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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編
375/428

一派の顛末

 戦いの後、俺達はまだ神界に滞在することに……エーレへ連絡はいっているようだし、ここにはいない仲間達についても問題ないとのことだったので、山場を越えたことでゆっくりすることに。

 その間に、神界は少しばかりざわつき始める……政治を担っていたジェロクア家が反旗を翻したという事実にまず驚き、その理由を知ってさらにビックリした感じらしい。


 さすがに神魔の力について公表はできないので、それらしい理由を作る必要があったわけだが……デュガは「解析などで得た主神や女神を封じる魔法を使い、神界を制圧しようとした」という説明を行った。

 神魔の力を利用すれば不可能ではない所業だったし、嘘はついていない。少なくとも白亜の城の中でこの内容について疑いを持っている天使などはいないようだったし、混乱は少ないだろう。


 ただ、ジェロクア家を始めとして政治に携わっていた者が捕まった以上、神界の運営について色々と考慮しなければならなくなったのは事実。実際、俺達が部屋でくつろぐ間にデュガは色々と奔走している様子だった。おそらく裏切り者達の穴埋めを必死にやっているのだろう。さすがにデュガが全部の仕事を背負うわけにもいかないため、代わりの者を採用する形だが……それが決まるまでは結構大変そうだ。


「今回の一件で、神界の勢力図が変わるのは間違いないわね」


 アミリースはそう語った……場所は俺にあてがわれた一室。仲間達は別所にいるため、部屋には俺とアミリースだけだ。


「政治を行うということは、当然ながら派閥も存在する……主神であるデュガが基本的には中心だけれど、ジェロクア家も派閥を所持していた」

「一派が全員、裏切り者だったのか?」

「さすがに全部というわけではないわね。残った者達についてはどうするか決めているところだけど……裏切ろうとしていた派閥の者を受け入れるのは苦しいし、今後の頑張り次第といったところかしら」


 これは仕方がないよな……そもそも大いなる真実に関わっている部分だし、変に妥協したらそれはそれで問題になる。


「ただ、事態が完全に収束するまでもう少し時間が掛かりそうね」

「……大丈夫なのか?」

「デュガはなんとかすると語っていたし。あ、勇者ラダンとの戦いについてはきちんと別に準備を進めているから心配しないで」

「そこはぬかりないだろうから心配はしていないけどさ……本当に大丈夫なのか?」

「本音を言えば、踏ん張りどころといったところかしら」


 アミリースへ肩をすくめる。やっぱり外野で見ているだけではわからない事が多そうだ。


「そうねえ、現状は決して悪くはないわ。今回の騒動で捕らえた面々を考えると、予想以上に混乱は少ない。私達がコントロールできているのも大きいけれど、ひとまず捕まった者達に追随して裏切り者が連鎖的に出現なんて可能性はおそらくない」

「混乱は拡大しないってことだな?」

「そうね。でも、落ち着くまでは時間が掛かる。当然だけど政治の一端を担っていた者達だから、それを補うには時間が掛かる。しかも彼らは有能だったし、なおかつ今回のようなことが起こらないように後継を選抜する必要がある」


 頭が痛くなってくるな……主神の処理能力が高いからなんとかなっているって感じだろうか?


「だからまあ、少なくともデュガについてはおそらく神界から動くことができない……勇者ラダンからすれば、これは極めて有利な話よね?」

「そうだな。少なくとも自分が『原初の力』を手に入れるべく動き始めても主神は出向いてくることがないわけだし」

「加え、大いなる真実を知る者達にも仕事が結構降りかかっているから、大変よ。勇者ラダンからすれば大きな敵対勢力の一つが身動き取れない状況……その情報が向こうに回っているのかはわからないけれど、もしそうなら動き出してもおかしくない」

「そうなったら決戦だけど……神魔の力による戦いである以上、俺の出番か」

「ええ。私達としては不本意だけれど……ともあれ、私についてはこれまでと同様にエーレと折衝していくことになったし、外の交渉事は任された。だから、今後ともよろしくね」

「その挨拶に今日は来たって感じだな……アミリースの方に仕事は回ってきていないと?」

「ゼロではないけど。デュガも私のように飛び回る存在がいないとまずいと判断したってこと。ただ、以前のように天使を率いるというのは難しいかも。新人であるパメラとかならどうにかなるでしょうけど」


 なるほど、神界の外側についてはアミリースが一手に引き受けたってことか。


「それでセディ、今後だけど」

「もう俺達の役目は終わっただろ? それに、俺や仲間への考えも変わっているだろうし、下手に干渉されないうちに神界を脱するのが良いと思うけど」


 ――ちなみにだが、捕縛作戦には俺達も加わって貢献したという話がこの城内で広まっている。だからなのか、俺達に対する視線も以前とは違っているように感じる。やっかみもあるかもしれないけど……これまでは単に主神が勇者であることを認めただけだったが、そこに仕事を頼む……つまり、実績ができたのだ。それは主神が俺の力を確固たるものと認めたも同然。大なり小なり評価は変わっているはずだ。


「そうね。でも、裏切り者達の動きも警戒しないといけないから……まだ潜んでいる懸念もあるからね」

「ああ、そうか。ということは現在、この土地は外部からの出入りが制限されているのか?」

「そういうこと。あと、そうね……五日ほどかしら。悠長かもしれないけど、そのくらいは時間を掛けないと敵がいてもあぶり出すことが難しいの」


 五日か……想定よりも滞在日数は長くなっているけれど、


「エーレにその旨は報告したのか?」

「ええ、きちんとしているわよ」

「なら、俺としては問題ないと判断するよ。けど、何か騒動があったら……」

「可能性は低いけど、何かあればすぐに相談して」

「わかった」


 会話が終わる。明日から何をすべきか……仲間と相談して決めようか。そんなことを思いながらその日は過ぎていった。


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