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Paradise World ~涙を求めて~  作者: 真空
アリカの旅立ち
4/19

疑問

 

 アリカは後悔していた。

 なぜこのゲームを遊ぼうと考えたことではなく、自分が機械の種族を引き当ててしまったことでもなく、何も用意せずに森の中を歩き回ったことに対してだ。


 アリカは、複数の狼の魔物に囲まれていた。

 前にも、後ろにも、右にも左にも狼の姿が見え、唸り声が聞こえてくる。

 狼自体はそこまで目立つような姿をしていない。灰色の毛皮に、鋭い犬歯と一般的な狼だ。しかし、爛々と光る眼光はまっすぐにアリカの姿を捉え、機械の身体であるアリカを獲物として襲い掛かろうとしているのが明白だった。


 逃げ道を塞がれ、戦うことを決めたアリカだが、そこで気づいたのだ。


 自分は武器なんて持っていないことに。

 そもそも、アイテムボックスの開き方すら知らない。

 チュートリアルをすっ飛ばしてしまったのだろうか。


 慌ててメニュー画面を開こうとするが、狼たちがそれを許すはずもなく、彼らは一斉にアリカへと牙を剥いて襲い掛かってきた。いくつもの狼の咥内と鋭い牙を視認しながら、アリカはまるで走馬灯のようにここまでの経緯を思い出していた。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 西部第三基地と呼ばれた建物を出ると、そこは深い森の中だった。

 内部がひどく損傷していることからも、放置されて何十年も過ぎたことを想像していたが、そのスケールが違っていた。自分がいた建物の上には大樹が聳え立ち、木や蔦などの植物に取り込まれているようだった。これほどまでに植物に侵食され、さらには大樹になるまで成長しているということは、数十年どころか数百年ほど放置された基地のようだった。基地というよりは、古い遺跡のような貫禄も感じられる。


 ますます自分という存在に疑問を感じたが、まずは目的を果たすことにした。

 事前にレイヴンに聞いた通りに、近くの街までの方向を確かめる。

 基地内だけでなく、周辺の地理状況までナビゲートできるのだから優秀なAIといえるだろう。流石に、基地外には通信が届かないらしく、ここからはレイヴンに教えられた通りに進むしかない。レイヴンによれば、直進して見えてきた小川を下流に向かって進めば森は抜けれるらしく、そこから街が見えてくるとのことだった。

 アリカは、街を目指して森の中を歩き始めた。


 機械の身体になって気付いたことがある。

 それは、身体能力がかなり高いということだ。


 例えば、走ると現実とは比べ程にもならないくらいの速度が出る。恐らく、人間が可能である速度を越えているだろう。まるで自動車に乗っているときのように、あたりの景色が高速で後方へと流れていく光景には驚いた。つまりは、自動車と同じくらいの速度で走れるということだからだ。それに応じて、跳躍力もかなり高い。目前の倒れた巨木を越えるために地面を蹴ると、軽く三メートルは跳んでいた。味わったことのない浮遊感を味わった次の瞬間に、重力に従って地面へと落ちていく。慌てて着地姿勢を取るが、着地と同時に前転して衝撃を殺すことはしなかった。左足で地面を蹴ったのだから、当然のように右足から着地した。衝撃が電撃のように身体を貫くが、どこかが損傷したような不具合はなく、至って問題はなかった。どうやらかなり頑丈な身体らしい。


 その後も、自分の身体の様子を確認するために色々と試してみた。

 走るだけでなく、木に登ったり、枝から枝へ飛び移ったり、木を殴ってみたり、蹴ってみたり……とやりたい放題だった。名目上は身体測定みたいなものだが、アリカは今までに経験したことのない超人的な身体能力に調子に乗っていたのだ。

