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24話

王都へ着いたランドルフご一行


 「ランドルフ君、見えてきたよ。あれが王都セルリアだ」


 ジュレップの言葉を聞いて、操舵室から望遠して眺めるが、まだ外壁しか見えていない。しかし、そろそろ降りるようだ。

 多少どころではないトラブルがあったが、無事に王都近郊の発着所にたどり着く事ができた。その事にほっとしながらも、遠くに見えるあの壁の向こうに思いを馳せる。


 「結構離れてますけど、城壁が見えるだけで三つもあるんですね」


 真ん中にある城を囲う壁、貴族街を囲う壁、そして都市全体を囲う壁の三つがあるという。正面から見ると小さな山のようにも思える外観だ。


 ちょっと古墳を思い出してしまった。あれは墓だったな。


 特にお城を守る壁の中は別世界だという、楽しみにしておいてとジュレップに言われた。

 都市の出入りには厳重なチェックがされており、貴族の馬車であろうと一応調べられる。

 デンについてあれこれ注意されたが、ジュレップが説明してくれた。

 賄賂とかあるのかと聞くと、怒られた。必殺袖の下は通じないらしい。


 「ん?やっぱり薄いけど結界は張ってあるんだな。っておわっ!?めっちゃ広い!!辺境伯のいるロコチョル10個分じゃないの!?」


 実際はわからないが適当に言っておく。だがそれくらい広いと感じさせる大きさだ。あまりの広さに結界の事は吹き飛んでしまった。

 まず、入ってすぐの広場からして広い。辺境伯の屋敷がすっぽり入る。そして道も広いし、土色の建物がずらりと並んで出店も立ち並び、普通に見ると遠くが霞んでいる。そして人、人、人だらけ。チラリと見えた酒場には魔族や妖精と思われる存在がいた。いろんな人種がいて、馬車から身を乗り出して外を眺めたくなる光景だ。


 30分ほど馬車に揺られただろうか。しばらくするとまた大きな壁が見えた。


 「ここから先が貴族街だよ。入るには許可が要るから注意してね」


 レンガの質が違うのだろうか、先ほどまでとは違った色の建物が多く、緑あふれる庭があるお屋敷ばかりで、がらりと印象が変わった。

 馬車の中で注意事項を伝えられ、守るようにと言われた。魔法の使用に関してだとか、他の貴族に対しての対応だとか。顔や家紋などわからない事も多いのでしっかりと聞いておく。


 「さて、ここがパンターナ家の屋敷だ。覚えて迷わないようにしてね」


 ロコチョルの辺境伯の屋敷よりこっちのほうが立派だぞ。庭も綺麗で広いし池がある。来客とかお茶会とか開くからかね?辺境伯の趣味なのか、ずいぶんと見栄を張ったお屋敷に思える。


 「先触れは出しておいたから、直に陛下から返事が来るはずだ、用意ができたら登城しよう」


 えっ、今ついたばかりなのにもういくの?風呂に入ってさっぱりしたいんだけど。


 と思っていたら風呂に入れられた。正装に着替えて身だしなみを整える。馬車に乗り込み登城だ。






 「ふぁ!?なんじゃこりゃ?壁の中に木々がたくさんあるとは……」


 城壁の中は森のような場所だった。大きな池まである。池に囲まれたその真ん中に城が立っていて、池はお堀のような役割を果たしていた。


 庭ってレベルじゃない、庭師の人は手入れが大変だなこれ。


 ランドルフが驚いてる様子を見たジュレップは満足そうな顔をしている。

 今入ってきた側はいわゆる正面玄関だそうで、城の後ろ側は広場になっていて裏口があり、大人数の兵士達が訓練できるスペースになっているそうだ。正面はやさしくお出迎え、後ろは強かに。そういった意味合いがあるのだとか。


 「デンはこのままお城に入ってもいいんですか?」

 「お城の兵士に聞いてみようか」


 入り口に着いた。早速兵士に尋ねると、デンは城の後ろの広場にて待機してもらう事になった。他はそのまま入っていいとお達しがあったとか。デンを広場に連れて行って、兵士と一緒に待機していてもらう。


