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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
世界覚醒編
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魔物の生成

 話し合いの後、俺は新たな作戦を言い渡された。というより、さすがに魔物の数が多くなったので、その討伐へ駆り出されたわけだ。


「クロエについても動くように指示してある。とはいえ、あくまで一勇者として動く方向だ。神魔の力を保有しているとは悟られないようにする」


 手数が足りなくなっている……というより、相手の策がどのようなものなのかわからないため、できるだけ早期に魔物の数を減らして次に備えたいといったところか……まあ余裕はあるし、俺としても動いていた方がいいような気もするので、エーレの指示に従うけど。

 そうして転移魔法によって飛ばされたのは、森の中。近くに渓流がある場所で、ずいぶんと人里離れた所である。


「エーレ、場所は?」

『魔物がそちらへ向かっている。調べたところ神魔の力を保有する個体はゼロだ』

「わかった……と、見えてきたな」


 ゾロゾロと多種多様な魔物が見えた。しかもその数は結構なもの……あれが村などに到達すれば、一切合切破壊し尽くし、犠牲者が多数出るだろう。

 俺は意識を集中させて魔物の強さを探る。気配そのものは並といったところ。たぶん俺だけなくカレン達も一撃で倒せるくらいか。


「よし、いくぞ!」


 号令と共に俺達は駆け出す。次の瞬間、魔物が反応し一斉に雄叫びを上げた。

 威嚇のつもりみたいだが、あいにく俺達には通用しない……! 機先を制する形でカレンの魔法が放たれた。光弾であり、それが先頭にいる魔物へ直撃する。


 ゴウン――と、轟音が聞こえると共に当たった魔物は砕け散った。途端、周囲にいた個体がさらに声を張り上げ、こちらへ突撃を開始する。それに対し俺は剣を構え迎え撃つ構えを示す。

 交戦を開始する。最初に突進してきた狼型の魔物を上段からの振り降ろしによって一撃で仕留める。次いで骸骨の戦士には横薙ぎによって腰を両断。足は崩れ、俺は地面に転がった頭部に剣を突き立てて始末する。


 フィンやミリーも戦闘を開始し、巧みな剣さばきで魔物を駆逐していく……こうして魔物と戦うことそのものは慣れているし、問題はない。ただ、この場にいる魔物は単に大陸西部の戦火を広めるためだけに存在するのか……? 俺やクロエであれば一切問題にならない敵ではあるが、目の前の魔物達の能力は、普通の戦士ならば苦戦して倒すくらいのものだろう。それこそ、神々から武具を贈られた人とか――


「……なあ、カレン」


 俺はなんとなく気になって、声を上げた。


「こうして魔物を拡散させているのは、ラダンが戦いの中で求める人材を探しているため、とかいう可能性はないか?」

「神魔の力を持っている人物、ということですか?」

「あくまで思いついただけだが……」

「神魔の力はラダンが開発したものである以上、それを探すというのは首を傾げますね。開発者が彼である以上は、魔力などを辿って見つける手段くらいは確立しているでしょうし」

「だよな……ということはやっぱり、戦火を広げて何かをするということか」

「その可能性が高いですが……しかし兄さんの着眼点は悪くないと思います」

「……どういうことだ?」

「戦火を広げる行為に意味がある……ということはラダンはこれに乗じて何かしようとしているのは間違いない。理由が見いだせないため私達にとっては疑問の塊ですが……兄さんが言ったように、こちらにとっては荒唐無稽な事をカモフラージュするためというのは、決してあり得なくはないかと」

「なんだか理屈っぽい説明だな……ただ、ラダンが何をしているのか予想するには、それこそこちらも突拍子もない考えじゃないと無理か」

「そうかもしれません」


 会話をしながら魔物を殲滅していく。剣を振ることでモヤモヤした感情が消えていくのだが、絶え間なく疑問が押し寄せる。

 やはり現状を打破するにはラダンを見つけないといけないが……やがて魔物を殲滅する。時間にして十五分ほどだろうか? 全てが例外なく一撃だったのだが、数が多かったために予想以上に時間が掛かってしまった。


「終わったぞ、エーレ」

『ご苦労だ、セディ。次の戦地へ向かおうかと考えたが……周辺を調べてくれ』

「何かしていたという痕跡がないかを確かめるのか?」

『そのようなものだ』


 俺はカレン達へ呼び掛け周辺を捜索。もし見つかるとしたら、魔物が突如ここに出現させた魔法陣とかになると思うけど――


「お、あったな」

「これは……」


 俺の言葉に対し、カレンは息を飲んだ。森の一角。そこに複雑な紋様が刻まれた魔法陣があった。


「これを使って魔物を生み出している……いや、転移させている、か?」

「少し調べます」


 カレンが屈んで魔法陣に触れる。魔力はもう消え失せているし、役割を終えたためか、徐々に魔法陣が消え始めている。


「ふむ……これは、生成型の魔法陣ですね」

「なら予めここに魔物が生まれるよう仕込んでいたというわけか……つまりラダンは、こういう状況になることを想定していた」

「神々や魔王が相手になる以上、用意していたということですね……しかし、疑問があります。転移ではなく生成ということは、大陸西部の戦火はずいぶん前から用意されていたことになる」

「どこかに転移させるとかじゃないからな……つまりラダンにとって、現状の戦況は想定の範囲内ってことか」

「やはりどういう意図なのかを調べなければ危ない気もしますね」

「エーレはどう思う?」

『ふむ……他の場所について情報が来たが、やはり生成型の魔法陣みたいだな』

「転移という予想は外れたわけだが……」

『こうなると不可解なことが多いが……まあいい。検証は後にしよう。他の場所は転移させているという可能性だって存在するからな。ではセディ。次の戦地へ向かわせるから、同じように魔法陣があるのかどうか調査をしてくれ』


 むしろそれが目的って感じかな? 俺は「わかった」と承諾し、魔王城へは戻ることなく次の戦地へと向かう。

 光に包まれ、その先にあったのは――今度は街道沿いの平原。とはいえ周囲に人影はない。魔物が出現したため、避難したのだろう。


 そして目標となる魔物は真正面に。


「一気に片付けるぞ!」


 声と共に俺は走り出す。仲間達もそれに追随し――戦闘が始まった。


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