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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と魔王編
9/428

魔界と魔王

「……う」


 目を開けた時、真正面に土の地面が見えた。どうやら意識を失いうつ伏せに倒れているようだ。俺は頭を振りながら、ゆっくりと立ち上がった。体についた砂を払い、周囲を見回す。


 一面荒野のような場所だった。遠くには緑の無い岩山が見え、周辺に木々のような植物も無い。一応太陽だけは存在し光を降り注いでいたが、生物がいるのかどうかも疑わしいくらい、何もかもが乾ききっている。


「ようこそ、魔界へ」


 背後から声がした。振り向くと俺を転移させた青年の姿。だが、すぐに別方向に視点が移る。青年の背後には漆黒で統一された、見上げるくらい巨大な城が存在していた。


「魔族の魔力で形作った世界は、荒涼としているんだよ。僕らの魔力には生物や植物を育てる力がほとんどないからね」


 青年は荒野を指差して告げる。俺は彼の言葉をどこか上の空で聞きながら、目前の城に釘付けとなる。

 その視線に、彼もまた城に目をやった。


「さすがにこっちの方がインパクトあるか……そう、あれが君も目指すはずだった、魔王城だ」


 目の前の城は圧倒的な威圧感を誇り、普通の人々であれば城に近づくことすらできないと思った。もし今回のような形ではなく、仲間達と魔王討伐に赴いていたなら、この迫力を目の前にして言葉を失ったはずだ。


「さて、行こう」


 青年に言われ、俺は我に返ると頷く――そこで、あることに気付いた。


「そういえば……あんたの名前を聞いていなかったな」


 言うと、青年はきょとんとした表情を見せた。


「ああ、確かに。タイミング的には良くないけど、自己紹介をしておくべきかな」


 青年は言うと満面の笑みを浮かべ、なおかつ自身の胸に手を当て、話し始めた。


「僕の名はリーデス――魔王陛下によりそう名を与えられた家臣の一人。実を言うと、君とは以前出会っている」

「出会った? 悪いがあんたみたいな魔族なんか知らないぞ」


 俺の言葉に青年――リーデスは首を左右に振った。


「この姿で目の前に現れたのは初めてだろうね。だけど、僕はつい最近生み出されたんだ。転生されたとも言う」


 その言葉に――俺はリーデスを凝視した。


「……まさか」

「察しが良くて助かる。そう……僕は以前、ベリウスという名で活動していた。大いなる真実を知る幹部は、勇者に滅ぼされてもこうして転生を行い、新たな魔族として統治を行う。あ、もちろん大いなる真実を知らない魔族は消滅するよ。僕は事実を知っているが故の、例外だ」


 丁寧に語るリーデス。彼から以前のような外見からの迫力は見いだせない。

 しかし、要塞で出会った時の雰囲気は確かに、ベリウスと劣らないものだった。彼の言葉と自分の中の確信で、リーデスの話が真実なのだろうと、頭のどこかで理解した。


「さて、自己紹介も済ませたし先に進もう。ああ見えても暮らせば結構快適なんだよ?」


 リーデスは語ると、手招きしながら歩き出した。俺は黙って従い、城の門前に赴く。

 門は城と同様漆黒に彩られている。装飾や紋様などが刻まれているわけでもない、非常に簡素なもの。門番らしき存在はなく、ただ閉め切られているだけ。


「どうするんだ?」


 尋ねると、リーデスは指をパチンと鳴らした。指先から魔力が流れ、それが扉に触れた瞬間、ゆっくりと開き始めた。

 それを眺めながら、リーデスに質問する。


「ここに門番とかはいないのか?」

「攻めてくる相手がいたら兵を回すよ。平常時は他に回している」

「他?」

「この城は見た目通り非常に大きい。だから維持がとても大変でね。実を言うと魔界の財政をひっ迫している一理由でもあったりする」

「財政、って……」


 急に生々しい表現が出てきて聞き返した。その反応に彼は苦笑しながら返答する。


「魔族にだって不得手がある。基本魔族は澱みを失くしたり、世界を浄化したりするなんて芸当が苦手な種族だ。だから城のメンテナンスなんてもっとも苦手が部分なんだよ。力でどうこうできないから、誰かを雇って清掃するしかない。しかも、魔王のいる城なんて皆委縮してあまり寄りつかないから、人を雇うのも大変なんだ」

