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11話

ブックマーク登録ありがとうございます。感謝感激です!!


 みっちりと詰め込み教育をされて一月、調査はまだ難航しているようだ。この体は物覚えがよく、俺はほとんどの事をマスターしてしまった。だが文字はまだ覚えきれていない。読み書きはできるようにはなったが、どういう意味につながるのか等の独特の言い回しは解釈の仕方が難しい。

 礼儀作法や、ダンスなどはあっさり覚えられた。できてしまうと「飲み込みが早いので教えがいがある」と次から次へ課題を課されていった。


 「も~やだっ!!のんびりしたい!!ほとんど理解できたんだからもういいでしょう!?」

 「確かに基礎は終えてます。少し不安はありますが……、後は政治・経済・歴史などを覚えれば終わりです。これは追々でもいいでしょう」


 パティスさんから許可が出たのでデンと遊ぶことにする。草原を走り回り、組み手をしたり、狩りに出かけたり、かまってやることができなかった分を取り戻すかのようにはしゃぎまわった。


 船長は島に来て三日ほどですぐに帰って行ってしまった。もっと海の話を聞きたかった。




 ベネディッタさんにも話を聞けた。そして俺への認識は、『魔力量のおかしい子供』として若干引き気味に接せられた。「うまく隠してるつもりかもしれないけど……。平常時にそれだけ魔力が出てれば、近くに寄ればわかるわ」と言われた。解せぬ。

 エルフは魔力量が多いことで有名な種族。腕前もぴか一である。そのエルフでさえ計り知れない量を持っているという。


 魔力抑えてるんだけどなぁ~。まだまだ精進が足りないか。


 魔法の腕前も見てみたいといわれたので、ついでに港を拡張しようと前回同様岸壁を切り取り、海に沈める。開けた土地を作って道と倉庫を生やすと。


 「あなた…やっぱり変よ…」

 「なんでですか?普通に岸壁を切り取っただけじゃないですか!!」

 「何で土魔法で時間も掛けずあっさりと切り取れるの!!おかしいでしょ!!船と同じほどの岩を浮かせるって何!!?しかも無詠唱で!!」

 「あれは土魔法ではありません。空間魔法です」

 「えっ?」

 「何か?」

 「くうかん魔法???」


 説明がめんどくさいので無視した。それから燃費もおかしいといわれた。魔力の放出量と結果がエルフの常識を超えているとか。他の人より燃費いいならいいじゃん?無詠唱もできない人がほとんどだと言う。詠唱によってイメージを固め、精神統一をして放つのが普通らしい。


 「出来上がりの形がわかってるだけなんだけどなぁ~」というと呆れられた。


 「有名で化け物といわれる魔法使いが何人か居るの。そのうちの一人と会った事があるけどあなたはそれ以上で異常なのよ?」


 そう言われて、思わず手を額に当てて目を瞑ってしまった。さらに追い討ちをかける言葉が飛んできた。


 「その人達はみんなエルフだったり、竜人だったり、人魚だったり。確か魔族出身が一番多かったと思うけど……。とにかく人間は一人も居なかったはずよ。なのにそんなことができるなんて……信じられない……」


 さすがに変だのおかしいだのを連呼し、落ち込んだ俺を見て悪いと思ったのか、それ以降は普通に接してくれたが、やはりどこか遠慮されている。こっちはもっとお近づきになりたいのに!!でもいい匂いだったよエルフ臭。





 そして、アクラナス・パンターナ辺境伯の息子のジュレップ。彼は苦手だ。今までもたびたび質問はされていたが、教育から開放された私を見ると遠慮しなくなり、事あるごとに質問攻めにされる。しかもいつもニコニコしていて胡散臭い。

 たまに抜き打ちテストみたいに、覚えたことを遠まわしに質問され、答えさせられる。こいつ絶対腹黒いに違いない。パワハラじゃね?

 その他街についてこれはどういう意味があるのかとか。魔法はどこで覚えた、あの料理は云々かんぬんといった感じで困っている。きっとこっちが本命の質問だなと思う。




 そして気になっているのがみんな当たり前のように使っている魔道具だ。正直気になって仕方がなかった。

 大体この砦とか長屋って間取りは立派だけど家具も何もない。メイドさんたちが持ち運んだ荷物はそこまで多くない。ジュレップなんてこちらで部屋は用意してあるが、わざわざ船に戻って寝ているくらいだ。


 魔道具がなくてもみんな魔法が使えるので必要ないかもしれない。しかしずっと魔法を使っていれば、ずっと走りっぱなしなのと同じで枯渇し倒れこんでしまう。なので魔道具を使い、魔力を増幅し安定した放出量で消費を抑え込む。

 ガスコンロのような魔道具を見せてもらった。ずいぶんと昔はかまどで薪に火をつけていたが、魔道具のおかげで利便性が向上し、持ち運びも便利なのでどこでも火が使えるし、手も空くので重宝しているんだとか。

 水も火も、掃除も小さな竜巻を発生させて落ちているゴミを集めるなど、物を多く持ち込まなくても最低限は大丈夫なのだ。


 もちろん不満がないわけではない。船長がさっさと帰ったのは家具だけでなく、衣服やインテリア、雑貨などの荷物を再び届けに来る為だそうだ。


 ということは。それって俺……勝手に借金してるって事?


