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26話

ブックマーク登録ありがとうございます。貴重な枠をいただきまして感謝です。


 「さて次だが、ランドルフを宮廷魔法士にしたいと考えているがどうか?」

 「あれだけの実力を見せられればそれもわかりますが……」

 「穴開けただけなんですけど……」

 「おぬし、まだそんなことを言っているのか?あれは従来の魔法の使い方ではないのだぞ」


 あっ、チェルベさんいたのね。ずっとしゃべってなかったから存在を忘れてたよ。クレイブルもしゃべってないな。躾のなってる忠犬といったところか。パティスさんもそうだな。でもそれが普通か。上の人の会話になんてよっぽどでない限り入り込まないよね。


 「しかし彼はいってみれば、見ず知らずの人間。貴族でもなければ、わが国の国民ですらなかったわけですから、何かしらの反発はあるかと思われます」


 宰相はそういうが、チェルベさんは見た感じ、当然といった様子で、特に反対の姿勢は見られない。他の宮廷魔法士が何かいってくる可能性はあるが……。


 「わかってはいるがこれだけの逸材を放っておくのももったいない。一度、宮廷魔法士の皆を集めて話し合わねばならんな。ランドルフもそのつもりでいてくれ」

 「わ、わかりました」

 「少なくとも私はおぬしの事を認めているぞ?」

 「あ、ありがとうございます」


 チェルベさんいい人そうだけど、まだなんかちょっと怖いんだよな~。






 「次は、前もって決めていたのは爵位は男爵だったが、私はせめて子爵くらいはと考えている」

 「宮廷魔法士で、なおかつ島を持つ領主、先ほどの島の運営計画を聞いていても、甘い部分はありますが、とても子供が考えたとは思えない内容でした。しかし、それも先ほども言いましたが反発を招きます」

 「島をこの国にくれたというだけでも十分だと思うが、頭の固い連中はだめかもしれんな」

 「何か他の功績があればよろしいのですが」


 紙を作るからってのはだめだよな~。それだと作ってる商人はみんな貴族だし……。


 「何か面倒ごとを解決するとかですか?」

 「……あるにはあるが荷が重過ぎるのと、爵位を与えるにはいまひとつな事件だな」

 「お聞きしても?」

 「うむ、荷が重いといったのは南東の国の事だな」

 「というと……パブチスコ王国でしたか?」

 「よく勉強しているようだな。そのパブチスコ王国だが、大規模な水害が発生してな。わが国からも支援をしてはいるが、疫病も発生してなかなか回復のめどが立たない。そして国民が他国に逃げ出そうとしたり、盗賊や海賊に成り果てるという具合になっている」


 パブチスコ王国は、国の半分が森、というかジャングルになっている熱帯地方で、夏は降水量が多い。サトウキビや、塩、木綿や果物などの農業が盛んな国である。


 「最初のうちはこちらには来なかったが、東の海からこちらに回ってきて海賊行為が後を絶たない。疫病による被害も収まっていないので移民を受け入れるわけにもいかない」

 「確かに解決するには荷が重過ぎる問題です」


 そんなの俺がどうやって解決するんだよ……。


 「もうひとつの爵位にはいまひとつと言った事件だが。こちらは主に貴族や商人を狙った泥棒被害が発生している」

 「ほほう。義賊ですか?」

 「義賊かどうかはわからんが、音もなく、いつ盗まれたのかさっぱりとわからない。なのでその姿を見たものは誰一人いないという泥棒なのだが……」


 有名な怪盗を思い出させる事件だな。ちょっと興味がわいてきた。


 「何故か盗まれるのは金貨ばかりなのだ」

 「つまり、他の価値がありそうな物には手をつけていないと?」

 「うむ、このことについては先ほど言った、パブチスコ王国の問題が関わっていると感じているがまださっぱりわからん」

 「盗んだ金貨は、分散されて食料に変えられている点からの予想ではあるが、偽装かもしれん。販売したやつも、買ったものを持ち運んだ形跡もわからんのだ」


 国王と宰相は頭を抱えている。人的被害はなく、夜に盗まれているようで、盗まれた金貨は合計で1万枚を超えるそうだ。日本円で約10億。相当な被害だ。

 急に市場に金貨があふれ出した為に、調べていくと食料に代わっていたことがわかったそうだ。特に盗まれた商人達は、お金をかけて警備を厳重にしていたが、誰も気づいていない内になくなっていたという。


 金貨だから重くて持ち運ぶのは大変そうだと思うんだが……。面白そうだな、ちょっと調べてみたいな。でもこれって結構重要なことだと思うんだが、そんなにあっさりしゃべって大丈夫なのか?


