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10話


 道路を作り街の形を作ったランドルフは、それからしばらく穏やかな日々をすごしていた。

 手直しをしたり兵舎を増やしたりなどはしていたが、運動をしては昼寝して、ご飯を食べては昼寝して、のんびりと休むことにした。


 今日もデンの上で仰向けに寝転び、手足をだらしなくぶら下げて昼寝をしている。


 「うぉふ」


 何かに気づいたデンがランドルフを起こす。


 「んあ~?何か来たの?」


 デンは海の方向を眺めて、そちらへ歩き出す。


 「はぇ~?船が来たねぇ~……。船っ!?」


 デンから飛び降りたランドルフは砂浜へと走っていった。


 「前と違う船だなぁ~。船長じゃないのかな?どう思う?デン」


 狼に聞いても仕方がないのだが、デンの顔を見ながら問いかける。


 「うぉふ」

 「あ、デン、歯に肉が挟まってるよ。ちゃんと食べたらお口濯いでって言ってるでしょう~」


 とりあえず返事をしたデンが口をあけたとき。目ざとくも発見したので注意をする。

 デンはそんなことを言ってる場合ではないと鼻でランドルフの背中を押す。


 「は~、また上から乗り込みますかねぇ~」


 デンに跨り、ささっと飛んでいって船に着陸する。


 「やっぱり飛んできたなボウズ、久しぶりだな~」

 「船長っ!!前と違う船だから別の人かと思いましたよっ!!」

 「ほ、本当に飛んできた……」


 船長の後ろにいる耳の尖った美しい女性が、信じられないといった様子でこちらを見る。


 「お~、はじめまして、ランドルフといいます。失礼ですがもしかしてエルフだったりします?」

 「こ、この魔力量は……。はじめまして、島の調査員として派遣されました、学者でエルフのベネディッタです。よろしくね?」


 ランドルフは失礼なことを考えていた。


 見た目はエルフだけど服がエルフっぽくねぇ~。なんでスポーツウェアみたいな服なの!?そうじゃないでしょ!!……いや、これはこれでありか。


 動きやすい服を着ているためか体のラインがくっきりとわかる。スレンダーな体だが出るところは出ていて男の視線を釘付けにしてしまう、そんな印象だ。実際そうなのだろう。


 「エルフが珍しいの?あまり森から出ないからしょうがないのかもね。でもまったくいないわけじゃないのよ?」

 「やっぱりそうなんだ~。でも俺は島から出たことがないから何でも珍しいよ!!」


 そう言うとエルフの顔に少し陰りが見えた。何か想うところがあったのだろうか?


 「挨拶はそこまでにしてボウズ、前と同じところに船を着けていいんだよな?」

 「うん。前と一緒でいいよ~」

 「それとな、なんか砦が前に来たときよりもでかくなってねぇか?」

 「色々作ったんだっ!!」

 「色々ってお前なぁ~、まぁいい先に荷物を降ろしてからじっくり話そう」


 港で降ろした荷物を砦に運んで進むにつれて。大きくそびえ立つ壁が見えてきた。


 「おい!?なんだこりゃ!!なんで2ヶ月くらいでこんなのができてる!!」

 「中身はぜんぜんスカスカですけど」

 「そういう問題じゃね!!」

 「あっ、倉庫はあそこです」

 「無視すんな!!」


 前回は小さな砦だけがむき出しで建っていただけだけだった。しかし今観ている光景はぜんぜん違った。砦も大きく立派なものになっており、外敵に攻められても十二分に耐えうる、分厚く高いハニカム構造をした外壁、しっかりと舗装された大きな道路、きちんと区画わけされて整地されているまっ平らな土地だ。長屋もまったく継ぎ目が見当たらない、もともとそこにあった岩を綺麗に切り取って作ったかのようだった。

 それらは船長の知っている街並みとは違う立派なものが出来上がっていた。


 「取り合えずどれくらい人が来るかわからなかったのですが、長屋を建てましたので足りなかったら言ってください。後で生やします」

 「生やす!?」

 「上下水道も素人の仕事で申し訳ないですが、それなりにできていると思いますので、水も安心して使えます」

 「上下…水道…だと?」


 みんな呆気に取られながら、案内された長屋を簡単に説明される。しかしみんなの関心は他に向いていた。

 普段使っている生活用魔道具は一切ないし、継ぎ目も歪な所もどこにも見当たらない。綺麗で立派な部屋で、魔力を流さずとも取っ手を上下させれば簡単に水が出てくるポンプ。他にも色々気になって仕方がなかった。


 「なんというか……すごく整った街ですね……」


 エルフのベネディッタもこんなぴっちりと形が決められた街は観たことがなかった。


 「空いてる土地は皆さん自分で思う家があるでしょうし、もし建てるならちゃんと決められた場所で建てていただいてもらえればと思います」

 「それは移住希望者が来てからの話だな」

 「とにかく皆さん我が家へ。そこで落ち着いて話をしましょう」


 荷物を運ぶ人達と別れて他の人を家に招き、広間でお茶を飲みながら現状を話してもらう。





 「辺境伯と話をしてお前の意思は伝えた。取り合えずこの島はボウズのものになるようにはもっていったが、後は国王陛下が許可するかだな」

 「ありがとうございます」

 「まだ決まったわけではない。後、この島に海軍を駐屯させる。これはこの島を守るためだ。ボウズの魔法の腕がすごくても一人じゃ限界があるだろうしな。島を任せるための官僚もくる」


 そうなるとは思ってたけどね~。併合される形にはなるが、それでよかったわ~。最初は保護領って感じになるのかな?