 城の廊下想像していた以上にでけぇ~。扉も高いし大きいし、開け閉めが大変そう。


 廊下も余計なものが置いてあるわけではない、だが外からの光で煌びやかに見えて、明るく上品な感じだ。

 控え室に通され、メイドが用意したお茶を飲んでいると、王がいる政務室に通された。


 「思ってたより早く呼び出されたね~。そんなに会いたかったのか……」


 ジュレップはぶつぶつとつぶやき始めた。







 中に通されると、金髪マッチョでダンディなちょび髭の男が机に座っていた。その斜め後ろに白髪の白く長いあごひげの老人が立っている。そしてパティスさんもいた。もう一人知らない無精ひげの生えた、鎧を着たおっさんがいる。


 やはりパティスさんはかなりの要職に就いてる人なんだな。


 「あ~、最初に言っておくが、正式な場じゃないので楽にしてくれてかまわん。肩が凝るようなことは極力したくないんでね」


 金髪マッチョが静かに言う。


 「はっ、楽にさせていただきます陛下。パンターナ辺境伯の名代としてまいりました、嫡男のジュレップ・パンターナと申します」

 「堅っ苦しいのはいいって言っただろジュレップ、何度も会ってるだろうが。突拍子もない内容の手紙ばかり送ってきがやって」

 「しかし、こうして初めて会うお客人をお連れしましたので、一応はやっておかないと」


 そういって二人ともにやりと笑い合う。


 「で、そっちが例の子供か」


 あれ?どっかでその台詞聞いた……。


 ガチガチと緊張していたランドルフだったが、その台詞を聞いて、少し気が楽になった。じろりと金髪マッチョがこちらを見る。


 「は、はい!!ランドルフと申します。ご尊顔を拝しまして恐悦至極に存じます」

 「そう緊張するなって。俺はシュタルク・ジャスタ・ルネ・レスタイトだ。わかっているとは思うがこの国の国王だ」


 じっくりと観察するようにこちらを見てくる。


 「ふむ……。そこそこできそうだが……早速試してみるか。広場へ行くぞ、雷狼もそこにいるんだろ?」

 「はい、待機させております」

 「チェルベもそこに呼んでおけ」


 王様はそういって、壁にかけてあった剣を取り腰に挿して部屋を後にする。鎧を着たおっさんの後ろを王様が、その後ろを俺たちがぞろぞろとついて歩いていく。ランドルフは突然の事に何が何やらわからないといった様子だ。移動中の会話はまったくない。


 なぜ広場?剣を差すの?それって戦闘フラグですよね?勘弁してくださいよ~。なんでいきなり戦う事になるわけ?もっとお話して理解を深めていくものじゃないの?俺、正装だよ?


 ランドルフの気分は下がりっぱなし。誰も助けてくれそうにない。ぶつぶつと考えていると広場に着いた。






 「ほう、あいつが言ってた雷狼か」


 広場に来た王様が早速デンを発見する。「でかいな」と言いつつ、ぐるりと回ってうんうんと頷きながら観察している。デンはちょっと困った様子だ。


 「どうだクレイブル?苦労しそうか?」


 国王がデンについて、無精ひげの鎧を着たおっさんに問いかける。


 「かもしれません。ですが私一人で十分に倒せるでしょう」


 なんだとこのおっさん……デンをなめんなよ!?


 「さすがだな」


 その言葉を聞いた国王は大きく頷いて満足そうな顔をしている。そしてこちらに目を向けた。


 「さて、それじゃあ俺と戦ってもらう。お前の実力を見せてみろ」


 なんであんたが戦うの。この国のトップだよね?怪我したらどうするの?面子があるだろうし、もし俺が勝ったら問題だよね。かといって負けたらこっちがダメだ。島の領土を認めてもらえないかもしれない。となると、実力を見せての引き分けに持ち込むか……どうやって引き分けにしよう。