 何が出来て、何が出来ないのか。

 この身体のどこまでが限界なのかを、知りたかった。


 しかし、アリカは騒ぎすぎたのである。

 それほどまでに激しい運動をすれば、大きな音がするのは当然のことだ。

 森の捕食者たちは、その鋭敏な聴覚により、獲物の場所へとたどり着いた。


 小川が見えてくる前に、アリカの周りから複数の唸り声が聞こえてきた。

 ふと立ち止まると、前方から狼のような獣がゆっくりと歩いてきた。しかし、その大きさはアリカが想定した狼よりも一回り大きい。全身の毛皮に覆われた筋肉も強靭に発達しているように思える。そして、狼は明らかにアリカに対して威嚇の唸り声を挙げていた。


 それを皮切りにして、唸り声が周囲からも聞こえてくるようになる。そして、静かにアリカを包囲しているようだった。


 Paradise Worldに来ての初戦闘か。

 と、アリカは冷静に状況判断を行う。


 唸り声から判断すると、自分を囲んでいる狼は全部で十二体ほどだろう。しかし、実際には隠れている狼も存在しているため十五体ほどかもしれない。狼たちの怖いところは、その集団で一人に襲い掛かる戦法にある。こちらも複数人いれば対処できるが、アリカは一人きりだった。最初の戦闘にしてはハードルが高いように感じるが、アリカには勝算があった。それはチートクラス級の機械の身体能力をフルに使うことだった。これまでの道中で、自分の身体能力はゲームを始めたばかりにしてはあまりにも優れている。いや、バグとしか思えないほどに強いことを知った。不遇種族か? と考えたこともあったが、とんでもなかった。この機械の身体は、まさにレア種族として相応しいほどに、強い種族だったのだ。


 どうやら、戦闘の始まる時刻はすぐそこまで迫ってきているらしい。

 狼たちが静かににじり寄って来る。

 アリカはそこで、仮想世界で常に愛用している片手剣を抜こうとして腰に手を添えて……自分の行いに後悔していた。


 武器を急いで装備しようとメニュー画面を開こうとするが、狼たちがそれを待ってくれる道理はない。

 三体ほどの狼が襲い掛かり、その強靭な脚でアリカを地面に押し倒した。そして狼たちは、口元に鋭く光る牙を涎をまき散らしながらアリカの身体へと突き立てた。

 

 人間の身体など容易く貫く牙は、アリカの身体を……貫けなかった。

 そればかりか、犬歯は無様に欠けていた。


 自身の牙が傷付いたことによる痛みにより、狼たちは情けない声を挙げてアリカから離れた。

 噛みつかれた本人はというと、まさか無傷で済むとは思っておらず、一瞬の出来事に放心していた。

 あれほどの数に襲われて無事だったのは、機械の身体のおかげだ。頑丈だとは思っていたが、まさか敵の攻撃を無効化できるほどとは想定していなかったのだ。


 三体の狼が離れたと思うと、続けて他の狼がまたアリカへと襲い掛かる。

 今度は一体増えての四体だった。


 すでに武器を装備する暇はないと判断したアリカは、得意ではないが徒手空拳で迎撃することを選択する。もしかしたら、噛まれて無傷であれば、その隙にメニュー画面を開くことが可能かもしれないが、先ほど無事だからといって次も無事とは限らない。それに、まるで本物の生物のように襲ってくる魔物たちにアリカは、自然と身体が反応していた。


 戦わなければならないと。

 戦わなければ、生き残れないと。


 倒れた姿勢のまま、アリカは左から迫って来る狼に対して、その首を狙って左手で裏拳を放つ。ごきりという、骨が砕ける音とともに、狼の首は歪曲し森の中へと吹っ飛んで行った。

 アリカはまさかの威力に驚くが、即座に次の狼へと反応する。右から襲ってきた狼は、すでにその大きな口を開いてアリカの頭蓋を噛み砕こうとしていた。アリカは右手で開いた狼の口角を掴み、地面へと引き倒す。その衝撃で気絶することを狙っていたが、残像をも残す高速の右手は容易に狼の下顎を裂いていた。上顎だけになった狼は、その激痛に地面でのたうち回っていた。驚くほどの血液が口元より溢れだし、暴れた後に痙攣を起こし絶命した。


