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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
世界覚醒編
414/428

本物

 二ヶ所目の戦いも、一ヶ所目と同様短時間で勝負がついた。そこも当然ながら偽物で、カレンは魔物達を処理して回った後、一度帰還した。


「順調ですね」

「カレン、問題はないか?」

「魔力も十分です。まだまだいけますよ」


 自信をつけたのかカレンは息巻いている様子。その最中にエーレはファールンが持ってきた報告書に目を向けていた。


「偽物の記憶を探ってみたが、どうやらラダンの居所は不明だそうだ。一応、どういう作戦なのかを聞いた際に本人と会ってはいるようだが、さすがにそこにいるとは考えにくいな」

「あ、そういう形で情報収集しているのか……でも、ラダンの居場所はわからない、と」

「ただ、面白い情報は得た。彼らが偽物の役目を負うことを言い渡されたのは、作戦が始まるよりもずっと前だ。つまり、ラダンからすればこうして行動を移すことは確定していたというわけだ」

「ここまでは予定通り、と?」

「ただ、私達の行動により動き方を変えている節もある。最終目標がなんであるかは不明だが、ここまでして『原初の力』を得ていないことを考えると、やはりセディの考えが正しい可能性があるな」


 エーレはそんな風に考察しつつ、カレンへ指示を飛ばす。


「次の場所へ向かうとしよう。この騒動を短時間で対処することができれば、ラダンにとっては痛手となるはずだ」

「わかりました」


 彼女は頷き、ミリー達と共に戦場へ。それを俺は魔王城で眺めるだけだが……、


「次の動きというのは、何になると思う?」

「おそらくラダンにとってこの策は肝いりのものだろう。よって、短時間で片付けられた場合、身動きが取れなくなる可能性もあるな」

「何か根拠があるのか?」

「ここまで神魔の力を利用し動いたのは一度もなかった。しかも自分の姿をさらすという行為をしている以上、国側としても黙ってはいない。監視の目が厳しくなるのは明白であり、場合によっては居所を探られる恐れがある……いかに支持者に守られているとはいえ、ラダンは確実に人との繋がりが存在する。それを全て断ち切っては今回の作戦を実行することなどできはしない。よって、人の縁を探られ、居場所を特定される……そういう可能性が十二分にあるわけだ」

「それはなんとなく理解できるけど、捜索に時間は掛かるだろ?」

「つまり消耗戦だな……大変だとは思うが、さすがにラダン側がもたないだろう」


 まあ、それはそうか? とはいえ、ラダンはここまでこちらを欺き続けてきた。魔王と主神という、世界において最強のタッグと策の応酬で対抗し続けている。よって、油断は一切できないわけだが、


「十ヶ所全てを打倒したら、私達も動き出すとしよう。国側と連携し、捜索を行う。ラダンはこれまで表に出てこなかったが、今回ばかりは自分が色々とやっていることを白状しているものだ。よって、大きな一手に出る」


 確かに、ここまでラダンが首謀者であるとわからない形だった。俺やエーレなんかは当然ながら明瞭ではあるが、証拠はない……いや、証拠はあるにしても神魔の力や大いなる真実に関わるものもあるため、証拠を提示できないと言うべきか。

 よって、ラダンが雲隠れしている現状では、魔族、神族、人間が上手く連携を取ることが難しかった……のだが、ラダンの行動はそれが解消された形になる。


「もし外したら、まずいことにならないか?」


 ここまで魔族側もリソースを削られているはずだが……問い掛けにエーレは頷き、


「確かに、大陸西部全体を観察するくらいだからな。消耗戦になれば果たしてもつのかという懸念はあった……が、ラダンの方が先に動き出した。根比べはこちらの勝ち……とはいえ、私達はまだラダンを引きずり出してはいない。セディの懸念はもっともだが、ここで確実に、対処する」

 それは魔王としての覚悟というべきか……俺は「わかった」と応じるだけに留めた。いざとなれば、俺が動き出し……いよいよ決戦だろうと、心の内で覚悟を決める。

 やがてカレンが敵を処理し、次へと向かう。驚くべき速度であり、この調子であればラダンの目論見も潰せるのでは……そんな風に思える状況ではあった。

「全ての場所を潰すより先に動き出すか? それとも――」

「それはすぐにでも答えが出るだろう。セディ、準備はできているな?」

「ああ、もちろん――」


 その時、シアナが玉座の間へとやって来た。何が起こったのかは明瞭。すなわち、


「現れたか」

「はい。勇者ラダンの気配……他の偽物とは大きく異なる存在です」

「わかった。ならばまずは先遣隊を送る」


 その場所が映し出される。街道の脇に存在する平原。そこに、勇者ラダンが立っていた。

 どう対処するのかと思ったのだが……エーレが魔族を派遣するより先に、ラダンへ近づく存在が。


「先に動いたようだな」


 それはおそらくアミリース達、神族がラダンへ接触しようとしているようだった。さすがに天使が降伏勧告をしても意味はないと思うが……ラダンへ近づく神族達。果たして、相手はどう出るのか。

 刹那、カレン達が戻ってくる。そこでシアナから報告を聞き、


「エーレ様、私達はどうすれば?」

「ここで待機だ。偽物達も対処しなければならないが、まずは本物と思しきラダンの動向を――」


 エーレが言い終えない内に、画面に変化が生じた。ラダンの姿が動き始めたかと思った矢先、彼は迫ろうとする神族達へ手をかざす。

 それが魔法だと気付いた時には遅かった。光が炸裂し、神族達は慌てて退避を開始した。


「なりふり構わないって感じか……!?」

「これはもう、動く他なさそうだな。セディ!」


 頷くと、俺はすぐさま転移するべく移動する。またエーレはカレン達も同行するように指示を飛ばす。まだ本物なのか判然としないところは存在するが、おそらく鍵を握る相手と戦うのは間違いなさそうだった。

 転移魔法陣に飛び込み、俺達は移動を果たす。ラダンが放った光が炸裂し、周囲に思い残響音が響き渡っていた。


 土煙も生じ、だがその奥にラダンがいることはわかった。俺達は全速力でその場へ向かい……神族達が遠巻きに取り囲もうとする中で、俺はとうとうラダンと対峙した。


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