 「まぁ、そうですね」

 「ここを見つけた海賊や他国がちょっかいをかけてくるかもしれない」

 「この島って大陸から距離があるって言ってましたよね?海賊とか来るんですか?」

 「俺たちみたいにはぐれた奴らがくるかもしれないだろうが。居るに越したことはない」

 「船長はただの商船の船長ってことでいいんですよね?」

 「ああ、そうだ。俺は軍人じゃないしな」


 不安もあるが今のところは想定内の事ばかり。だが安心してはいけない。


 「それと当然かと思うが、辺境伯にあってもらうぞ。国王陛下にも会うことになるだろう。うちの会長にも会ってくれ」

 「わかりました」

 「今回は島の調査が主な目的だ。軍やらなにやらは後から来ることになっているので協力してくれ」

 「もちろんです。こちらこそよろしくお願いします」


 美人のエルフと一緒に調査なんて事になったら……。『その途中で襲い掛かる魔物。あっさりと倒す俺。その姿に惚れたヴェネディッタさん。やがて二人は……』な~んてないよね~。


 「まっ、大変だとは思うがちゃんと頼むぜ」

 「はい」

 「それと一応確認したいんだが、字は書いたり読めたりするのか?」

 「……あっ」


 察した船長はあきれた様子である。


 「……あれだけすごい魔法を使えるのに字が書けないんだな」

 「そんな冷たい目で見ないでください!!それに日本語なら書けます!!」

 「にほんごだって?ちょっと書いてみろ」


 さらさらと五十音を取り合えず書いてみる。


 「さっぱりわからん。レスタイト王国に属するならちゃんとこっちの言葉を学んどけっ!!」

 「はひ~!!」


 翌日から調査は始まった。俺が案内しようとしたが、困ったことがあったら言うからそれまでお前は勉強してろといわれ、文字が書いてある紙を渡された。教師は副船長である。名前は忘れた。


 解せぬ。美女エルフと二人きりで調査のはずが~!!!!





 それから一週間がたって、軍艦と思われる二隻の船とそれに挟まれるようにして飾り気のある船が来た。辺境伯の船らしい。港は大きく作ってないので一隻は海上のままだ。

 彼らを駐屯地に案内して、お偉いさん方を家に招く。

 ここ最近デンにぜんぜんかまってやれない。ベネディッタさんともあれ以来お話できていない。家に入る前にデンの頭を撫でておく。癒されるわ~。


 「こんにちわ。アクラナス・パンターナ辺境伯の息子で嫡男のジュレップです。一時的に軍を指揮することになってます、よろしくね。こちらは国王陛下の遣いとして来られたパティス殿」

 「国王陛下から遣わされた文官のパティスです。よろしくお願いします」


 えっ、何で辺境伯の息子がくるわけ?嫡男って次期辺境伯だよね?それに国王からの遣いって早速囲いにきたってこと?文官って言ってるけど、ただの文官なわけないよね!?心の準備ができてないよ~!!


 「こ、こちらこそよろしくお願いします。ランドルフと申します」


 こちらの正しい挨拶の仕方がわからないので、取り合えず頭を下げておく。言葉遣いもこれでいいのかなぁ~?怖いわ~。


 「それにしても立派な街だね~。この砦も綺麗で頑丈だし、こんなにきっちりした街見たことないよ。あの壁の綺麗な文様も何か意味があるの?」


 ニコニコしながら話しかけてくる爽やかフランク好青年。早速質問が飛んできた。そのニコニコ笑顔が逆に怖い。


 「これはやりがいがありそうです」


 パティスさん!!そんなキリッとした目で見ないでください。今文字を覚えるだけでも手一杯なのに!!




 それから島の事についてあれこれ報告してもらった。詳しい話は俺の成果と国王様次第だが決まっていることがわかった。


 ・国と国王に忠誠を誓う事


 まあ当たり前だよな。


 ・辺境伯を寄り親にして爵位を与える事


 それで息子が様子見に来たってか?それにしても爵位ってなによ。辺境伯が統治してくれるんじゃないの?俺、村の村長的なポジションでいいよ!!


 ・そのために国王に謁見する事


 これも当然なんだけどなぁ~……。


 魔法の腕前を見てもらい、島を統治できる能力があるのかどうか、礼儀などの教養も審査される。国の歴史、周りの国の情勢、他色々と勉強しなければならないこともたくさんある。頭が痛くなりそうだ。


 「大丈夫です、そのために私達がここにきたのです。まずは謁見までに礼儀作法を学びましょうか」


 パティスさんと後ろに居るメイドさんと文官さん達みんなと挨拶をすませ、俺はちょうk……。いや、教育を施されていく。


 くそ~、変な欲を出さずに植民地にして全部任せるべきだったか?でも何もせず取られるのもいやだし……。もうやだ~!!

どうでもいい情報:副船長の名前は『ネルジコ』です。周りを良く見ていて行動力がある兄貴肌。


お読みいただきましてありがとうございます。

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