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22話

お時間をいただきましてありがとうございます。


3日坊主だと思っていましたが、いつの間にやら一月。続けられるようにがんばります。


 明日には飛空挺に乗って王都へ向かう。なので今日一日この街を探索するのだ。


 「というわけで街を探索してきます。お昼もどこか店で済ませたいと考えてます」

 「わかった、護衛をつけるよ、メイドもね。馬車を用意させよう」

 「すみません、ありがとうございます。お世話になります」


 メイドと護衛つきの馬車で移動。う~ん、自分の立場を勘違いしてしまいそうで怖いな。





 「どちらへ向かわれますか?」

 「魔道具店か組合を見に行きたいと思っています。どちらでもいいので近いほうをお願いします」

 「畏まりました、近くの魔道具店まで出して頂戴」


 馬車が動き出す。やはり衝撃がすごいので魔法で抑える。メイドさんは驚いた様子だ。


 「ランドルフ様は本当に魔法の使い方がお上手なのですね」

 「ありがとうございます。どうも馬車は苦手で、お尻が破裂しそうなので抑えてみました」


 言い方がおかしかったのか、にこやかな笑顔で答えるメイドさん。ここに来て初日に夕食の準備ができたと呼びにきた犬耳メイドさんだ。

 店に着くまで世間話をしながら移動した。






 「おお~、大きな店ですね~」


 馬車を店のそばに止め、メイドさんと護衛の兵士が俺の後ろを歩く。


 そんな風に付き従われると、色々勘違いしちゃうってば。きっとこれも慣れておけというジュレップの考えなんだろうか?


 二階建ての大きな建物に所狭しと魔道具が並べられていて、小さなものから大きなものまで様々なものが展示されている。きちんと整理して置かれているとは思えない。


 ランドルフは店内をうろうろと眺めながら、ずるいとは思うけど空間魔法で魔法陣が刻まれている文字を読み取る。一階は大きい魔道具がメインのようで、箱状の物や丸い形の物が多く展示されている。

 だが調べてみると、箱型の物にも微妙に密閉されていなかったり、凹みがあったり、製作者の性格が出ているようなものが多く見受けられる。規格も統一されていない。


 「よくわからない文字もあるな~。これは……無駄に複雑すぎる。もっと簡素化できるだろうに……」


 う~ん。魔道具ってもっと精密なものかと思ってたけど、意外と適当なんだな~。いや、もはや雑だ。道に落ちてる物に、魔法陣を彫り込んだだけ、みたいな物もあるし……。


 物色していると、この店の店長さんと思われる人物に声を掛けられた。


 「いらっしゃいませ。何かお探しのものがありましたらご案内いたします」


 きっと辺境伯の馬車で来て、後ろにメイドや護衛を従えてるから金持ちが来たと思ったのだろうか。


 「適当に見て回って面白そうなものがあればってだけなので、冷やかしになるかもしれないです」

 「左様でございますか、何かございましたらお声がけを」


 そう言ってそそくさと去っていった。店の接客それでいいのかと思いながらも、自分としては付きまとわれるのもいやなので気にしなかった。メイドさん達も特に何も言わない。そういうものなんだろうか?


 「う~ん……興味を惹くようなものがないな~……」


 大量に水を出すものや、掃除の魔道具、保温の魔道具や冷蔵もあるが値段がものすごく高い。


 一階には面白いものがなかったので二階に上がる。二階はどうやら小さい魔道具がメインのようだ。

 ペンライトのような魔道具や、ライターみたいなもの等が置いてある。


 生活用品みたいなものが多いな、地味に便利だし。一階の物よりも細かくてしっかりとした造りなのに、なんでこっちのほうが安いんだ?


 何に使うものかわからないものも多く、興味を惹かれるものが結構ある。


 「これって何に使うかわかる?」


 店員はいないのでメイドさんに聞いてみる。棒の周りを風がぐるぐる回るだけの魔道具だ。


 「これは恐らくほこりを落とす魔道具ですね。布団などは叩くよりも随分とマシになると思います」


 小さい箒の威力増し増しバージョンってことか。いる人には重宝するんだろうな~、一応買っておくか。


 会計を済ますときに店員に気になったことを聞いてみた。


 「すみません、秘密だったら別に言わなくて結構なんですが、これらの魔道具って何処から仕入れてるんですか?」

 「魔法使いや錬金術士の方が持ち込んでこられることがほとんどですね。安定して作っている工場をお持ちの方もおられます。そちらのほうが助かるんですけどね」

 「ふむふむ。持ち込みの人は店の人がちゃんと審査してから?」

 「もちろんです。危険なものは売り出せません。店の信用にかかわりますので」

 「そうか、ありがとうございました」

 「はい、またお越しくださいませ」


 ……さっきの話だとこの国の商法って結構ゆるいのか?詳しいことはわからないけど、好き放題できるんじゃないのって思うくらいだな~、しっかりと法律が定められてないっぽい気がする。店員の接客もいまひとつだし。





