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14話

ちょっとグロいかも?


 「失礼しますっ!!ジュレップ様っ!!敵襲ですっ!!」


 ノック音が聞こえてすぐにドアが開けられ、船員の一人が報告に来た。


 「いってぇ~!!」


 部屋から出ようとしていた俺は、勢いよくあけられたドアに思い切りぶつかってしまった。


 「状況を」

 「ハッ。襲ってきたのは短刀魚の群れです。運悪く突っ込んでしまったようでして、逃げ遅れた作業をしていたものたちが怪我をしており、護衛艦で迎撃しておりますが、数が多いので殲滅まで時間がかかるかと」


 無視すんなっ!!いってぇ~な。


 短刀魚とはそのまんまで、頭に鋭いナイフの様な物が付いている海面を泳ぐ魚である。鳥などのほかの生物から身を守るためだとされており、普段は温厚で外敵に教われない限り襲ってくることは無い。


 船長の言ってた魚かな?ということは群れの中に船が突っ込んじゃったってことか~。船長は事故みたいなものだって言ってたしね。

 この船とかは頑丈だけど、痛んでしまうのは当然だしあまりよくないだろう。


 漁船の天敵と言える魚で、船が沈む一番の原因がこいつだとされている。海流に乗って移動する魚で、飛び跳ねて人を攻撃するだけでなく、船に体当たりを仕掛けてくるので船底に穴が開き、落ちた人も八つ裂きにされる。

 よく凝らしてみないと海の中なので存在がわかりにくい。なのでこいつのいない海域を熟知していないと死活問題になる危険な魚だ。

 そしてかなりしつこい。こいつらの好む海流の外に出るまでしつこく追ってくる。

 だが悪いことばかりではない。こいつがいるおかげで逆に大きな危険生物は察知してその海域に入ってこない。その付近はある意味安全とも言える。


 「一気に突っ切って逃げることは可能ですか?」

 「先ほど海流に乗ったばかりでして、抜けるのにも少し時間がかかるかと」

 「生贄用の大きな肉の塊なんてのは船に積んでないでしょうし……ふ~む」


 こっちみんなっ!!


 痛みで蹲っている俺を見たジュレップの考えは大体わかる。雷を使う魔法使いはいない。海の中に火で攻撃しても意味が無い。相手が諦めるまで風の刃や槍で突いてチマチマ倒すか、生贄を捧げて、敵は死んだと思わせる。そうしてる間にさっさと逃げることだ。


 「これで貸しを一つ減らすということで」

 「君を送る為でもあるんだけど」

 「群れの中に突っ込んだのはそっちの不手際でしょ?」

 「そういわれると辛いね~。しかし、なかなか言うようになったね。成長を感じられて私もうれしいよ」


 うっ、そうやってニコニコ言われるの怖いってばっ!!後で何されるか……。ってかそもそも応戦せずにみんな船の中に逃げればいいのに……。でも逃げ遅れた人もいるならそういうわけにはいかないか。


 「んじゃ、倒しに行ってきますっ!!」


 ササッとジュレップから逃げるように部屋をでて外に出る。既に結構魚が打ち上げられている。外で昼寝をしていたデンが叩き落としたり、雷撃をとばして奮闘してくれているようだ。だが怪我人も見られる。早く援護しないと。


 「怪我人をさっさと中に入れろ!!」 「逃げ遅れた奴がまだいるんだっ!!」 「高いところへ上がれっ!!」


 いきなりの襲撃で。休憩中や警備の兵士達、作業をしていた人達が逃げ遅れたりで大変なことになっている。まずは結界を張る。空間魔法の一種だと思われる、見えない壁を意識する。気分はパントマイムだ。


 「っ!?」

 「今のうちに怪我人を中にっ!!」

 「君がやったのか!?すまんっ!!助かったっ!!」


 先頭を行く前の船が一番襲われている。後ろの船は大丈夫そうだ。デンもこちらにやってきた。


 「電気ショック漁法は禁止されてますよっと!!」


 いつも(・・・)のように電気を海面に流し、面で制圧する。電気を浴びた魚が浮いてきて一気に静かになった。倒し損ねた奴は逃げたようだ。


 有害な奴は対象外だっけ?忘れたわ。


 「すげぇ」 「あっさり全滅かよ」 「雷を操るなんて・・・」


 「デンもよくがんばったなっ!!偉いぞっ!!」

 「うぉっふ!!」


 よしよしとデンの頭を撫でていると、静かになったタイミングを見計らってジュレップもやってきた。


 「危険ですっ!!まだ外に出てはっ」

 「かまわん。それよりも怪我人の手当てを先に、船の掃除は後だ。前の船はどうなった?状況まとめっ!!」


 兵士達に次々と命令を出す。


 「ありがとう。助かったよ」

 「この魚って食べられるんですか?見たことないもので」

 「……ふっ、あまり聞いたこと無いねぇ。後で誰かに聞いてみよう」


 こんなときに何を暢気な、といった様子のジュレップ。

 デンは魚の匂いを嗅いでいたが興味がなくなったようだ。


 「できれば一度食べてみたいですね」

 「それよりも前から聞こうと思ってたんだけど、雷を出せるって事は、君は天候を操れたりするのかい?」

 「天候ですか?雨を降らすとかならできなくは無いと思いますけど……」


 そう言ったとたん、ジュレップは珍しく、いつものニコニコ笑顔が少し険しい表情になった。


 「もし君が天候を操れるなら、本国で「報告しますっ!!」


 何かを言いかけたが兵士が報告を伝えにきた。


 「軽傷16名、重症2名。船の状態は問題なく航行可能とのことです」

 「ご苦労。重症2名の状態はどんなもの?」

 「はっ、両名ともに腹に短刀魚が刺さっており、出血がひどく、意識はありますが無理に動かすことができない状態であります。現在治療に当たっておりますが詳しいことまではわかりません」