 残るは、前方と後方の二体だ。

 アリカが起き上がると、二体はすでに行動を開始していた。

 タイミングを見計らっての同時攻撃だった。前方は上半身に噛み付きを、後方の狼は下半身へ体当たりを狙う。アリカはそれを見抜いていたのか、二体に半歩遅れではあるが、彼自身も走り出した。狙いは前方から迫って来る狼だ。同時攻撃を狙っていた彼らからして、まさかそのタイミングを狂わせられるとは想定していなかったのだろう。前方の狼は何が起こったかもわからない内に、アリカの右足によってその命を刈り取られていた。狼の頭をまるでサッカーボールのように思い切り蹴り飛ばし、その頭を空の旅へと招待したのだった。後方より襲い掛かる狼は、仲間がやられたことに気づきつつも、自身に背中を見せている獲物を逃すわけがなく、容赦なくその下半身へと向かって体当たりした。

 しかし、それは失敗だった。

 金属の塊に自身の最高速度ともいえるスピードでぶつかったのだから、その衝撃を十二分に受けたのは狼自身だった。それは、アリカからしたら、体当たりなどただの自殺願望にしか思えない。事実、狼はその脳漿を頭部より溢れさせて地面へと静かに倒れていった。アリカは何もしていない。


「さて……まだやる?」


 周囲に潜む狼たちを威嚇するアリカ。

 すでに四体の仲間が瞬殺された狼たちにとって、これ以上群れの個体数を減らすのは得策ではない。それにこの獲物は、自分たちが食える部位が無いようにも感じた。人族特有の柔らかそうな肉が頭にしか見えないのだ。

 精一杯の威嚇をしながら、狼たちは森の中に消えて行った。


 アリカは狼たちの返り血で真っ赤になった手足を見て、素早く小川を目指すことを決めた。



▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



「おかしいよね……」


 この世界に来てからというもの、疑問が尽きない。

 小川で血に濡れた腕を洗いつつ、アリカは考えていた。


 まずはこの血液だ。

 Paradise Worldは十五歳以上推奨のゲームだ。確かに、プレイヤー同士で戦闘をし、ときには種族間で戦争が勃発するのだから当然の処置だと思う。しかし、このように血液が飛び散り、生物の首が簡単に飛ぶようなグロテスクな表現があるのでは、十八禁になってもおかしくない。βテストと事前情報では知り得なかったが、もしかしたらゴア表現設定があるのではと考えるが、あるとしたら間違いなく十八禁となるだろう。


 アリカは先ほど襲った狼たちが、自身の手で絶命したことを思い出した。

 どれもまるで本当に生きているかのように動いていた。新生代のゲームエンジンとはいえ、彼らには躍動感があり、体温があり、生物としての完成度が高すぎるようにも感じた。それ故に、アリカは本当に彼らを殺してしまったのではないかと、考えていた。


「いや、ゲームの世界なんだ。それはない」


 首を横に振って、自分の考えを否定する。


 次なる疑問はこれだ、とアリカは首に掛けられたネックレスに触れた。

 それは現実世界でも装着していた、新型フルダイブゲームデバイスの『テスタメント』だった。アリカはその下部を捻る。本来であれば、ネットなどへの接続端末が露出する機構なのだが、こちらの世界では仕様が変わっていた。露出したところが弱く発光すると、目前にメニュー画面が現れたのだ。どうやら現実拡張技術の一種であり、そのメニュー画面は手を伸ばして触れることができた。以前の仮想世界では、視界上にあるメニューボタンを触れるのだが、どうやらParadise Worldではテスタメントを捻ることでメニューを表示する仕様らしい。これは、βテストでも明らかになっていたことであり、不審な点はない。