 魔道具店を後にしたランドルフは、昼時になったのでどこか適当な店に案内してもらってみんなで食べることにする。何でもこの街で有名な肉料理の店だとか。綺麗な店ではないが、何処となく野性味を感じる店だ。


 「メイドさんも護衛の人も一緒に食べようよ。私の奢りです」

 「申し訳ありませんが、職務中なので」


 そういわれたが俺が、皆さんが職務中なのに一人で食べているのは心苦しいというと、困った様子だが一緒に食べることになった。


 「ちなみにお昼はどうするつもりだったの?」

 「軽食を用意しております」

 「なるほど」


 お勧めを頼むと、たっぷりとソースがかかった、かなり分厚目のステーキがでてきた。やはりソースはワインでできた物のようで、切ると肉汁がジワリと流れ出す料理にちょうど合う、旨みを引き出すソースだ。辺境伯のところで食べたのと似ている気がする。あっちのほうが味は濃かった気が……。


 「この街は肉料理が主流なので、当家の料理人ももちろん学んでおります。味付けはアクラナス様に合わせているようですよ?」

 「こんなにおいしい肉料理ばかり食べているから、辺境伯はあんなにお腹が出ているんですね」


 そう言うとメイドさんは苦笑した。兵士達も目を逸らしている。肯定も否定もできない様子だ。言ってはまずい事を言ってしまったか。


 最後にパンが出され、これはどうやって食べるのかと思っていると、残ったソースをパンに染み込ませて食べていた。屋敷ではこれはなかったが、行儀が悪いということなのだろうか?店ではみんな普通にさらって綺麗に食べていた。食べてみるとこれもまたおいしかった。先ほどとは違った味に変わり、パンのやわらかい食感が、とろける様な食感に変わってうまく考えられていると思った。


 「おいしかったですね。紹介してくださってありがとうございます」


 お礼を言うと、メイドさんがにこやかな顔で返事をしてくれた。護衛の兵士さんも満足そうだ。








 昼からは組合に行ってみることにした。前回は部屋に通されて、さっさと買い取りだけ済ませて出たので、中をじっくりと見ることができなかった。


 中に入ると、昼間から飲んだくれてる連中が結構いる、あまり人はいないようだ。従者を連れてくる人間が珍しいのか、みんなこちらを見てくる。すると受付のお姉さんが、わざわざ出てきて声を掛けてくれた。


 「ようこそロコチョル組合へ、ご用件がありましたらお伺いいたしますが」

 「組合がどういったところか見てみたかっただけなんだ」

 「そうですか、よろしければご説明しましょうか?」

 「おっ、お願いしていいですか?」

 「畏まりました」


 受付のお姉さんが紙を持ってきて説明をしてくれる。


 基本的に組合は狩人に対しての買い取り業務だと言う事、狩人は個人でも仲間を作っても組合はどちらでもいい。狩人の定義は魔物を主に狩る人の事。

 登録をするしないは自由だが、することをお勧めする。理由は色々あるが、狩人同士のいざこざや、商人との取引に証拠や仲介役として介入し、助けることができるかもしれないとのこと。だが基本的にはノータッチだとか。登録料は取られる。

 狩人のランク分けなどは存在しない。個人や、パーティーで活躍する人は自然と名声が高まるとか。

 狩った魔物は組合に卸すのは決められていることだとか、だが別に卸さなくても罰はない。


 大体は以前、ジュレップに説明されたこととあまり変わってない。御礼を言って中を探索する。テンプレはあるのかひそかに期待しているが……、護衛やメイドさんをつけていて絡まれることはないだろう。

 依頼が書いてある張り紙を見に行く。


 「『火炎竜の討伐、素材を求む』ってそんなんあるんだな~。竜に一度会ってみたいな~」

 「その依頼はずっと出してありまして、誰も討伐はなしえてません。もはや飾りと化してます」


 受付のお姉さんが説明してくれる。昼時で暇なのかな?


