18話
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服を着替えて商業組合に行くことになったランドルフ。
組合とは、言い換えれば市場の総称である。狩人達によって討伐された獲物を卸す場所で、要するに卸売市場のような場所だ。
狩人が持ってきた獲物を買い取り窓口で買い取り、それらを市場に卸し、組合に加入している商人達が競売取引をする。それらをまとめて行っている場所のため、組合加入者が集まるから組合と呼ばれている。
買い取り窓口は夕方まで受け付けている。そのため、組合には常に市場に張り付いている人がいる。
取引は朝と夜あるが、大きい組合ではいつ何時いい物が流れ込んでくるかわからないからだ。なので各商店は組合に囲んで張り付くように店が立ち並んでいる。
ちなみにスプモーニ商会はその組合のまとめ役で、買い取り窓口をやっている。
持ち込まれた物の値段を公平に判断して市場に流すのが主な仕事。
相場を見て買い取り値段を上げ下げし、バランスを保っている。
市場に流れにくいものなどは依頼として張り出されており、基本的に買い取り価格が高く、それを見た狩人達が討伐に行く、なんてことも多い。
色々な問題で狩ってはいけない獲物もいたりする。
優秀な狩人は商会のお抱えになったりすることもある。
組合には加入してても直接商会に売りに行く人もいないことも無いが、あまりいい顔はされない。罰はないが法律はあって、一度は組合を通すシステムになっている。独占や暴落、環境問題などを防ぐためだ。
狩人達はランキングなどのような区分わけはされていない。
一人で狩る人もいれば、仲間を作って狩る人もいる。だが組合はあくまで買い取り競売取引をするだけ、それらには基本的に干渉しないのだ。
ジュレップに説明してもらったところはそんな感じだ。狩人も儲けたいなら相場を気にして狩りにいかないとだめな感じなのか~。翌日に買い取り値段が下がってたら損するじゃん。逆に増えることもあるかもだけど。
その場で売るか確保しておくか、発達した冷凍技術もないし、生ものは鮮度の問題もあるから確保がしんどいしな。
やっぱり薬草採取とかあるのだろか?島の山にはファンタジー的な薬草は無いってことだったが……。森にはあるかもしれないな。調査が進めばわかるだろう。
「そうそう、君の事は一応隠しておくことにするから。これは重要なことね」
「ふぇ?……自分で言うのもなんですが、凄腕といわれる魔法使いを、商人や他国が囲いにきたりするのを防ぐためですか?」
「それもあるけど、最悪の場合暗殺とかもあるかもしれないね~」
そんなことをニコニコと話すなよっ!!
「し、島にいれば安心なんじゃ……?」
「島だからすぐに助けに行けない。情報が洩れれば四六時中狙われ無いともいえないよ?この国に取られて後の脅威になるならってね」
「用心はしておきます」
「早く陛下に爵位を戴いて、領土を正式に認めてもらい、安心して暮らせるように家臣を増やしていかないとね」
「辺境伯に全部任せればいいような気がしてきました」
「ふふっ、君の事は手元においておきたいけど、島は離れてるから統治がめんどうなのでね。君任せるよ」
さらっと正直にひどいことを言ったな。要するに飛び地の管理はめんどくさいってことだろ?
「では被り物をしていきますか」
「それだと逆に不自然だよ。こういうのは自然体が一番さ。何か聞かれたら私の小姓って答えておけばいいんじゃない?」
「そんな適当な……」
組合は商店が並ぶ市場とかまた違った活気があった。依頼を眺めてる人。パーティーで話し合ってる人。獲物を売りに来る人。それを運び込み解体する場所や、取引が行われている場所。集まった人を目当てに商売をする人。食堂や酒場もある。
「すごい活気ですね~。やっぱり酒場ってあるんですね」
「興味があるかもしれないけど、まだ君は飲まないほうがいいかもしれないね」
すみません。そういう意味でいったんじゃないんです。
「おい、あれって剣歯狐か!?」 「店長に連絡しろ!!剣歯狐が市場に流れるぞっ!!」 「結構いい状態じゃないか?」 「一匹丸々だと?」
兵士が持ってきた剣歯狐を見てあたりはザワザワし、こちらは注目の的である。そんな様子もお構いなしにジュレップは受付に行くと、なにやら話し込んでいた。そしてしばらくすると、別室へと通された。
即効で目立ってるんっすけど……。大丈夫なんっすかねこれ?
「ようこそジュレップ様。ここを任されております、メリトンと申します。お話は会長から伺っております」
「そうか。早速で悪いが、剣歯狐の査定を頼む。二匹は卸す。一匹解体して素材が欲しいのだが頼める?」
「ありがとうございます。もちろんでございます。少々お時間を。おい、番頭に知らせろ。丁寧に運べよ」
やってきた筋骨隆々な男が剣歯狐を運んでいく。なんで上半身裸?