 「もうかなりの噂になっている。商人たちも協力は惜しまないと息巻いている始末だ」


 そんなに噂になっているなら、捕まえれば名声は上がると思うんだけど、うまくいけないかな?貴族が誰か知らないけど感謝もされるだろうし……。


 名誉のためか、被害にあった貴族の名前は教えてくれなかった。吟遊詩人が語りだし、酒場では人気がすごい。市場も潤いを見せて市民にはありがたがられているようだ。


 「大きな問題はこんなところだな。まっ、貴族についてはそういう心積もりをしておいてくれ」

 「はい」

 「決めるのにはしばらくかかる。決まったらまた連絡する。今のところは以上だ。何か聞きたいことは?」

 「その泥棒については興味があります。調査しても?」

 「ふむ……それはかまわんがこちらからは情報をやるぐらいしか協力はできないぞ?」

 「よろしいのですか陛下?」


 宰相は怪訝な顔をしている。


 「すべてを任せるつもりはない。だが、もし解決できたら問題が減って、爵位の件もうまくいくかもしれない。捕まえられなかったからといっても咎める事はない。こちらに被害が出ない限りはだが」

 「わかりました。ありがとうございます」

 「それだけか?」

 「はい」

 「ではこれにて解散だ。ご苦労だった。ジュレップ、しっかりと面倒を見ろよ?」

 「今まで通り、といった所ですね。それと陛下。私からひとつよろしいでしょうか」

 「なんだ?」

 「ランドルフ君が忘れているようなので言いますが、守護竜のカナンカ様のことをお忘れでは?」


 そう言ってニヤリとこちらを見るジュレップ。


 すっかり忘れてたわ。


 「何?なんだそれは?」

 「報告書に書いていたはずですが……」

 「あいつのことすっかり忘れてましたね。それで爵位には十分なんじゃないでしょうか?」

 「ん?―――……あった、これか。さっき届いたばかりでまだ読んでいなかった、すまん」


 王様は手紙を読むに連れて顔が驚愕の色に染まっていく。そして報告書を無言で宰相に手渡した。


 「……書いてあることが事実なら……。子爵どころの話ではない……。王位を譲らねばならぬ……」

 「えっ!?ちょっと待ってください。さすがにそれはありえないです!!」

 「わかっている。だがそうなってもおかしくないほどの事だ……」


 宰相も読み終えたのか、手紙を持つ手が震えている。そして近衛騎士団長の手に渡った。


 「ほ、本当なのかジュレップ殿」

 「ええ、事実です。私も陛下が相手ではないのに、思わずひれ伏してしまいました」

 「仕方あるまい。相手は伝説の竜なのだ、無礼を働けば国が滅んでいたかも知れん」


 読み終えた騎士団長は目をカッと開きながらも不要な発言はしない。チェルベも気になったのか、「拝見してもよろしいでしょうか?」と許可を得て拝読する。


 「これは事が大きすぎるゆえに誰にも相手にされないかもしれませぬ。下手すれば王権が失墜し、陛下の身が危ぶまれるやも、その事態だけは避けねばなりません」

 「ジュレップ。当然だが誰にも言ってないだろうな?」

 「はい、うまくごまかして秘匿するようにはしました。ですが陛下からも飛空挺の面々には注意をしておかれたほうがよろしいかと」


 この国の守護竜と呼ばれる存在が、国王ではなく、誰とも知らぬ人間を庇護するってなったら、確かに問題になるのは当然だよな~。そもそも信じられないかもしれない。あ~まじ勘弁して~お腹痛い。