「……逆じゃないのか? 魔王のいる城で働ける、とか」

「この城罠が多くて、たまに滅んじゃうことがあるんだよ。だから募集を掛けてもあまり来ないんだ。結構給金とかも良いし、滅んでも魔王が復活させるんだけどねぇ」

「……そうか」


 なんだかずいぶん間抜けな話になってきた。話を聞いて城に対する畏怖が少なくなり、見方ががらりと変わる。どうも魔王や魔界は非常に人間臭い上、相応の物を持つと大変らしい。

 門を抜けると、次に現れたのは庭園。色とりどりとまではいかないが、結構な種類の花が咲いている。毒の花でも植えているのかとか思って目を向けるが、花の香りが一切しない。


「ああ、造花なんだよ。全部」


 リーデスから答えが来た。試しに一つ手に取ってみると、花びらが作り物だった。


「何で本物の花じゃないんだ?」

「庭先に花なんて植えたら、手入れのために人を雇わないといけないじゃないか」


 脱力するような答えが返ってきた。俺は魔界のイメージをさらに変えつつ、問う。


「この造花って、どこから手に入れたんだ?」

「君達人間が暮らす世界から。実際、これほどの造花を購入するのに反対意見もあったらしい。金の無駄だって」

「……そっか」


 なんだか言葉を返す気力もなく、造花から手を離し歩き出した。


 何事もなく庭園を抜けると、今度は城内に入る大扉が目の前に現れた。やはり門番らしき姿は見えず、リーデスが先ほどと同様指を鳴らすことで開く。

 中を覗き見る。なんとなく予想していた通り、照明の類がほとんど無く薄暗い。


 そこで俺は、嫌な予感がした。人が少ない。さらに手入れに金のかからない造花。ここまで来るとなると――


「まさかとは思うが、照明が少ないのも節約とか言うんじゃないだろうな?」

「え? そうだけど?」


 予想通りの切ない答えが返ってきた。ぐうの音も出ない。


「もしかして……あの要塞が暗かったのは……」

「うん。同じ理由だ。だって僕らは裸一貫で要塞に派遣されるからね。一応王とのつなぎを得て予算とか与えられるんだけど、雀の涙だよ。だから城を良くするように外見だけ整えて、後は放置だ」

「あの抜け道みたいなのは……」

「ああ、あれね。一応要塞に抜け道があるなんていかにもダンジョンらしいし良いかなとか考えていたわけだけど……本当は、予算不足で補修ができないから放置していただけ。実を言うと予算は立てていたんだけどさ、君との戦いでとん挫した。再び要塞を占拠しても、きっとそのままだろうね」

