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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編
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魔界への帰還

 やがて神界を出て、俺達は魔界へ帰還した……言葉にすると奇妙なことこの上ない。とはいえ現在の拠点は魔界……しかも魔王城なので、仕方のない話なのだ。

 今回神界では政治中枢を知ることができた……管理の世界について考えるのならば、きっとあの白亜の城で仕事をする以外の神族とも顔を合わせていく必要だってあるかもしれない。その辺りはいずれ……といった感じかな。


 今は神界を訪れ、一仕事終えて事件を解決したということで喜ぶとしよう……そして俺達は玉座の間に到達。エーレが玉座手前の階段に立って出迎えてくれた。


「アミリースが来たか……デュガめ、アミリース相手だと私が強気に出られないことをわかった上での人選だな」

「そう穿った見方をしないの」


 クスクスと笑うアミリース。一方のエーレは俺達へ視線を移し、


「怪我はないか?」

「大丈夫だ」

「そうか。ならばいい……色々と大変だっただろう。神界の、しかも主神のいる城に滞在したのだ。長期間とはいえ慣れないところも多かったはず。勇者ラダンの動きもないため、少しの間は休んでくれればいい」

「ここが落ち着かないという可能性は?」


 アミリースからの横槍。そこでエーレは憮然とした表情で、


「拠点にする以上は慣れてもらわなければ困る」

「ま、それもそうね……ただ、ここで一つ話があるのだけど」

「提案か?」

「ええ……と、その前に私の口から今回の一件について報告するわ」


 と、俺達の活動について説明を施す。ちなみにデュガと戦ったことについても克明に伝えた。エーレとしては「さすが」の一言で終わらせたのだが、なんだか俺を見る視線が誇らしげな感じだった。


「説明はこのくらいかしら……それで、先ほどの話だけれど」

「おおよそ推測できるぞ。勇者セディを含め、神界の方で仕事ができないか……そちらを拠点にできないか、という話だな?」


 俺や仲間達は全員驚いた。まさかアミリースの口から……いや、よくよく考えればそういう提案があってもおかしくはない。


「ええ、そうよ。デュガから言わせると、事情を知る人間を独占しているのはずるいのでは? って言ってたわ」

「ずるいって……」


 なんだか呆れた口調になってしまう。それにアミリースは、


「経緯が経緯だからエーレと共にいるのだけれど、デュガとしてもあなた達のような存在は、待ち望んでいたのよ」

「入れ込んでいるというわけか」

「ええ、そうね」


 エーレの言葉にアミリースはあっさりと頷く。


「それに、魔界側ばかりで仕事をしていては見えないこともある……わよね?」

「そこについては否定できないな。今回神界を訪れてもらったわけだが、それで余すところなく神々のことを知れたわけでもない。勇者ラダンのことがなければ時間を掛けて……学ぶべきところだ。ただ、懸念もあるぞ」

「懸念?」

「仮に人間を招き入れるとして、どのように説明するつもりだ? この魔王城はそれこそ、大いなる真実を知っている者達ばかりであり、セディ達が住むことに何ら問題はない。しかし、神界はそうもいかないだろう?」


 多数の天使達が城に勤めていたからなあ……それに対しアミリースは、


「今回の一事を利用して、色々と説明を付けることはできるのよ。デュガとしても勇者を滞在させることに対し理屈が必要なのは理解している……けれど、今回の騒動を利用すれば、その辺りを解決することができる」

「ふむ、迎え入れる土台が生じたと」

「そうね。まあ大なり小なり無理が生じるのは認めるわ……けれど、デュガの言う通り勇者達をこちらばかりに置いておくのは、納得いかないのも確か」

 と、ここでアミリースは俺達へ向いた。

「とはいっても、決してあなた達を何かに利用しようとか……そういう意図はないからね」

「そこはわかっていますから」


 カレンが応じる。少なくともアミリースやデュガが俺達に対し真摯な態度を見せているのは間違いないから、仲間達も心配はしてないだろうな。


「で、エーレ。どうかしら?」

「ふーむ……そうだな、人間が世界を管理する技能を身につけるには必須だろうし、神界で学ぶ機会はあってもいい。そこについて異存はない……が、やはり大いなる真実に関することだ。慎重になるべき部分ではある」

「ええ、わかっているわ……そうね、受け入れる態勢が完全に構築した後、改めて話をしていいかしら?」

「それで構わない。ただ、対象となる人間は勇者セディと仲間達か?」

「いえ、勇者ロウやクロエも含まれるわよ」

「そうか……勇者ロウは天使パメラのこともあるからな。その関係性などは複雑だし、下手に突っ込まれたら大変なことになる。勇者クロエについては……問題はないか」

「もちろん、本人の意思を確認した上で、だから」

「きちんと段取りができたら、そこで再度話し合いだな……神族が納得いかないというのも理解できるため、私も賛同しよう」

「ありがとう……ただ、この辺りのことを含め、話し合いの席を設けるのは勇者ラダンとの戦いが終わってからかしら」

「かもしれない。まだ足取りをつかめてはいないが……そう遠くない内に、見つけ出す」


 強い言葉だった。エーレとしても思うところはある……ってことだな。

 それからアミリースとエーレはいくらか話し合い、女神は立ち去る。残された俺達は一度部屋へ戻るようにエーレから言われた。


「魔界側の状況に変化はない。セディ達の仲間であるレジウスや、勇者クロエ達も頑張ってくれている……次はどうするのかについては、折を見て話をしよう」


 ひとまず、休めるってことだな……勇者ラダンと遭遇して以降、なんだかバタバタしていたし、ようやく少し落ち着けそうだ。

 俺達は玉座の間を後にしようとする……が、その時、


「セディ」


 エーレの声。振り向くと彼女は少し硬い顔で、


「後で話がある。部屋を訪ねてもいいか?」

「ああ、構わない……仕事の話か?」

「それを含めてだ」


 今後のことかな……俺は小さく頷き、


「お茶の用意は必要か?」

「そこは心配しなくていい」

「なら、部屋にいるよ。ノックをしてくれ」


 そんな端的な会話の後、玉座の間を出る。そして仲間達と共に、寝室のある廊下へと向かうこととなった。


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