 「それでいいのかよ……。おっ、剣歯狐あるじゃん。ラブカ?どんな生き物だ?」

 「ラブカとは海に生息する鮫の一種で、うねうねと動く細長く大きい体に、鋭い牙を持つ生物ですね」


 すらすらと答えてくれる優秀なお姉さん。


 「基本的に張り出されているものは、緊急のものだったり、滅多に討伐されないものだったりといったものがほとんどです」


 おっ、家畜を魔物から守ってくれって依頼もあるな。動物の被害とは違うから大変だな~。薬草採取は……ないな。


 「ちなみにこの辺だとどんな魔物が多いの?討伐お勧めの魔物は?」

 「数が多いのですと、道から外れるとすぐに遭遇する跳びウサギでしょうか?」

 「飛んで体当たりしてくるとか?」

 「草むらに多く生息していて、主に後ろ足で、鎧が凹むほどの回し蹴りを放ってきます。繁殖力が高く、地面が穴ぼこになりますし、それを狙ってゴブリンが現れたりするので、ちょっとした困ったちゃんですね」

 「なるほど」

 「お勧めはオークでしょうか?肉はよく消費されますし、危険ではありますが買い取り額は確か……。昨日の値段で1kg銀貨2枚銅貨8枚ですね」

 「オークって豚顔で女性の敵のあのオーク?木じゃなくて?」

 「はい、ご存知のオークです。憎き女性の敵、絶滅すればいいのに……」


 お姉さん暗い影が出てますよ!!それで勧めたのか?やっぱりオークはそういう認識でいいのか~。

 でもその肉を食べるってどうなのよ?この世界には畜産業もあって普通の豚もいるはずだぞ。なのになんでわざわざそんなのを……食文化は深いってことか。『こんなのを最初に食べた人は誰だ?』って疑問に思う食材だってあるもんな~。


 結局狩人に絡まれる事もなく、お礼を言って無事に組合を後にした。


 オークか、デンと狩りにいくのも面白いかもしれないな。






 屋敷に帰ってくると、エレインちゃんが話しかけてきた。奥様とナダン、そしてデンも一緒だ。


 「どこいってたの?せっかく遊ぼうと思ってたのに~」

 「ごめんね、初めて来たから街を探索してたんだよ」

 「しょうがないから、デンと一緒に遊んでたんだよ?」

 「えっ、デン?」

 「うぉふ!!」


 ほうほう、デンが懐くとは……魔性の女ですな。


 「デンが迷惑かけませんでしたか?」

 「いいえ、子供達にせがまれてつい勝手に遊んでしまって……ごめんなさいね」

 「それはかまいませんが。デンがよく遊んでくれたな~と」

 「デンは賢いから、ちゃんとおりこうにしてたもんね~?」

 「うぉふ~ん!!」


 デンに抱きつくエレインちゃん。デンもうれしそうにしている。あれ?似たような光景を島で……。


 「デンが人に懐くなんて初めて見たものですから。こちらこそ遊んで頂いてありがとうございます」


 ナダンは相変わらず母の陰に隠れてこちらを睨んでいる。ナダンもデンと遊んでいたようだ。

 

 それから少し一緒に遊んで夕飯の時間になった。馬車を改造しようと思ったんだけどまぁいっか~。


 夕食の席で明日の予定をジュレップに軽く説明される。朝早く街の郊外へ出て、そこで飛空挺へのる。そのまま明後日のお昼過ぎには王都につく予定だ。辺境伯の街から王都まで一日半のフライト。結構長いな。

 エレインちゃんはその話を寂しそうに聞いていた。逆にナダンは早く出て行けと言わんばかりだ。

 せっかく会えた年の近い子供だったからよけいにだろう。だが3年もすれば12歳になり、王都の学校に通うことになるという。そこでぜひ友達を増やしてくれと思う。





 翌朝、出発するときに奥様とエレインが見送ってくれた。ナダンはいない、まだ寝ているようだ。辺境伯も家令も二日前からいない。


 「ねえ、ランドルフ。絶対にまた会いましょうね?」

 「お互い何事もなければ、いつでも会えますよ。って前も言いましたよね?」

 「言ったけど、絶対だよ?」

 「わかりましたって」

 「もぉ~」


 ちゃんと聞いてもらえてないことにちょっと怒り気味のエレイン。


 「奥様、大変お世話になりました。辺境伯にもよろしくお伝えください」

 「ええ、ランドルフ君も元気でね。次に会うときは立派な貴族になってるわね」

 「実感は沸きませんが、精一杯がんばります」

 「また会いましょう」


 「出発っ!!」


 ジュレップの声で馬車が動き出す。離れていく俺たちにエレインは必死に手を振り「またねぇ~!!」と叫んでいた。俺は馬車から顔を出して「また~」と叫び返し手を振った。

お読みいただきましてありがとうございます。


オークの肉は珍味。

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