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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
女神降臨編
63/428

現れた一行

 俺とアミリースは村を離れた直後別れた。ちなみにパメラは眩しいくらいの笑顔を浮かべていたので、大丈夫だと心の底から安堵した。

 そして、俺は言伝に従い目的の場所に赴いたのだが――


「……落ち着かないなぁ」


 一人、俺は広間の天井を見上げながら呟いた。格好は漆黒の衣装かつ、魔族の容姿。なおかつ今いる場所は玉座――フラウと決戦を行った、あの場所だ。

 指示によって、俺はフラウの砦へ舞い戻った。目的はこの砦の防衛。リーデスなんかが仕事により魔王城へ戻ってしまったため、緊急措置として俺が派遣されたというわけだ。


 とはいえ着任してすぐは、やることもほとんどなかった。警備については生き残っていた悪魔が魔物に指示を出し行っている。さらに破壊された場所もアミリースが「お情け」ということであっさりと修繕し、俺は砦にあった食べ物――食べることがフラウの趣味だったらしく、変装して都市まで買いに行っていたらしい――を口にしつつただひたすらに玉座に座り報告を待つだけだった。

 時折魔物や悪魔が砦をうろつく姿を見て思わず剣を抜きそうになるのだが……まあ、少ししたら慣れるだろう。これも経験だ。


「こんな平和がずっと続けばいいんだろうけどな……」


 さらに俺は呟く。ちなみに連絡を行ったシアナの解説によると、魔族が不足して砦自体を空けるようなケースはあるらしい。しかし、今回はそうもいかなかった。

 一連の騒動については、魔族側からセリウス王国の王へ事情が伝わっている。そこで色々と情報を交換し……結果、首都から勇者一行が砦へ向かっているという話だった。


 だからこそ、俺はここで勇者が来た時に備え待っている。相手が来た場合どのようにするかシアナを通じて報告するよう言い渡されているわけだ。


「近い内に来るだろうな……」


 さらに言いながら、俺は左手をかざした。その小指に、新たな指輪がはめられている。


「えっと……映せ――魔の境界」


 呟いた直後、魔力が前方に流れ――目の前の空間が歪み始めた。

 この指輪は、フラウが砦を管理するために使っていた魔法を使用するための魔法具。管理当初四苦八苦していたフラウが開発したもので、現在は使っていなかった物だ。それを何の因果か俺が使うことになった。残しておいてくれたことに感謝する他ない。


 前方の空間はやがて像を結び、外の景色を映し出す。時刻は既に夜を迎え、綺麗な月明かりが地面を照らしていた。他に光源がないにも関わらず岩肌がくっきりと見え、視界の確保に困ることはなさそうだった。


「夜来るとは考えにくいけど……決めつけるのは良くないか」


 俺はじっくりと歪んだ景色の奥を注視。他にやることも無いのでとりあえず監視作業でもしようと思ったため行ったことなのだが――

 少しして、図ったかのように人影が現れた。


「大当たりだな」


 呟きつつ、どのような相手か確認しようとした。その時、


「セディ様」


 前方から声がした。俺は体を傾け、像が結ばれた場所の奥側を見た。

 そこにはシアナが援護のためにとよこしてくれたファールンがいた。漆黒の鎧姿で、侍女とは異なる戦闘態勢だ。


「ああ、ファールン。どうした?」

「一つ、ご報告が」

「敵が来たことか? 偶然魔法を使ったら見つけたんだが」

「あ、はい。そうです。見つけられましたか」

「どういう相手なのかはこれから確認しようとしていたんだが……その辺の情報?」

「いえ、詳細についてはわかりません」

「そうか……もし来たら、戦うんだよな?」

「技量にもよりますが、私が対処しても構いませんよ」

「そうか……ま、相手を確認してからだな」


 答えると、ファールンは俺に近寄る。けれどすぐさま立ち止まり、


「……セディ様」

「何?」

「お似合いですよ」

「……皮肉か?」

「いえ、本心からのものです」


 彼女なりの冗談のような気がしたが……俺としては喜んでいいものやら迷う。


「俺も魔族が板についてきたということかな」

「管理する上ではその方がよろしいのではないでしょうか」

「そうかもしれないな……ところでファールン」


 俺は話を戻し、勇者一行に対して質問する。


「当然ながら、滅ぼされるのはまずい。リスクを回避するのなら、玉座に来られる前にどうにかしないといけないわけだが」

「魔物をある程度けしかけ、戦力分析をした後考えることにしましょう。私が対処できそうならそうしますし、セディ様の力が必要なら退路が無い玉座でかち合わないように調整します」

「そうか……しかし、連続で勇者一行と戦うことになるとは思わなかったよ」

「運が悪かったとしか言いようがありませんね」

「その一言で片づけられるのもなぁ……まあいいか。とりあえず、相手の確認をしよう」


 俺は肩を大いにすくめてから魔法を操作する。魔法の視点が変わり、いよいよ相手の姿が見え――


「っ――!?」


 認め、硬直した。


「これは……!?」


 ファールンもまた呻く。像の奥にいる面々を見て、しかと驚愕しているようだった。


 まず人数は四人だった。二人は男性で二人は女性。男性の方は赤い鎧に銀髪、もう一人は長い黒髪を後ろに束ね、無骨な鎧を着ている。

 一方女性は片方が純白の法衣に腰まで届く茶髪。そしてもう一人は赤髪に軽鎧姿だった。


 その四人全てに見覚えがあった。いや、見覚えなどというレベルではなかった。


 暗がりであっても間違いない。向かう面々は、勇者の時俺と共に戦っていた仲間――カレン達だった。

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