 腹に刺さるってえぐい……。内臓が傷ついてたりして無理に貫いたりしたら一気に出血して危険だもんな。


 「見に行ってもいいですか?こういうときに不謹慎かもしれませんけど、治療魔法を見てみたいです」

 「別にいいよ。私も連れて行ってくれ」


 飛んで前の船に飛び移る。


 切り傷や擦り傷はいつもデンと組み手するときになるから、それくらいは自分で治療してたけど。大きな怪我とかをしたことがないからなぁ。ちゃんとした治療魔法を見て勉強しよう。


 部屋に入ると血の匂いが漂っていた。青い表情の兵士が仰向けに寝転がっている。


 「大丈夫なのか?」

 「出血は止まりましたが、内臓が傷ついていて、かなりの量を流しましたので危険な状態です」


 治療を続けたまま船医が話す。まだ傷口が塞がっていないのか必死の治療が続けられている。船医は一人なのか二人の止血をしたところで作業が中断している様子で、片方は放置された状態だ。


 「もう一人の船医はどうした?」

 「軽傷者の治療に当たっています」

 「えっ!?」


 信じられない話を聞いてしまった。


 トリアージはどうした?重傷者を先にやるだろ普通っ!!


 この世界の文明度合いは良くわからない。中世のようだけど近代的に発達した部分もある。とにかくこのまま放置されている状態では危険だ。


 「私が治療します」


 俺がそういうと、治療を続けている船医はジュレップのほうをちらりと見た。


 「かまわん。助けてやってくれ」


 苦しそうな兵士に近づく。本当に止血だけやったようだ。まだ他に痛んでいる臓器がある。

 まずは消毒をして、あふれた余分な血を取り除く。

 ゆっくりとだがしっかりと治るように、健康な状態を想像する。


 「ふぅ……これで大丈夫だと思います。痛みはありませんか?」


 兵士は起き上がって軽く体を動かして確認する。


 「ああ、塞がったところがちょっと痒いくらいで痛みは無いよ。ありがとう、助かった」

 「安静にしていてください。肉を食べて血を増やすようにしてくださいね。でも消化がいい食べ物のほうがいいかも」


 素人知識で治療してしまって大丈夫かと思ったがうまくいってよかった。魔法マジ万能。


 横ではまだ治療が続けられていた。それほど重症だったのかな?同じような具合に見えたけど。


 「そ、そんなに早く治療を、しかも傷口が見あたらないほど綺麗に……」

 「さすがランドルフ君。治療の腕も一流だね~」

 「普段は切り傷とかばかりで、これほどの治療はやったことがないんですけど。うまくいってよかったです」


 もう一人の治療も無事終えたようだ。なかなかに貴重な経験をさせてもらったが。自分で言い出したことだけど、免許もなしに治療してよかったのだろうか?


 「めんきょ?」

 「一定の知識や技術、経験を持っていると認められた証というか、信頼のおける人だという証明になるものです」

 「そういったものはないな~。治療自体は誰でもできるし、うまくできる人は自然と名前も売れていくからねぇ~。でもそれは面白い考えだね」

 「しかしそれだと、素人が間違った治療をすることで却って悪化することもあるかと思いますけど」

 「みんな死ぬよりはましだと思っているのが普通の考えじゃないかな?」


 そ、そうなのか。ちょっとドン引き。魔物に襲われたりするのが普通な世界だから四の五の言ってられないのかな?この世界は魔法があるから倫理観や技術があやふやでマッチしてない部分を感じるな~。なんかこう、ちぐはぐなんだよな~。


 「それにしても重傷者を先に治療する方が先だと思うんですけど」

 「重要人物や、すぐ治せる人を治して動ける人数を増やしたほうがって思うけど?」


 場合によりけりだけどなんかおかしいよ。重傷者放って置くってことなの?死んじゃうよ?ありえない。


 「助かるかもしれない命を見捨てるというのは理解できません」

 「見捨てるわけじゃないよ。戦をしてると人手がほしいしね。ここは一応軍船だから」


 軍だから考え方が合わないってことなの?魔法ですぐ治るからってそんなのなんかおかしいよ。


 「納得できません」

 「これから学んでいけばいいよ」


 今までで一番腹が立つニコニコ笑顔だ。子ども扱い……されて当然か。見た目子供だしね。


 お礼の言葉をもらったので部屋に戻って休むことにした。

 戻るときに、「これも貸しを返す一つにしなくていいのかい?」と言われたときカッとなってしまったが静かに押さえ、「そう思うならそれで結構です」と言って足早に去った。


 まだ貸しはあるってか?そりゃそうだけどもさ……。そういうことじゃなくてっ!!くそっ、腹が立つ!!


 「ああっーー!!もうっ!!」






 それから度々別の魔物に襲われたりはしたが。兵士の活躍で大きな問題も無く。食事が豪華になったこともあったが。順調な航海を続けていた。

 そして一週間が過ぎた頃、陸地が見えた。


 最初は甲板の上でお昼寝~とかやってたけど、やっぱり海って危険なんだなぁ~。魔物も結構襲ってくるし。漁業が盛んだって言ってたけど。これじゃ安全が確認されている海域じゃないと漁ができないよ。みんなきっと経験で理解しあってるんだろうな~。すごい。


 港について、船から下りて陸に足をつけると。ジュレップはいつもの笑顔でこう言った。


 「ようこそレスタイト王国へ。ここはパンターナ領最大の港町コラプッタさ」

読んでいただきありがとうございます。

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