 読み終えた宮廷魔法士第三席は言葉も出ない様子だ。


 「うむ。確かにそのとおりだ。言っても誰も信じないだろうが……、私も信じられん。ランドルフも内密にしろ。お前にもよからぬ事を企むやつが近寄るかもしれない。ここに居る皆も当然だが秘密だ」


 みんな無言でうなずく。


 「して、このお方に拝謁することは可能なのか?」

 「呼べばすぐ来ると思いますが。王都は混乱するかと思います」

 「何か手はないか?」

 「姿を消して来いと言ってもきっと『何故我がこそこそせねばならぬっ!!』とか言い出しそうです」


 困った顔をする王様達。


 「説得はして見ますが……」

 「頼むぞ、国王としても一度はお会いせねばならん」


 結局、カナンカのことは爵位に関して使えるかは検討することになったが、別の手立ても考えておくとのこと。


 「他にないなら、改めて後日連絡をする」







 話は終わり、チェルベを含めた3人は部屋をでた。


 「そうそう、おぬし。よければ私の研究室に顔を出しなさい。今後のことについて相談してやれることがあるかもしれない。聞きたいこともあるしな」

 「わかりました。そのときはお願いします」

 「それでは、私は早速ゴーレムを改良しに戻る。今度は落とし穴にははまらんぞ?」

 「お手柔らかに」


 お互いにニヤリと笑い合いその場から別れた。


 ゴーレム研究か。作ったことなかったけど俺もやってみようかな?魔道具の素養を取り入れると面白いかもしれないな。


 「さて、ランドルフ君。島の運用やら、泥棒を捕まえることについて、屋敷に帰ったらじぃっ~~~~くりと話し合おうか?」

 「ジュレップ様。島のことは即興で思いついたことでして。今まで見てきたことを生かして、できないものかと思っただけなので……」

 「詳しくは屋敷で聞こうか」

 「……はい」


 有無を言わさぬ言葉に、がっくりとうなだれるランドルフであった。







 広場に行きデンを迎えにいくと、なにやら騒がしい。言い合ってる声が聞こえてきた。


 「それでこれは誰のものなのだ?」

 「ランドルフという少年が従えている魔獣です」

 「ランドルフ……聞いたことがないな。おいお前、私はこの雷狼が気に入った。なのでこいつをよこせ」


 なんだと?


 デンのお守りをしていた兵士と、お供を連れた身なりの良いお河童頭の男が話をしている。デンは興味なさそうにして寝転んでいる。


 「それはあまりにも……」

 「なに、ただとは言わん。それに逃げ出したことにしてしまえばいいだろう」


 そういってデンのお守りをしていた兵士に何かを握らせる。


 「いえ、自分はこの雷狼を守る職務中でして、このようなものを渡されても困ります!!」

 「わからんやつだな。いいから、私が寄越せといっているのだ。さっさと寄越さぬかっ!!」


 よくねぇよこのやろう!!


 「ジュレップ様。あの阿呆なことを言ってる奴は誰です?」

 「まいったな、あれはヌケーマ伯爵だ。色々な珍しいものを集めるのが趣味でね。美術品などを扱っている大きな商会を持っていて、結構しつこいって有名なんだ。他の貴族に美術品を売ったりしているから、つながりもあってなかなかに厄介な人なんだよね~」


 う~ん。ここでテンプレがくるのか?これ以上の面倒ごとはやめてよ。胃が痛くなるわ。


 「なにかあったのか?」

 「あっ、ジュレップ様この方が……」

 「ジュレップ?………確か辺境伯の息子だったか?」

 「いつ以来でしょうか?お久しぶりですヌケーマ伯爵」

 「久しいな、ジュレップ殿」

 「していかがなされました?」

 「なに、こんなに大きな雷狼を見たことがなくてな。毛艶もいいし、できれば譲ってほしいと思っていたのだよ」


 そう話しているうちに俺の近くにデンがやってきたので撫でてやる。


 譲ってほしいじゃなくて寄越せって言ってたくせにっ!!