 ジュレップに聞いてみると、「寄子になるんだから、これくらいはしてあげないとね。申し訳ないと思うならそのうち何かの形で返してくれればいいよ」とニコニコしながら言われた。いつの間にか自然と貸しを作った形になっていた。


 押し売りじゃないかこれ!!でも必要なことだし、調査や教育を受けてる時点で既に手遅れなのか~!!なんてこったっ!!


 「あのね、これからこの島を運営するんでしょ?人もくるし、そうなると島民を飢えさせるわけにはいかない。これはわかるよね?」


 子供に諭すように投げかけてくる言葉にコクリと頷く。


 「今までのように魚や肉を取ってすごすだけじゃダメなの。何があるかわからないから備えも必要だし、外敵から街を守らないといけない。立派な街だとは思うよ?でもねそれだけじゃダメなんだよ」


 『衣食足りて礼節を知る』ってことかな?ちょっと違うか?まあ言わんとすることはわかる。


 「成り行きで関わることになったのかもしれない。でも少しは君も望んだことでもあるわけだし、こうなってしまったからにはちゃんとしないと飲み込まれて潰されちゃうよ?」


 ニコニコ笑顔に威圧を感じる。言ってることは当たり前の事だ。だがその当たり前の言葉が心に刺さる。人に会いたいと確かに俺はそう思った。望んだ形ではなかったがこれは良かったことだと思う。島民になる人が安心して暮らせるようにしないとな。教えてくれただけありがたい。俺は礼をいいその場を去った。





 翌日から魔道具について詳しい人はいないかジュレップに尋ねる。魔道具の作り方を是非とも教えてほしい。そう言うと「思った方向と違う所向いちゃったね」といわれた。解せぬ。

 昨日の話を聞いてから、これから来る島民の生活を豊かにするためにも、理解を深めないとって思っただけなんだよ。


 「作れるかどうかはわからないけど修理できる魔法使いが船にいるから訪ねてみて」

 「ありがとうございます」

 「あっ、もし面白いものができたら教えてね?」


 このニコニコ笑顔は期待感か?困るわー、勘弁してほしい。




 「こんにちわ~。魔道具修理できる方っていますか~?」


 船を警備してる人に聞くと、港の倉庫にいると教えてくれた。


 「こんにちわ~」

 「ん~?おっ?子供……ということは、うわさの凄腕魔法使い君かな?」


 こっちを見るとほっそりとした体系のお兄さんが近づいてきた。


 「凄腕かどうかはわかりませんが……。すごく散らかってますね……」

 「いやね?これだけ広い倉庫を与えられたら逆にもてあましちゃって、加工した資材とかもおいてはあるんだけどね」

 「ランドルフといいます。ジュレップ様にお願いして魔道具について教わりにきました。お時間いいです?」

 「フォラスだ。暇をもてあましているところだよ。暇すぎて一から道具を作っていたところさ」

 「それでこんなに……」

 「まぁまぁ、それで魔道具の何を知りたいんだい?」

 「使い方から作り方まで全部です」

 「了解だよ」


 魔道具は3つのタイプがある。魔石に溜められた魔力を使うタイプ、空気中の魔力を使うタイプ、自分の魔力を使うタイプ、これは人にも言えることだ。ということは人を魔道具のように……これ以上は考えてはいけない気がする。あかんやつや。


 「一般家庭で使うのは魔石を使うのだね。空気中の魔力を使うのは場所によるし、不安定で一定量を保てないので、ほとんど使われていない。自分の魔力を使うのは武器や物を加工する道具で使用されることが多い。でもそれも魔石型に押されている。自分の意思で調節できるから便利なんだけどね」


 ということなので魔石タイプを教えてもらった。といってもただのバッテリータイプの家電製品みないなものだ。

 四角い箱で座布団ほどの大きさのガスコンロの魔道具だと、最初に少し魔力を流す。すると箱の底に魔方陣のように丸く小さな文字が書いてあり、その真ん中に魔石がはめ込んである。それの一文が切り替わるようになっており、ダイヤルをひねり調節すると決められた魔力を放出する。

 それとは別の魔方陣がその上に重なっていて、それが火を発生させる魔方陣だ。下から発せられた魔力が管を通り、その魔方陣に魔力が流れると火が出るといった簡単な仕組みになっている。


