の族長に、アプスは事情を説明した。


 「……盗みを働いたことは許されることではない」

 「承知しております。責任は私にありますので、レスタイト王国へ戻ってこの首を差し出そうと思います」

 「馬鹿息子が……早まったことをしおって……」


 あの街の状況を見てしまえば、国内で食料を得るのは無理だった。他国で食料を買うのは当然だ。そこをうまく付け込まれた。今思えばあいつらに試されていたのかもしれない。


 「……おぬし一人の問題では済まない。なので族長である私の首を差し出そう。それで何とか収めてもらうしかない」

 「しかし族長様っ!!」

 「もし事がばれれば、我々だけではない。この国の人たちが危険にさらされるやもしれん」


 この混乱に乗じて、他国が乗り込んでくることは考えられる。そのきっかけとして今回の件は使われるかもしれない。だがレスタイト王国とは友好国である。それはないと思いたい。実際に支援物資を届けている様子ではあった。それに、疫病が蔓延しているこの国を今攻めるのは得策ではないように思える。被害が収まって疲弊しているところを狙うほうが楽だろう。


 「これはトクルマティアの事も含んでのことだ」

 「っ!?しかし、奴は仲間を離れ、捨てましたっ!!」

 「愚か者でも私の息子だ」

 「……くっ。ならば、私が今一度説得して連れ戻してきますっ!!」


 もはや無理かもしれないが、族長の命がかかっているならばあるいは……。


 「……」

 「族長?」

 「……いいや、説得はしなくていい」

 「何をおっしゃるのですか!?」

 「……あいつを……殺せ」

 「そ、それはっ!!」

 「これ以上罪を重ねてしまう前に殺してしまえ。族長としての判断だ」


 族長命令。そういわれては何も言えない……。


 「……わかりました。やつを殺した後、私も出頭して首を」

 「いいや、お前にはこの村に住む仲間を率いて移住してもらう」

 「移住ですと!?」

 「お前達が食料を手に入れている間に、街に下りあたりを調べさせた。この混乱は簡単には治まるまい。山もああなってしまってはな。手に入れた食料で数日は持つがその後はどうなるかわからん」

 「代々住んできたこの山を離れる……」


 国はこの有様だ。移住するならこの国の南にある熱帯雨林に行けばと一瞬考えたが、魔物が多く居るし、密林エルフの縄張りだ。国外へでたほうがいいだろう。大人数での移動だとどうなるかわからない。準備をしっかり整えてもどうなるか……。


 「そこで、お前が見てきたレスタイト王国はどうだった?」

 「……どこも皆、物や食料は多く豊かであり、街は活気にあふれておりました」

 「住みやすそうか?」

 「それは詳しく調査してみないとわかりません」


 遠くから見た感じでは住みやすそうな山はあった。だが実際に言ってみて調査をしてみなければ。どんな魔物が住み着いているのか。その土地を治めているものの評判なども調べなければならない。


 「……では、おぬしに命令しよう。一つは移住できる場所の調査。そしてトクルマティアを殺すこと。それとレスタイトの国王に話をつけて、私とトクルマティアの首で今回の件を許してもらうことだ。もはや、首だけで済まないとは思うがな」

 「……はっ、必ずや良いようにしてみせます」

 「何人か連れて行け。この村に住む人々のためだ。頼んだぞ」


 族長の家を出て、主だった者を集める。事情を説明すると皆暗い顔をした。


 「他の山を調べては居ないが、どの道この国で暮らすのは厳しいだろう。我々が今回得た食料で調査する時間を手に入れたと思え。仲間のためだしっかりとやろう!!」


 少しは目に力が戻っただろうか。王都をへ行き、そこを拠点として情報を集め、トクルマティアを殺し、国王へ話を付けに行く。

 今日は休んで明日にでもレスタイト王国へ、調査に向かうことにする。

お読みいただきましてありがとうございます。

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