 「小僧、お前が持ち主か?どうだ、私に譲ってはくれまいか?礼は弾むぞ?」

 「お断りします」

 「金貨10枚でどうだ?貴様のようなやつには大金だろう?」


 人の話聞けよっ!!


 「だが断るっ!!もし仮にあなたに売ったとしても、あなたなんて、すぐデンに食べられて、骨も残らないかもしれませんね。いや、まずくて食えたものじゃないか?どうだデン?」

 「何だと貴様っ!!」


 するとデンは、器用にいきなりくしゃみをしだし、その時飛んだ唾が伯爵の顔にかかってしまった。


 「おわっ!!きたなっ!!な、何をするっ!!」


 やるな、デン。ちょっと吹いてしまったぞっ。


 ジュレップも普通の顔をしているが、少し顔がゆがんで笑いをこらえている。


 「馬鹿にしおってっ!!おい、この無礼者を痛めつけてやれっ!!」


 胸にあるハンカチで顔を拭き終わったヌケーマは、お供の兵士に命令する。


 「ヌケーマ伯爵。これは事故です、ここは穏便に」

 「虚仮にされて、事故で済まされるか!!いいからさっさとやらぬかっ!!」


 兵士は宥めようとするがヌケーマの怒りは収まらない。兵士達はデンがいるので戦うのは無理だと思っているようだ。


 「馬鹿にしているのはそっちでしょう。デンを寄越せってお守りの兵士さんに言い寄ってたの聞こえてたぞっ!!人のものを奪おうなんてそっちこそ恥を知れっ!!」

 「言わせておけばっ!!かせっ!!わしがやるっ!!」


 ヌケーマは兵士から剣を奪い取り、俺の前に対峙する。だがデンがそれを許さなかった。

 デンはランドルフの前に出てくると、パチパチと放電しながら低い声で唸る。


 「グルルッー!!」

 「うっ」


 デンの威嚇に怯むヌケーマ。


 「……くっ、貴様の顔と名前は覚えたぞっ!!ジュレップ殿も覚えておくことですなっ!!いくぞっ!!」


 そう捨て台詞を吐いて去っていった。


 去り際までテンプレー。ひねりのない台詞をありがとう。


 「すみませんジュレップ様。巻き込んでしまいました」

 「いいんじゃない?あれは怒ってもしょうがないよ。それに、貴族としての振る舞い方も、あれはどうかと思うしね」

 「そう言っていただけると助かります。ですが大丈夫ですか?」

 「何が?商売のことなら王都とうちの領地では離れてるから関係ない。私はまだ違うけど、辺境伯と伯爵なら辺境伯のほうが立場は上だよ?その関係者に吹っかけてきたんだ。問題になるのは向こうの方だよ」

 「それならいいんですけど……」

 「関係ないかもしれないけど、たぶん例の泥棒って、ヌケーマ伯爵のところにいったんじゃないかな?お金もってそうだし」

 「可能性は十分にありますね」

 「なくなったお金は、自分の集めた美術品を売り払って、補填したから数が減った。だから新しい物がほしくて、デンを手にいれようとしたとか」

 「そういうこともあるかも?」

 「勝手な想像だけどね。そう考えると面白いと思わない?そうでなくても、デンみたいなすごい魔獣を従えていると箔がつくから、狙われたかもしれないね。王都の人間は特にそういうところ気にするし」


 面子とか誇りってか?まったくない貴族ってのは困り者だが、度が過ぎると近くの人間は迷惑極まりないな。


 「まったく持って迷惑な話ですね」

 「厄介な人間に目をつけられたのは確かだね」

 「おなか痛くなってきた」

 「さっ、帰って今後のことを話そう。ランドルフ君にはたっぷりと聞きたいことがあるし」

 「や、やさしくしてくださいね?」


 くねくねと体をしならせて返事すると、凄みのある笑顔が見えた。


 いつも冗談だって言ってるでしょ!?黒いオーラをだしてニコニコしないでっ!!


 こうして二人は屋敷に帰った後、たっぷりとお話をしたのでした。

お時間いただきましてありがとうございます。


お屋敷に帰って普通にOHANASIしただけですのであしからず。邪推はしないように。

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