 「複雑な魔道具だと何重にも魔方陣が重なっていてね。魔法陣の配置や、配線、書き方を間違えたりしたらどかんと吹き飛んだりするんだ」

 「そ、それは怖いですね。だからこの倉庫に閉じ込められているんですね」


 するとアイアンクローが飛んできた。


 「ん?なにか人を厄介者のように扱う声が聞こえたぞ?」

 「痛い痛いっ!!すみませんって、冗談ですってば!!」


 あの細腕ですごい力だ。いたたた…。


 「まぁ、実際危険だってことだよ。人によって使う道具も違うし、魔法陣は基本的に円形だが文字の配置の仕方や文字自体の言葉も人によって変わってくる」

 「結構細かいんですね~。決められた魔法陣を配置するだけとかではないんですね~」

 「魔石が大きかったり純度が高かったりするとそれだけ出力を上げられたりするよ」

 「ふむふむ」


 となると大きくて純度の高い魔石が欲しくなるな。


 「実際に作ってみたいのですが……」

 「魔法陣は書ける?書けるなら配線と配置の問題だからすぐできると思うよ」

 「いえ、わかりません。教わりたいです」

 「本当は許可なく作ったらダメなんだけど、ジュレップ様がいいっていったんならいいでしょう」

 「よろしくお願いします」


 最初に簡単な魔法陣を教えてもらった。まず最初に円を書く。そしてこの魔方法陣をどういうものにしたいのか、それを単語と単語の間に魔力の通り道を繋げながら円の内側の(ふち)に沿うように書いていく。そして真ん中は魔力が通る。魔法陣を通るのと出て行くのと二種類の道を作らないといけない。


 「書く文字は何でもいいんですか?」

 「文字の意味や要点がわかればなんでもいいよ」


 となるとこっちの文字で書くと文字数が多くなるな。日本語で書くか。

 

 「書けました」

 「ん?よくわからない文字だが……随分とスカスカだね。何ならもう少し小さい円にしてみて」


 ふむ。単語を繋ぐ配線を短くしてしまおう。いや、配線も単語にしてしまおう。次の魔法陣に向かう場合は魔力の進む方向を書いてっと。リモコンで操作するみたいにしてやる。


 ……どうもできるか不安で自信がないと文字を小さく書いてしまうなぁ……。魔法陣の場合はそれでいいんだろうけど。


 結局五百円玉ほどの大きさになってしまった。


 「え?これって小さすぎない?まぁ、最初は失敗するもんだしね。文字はちゃんと書けてるか確認した?…ってこれ配線どこにもないんだけど」

 「文字にしました」

 「いや、文字にしたって言われても……、最初は教えたとおりにやってよ。ちょっと文字の意味教えて、確認するから」


 しょうがないと困った様子で言われてしまった。単語の意味と何処に繋がっているのかを確認してもらって、配線の部分を書き直す。


 「聞いている限りではできているようだけど……。一度やってみますか」


 魔力を通してみる。魔石はつけていない、動作確認をするだけだ。


 「ほんとに火がついた……。こんなに小さいのに……。―――っねぇ!?この文字は!?いや、わかってはいるんだ。こんなすごい文字はきっと秘伝かなんかなんだろう?でもさぁ!!気になるじゃない!!この一文字に何でそんな意味があるんだ!!」


 しっかりと動作するのを確認するとフォラスは捲くし立てた。


 動くって信じてなかったんだな……。そしてうるさい。


 「これは日本語です。さっきも言いましたがこの一文字が『火』を意味する単語です」

 「なんて神々しい!!この一文字にすべてが集約されているといっても過言ではない!!すごい発見だ!!」


 いきなり何言ってんのこの人?実はマッドな人だったの?


 「ねえ!!もっとこのニホンゴを教えてよ!!」

 「いや、教わりたいのはこっちなんですけど……」

 「この島に来てから暇すぎて気がどうにかなりそうだったんだよ!!遊べるところもないし、やることといえば道具の点検ばかり!!わかりきってる魔道具の改良くらいしかやることがなかったんだ!!僕はもともとしがない修理屋だけど、こんなの見たら研究意欲に火がつくじゃない!!」


 聞いてねぇよ。こっちの話を聞けよ。しらんがな。やかましいっての!!


 「こういうのは失礼かもですけど、先に教えてください、そしたら教えます」

 「いいの!?でも秘伝だよね!?わかってる!!秘密は絶対に守るからお願いします!!」


 別に秘伝でもなんでもないんだけどね。勘違いしてくれてるなら都合がいいこともあるかな?いろんな人に聞きにこられても困るし。


 それから船長と交代の軍船が再び島にやってきて、荷物を運び込み、島に何人かを残して国王に会いに行くまで。ジュレップと一緒にしつこく付きまとわれる事になる。


 まぁ、これで生活が便利になるならいいか。

お読みいただきましてありがとうございます。

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