 あるとすれば、そのメニュー画面の内容だった。


 アリカの視界には、六つの円が円環上に並んでいる。

 それらには、それぞれ『ステータス』『スキル』『アイテム』『装備』『メールボックス』『設定』と書かれていた。

 示されている内容に異議はないが、決定的に足りない項目がある。

 それは『ログアウト』の欄だ。


 アリカは試しに、テスタメントの電源スイッチである上部のボタンを押してみた。しかし複数回押したところで変化はなく、ログアウトすることはできない。『設定』の中も確認するが、ログアウトなどの項目は存在しなかった。

 よくネット界隈では、VRMMOによるログアウト不可のデスゲームが妄想されているが、まさかそれが現実になったのかと考える。しかし、ゲームの世界での死亡=現実世界の死が定番であるが、安全に十分に配慮されているテスタメントでは、人体を殺すことは出来ないと考えるのが一般的だろう。


「だとしたら……運営のミスかな?」


 初日からこのような初歩的なミスがあると思うと、今夜にはすぐにゲームのメンテナンスかもしれないなと、アリカは呑気に考えていた。

 しかし、他にも疑問はたくさんある。


 例えばステータスを開くと、そこには通常であれば自分の身体能力値が示されている。これにより、自身の身体能力を定量的に評価できたはず……なのだが、それらの欄はすべて空白になっていた。物理攻撃力も物理防御力も敏捷も知性も魔力もすべて空白だ。それに加えて、体力のゲージが無いことに気づいた。一度メニューを閉じて視界を確認しても、体力を表すケージがない。体力ケージ非表示がデフォルトなのかと思い、設定を確認するがそういった項目はなかった。


 続いて、アリカはスキルと装備の欄を見る。

 Paradise Worldは、スキル依存性のゲームデザインとなっている。

 魔物を倒して得られた経験値は、キャラクターのレベルではなくてスキルレベルへと割り振られることになる。つまり、キャラのレベルを上げてステータスを上げるということができないのだ。ステータスの変動は、すべて装備とスキルに依存しており、スキル自体も装備に依存している。

 早い話、装備に設定されているスキルレベルを上げていくことが、Paradise Worldのキャラ育成の基本だ。

 さらに加えれば、装備に設定されている『装備スキル』に対して、種族ごとの特性を反映した『種族スキル』がある。

 アリカがスキルの一覧を選択すると、現在発動しているスキルが表示された。


〈装備スキル〉

 【物理耐性】

 【物理耐性】

 【物理耐性】


〈種族スキル〉

 【機身体】

 【機械制御】

 【機械工作の心得】


「んん? 装備スキルが発動している?」


 装備スキル欄にある【物理耐性】とは、その名のとおり物理攻撃に対する耐性を強めるものだろう。金属の身体であるために、当然のスキルだと思うが、それが種族スキルではなくて装備スキルとして発動しているのだ。奇妙なのは装備を手に入れた記憶が無いというのに、装備されている状態になっていることだろう。

 アリカはメニューから装備の欄を確認すると、次のように表示された。


 右手―

 左手―

 頭―

 胴:汎用機人装甲

 腕:汎用機人腕甲

 腰―

 脚:汎用機人脚甲

 アクセ―

 アクセ―

 アクセー

 

 右手、左手、頭、腰、アクセサリに表示がないのは、武器と防具を装備していないからだろう。しかし、胴、腕、脚にはしっかり防具名が記述されていた。その文字列を読んでから、アリカは自身の腕、そして脚、最後に胴を見る。

