魔法使いと精霊
むかし、むかし。
ひとりぼっちのしょうねんがいました。
しょうねんのかぞくは、しょうねんがものごころついたときには、すでにいませんでした。
しょうねんはさびしかったので、まほうをつかい、“かぞく”をよびました。
もちろん、ほんものの“かぞく”はよびだせません。
そのかわり、うまれたばかりのちからのよわいせいれいが、しょうねんのよびかけにこたえました。
しょうねんはよろこび、せいれいになまえをつけて、かわいがりました。
それからなんねんかたち、しょうねんはりっぱなわかものにせいちょうしました。
わかものはさまざまなまほうをつかいこなし、くにいちばんのまほうつかいとなりました。
しかし、つよすぎるまりょくはにんげんのからだにはどくでした。
まほうつかいは、やがてすいじゃくしてたつこともままならなくなりました。
せいれいはしだいによわっていくまほうつかいのすがたにこころをいため、だいせいれいのもとでおねがいしました。
「どうか、かれをおすくいください」
「おまえが、よぶんなまりょくをきゅうしゅうすればよい」
ただし、ちからのよわいせいれいでは、まりょくにたえきれずきえてしまうだろうと、だいせいれいはつけくわえました。
せいれいは、だいせいれいにおれいをいってまほうつかいのもとへかえろうしました。
しかし、ふりかえったせいれいのめにうつったのは、ねたきりになったはずのまほうつかいでした。
ひどくどうようしてかけよるせいれいに、まほうつかいはほほえみました。
「さがしたよ、ぼくの“かぞく”。ぼくをおいていくなんて、ひどいや」
せいれいによりかかってかろうじてたっているまほうつかいは、とてもかるくなっていました。
「あなたをすくうほうほうをさがしていたのです」
せいれいからそのほうほうをきいたまほうつかいは、しずかにくびをよこにふりました。
「どうしてですか?あなたはたすかるのですよ?」
といつめるようなせいれいにも、まほうつかいはおだやかにみつめかえすだけでした。
「だって、きみがいなくなってしまうだろう?」
「わたしは、もともとよわいせいれいです。ちからをとりもどしたあなたなら、いくらでもよべるでしょう」
「でも、それはきみじゃない」
せいれいには、まほうつかいのきもちがわかりませんでした。
せいれいには、いちぶのちからのつよいだいせいれいをのぞいて、なまえをもっていません。
こせいもありません。
せいれいがまほうつかいの“かぞく”になれたのも、たまたまでした。
じぶんがきえたとしても、いくらでもかえはきくのです。
なのに、まほうつかいはどうやってもまほうつかいをたすけるほうほうにうなずきませんでした。
うなだれたせいれいに、まほうつかいはやさしくいいました。
「ごめんね。きみをのこしていってしまうね。でも、ぼくはきみのいのちをうばってまでいきたくないんだ」
だってきみは、ぼくの“かぞく”だから――
それからまもなく、まほうつかいはねむるようにしにました。
せいれいはなげきかなしみました。
だいせいれいに、かれをいきかえらせるほうほうをききましたが、そんなほうほうはないといわれ、ますますかなしみにくれました。
そしてあるひ、せいれいはじぶんの力がよわくなっていることにきがつきました。
まほうつかいにまりょくをもらわなくなったせいれいは、じょじょにおとろえていき、とうとうよわよわしいひかりのたまとなりました。
せいれいがいまにもきえそうなとき、だいせいれいがやってきてききました。
「おまえは、まほうつかいがしんでからなにをしていた?」
「なきくらしておりました」
しゃべるのもやっとのこえで、せいれいはいいました。
ふと、だいせいれいはほほえみました。
そのえがおはすこしだけ、まほうつかいににていました。
「それが、おまえがあのまほうつかいの“かぞく”だったあかしだ」
「あかし?」
「どこにでもいるせいれいは、にんげんのしをいつまでもかなしみはしない。ずっと、まほうつかいをおぼえてもいないし、おもいだしもしないのだ」
ああ、――
だいせいれいのことばにふかくうなずき、せいれいはそっときえていきました。
いとしい“かぞく”のすがたを、こころにおもいうかべながら――




