レポートその1~ササイ君、いい年こいてイキモノ博士になる!~
今回の話は異界に迷い込んだ笹井博士によるレポートであります。
異界生物研究の講義を受ける予定の諸君らは、このレポートよく読むように。
どうもみなさん、会社を辞めようと思っている笹井です。
私は社長に言われて、魔法の鏡を覗きました。すると、薄暗い空間のようなものが見えたんですね。これもう鏡じゃないですよね。鏡を覗き込んでいる人の顔が映し出されない鏡ってこれもう鏡としての役割果たしてんのかっていう疑問が沸き上がるんですけど、まぁそれはそれとして、薄暗い空間が見えたんです。そこで私は、
「おお、見えましたよ。これはどういうことでしょうか?」
と言ったんです、社長に。そしたらあの野郎、私をね、どうしたと思います? 突き飛ばしたんですよ、酷いでしょ? これね、もうブラック企業の社長とかいうレベルの問題じゃないんです。それ以前の問題なんじゃないでしょうか。人としてダメでしょと、許されないだろと、そういう次元ですよ。
それで、社長という肩書を持つ悪魔に突き飛ばされた私は、鏡の中に、スッと入り込んで、落ちてしまったんです。なんで鏡にスッと入るんだって? サイズ的にありえないだろって? そりゃあ思うでしょう、そりゃそうよ、私だっておかしいと思いますよ、だって手鏡ですよ手鏡! どうやったら体が入るんだよと、それは私が一番知りたいですよ。でもね、なんだかよくわからない異界を映し出すような魔法の鏡ですから、そういうこともあるんだろうなと、こればっかりは納得するしかないんですよ。無理にでもね。
私は、薄暗い魔界に真っ逆さまに落ちて行って、正直な話、気絶しました。おそらく落下するのに1秒もかからなかったと思うんですけど、気絶したもので、記憶がございません。まあ、どうにかして、目を覚まさなくてはなりませんよね。
落下地点で気絶している私を助けてくれた人、というのか人と言えないのかよくわかりませんが、そこの異界のネイチヴな知的生命体がいたんですよ。彼らにも、我々人間と同じように性別はあるらしいのですが、これがなんと、驚キ桃ノ木二十世紀! 私が観察した限りでは、およそ20通りの性別があるようなんです。そんなに多様な性別をもってどうすんだって思いましたよ、私も最初はね。でもね、こうやって多様な性別を持つことで、この異界に住む害獣――強姦型寄生生命体――とやらに対抗してるみたいなんです。強姦型寄生生命体、通称ゼークス=マシーヌは、これは私の見立てでは、性別は2通りしかないようなので、私を助けてくれた生命体(通称カイジン=ニジュメノソ)を襲うことはできても、孕ませられない、あるいは孕むことができないみたいなんですね。いやですね、私、異界の生命体にやけに詳しくなってしまいました。まあ、それもいい経験といえばそれまでなんですがね。
カイジン=ニジュメノソたちに助けられた私は、いつのまにやら彼らの村に運び込まれていたようで、村の中心部にある病院と思しき施設の、ベッドらしき物体のうえに寝かされておりました。私は、目を覚まして体を起こし、周囲の様子をうかがいました。すると、それに気が付いたニジュメノソたちが、こっちに近寄ってくるんです。ああ、言っておきますが、私は、彼らのことが好きですよ、命の恩人ですから。でもね、命の恩人ともいえども、さすがにあのグロテスクな顔面でいきなり近づかれたらビビりますよ。彼らの顔面を何かに例えるならば、そう――扇風機の羽にゴーヤとレバーをぶっ刺してそのまま扇風機の電源を入れて最高速度でぶん廻した挙句生ゴミを適量トッピングした最終破壊料理――のような顔面の出来栄えですから、まあ多少はね……。
多少はねってなわけで、とっさに村から逃げ出した私がまず向かったのが川でございます。人間、水分が無くては生きていけません。私も先ほどの精神的衝撃のせいで咽喉がヤバいくらい渇いていた、ということもあって、とにかく体が水分を欲していたのであります。川の水は、とても澄んでいて、まるで「エヴェレストの雪解け水」とでも言ってしまっていいくらいのキラキラした美しいものでした。私は、なんの迷いもなく、その美しい水を、エヴェレストの雪解け水を口に含んだのであります。
「……あ、あまい」
なぜ川の水が甘いのか、不思議でなりませんでした。よっぽど水を欲していたんだなと考えてみたり、我々の星:地球を流れる川とは、流れている液体の成分的な何かが違うのだろうかと考えてみたり小一時間。その答えは簡単なものでした。先ほど名前だけ登場した強姦型寄生生命体の体液が川の水に混ざっていたんです。
川の水が甘い理由を考えてウロウロ歩き始めた私の目に映ったのは、絶世の美女でした。それも複数人いるではありませんか! 川で、……ふふ……水浴びをする天女たち、私には、まさに天女に見えたのです。この天女たちが、実は強姦型寄生生命体――ゼークス=マシーヌ・地球人型――であることなど、このときの私は知る由もなく、ただただ、美しい肢体に見惚れて目玉が蕩ける心地だったのであります。
私はエロスに惹きつけられるように足を進めていました。一歩ずつ、確実に、ゼークス=マシーヌの放つ甘美の罠に嵌まっていったのです。私とゼクース=マシーヌの距離はもう30センチといったところでした。私は早い男なので、とっさに賢者になることに成功したのであります。性交せずに成功するなど皮肉なものです。いや、これは一切体を触れることなく、私を逝かせたエロスが恐ろしいほどに究極かつ至高のエロスだった、という話なのです。賢者になった私は、天女たちを怪しみました。何かがおかしい、このままではいけない、そう思った私は、その場から逃げ出しました。しかし、賢者であるはずの私の足は重く、賢者さえも魅了するエロスに囚われ、結局、5メートルほど逃げたところで、私は、天女たちに襲われ、精気という精気を搾取され枯れ果てました。賢者であった私のとって、その搾取は快感を伴うものではなく、ただの暴行でしかなかったのは、私の膀胱が炎症を起こしていることが物語っています。彼女らに襲われている最中、私は、強姦型寄生生命体の一個体の体液を味わう羽目になり、川の水の味が甘い理由を思い知らされました。ことが終わり、天女のように見えた強姦魔どもは、枯れ木となった私を捨てて、どこかへ去って行ってしまいました。
ブラック企業でこき使われていたころの私は、やはり化物と戦っていたし、今もそうだ、どこの世界へ行っても私は化物に生命を脅かされる運命らしいのです。
それが本当に運命だというのなら、逃れることはできないものなのでしょう。ならば闘うのみだ、あの強姦魔たちをバコバコ言わせてやる、私はそう決意し、これからこの異界を旅するものであります。
以上で、私のレポートを終わります。
毎度のことですが、日本語力が10点中0~2点レベルで本当に申し訳ないと思っています。
少しずつ、日本語力を訓練しておりますので、次回、そのまた次回はさらに完成度の高いものを書くでしょう。
ですから、どうかみなさん、次回を楽しみにしていてください。