「……そういえば、俺との戦いで壊した玉座は誰が修理したんだ?」

「あれは確か一度制圧されたから、フォシン王国の魔法使いが魔法で修繕したんじゃないかな。抜け道とかも直して欲しかったけど、それは時間的に無理だったみたいだね」

「そういう風に、魔法で直さないのか?」

「修繕する魔法なんかは、浄化したりする魔法と同じような種類だからね。魔族は決定的に使えない」


 リーデスはため息をついた。なんだか非常に悲しい話だ。どれだけ資金難なんだ。


「まあ、体裁を良くしておかないと迫力が出ないから、どうにかするんだけどさ」

「ものすごく、大変な話だな……」

「全くだよ。もし豪華絢爛な魔族の城とかあったら、大いなる真実を知らず人間から搾取しているか、何かしら大成功した商売やってるかのどっちかだ」

「商売……? 搾取はわかるが」

「実を言うと、僕もやっていたんだけどさ……売れてたんだけどな。あのケーキ」

「は? ケーキ?」

「君のいた街でケーキ屋をやっていたんだよ。ベリウスとしての僕が滅んだから、閉店しちゃったんだけどね……どうしたの?」


 リーデスは首を傾げた。無言で佇む俺に、不思議そうな表情を浮かべる。


「何かケーキ屋と関わりが?」

「仲間の一人が、ケーキ屋が閉店していたと言っていたんだが、もしかして……」

「ああ、多分僕の店じゃないかな」


 俺はカレンに連れて行かれるはずだった、ケーキ屋の話を思い出す。前は考え過ぎだろうと無下にしていたのだが――まさかこんな繋がりがあるとは思わなかった。


「あんたが経営していたのか?」

「正確に言うと、僕が使役する部下が、だけど。陛下からの命令で、住民に危害を加えないようなものであれば、予算捻出に多少許可されている。ケーキ屋を選んだ理由は、店を出した場所に競合相手がいなくて、なおかつ住民のニーズを得ていたからだ。もし競争相手がいたなら、人間が営むケーキ屋の経営をひっ迫させるかもしれないだろ? だから設置できない。僕もあの町で商売をしようといくつか提案して、唯一選ばれたのがケーキ屋だったんだ」


 リーデスの解説は、徹底的に人間達の営みに配慮したもの。話だけ聞いていると、恐怖を与える魔族のイメージはカケラも無い。


「経営に軌道が乗り始めて、支店の話も出ていたくらいなんだけど……それを……」


 と、リーデスは初めて俺を恨むような視線を投げかけた。幹部ともあろう者が経営していた店を失って怒りを差し向ける――ものすごく違和感がある。どう対応していいかわからず、無言となるしかない。


 対峙はそれからしばし続き、やがてリーデスは表情を戻し城内へ俺を促す。


「まあいいよ……今更話してもしょうがない……さて、魔王城は基本一本道だからこのまままっすぐ進めば玉座に着く」

「一本道?」

「勇者とか来た場合だけ、構造を変えるんだ。普通の時も複雑奇怪な道だったら、生活できないじゃないか」


 ごもっとも。とはいえアメニティ優先の魔王城なんて、しっくりこない。しかし俺は何も言わずただ足を動かす。

 正面には結構な距離の階段があり、リーデスを先頭にどんどん進む。上る間に周辺を見ると、確かに途切れた廊下とか、床も無いのに扉があったりしている。きっと構造を変えて道を繋げたりするのだろう。


「結構大変なんだよ? イメージを保つのも」


 視線に気付いたリーデスが、声を掛けてくる。


「君達人間は相当色んなイメージを抱えているけど、僕らはそのイメージに合わせないといけないんだ。人間達に恐怖や憎悪の対象として見られないといけないからね」

「こんな風にするのは、憎悪の対象になり続けるためということか?」

「そうだよ。僕達はそのために存在しているんだから」

 当然と言う口調で、リーデスは答えた。同時に階段を上り切る。正面には城門と引けを取らないくらいの巨大な鉄の扉。


「さて、到着だ。僕は他に用があるからここで失礼するよ。陛下には君の来訪は連絡してあるから、正面に立てば中に入れてもらえる」

「……用って、何だ?」


 興味本位で訊いてみると、リーデスは肩を落とす。


「いや、君が意識を失っている間に調べたんだけど、あの要塞また陥落したから、始末書を書かなきゃいけないんだ」


 聞かなきゃ良かった。なんだ始末書って。


「すごく大変なんだよ。陥落させられた理由を延々と考えなきゃいけないんだよ? 同僚とかは、仕事は辛くないけど始末書書くのは嫌だと言っている奴もいるくらいだ。あれは拷問であって、決して書類を記載しているのではないと言う奴もいるし……」

