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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
世界覚醒編
426/428

魔王と神の教訓

 数日後、エーレとアミリースの連名により緊急招集された他種族達が、正式に『原初の力』を封印した。

 この事実については口外を避け、文書などによる記録も残さない……厳重に封じられ、ラダンのように使おうとする者もいないだろうことは明白だった。


「勇者ラダンが移動させていたのが功を奏したな。地底の奥深くにより、手出しすることのできないものとなった」

「一応確認だけど、もし人間が地底を調査し始めたらとかしたら?」

「見つけられた場合に処置もしてある。そう心配するな」


 それで話は終わりだった……そして肝心のラダンについて。こればかりは俺も顛末を訊くべきだと思ったのだが――


「概ね想像しているような結末だよ。詳しく知る必要はない」


 そうエーレは断じた。俺を慮ってのことかもしれないけど、いやそれは――と言おうとしたところで、


「全てを背負うべく、ラダンのことも……と考えているようだが、その必要はない。いや、ラダンの一件はあなたのせいではなく、私達が教訓とすべきことだ」

「エーレが?」

「私に加え、神々もまたそうだ……世界を管理する上で、その対応に明確な誤りが出てしまった。結果としてこの世界は窮地に立たされたわけだ。セディ、あなたはそれを私達の頼みによって止めてくれたという立場であり、直接的な加害者というわけではない。結末をしっかり胸に刻んでおくべきなのは、私達の方だ」

「そっか……」


 勇者ということで、ずいぶんと入れ込んでいたのかもしれない。ただまあ、エーレはいつかラダンのことも話すだろう。今はまだその時ではない――そんな風に考えているのかもしれない。

 だからこの話もまた終わった……そして俺は、エーレに師事した本来の目的に戻ることになるわけだが、


「まだラダンの残党はいる。まずはそちらを優先だな」

「ということは、本格的に仕事を覚えるのはまだ先か」

「ああ。勇者ラダンの残した爪痕は大きいだろう。処理するのに年単位かかるかもしれないな」


 マジか……人間の身からするとその時間は結構大きいと思うのだが――


「ただこの時間は有効に使えばいい」

「有効に?」

「今回の戦い……勇者ラダンに懐柔されて裏切者が多数出た。魔族側もそうだし、神々……天使もいた。その辺りを今後改善していなければならない」

「例えば神族魔族、全てに大いなる真実を教えるとか?」

「本当ならばそれが望ましい。しかし、誰もがそれで納得できるとは思えないからな。一部の者にしか真実を告げないという形を取らざるを得ない。ただ、仲間を増やすことはできる」


 仲間……大いなる真実を知る者達を増やす、か。


「信用に足る者を増やし、徐々に状況をよくしていく……これはおそらく一年や二年などという話ではない。それこそ世界の管理を人間が担うようになるまで掛かるかもしれない。だからそれを改善するための足場作りと、セディが動きやすいように体制を変えていく」

「俺が本格的に仕事をするため、か?」

「そういうことだ。本格的に仕事をやり始めるまでに、時間の無駄だったとは思わないよう、これから頑張っていこう」


 俺は頷いた……それと同時に本当に終わったんだと俺は心の底から思った。


「それなら、これからのことを話そうか……まずは俺の仲間達について」

「セディと共に仕事をしてもらえればいい。守秘義務さえきちんとしてくれたら、仕事そのものを降りても構わないが」

「たぶん、俺がやるんだったらと付き合ってくれるんじゃないかな」

「そうか。ならば魔王城内に正式な部屋を用意しよう。もっとも、ここについてはアミリースとも話をしなければならないが」

「神界で仕事を?」

「かもしれない、ということだ。あちらへ赴いたことがあるからわかるとおり、人間が入り込んで自由に歩き回れる場所じゃないからな」


 それもそうか。とはいえ、管理の世界について学んでいくのであれば神界側の視点も必要だ。今は無理にしても、いずれ仕事をあちらでやることもあるだろう。


「勇者クロエについてもセディと同じようにということになっている……ラダンとの戦いで色々と縁もできた。ジクレイト王国とはより親交を深めることができたし、交流がなかった国に対しても、話を通すことができた……結果だけを言えば、最高の形だ」

「なら、これを壊さないよう励まないといけないな」

「まったくだ。私としては引き締まる思いだが……ま、今は少しくらい休んでもいいだろう。セディ、少しの間休暇を取っていいぞ。好きなところへ行くといい」

「好きなところ、か」


 一度故郷に帰るべきかなあ。とはいえ大いなる真実に関連することは話せないから、土産話になるものがあるかどうか。


「それについては仲間とも一緒に相談するよ」

「そうか」

「休暇の期限については?」

「現在、ラダンの残党について調べている。彼らの詳細をつかんだら動いてもらうことになるだろうから、それまでは自由にしてもらっていいぞ。クロエにも同じことを言うつもりだし、遠慮はいらない」


 なるほど……それならということで俺は自室へ戻る。さて、ようやく大きな仕事が一段落したわけだが、


「ま、しばらくはゆっくりしてもいいか」


 とりあえず、数日くらいは自堕落してもいいだろう……と思いつつ、これからのことを考えるとなんだか落ち着かない。

 まあ今更慌てるのもおかしな話だけど……と、部屋の中で悩んでいると、ノックの音が、返事をすると、


「兄さん、今は大丈夫ですか?」


 カレンだった。その後ろにはフィンとミリーの姿もある。


「ああ、丁度良かった。これからのことについて相談しようかと」

「これから?」

「エーレから休暇をもらったんだよ。そこでどうするか、カレン達にも聞いておこうと思ってさ」

「わかりました。では話をしましょうか」


 というわけで俺達はテーブルを囲むことに……そうして、俺達は今後のことについて話し合うこととなった。


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