 「言っておくが、気を使う必要はない。手加減せずに全力でかかってこい。問題にはせんから安心しろ」


 ……マジかよ。どうしよ。


 ランドルフは手を上げて質問する事にした。


 「私が魔法を使えるのはご存知ですよね?」

 「もちろん知っている」

 「全力を出しちゃうと……、全力を出さなくても王都が吹き飛びますけど……」


 ……みんな無言になった。


 結界はあったけどあんなに薄いんじゃだめだ。隕石でも落とせばこのあたりは間違いなく吹き飛ぶね。


 「はったりとは思えんが……。ではチェルベが来るまで剣で勝負といこうか。槍が使えると書いてあったぞ?」

 「……では、たしなむ程度で恐縮ですが」

 「期待しているっ!!」


 期待しないでください。それにしてもやるき満々だな~。できれば隣のおっさんをふっとばしたいんだけど。デンを弱いだなんていいやがって。


 そうしてる間に広場に、なんだなんだとぞろぞろ人が集まり始めた。治療師の人も到着したらしい。


 クレイブルとか言われてたおっさんが審判をする。槍を渡された。


 「魔法の使用は禁止!!戦闘不能か降参するまで勝敗は決しないものとする。そして当然だが殺してしまってはいかんぞっ!!」


 最後の言葉に力がこもっており、気迫のこもった大きな声で注意された。


 当たり前だろ。そんなに気にするなら止めろよ。せめて刃をつぶしたやつよこせよ!!相手が殺しにきた奴だったらどうすんの。


 その場で槍を振り回して感触を確かめる。いつものより大きいしちょっと先が重いか。服も正装で動きにくい。上着を脱ぐか。


 「準備はいいか?」


 コクリと頷く。


 「それでは―――始めっ!!!」


 剣道三倍段。相手は剣だ。こちらが三倍有利なはず……、だが油断せずに行こう。


 周りのギャラリーが一斉に声を飛ばす。こちらは完全にアウェーだ。


 「陛下っ!!子供いじめはかっこ悪いですよっ!!」「大人気ないなっ!!」「大人に負けるな~!!」


 ……そうでもないようだ。


 軽く突きを放つと軽くいなされる。ジャブの応酬が続いていたが、このままでは面白くないのでへっぴり腰で突いてみる。すると、槍に撒きつくように剣を繰り出して、絡め取られ弾かれた。

 俺は槍を弾かれた勢いをそのままに、一回転して横なぎを払う。隙だらけと思って、攻め込んできていた王は慌ててガードをする。二人の距離が離れた。

 周りも一瞬静かになり、再び歓声が飛ぶ。


 「やるな~、あの子供」「陛下、びっくりして飛び跳ねてやんの」「子供相手に容赦がない」


 この国の王様なのにみんな言いたい放題だ。


 「腰の入っていない突きは誘い込むためだったか。馬鹿にしているのかと思ったぞ」

 「緊張していたので、たまたまです。槍から手を離さなかった自分を褒めたいですね」

 「クックック。なかなか面白いな。子供だと侮るなと書いてあったが、まさにその通りだった」


 ジュレップめ、なんてことを書きやがる。不意打ち作戦失敗じゃないか。それにしてもこの王様は剣捌きがうまい。マッチョな体格をしてるのに力で攻めてこないから厄介だ。明らかに加減されている。


 「どうみてもかわいらしい子供じゃないですか」

 「見た目に騙されるなという教訓を得たな」

 「見た目通りだと思います」


 会話もそこそこに、じりじりとにじり寄って間合いを詰めていく。王様が仕掛けてきた。

 俺は槍の真ん中を軸にして、クルクルと回し牽制する。


 この槍に慣れてないせいかうまくリーチが生かせない。


 バランスが悪いっ!!なんでそんなにあっさり入り込んでくるんだよ。くっそそれならこっちだって!!


 うまく剣を弾きながら、狙いを王ではなく剣だけに集中する。付かず離れずこちらのやりにくい距離で攻撃を仕掛けてくる。剣を振ってきたタイミングで、思い切り剣に槍の矛先をぶつけてやる。その瞬間に槍を手放し、懐に入った。


 「っ!?くっ!!」


 槍なのに間合いを詰め、さらにその槍を手放したことに驚いた王は、近すぎて剣が振れないので、いったん距離を離そうとする。俺はさらに一歩踏み込んで横に回り込み、腕を掴んで下がろうとする足を大きく払う。


 くらえっ!!大外刈りっ!!