「それと、先日持ち込んでいただいた剣歯狐のほうなんですが」
「それはここにいるランドルフ君と話をしてくれ」
「ほう、あなたが……。先日のといい今回のといい、かなり状態の良いものをいただきましてずいぶんと助かりました。ありがとうございます」
「いえ、うまく倒すのに苦労しましたが……。そう言っていただけるとがんばった甲斐があります」
「よほどいい腕前をしておられるのでしょう。ささっ、遠慮なくこちらへ」
ジュレップの後ろに立っていた俺を前に呼ぶ。
子供の俺にまで丁寧な態度。こういう人を見た目で判断せずに対応できるのはいいよね。テンプレだと馬鹿にされたりするもんだと思ってたけど……。
「良いものを戴いたと会長は喜んでおりまして、直接ご挨拶できないことを悔やんでおられたと聞いております。そして島への支援についてですが……こちらにまとめておきました。ご確認ください」
茶色いザラザラの紙を渡される。
もしかして木綿でできてるって奴?今はいいか。どんな内容かなっと。
食料、家具、武器、道具類、衣類等々いろんな項目があったが。これはいくら何でももらいすぎでは……。
「もらいすぎでは?」
「今後の友好と発展を期待しておりますし、今回持ち込まれた分で我が商会も儲けさせてもらっておりますのでお気になさらず」
「ふむ。しかし、まだどうなるかはわからないので、決まったら改めてお願いします」
「こちらで準備だけは済ませて、お渡しできるようにはしておきますので、いつでもお声掛けくださいませ」
「ご丁寧にどうも。ありがとうございます」
丁寧に畏まられるので、思わずこちらも頭を下げてしまった。出されたお茶を飲みながら軽い話をしていると査定が終わったようだ。番頭さんと思われる人が入ってきて説明してくれた。
「こちらに査定と評価について書かれております。こちらにお金が入っておりますのでご確認ください」
俺が見てもわからないのでジュレップに聞きながら判断する。
「かなり色をつけてくれたみたいだね」
「はい、最高品質で査定させていただきました。解体した者は、あれほどいい状態の剣歯狐は見たことがないと言ってましたよ」
「どれどれ……一匹金貨210枚?え?」
「取引ではその倍以上はすると予想されております」
「は~……。筋とか腱ってのは何に使うんだろ」
「弓や楽器の素材になったりするね」
色々使うんだな~。でもこれでまとまったお金が手に入った。色々見て回ろっと!!
「解体された素材は兵士の方にお渡ししても?」
「それで頼むよ」
武器屋防具になりそうな素材以外は売り払った。その結果、ザンテ船長からもらったお金を含めて手元には、金貨441枚と銀貨8枚。きっと銅貨以下はキリのいい数字にまとめてくれたのであろう。日本円で4418万円である。
「またのお越し、お待ちしております」
頭を下げられ、見送られて組合を後にした。
「次はどこにいくんだい?」
「魔道具か、武器か防具か、薬屋かですね」
「近くに武器屋があるはずだ、武器屋でいい?」
「わかりました」
武器屋に入ると、店の奥のほうから熱気と金属を叩くが聞こえてくる。
「すみませ~ん。ミスリル銀見せてくださ~い」
「いらっしゃい。ミスリル銀は取り扱っているが子供にはまだ早いと思うぞ」
出迎えてくれたのは長い髭を蓄えたドワーフだ。
やっぱりファンタジーはこうでなくっちゃな!!でもあの髭、長すぎて鍛冶の邪魔にならないんだろうか?
「あ、そういうのはいいので。とにかく見せてください」
大人のジュレップが同伴しているためか、怪訝な顔をしながらも教えてくれた。
「そこの置いてある剣はミスリル銀製だ。魔力を上手く扱えるものじゃないと真価は発揮できんがな」
すこし馬鹿にされたように言われる。別になんとも思わないが持って感触を確かめる。
これがミスリル。よし、覚えたぞ。折角だし魔力を流してみるか。
ただ流すだけでなく、成分も調べるように流す。すると剣が薄緑の淡い光を放ちだした。
「お、おい。剣をもてたのも驚きだがその輝きは……。おめぇ、何もんだ…?」
「さすがランドルフ君なんでもありだね~」
「それほどでも~。で、これってどんな効果があるんです?」
「わからないでやったってのかっ!!」
ミスリルを扱えるというのは、一定以上の魔力を保有した実力者である証。同調するのが難しいといわれている。その効果は物によって様々であるが、この剣の場合は少し重いが、切れ味が鋭くなり、自動で修復するというものだった。
「へぇ~。まっ、私がほしいのは杖とか槍なんですけどね」
どういう仕組みでそうなってるのかは気になったが、剣には興味もないので元の場所に戻した。
「杖ってありません?」
「杖はこっちだ。じっくり選んでいってくれ」
小馬鹿にした態度はなくなり、しっかり対応してくれるようになったドワーフ。杖は傘立てに入ってる傘のごとく置いてあった。
ふ~む……。一般的な棒状で、木でできて中に魔石が埋め込まれていたり、金属にはめ込まれていたり…指輪?ネックレス?いろんなタイプがあるんだな~。
