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私が見た夢

見知らぬ夫

作者: 東亭和子
掲載日:2016/02/11

 こんな夢を見た。


 私は幼さが残る少女だった。

 親の決めた婚約者がおり、明日が結婚式だった。

 だが、肝心の相手がいなかった。

 一年ほど前から行方不明らしい。

 それでも式は行うと両親は言った。

 ふざけている。

 そう思ったが両親には言えなかった。

 夫となる男の家は旧家で金持ちなのだ。

 向こうが行うと決めたら、逆らうことは出来ない。

 そんな私を両親が不憫に思っているのは知っている。

 だから私も我慢した。

 両親のために。


 結局、式には夫がいなかった。

 私は架空の相手と結婚した。

 そうして新居には一人で住んだ。

 悠々自適な一人暮らし。

 そう思えば気が楽だった。

 ピンポーン、とチャイムがなった。

 両親でも来たのだろうか?

 私は玄関に急ぐ。

「はい」

 開けたら知らない男が立っていた。

「…?」

 私は思わず男を見た。

 背は私より頭ひとつ分高い。

 メガネをかけて、小さなカバンを持っている。

 顔は良くもなく、悪くもない。

 普通であった。


「君、年はいくつ?」

 男がいきなり聞いてきた。

 はぁ?何なのだ、この男は!

 私が答えないと男はしつこく聞いてくる。

「十六です!」

 自棄になってそう答える。

 男は私を見て頷いた。

「なるほど、幼いわけだ」

 むっかー、とした。

 一体何様なのだ?!

 いきなり人の家にやって来て年齢を聞き、幼いなど言う。

 挙句の果ては家の中に入ろうとする。


「あなた失礼じゃないですか!

 勝手に人の家に入って!

 警察呼びますよ!」

 私は男をにらんだ。

「何だ。君は知らないのか?」

「は?」

 何を?と私が眉をひそめると男はにやりと笑った。

「俺は君の夫なんだよ」

 はぁぁぁぁ?

「だからこの家に入る権利がある。

 分かった?」

 私が呆然としている隙に男は家の中に入ってしまった。


 私は慌てて男を追いかけた。

 男は居間へと入ってゆく。

「ちょっと待って下さい。

 あなたが私の夫という証拠はどこにあるんですか?」

 最もだ、と男は頷いた。

 コレが証拠だ、と見せられたのはおそろいの結婚指輪。

 紛れもなく本物の夫であるという証拠。

「一度家に帰ってもらってきたんだ。

 納得してくれた?」

 男はそう言うと椅子に座って伸びをした。

 疲れた~とか言っている。

 私はめまいを感じた。

 この男が私の夫!

 信じられない!


 私は男の前に座った。

 そうして男をにらむ。

「あなたが私の夫だというのなら、どうして式に来なかったんですか?」

「旅をしていた。

 間に合うかと思ったら間に合わなかった。

 それだけだ」

 それだけって。

 私は絶句した。

「君と結婚することは家を継ぐことを意味する。

 すなわち、俺に自由な時間はなくなる。

 その前にやりたいことはやっておかないと後悔する」

 そう言って笑った。

 確かに、これからは家に縛られることになるだろう。

 この結婚は双方の祖父が決めたこと。

 例え、私の家が落ちぶれたとしても遺言は絶対だ。


「それが旅だったのですか?」

 私の言葉に男は頷いた。

「結婚から逃げたつもりはないよ」

 ああ、それにしても疲れたな、と男は言う。

「寝室はどこ?寝たいんだけど」

 私はため息をついて立ち上がる。

「二階です。案内します」

 二階には大きなベッドがある。

 一人で寝るには十分過ぎるほどの。

 これからはこの男と一緒に寝なければならないのだろうか。

 私はまたため息をついた。


 寝室に着くと男はベッドに倒れこんだ。

「はぁ、やっとゆっくり休める」

 男はベッドから私を見た。

「一緒に寝る?」

 はぁ?

「だって夫婦でしょ?」

 男はニコリと笑った。

 私は絶句した。

 そんな私を見て男は楽しそうに笑う。

「冗談だよ。まだ君に手を出すつもりはないよ。

 もう少し成長してもらわないとね」

「なっ…!」

 幼い、と言われたことを思い出し、男の失礼な言葉に私の怒りは頂点に達した。

「最低!

 あんたなんか一人で寝ていればいいんだわ!」

 私は寝室を後にした。

 背後で男の笑う声がする。

 むかつく、むかつく、むかつく!

 私は怒りながら階段を下りていった。


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