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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
世界覚醒編

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弱い魔物

 俺達はそこからひたすら魔物達を駆逐し続ける。エーレの下に集まっている情報によれば、魔物の数は相当な数……これを事前に仕込んでいたのであれば、やはり現在の状況を想定していたということになるか。

 戦いは次のフェイズへ移行したのは間違いないが、肝心のラダンの姿が見えていない。こちらもクロエの存在をまた公にしていないし、互いに手の内を明かしていない。問題はこの戦況が果たして何合目まで到達しているのか。いかにラダンとて仕込みは無限ではないし、数に限りがあるだろう。現在は第二波が来ているわけだが第三、第四と続くのかどうか。


 ラダンの居場所などがわからない以上、俺達はできるだけ短時間で魔物を滅し、ラダンの目論見を潰す必要がある……それで目的が達成されるかどうかは不明だが、早々に敵の動きを潰すことは相手に動揺させるには十分だろうし、俺も賛成。よって各地で転戦するのだが、


「……さすがに、弱いな」


 幾度か魔物を討伐してから、俺は呟いた。

 並の戦士などにしてみれば厄介この上ない力を持っているのは間違いない。だが、神魔の魔物と比べれば明らかに弱い。能力などは劣っているし、これなら討伐隊を編成すればそれで十分対処はできそうな雰囲気。


「ただこの弱さは、ラダンがわざとそういう風にしたってことなんだろうな」

「ま、そうでしょうね」


 ミリーは剣を軽く素振りしながら言う。魔物を倒した直後で、彼女は剣を握り直して感触を確かめているようだった。


「たぶん、意図的に弱くしているというより、魔物を生成する魔法陣そのものを弱くしているのね」

「どういうことだ?」


 首を傾げるフィン。そこで俺は解説する。


「つまり、魔王や主神側に気取られないよう、可能な限り魔力を隠していたということだ。ラダンが予め用意していた魔法陣……それは間違いない。実際、この戦場でもそれは確認できた」


 茂みの中に、そっと魔法陣は設置されていた。魔力は弱々しく、魔物を生み出した後は放っておいても魔力が大気中に霧散することは間違いない。


「こんな仕込みは多大な魔力を仕込んでいればエーレが気付くはずなんだ。大陸西部は広いとはいえ、ラダンの動向を探り各地に部下を派遣している……主神側だってそれは同じだ。一ヶ所だけならスルーするかもしれないが、魔法陣があるという報告が各所に生じたら、さすがにエーレ達も警戒するだろ」

「ああ、なるほどな。警戒されたら、ラダンは動きを読まれる可能性がある」

「そうだ。よってラダンは魔王や主神にバレないよう、できる限り魔法陣という存在をひた隠しにして仕込みを行った。魔物の強度などは最低限にして、とにかく大陸西部全体をかき回すことを主軸に置いた……もし今後、再び魔物が出現し始めたら、同じような強さの個体が出現するってことだな」

「そうであれば、俺達にとっては楽だが……」

「ラダンの目的はまだ不明だけど、少なくとも魔物を出現させてリソースを消費させているのは間違いない。とにかく大陸西部全体に戦火を広げている状況を短期間で解決すれば、ラダンにとって良くない流れになるだろ。今はそれを信じて動くしかないな」


 俺の言葉に全員が頷く。


「で、エーレ。ここのポイントは全て倒したぞ」

『ああ。今から転移する。少し立ち止まっていてくれ』


 それから十秒ほど経過した後、俺達は魔王城へと帰還する。


「これで出現した魔物は一通り征伐したな」

「ん、俺達が回ったところで全部なのか?」

「元々諸国は魔物が出現した始めたことにより警戒度も上がっていたからな。魔物の強さもそれほどではないことに加え、最初の時と比べても処理速度が増したので、短期間で討伐できた」

「ならラダンからすると、まずいことになりそうだけど」

「これだけ事前に仕込みをしていた以上、処理速度の上昇くらいは想定の内だろうとは思うのだが……」


 どこか煮え切らないエーレの表情。しかし、改めて思うとラダンの策略は見事にはまっている。

 彼はとにかく目的を果たせばいい。一方でこちら側は目論見が何なのかを特定できないため、あらゆる備えを必要として、リソースを消費している。もちろん魔王と主神が手を組んでいる状況なので、使えるリソースは膨大なのだが……消耗戦という観点で、互角を演じているのは間違いない。


 この状況が目的を成すために必要なことだとすれば……ラダンは一体どこにいるのか。


「なあエーレ。現状は受け身の状態だよな?」

「悔しいが、そういうことになる」

「それを攻めに転じるために俺達は色々と動いているわけだけど……」

「魔物を消費し続けている以上、どこかで大きく動く必要性はある。時間が経てば、こちらも使える戦力も減るからな」

「今クロエはどうしている?」

「騎士などと混ざって魔物を倒している。彼女にも意見を聞いてみるか」

「そうだな。この場にいない面子を含め、一度情報を共有して話し合おうか」


 その提案にエーレは頷き、


「魔物の掃討についてはひとまず終了だ。これからどうするのかについては……少し待ってくれ」

「休憩ってことか。でも、敵が動いている以上は何かするべきか? 転移させた部屋を調べるとか」

「そちらはファールンなどにやらせているから問題はないぞ……とはいえ、現状は魔物が発生した初期段階と動きがほとんど変わっていない。できればこちらも何かしら行動を起こしたいが……」


 唸り始めるエーレ。ここまで魔王が考えさせられている以上、ラダンの作戦は成功しているのだろう。

 まあ感心しているだけじゃダメなので、俺も何かしら意見を出さないと……と、ここでカレンが小さく手を上げた。


「あの、良いですか?」

「どうした?」

「魔法陣により魔物を生成しているのはわかったので、それを調べるというのは?」

「魔力そのものが非常に少ないため、捜索はかなり大変だと思うが」

「魔物が発生した箇所などを調べ、次の出現場所などを特定できないでしょうか?」

「……それ、場合によってはラダンの動きをつかめないか? 例えば魔法陣に遠隔干渉していたら、魔力を辿ることも……」

「かなり厳しいと思いますが、不可能ではないかと」

「……ふむ、ならばやってみるか」


 エーレはカレンの策を採用。そこで玉座の間へ移動し、地図を広げ検証を始めた。


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