棒状のを選んで持ち、魔力をこめる。すると地面にバケツをぶちまけたように水がこぼれてしまった。
「うわっと!!ちょっと魔力流しただけなのに!!」
ジュレップは何も言わないが、ドワーフは驚いている。
「その杖は魔力を流すのが難しい奴なんだが、おまえさんすごいな……」
「水こぼしちゃってすみません。乾かしますね」
杖を使ってあっさりと乾かす。
杖ってのは使い勝手がいいな~。円じゃなくて棒状なのになんでだろう?放出するのに適した形なのかな?魔力が抜けていく感じだったからきっとそうだろう。
「おじさん。ここで武器って作ってもらえる?」
「かまわねぇが……。何を作るんだ?言っちゃなんだがここよりいい武器屋はあるぞ?」
「ここでいいよ。今考え付いたんだけど、杖と槍を混ぜたような武器を作ってほしいんだっ」
「ほう……。考えとしては杖の先に刃をつけるってことでいいのか?」
「それとは逆。槍に杖の効果を―――」
槍の持ち手部分に魔石をつけて、刃の部分から風の刃を飛ばせるようにしてもらおうと考えた。
「それだと刃の付け根の部分に魔石をくっつけて溜め込むようにしないとだな~。そうなると耐久力がない槍になってしまう。振ったら飛ばすようにはできるだろうが、二、三かち合えば壊れてしまうかもしれん。難しいな」
「試作でいいからお願い。壊れても気にしないし」
「すぐ壊れてしまうのを渡すのもまずいんだが……」
「ならできたら私宛に渡すようにしてくれ。明日にはこの街を離れるからできるまで待つわけにもいかない」
「むむっ、そうでした。ならおじさん研究してよ。お金は渡しておくから!!はいこれっ!!」
渡された重そうな袋の中身を確認するドワーフ。
「これ全部金貨か。豪儀なこった。わかった、おめぇさんの名前は?」
「ランドルフです。こちらはジュレップ様」
「ジュレップっておめぇ……辺境伯の息子……これは失礼しやしたっ!!」
「気にしないでくれ。私はただの付き添いだ。さっきも言ったができたら私宛に渡してくれればいいよ」
「わ、わかりやした。あっしの名前はガントっていいやす。ここを仕切っておりやす。お見知りおきを」
金貨400枚入った袋を渡したランドルフ。残りは金貨41枚と銀貨8枚。
「あとさ、いい防具屋って知らない?」
「金属だったらここでも作れるぞ。革細工なら裏手にあるところがいい。ここと提携してるぞ」
「革を頼みたいんだ、ありがとう!!行ってみるよ」
店に入ると人間の女性が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。どういうのがいいか見本を見てから決めてね」
ちょっとそっけない態度だ。だが置いてある見本はすばらしい。ぴっちりとした隙間のない革でできた防具がある。
「あの~。剣歯狐の革で防具を作ってほしいんですけど」
「えっ!!剣歯狐!?滅多に出回らない超高級素材じゃない!!」
「持ってきているので……これです」
食いつくように近づいてきて、素材を眺める。
「防具といっても外套をそれで作ってほしいんですけど」
「寒くなる前にってことね。一週間で作る。それでいい?」
「何で外套。島では必要ないだろうに……。すまないが、明日にはこの街を出ることになっている。できたら辺境伯の屋敷のジュレップ宛に届けてくれ」
「ジュレップ様?ご本人でしたか!?これは失礼を」
「気にしなくていいよ。ただの付き添いだから」
「お金はいくらです?」
「そうね……。とりあえず銀貨8枚でいいわ」
思ったより安いな。
「もし素材が余ったなら差し上げます」
「えっ!?本当!?じゃあちょっと待って……大きさはあなたに合わせたのでいいの?」
革をじっと眺める。きっとどれくらい取れるか考えてるんだろう。
「はい、かまいません。でも少し大きめでお願いします」
「……ならタダでいいわ」
「えっ!?それはちょっと悪い気が……」
「いいの。余った素材で財布とか作ればかなりの儲けになるし。むしろお金を払いたいくらい!!」
「はあ…?そんなもんなんですかね?」
その後サイズを測ってもらい、店を後にした。
ふふふ、出来上がったら灰色のコートが手に入るぜ……。武器も研究してもらって、理想の形になるな。手に入れたら島の北西の森でも行ってみるか。
日も暮れてきたので宿屋に帰る。他は回れなかったがなかなかの収穫があったと個人的に満足だ。
「つれまわった私が言うのもなんだけど。王都に行けばもっといいところは多いんだけど」
「……ま、まあいいんです。早くほしかったし気にしない……」
「後ろで見守るだけって決めてたから何も言わなかったけどね」
早く手に入ればと思って浮かれてその場で頼んじゃったよ。
「あと手に入れたお金を一気に使い果たしてしまいそうになるのはダメだと思うな~」
で、でも研究が進めば後々ねっ!?
「年中暖かい島で外套っているのかな?」
等々、ジュレップから小言をもらいその日を終えたのであった。
そして翌日、辺境伯の住まう館に向けて出発したのである。
読んでいただきありがとうございます。
組合は大きな街ごとにあります。小さな村などには滅多にありません。




