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魔法使い
社長室。
机を挟んで窓側が社長、出入り口側が私。
私は退職願を突き出すが、
「ん、それは受け取れないよ」
社長はそういって、窓のほうを向く。窓から下を眺める。
「ですが、私は、もう怪獣討伐をさせられるのは厭です。恐いんです」
反論。
ここで社長が机の中から何かを探し始める。
音、ゴソゴソ。
「ああ、あった。笹井君、この鏡を見てごらんなさい」
社長は、ずいぶん古びた手鏡を取り出した。
「これは、なんです?」
「これはね、魔法の鏡だよ。いまから、素敵な物語の世界を見せてあげるからね」
「はあ、では」
私は鏡を覗き込む。いまひとつ信じられないな、魔法の鏡だなんて。
「あ、笹井君、君、信じてないでしょう? まあ、騙されたと思ってそのまま見つめて」
「……はい」
「実はね、僕は魔法使いなんだ。その鏡も、僕のお手製魔法のアイテムってわけ。ほらほら、何か見えてきたんじゃないかな?」
――は、ああ。見えてきましたとも。