 「ぐぅっ!!」


 受身も取らず、王様は肩から地面に倒れこんだ。だが剣は放していない。無防備に突き出された腕を見て、腕ひしぎ十字固めでもやってやろうかと思ったがやめておいた。力負けしそうだし、もし腕が折れたらさすがに問題だろう。

 広場は静かになった。


 「何が……起きた……」


 起き上がった王様は、なぜ自分が倒れたのかわかっていない様子だった。だが、警戒したまま追撃してこない俺を見て、自ら負けを宣言した。







 「自ら槍を手放すとは」「倒したあの技は一体……」「子供に負ける陛下」「やさしいな~、陛下は」


 ザワザワと周りが騒いでいる。ジュレップも勝つとは思ってなかった様子で、驚いた表情をしている。


 「クレイブル、俺は何をされた?」


 落ち着いた王様はヒゲマッチョに早速質問した。

 

 「はっ、陛下が後ろへ下がろうとするのに合わせて足を引っ掛けたと見えましたが」

 「……言うのは簡単だが、最初から狙っていたとしても合わせるのは難しいぞ」


 王様がチラリとこちらを見る。答え合わせをしろということか?


 「大外刈りという技でして、陛下は一歩下がろうとして体重を片足に乗せていました。その足を大きく払いました」

 「……わかっていたとはいえ……本当にそれだけか?」

 「はい」

 「魔法は使用しておりませんでした」


 いまひとつ納得のいかないといった様子の王様。


 「もし戦場であれば止めを刺されていたかもしれない。俺の負けだ」

 「それをいうなら私も武器を手放しました。どうなっていたことか」

 「お前は魔法使いなんだろ?しかも杖もなく詠唱もしない。ならばまだ戦えるだろ」


 王様はメイドから渡された布で汗を拭きながら話す。


 「ふぅ……、まさか槍を捨てるとは思わなかった」

 「こちらは槍なのに、あれほど簡単に近づかれて大変でしたので苦肉の策でした」

 「お前は小手先ばかりだったからな。近づけまいとして振り回していただけで、切っ先に気持ちが乗っていなかった。ただ邪魔なだけで脅威は感じなかったよ」


 ぐぬぬ~。デンにもすぐ近づかれるんだよな~。それが原因か。


 そのとき一人の男が現れた。


 「陛下、こちらですかな?遅くなりまして申し訳なく……。なにやら人が多いようですが?」

 「やっと来たかチェルベ。こちらこそ急に呼び出してすまんな」

 「いえいえ、陛下のおよびとあらばいつでも。して何用で?この騒ぎと関係ありそうですが」

 「うむ、こやつはランドルフだ。こいつの魔法の腕をみてやってくれ」


 国王に前へ押し出され、紹介されるランドルフ。


 「ほほう、この子が噂の……。チェルベ・マグワイアだ。宮廷魔法士の第三席を任されている」

 「ランドルフと申します。宮廷魔法士殿とお会いできて光栄です」


 チェルベという男は、茶色のローブを着て古木でできた杖を持っている。茶髪に白髪が目立つ渋いおじさんで、体格は細く目も細い。


 「ランドルフ。こいつは土魔法が得意なやつでな、こいつのゴーレムと魔法で戦ってもらいたい」

 「こんな子供にあまり気乗りはしませんが、ちょうど新しいゴーレムの性能を試してみたかったんで実験しても?」

 「存分にやってくれ」

 「えっ!?ちょっと待ってください!!」

 「陛下からの許可は出ました。早速やりましょう。クックック」


 乗り気じゃないって嘘じゃん!!もしかして王様、倒されたこと根に持ってるんじゃないの!?


 ジュレップを見たが、助けてくれそうもない。もう一戦あると聞いた周りはから再び歓声が飛び、再び広場の真ん中へ連れ出されたのだった。

お読みいただきましてありがとうございます

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