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はじめの田中

作者: はんみょう

 田中一たなかはじめとして僕は生涯を終えた。

 なんの変哲もない、老衰だった、そこで一人の人間として生涯を終える、その筈だった。

 息を引き取った瞬間異変が起きる、僕はまたこの世に生を受けた。


 僕は特殊な能力を持っていた、もっともめて死んだ時まで気がつかなかったが…。

 能力は生まれ変わり、つまり輪廻転生というものだろうか。

 僕、いや今は私だ。私は他の人間として生涯をやり直せる、今回は女性になった。


 時代は大正だった、大正初期に生まれ大きな戦争を体験した。

 子供をたくさん生んだ、夫は戦争に行き帰ってこなかった。

 田中一が生まれたのは平成元年だ、私はそれを確認することが出来ない。

 なぜなら昭和五十年頃に痴呆が始まり、なにも分からなくなった、せっかく前世の記憶を引き継いでいたのに…。

 いやこの場合なんというのだろうか、何故なら過去に遡って人間として転生したのだ。

 とにかくもっと早く田中一の存在を確認しておけばよかった。

 二回目の人生が終わる。


 戦国の世に生まれた。

 一切の敵を寄せ付けず天下を取ることが出来た。

 過去の歴史を知っていたからだろうか?とにかく順調に人生を終えた。


 現代に生まれる。

 これはチャンスだ、田中一、二回目の女性の存在を調べることが出来る。

 しかし今回は外国人として生まれた。

 時間は掛かったが調べることができた、確かに田中一という男は居た。

 しかし彼はもう既にこの世には居なかった、これ以上詮索する必要は無いだろう。

 過去の記憶を生かし今回も順調な人生。


 生まれるが生後間もなく病死してしまう、こんなこともあるのか…。


 またも大戦中に生まれる、外国の軍人だった。

 そして日本を敗退させたのは私だった。


 古代に生まれた、いままで誰も知ることのなかった古代文明の謎。

 紀元後に正確に知ることが出来たのは私だけだろう。


 二十二世紀、前回の記憶を生かし考古学者になる。

 古代文明の謎を解き、世紀の発見と称えられた、簡単だ…。


 女性に生まれる。

 見聞きした人生だ、同じ人物に転生したのではない。

 当然だろう今回私は田中一の母親だったからだ。


 おかしい、おかしい、おかしい、私、僕、俺、わたし、は何度人間を繰り返せばいいのだ!?


 何十億、何百億、いや何千億繰り返しただろうか。

 途中で気が狂って、無差別に人を殺したことがあったが後の人生で調べたらそれは変わることのない歴史で、一人の人間では人類史など、どうにもすることが出来ないと理解した。

 結論から言うとこの地球には私以外の人間など存在しなかった。

 同じ人物になることは無い。

 あるときは聖人、殺戮者、凡人、天才、支配者、奴隷として変わらぬ歴史を反復する。


 人間という概念は田中一という存在から始まったのだ。

 そして人の世が続く限り私は人生を繰り返すだろう。

 覚えていて欲しい、今普通に生きているあなたでさえ、他人でさえ、いつかの私だということを…。

 


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