「ああ、うん……わかった」


 熱弁振るうリーデスに対し、俺は若干引き気味に応じた。彼はなおもぶつくさ言いたそうだったが、すぐに身を翻し横の道へ足を向け、歩き去った。どうにも人間臭くて、やりにくい事この上ない。


 残された俺は、改めて大扉を眺める。

 本来ならば緊張し、勇気を振り絞って開けなくてはいけない扉のはず。しかしここに至るまでの過程で、色んなイメージがガラガラと崩れ去ったため、何の感情も起こらなかった。


 静かに足を向けると、ひとりでに扉が動く。重厚な音と共に人が通れるくらい開くと、中に入った。






 室内は絢爛、とまではいかないが雰囲気のある場所だった。綺麗かつ複雑な紋様の彫られた白い壁面。玉座へ繋がる道には赤い絨毯が敷かれ、漆黒の柱が壁と絨毯の間にそびえている。柱には照明のたいまつが設置され部屋中を照らしていた。


 絨毯を真っ直ぐ見ると数段の階段があり、その先に玉座。横幅の広い玉座に、人影があり――


「ああ、ようこそ。勇者殿」


 と、凛とした女性の声が聞こえた。


 俺は玉座にいる相手を認めて目が点になった。金色の髪飾りに真紅のドレス。さらさらの黒い髪に青い瞳。どこからどう見ても女性だった。しかも見た目は、二十にも満たないくらいの、艶やかな女性。


「何を呆けているのだ?」


 女性がきょとんした表情で尋ねる。人間味しか感じられない女性に、俺はたじろいだ。

 玉座にいる以上、目の前にいる女性こそ、魔王なのだろう――しかし、


「別に魔王が女性でないというルールは存在しないぞ?」


 相手から言われた。俺は確かに、という意思表示のためぎこちなく頷く。


「……それは、わかっているけど……」


 言いながら思う。たじろいだのは他にも理由がある。


 ドレス姿で玉座に座る魔王は、ずいぶんと折り目正しく座っている。そして俺の場所からは見えにくいのだが、彼女の膝には毛布らしきものが掛けられ、その上に本のようなものが置かれていた。

 多分膝掛けをして本を読んでいたのだろうと推測できるのだが、想像とはずいぶん違う行動とその容姿に、どう反応していいかわからなかったのだ。


「ああ、これか?」


 魔王は俺の視線に気付いたのか、本を手に取った。


「これは『紅蓮の勇者』という名前の本なのだが……」


 勇者をモチーフとした冒険譚だ。既に完結していて、ラストは世界を破滅させようとする魔王を、勇者が倒す話となっている。


「何で、そんな本を読んでいるんだ?」

「ん? もちろんこれが愛読書だからに決まっているだろう。なぜそんな当たり前のことを訊く?」


 何で魔王が勇者の話を読むんだ――と思ったのだが、よくよく考えると魔王からすれば俺のような勇者は同胞だったはず。それならば問題ない――はずなのだが、やはりおかしい気がする。