 整備台にて換装された新しい手足、そして新品同様の輝きを取り戻した胴体の装甲。

 それらはすべてアリカの身体であり、そしてアリカ自身を守る鎧でもある。


「つまり……僕の装備はこの身体自体ということ?」


 試しに、胴部分に装備されている『汎用機人装甲』を選択すると、次のような説明文が表示された。


〈汎用機人装甲〉

 機人族に支給される胴体部分の装甲。

 スキル:【物理耐性】


 簡易的な説明文であるが、どうやらアリカの予想に間違いはないらしい。続けて腕と脚部分の装備説明文を確認したが、胴とほぼ同様の内容が記述され、スキルは【物理耐性】と記されていた。それがみっつ重ね掛けされているために、その【物理耐性】はかなり高い値となっているだろう。こうなると、ステータスで物理防御の数値を確認したくなるがゲームの不具合のせいでそれは叶わない。

 

 ほかに気になるのは種族スキルだ。

 装備欄の説明により、自分は『機人族』であることがわかった。読んで文字の如く、機械の人なのだろう。三種類ほど種族スキルが備わっており、アリカはそれらに目を通すことにした。


【機身体】

 機人族特有の鋼鉄の体躯。

 初期ステータスに補正がかかり、状態異常に高い耐性を持つ。

 しかし、獲得経験値がゼロになる。


【機械制御】

 機人族の文明である『機械』を制御できる。


【機械工作の心得』

 機械を造りだす技術と知識を有している。


「あれ?」


 アリカの目に留まったのは、【機身体】のスキルだ。

 初期ステータスに補正がかかる、というのは先ほどの狼たちの戦闘でも明らかだろう。とくに膂力に関しては初期キャラクターにしては強すぎるほどだ。そして、状態異常に高い耐性というのも嬉しい。機械の身体ということもあり、人体に影響がある毒、睡眠、混乱といった状態異常となる可能性がないのだろう。

 しかし問題は次だ。

 獲得経験値が、ゼロ?


「つまり、僕のスキルは成長しないということ……なのかな?」


 これは由々しき事態である。

 初期ステータスに補正がかかるとしても、それは初期ステータスだ。恐らく、他のプレイヤーたちのスキルが成長していけば、すぐに追い抜かされるだろう。どうやら、機人族というのはかなりシビアなキャラ育成を要求される種族らしい。やはり不遇種族かもしれない、と肩を落とすアリカではあるが、まだわからないことは多くあるため、諦めるのは早いと気を持ち直した。


 他のふたつについても気になるが、ひとまずは置いておくことにした。

 というより、書いてある内容通りであると判断し、これについては『機械』に精通していると考えられるナビゲーションAIに訊いた方が早いと判断したのだ。


 続いて装備を開くと、武器を何も持っていないことがわかった。ゲームを始めたプレイヤーに対して初心者用の武器さえも支給しないその姿勢に、アリカは感服していた。種族間で争うことから大分プレイヤーを選ぶゲームだとは思っていたが、まさかここまで玄人向けにデザインされているとは思っていなかったのだ。仕方ないため、街に着くまでは徒手空拳を貫き通すしかないだろう。


「ゲームとして、欠陥が多いなあ……」


 βテストならまだしても、ゲームとしての不具合が多すぎる気もする。

 すでにゲーム開始から五時間近く経過しているため、運営もこの不具合を把握してると思われるがメールボックスにはそれらしき知らせは一通も来ていない。

 新型のデバイスを使った作品であるためにまだ不安定なことが多いのかもしれない、とアリカは判断し、ひとまずは当初の目的通り街へ向かうことにした。それに、街へ行けば他のプレイヤーから詳しい情報を聞くことができるかもしれない。



△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼


 身体についた狼たちの血が綺麗に落ちたことを確認すると、アリカは川下へ向かって歩き出した。

 しばらく、それこそ体感時間20分ほど歩くと森を抜けた。

 眼前には現実世界ではありえない広大な草原が広がっており、時折吹く風が草花たちを撫でていた。アリカが辿ってきた川の先を見ると、そこには三メートルほどの石壁が建っていた。明らかに人為的に造られた壁であり、それは魔物たちを退けるための壁であることは明らかだった。


 ゲーム開始から六時間弱。

 アリカは、やっと初めての街へとたどり着いたのだった。


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