 だがそこを追及していても話が進まない。俺は軽く咳払いをしてから口を開いた。


「まあいいよ。それより確認なんだけど、あんたが魔王で間違いないのか?」

「ああ。私は魔王エーレ=シャルンリウス――エーレと呼んでくれ」


 にっこりと、歓迎するように言った。俺は魔王――エーレの表情に、ただ頷くことしかできない。


「一応言っておくが、もし手順通り勇者が殴り込みをかけてきたら姿は変えるぞ? 無論、女性だとバレないようにしてな」

「……魔王はずっと女性なのか?」

「先代は男性だった。つまり私の父上なのだが、あまり威厳のある魔王ではなかったな。勇者が来なくて良かったと、心底思う」


 それはあんたも同じだろ――言いたくなって、ぐっと堪えた。目の前の魔王が言っているのだから、相当ひどかったのかもしれない。

 なんとなく気になったが、エーレは手を振りながら話を進める。


「その辺りの話はやめよう。ここに招待したのは、あなたを勧誘するためだ。私としてはあなたの実力を勘案した結果、そうした素養があると判断した」

「もし断ったらどうなるんだ?」

「何も。ただ帰っていただくだけだ。もっともあなたが望むならここで私と戦い、雌雄を決してもいい。私が敗れたなら、好きにすればいい」


 ずいぶんさっぱりした物言い。エーレの表情は晴れ晴れとしており、妙な迫力を与えている。


「……勇者である以上、あんたを倒すのが目的だ」


 俺は今までの目的を告げる。エーレは、さも当然のように頷いた。


「そうだろうな。私を倒し、世界を救うのが勇者の目的だ」

「だが、そうしないようあんた達が操作をしてきた。例えば、神々の武具に関する話が典型的だ」

「そのような面もあるな。だがこれは秩序を維持するため必要なことだ。あまりに強い勇者に武具を渡さないのも、重要な事柄だ……もっとも、そこまで神経質にならなくても良いかもしれない。魔法具を駆使しても人間が私を倒すような真似は、普通できないからな」


 絶対的な力を持つため――そうエーレは言いたいのかもしれない。


「だが、あなたの場合……そうした範疇を越えていると、私達は判断した。神々にも確認を取ったのだが、あなたが持っている武具は過去戦争に使われた予定外の代物。あなたが本来持ち得る潜在的な力と武具を危惧し、あなた達を襲撃してしまった。そうした事態を招いてしまった点は、謝罪する」


 謝罪。まさか魔王からそんな言葉を聞くとは思わなかった。俺は喉の奥に異物感を持ちつつ、魔王に尋ねる。


「あれは、どういう意図で行われたんだ?」

「ベリウスが倒されたため、一部の魔族……これは大いなる真実を知る者達なのだが、彼らが浮足立った。その中であなた達を討とうと動いた面々がいたのだ。ただここには私も深く関わっているため、申し訳ないことをしてしまった」


 エーレは頬をかきながら、俺に続ける。


「魔族に対する命令は、実を言うと書類決裁なのだが……迂闊にもあなたを討伐する書類にサインをしてしまったのだ」

「……そうか」


 半ば呆然と答えた。そんな理由で襲われたのか、俺達は。怒りを覚えても良かったのだが、脱力感が遥かに上回った。


「まあ、いいさ。事情を知らなければあんたを憎んでいたかもしれない。けれど、世界観が変わってしまった。どうしようもない」

「すまないな、勇者」


 エーレは小さく頭を下げた。本来は敵対するべき相手に頭を下げるなど――大いなる真実を知らなかった俺には、想像すらできなかっただろう。


 エーレは頭を上げると、話を戻す。


「それで、勧誘の方はどうだ? 受け入れてくれるのか?」

「そこについては結論が出ていない。というより、まだ疑問がある」

「疑問?」

「本当にこうした管理以外の手段は無いのか? 別のやり方があるんじゃないのか?」

「それについては、考えを巡らせたことはあった。結論から言えば、ベストではないがベターな考えだと、私は思っている」


 エーレは言うと、俺に穏やかな眼差しを向ける。


「あなたは何か案があるのか? 現状を打破できるような案が」

「……それは」


 口をつぐんだ。思いついていない。だが、エーレも言った通り現状がベストなどと言う気は無い。

 俺の表情から答えが無いのを察したか、エーレは優しく言う。


「勇者よ。私が考えるに、あなたには三つの選択肢がある。勇者としての自分と、世界の情勢を考慮し、好きなものを選べばいい」


 言い終えると、静かに立ち上がった。毛布を玉座の隅へ置き、ヒールの音を鳴らしながら近づき、さらに続ける。


「さて、ここでは少し話がしにくい。お茶でもしながら語り合おう。その方が、あなたも考え易いと思う」

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