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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編

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決定的な違い

「――警告する」

 裏切りの天使から発せられた声音は、ひどく無機質なものだった。


「人間よ、貴様達が主神どもからどのような説明を受けここにいるのかはわからない……が、この戦いは貴様達が踏み込んで良いものではない。おとなしく立ち去れ。この場を離れれば斬り捨てることもない」

「悪いが、そうもいかないんだ」


 剣を構える。俺自身、何か明言したわけではないのだが……もしかすると天使は何か感じたのかもしれない。


「ふむ……貴様達、知っているのか?」

「何を?」


 聞き返す。天使としてもさすがに喋るわけはないか――と思い直したか、


「まあいい……反攻するのではあれば始末する」


 神魔の力を所持している天使だ。それがどれほどの技量を持っているのか疑問ではあるのだが……最大の問題は、天使に反撃するべくこっちも神魔の力を用いた場合、相手がどう動くのかわからないことか。

 もし逃げられたらまずいことになるか……いや、勇者ラダンへ報告されても俺については知っているから別にいいのか?


 そんな迷いが生まれた矢先、周囲の魔力に変化が。ズン、と足下がわずかに振動したかと思うと、取り巻いていた結界が、突如拡大を始めた。

 何をする気だ――と思った矢先、結界は一挙に俺達を通過して結界へと侵入しようとした天使を囲んだ。


「……ほう、面白いな」


 ここで天使が口を開く。


「わざわざ結界の範囲を広げて私を拘束するとは……なるほど、反攻する存在を余すところなく捕らえようという魂胆なのか」


 デュガはそういう目論見もあるだろう。けれど、もう一つある。

 絶対に彼とアミリースは神魔の力についても把握しているはずだ。けれど俺達が駆けつけたことで、天使を食い止めることができると判断。よって、結界の中へと拘束したわけだ。


 つまりこれは、俺達を試しているような意味合いもある……絶対に負けられない。


 さて、神魔の力を持つ天使と相対するわけだが……そもそも天使が所持する神魔の力がどのような効力なのかわからない。

 果たして人間以外だと、どのような効果を発揮するのか……俺達は逃げることなどせず、剣を構え天使の動きを窺う。


 そこで相手も理解したのか――天使は剣を抜き放つと真っ直ぐ俺へ突き込んできた。凄まじい速度で迫る剣戟。技術も洗練されており、一瞬で間合いを詰めて俺の首筋を容赦なく狙ってくる。

 しかし俺は、敵の動きを見極め剣を受けた。途端、魔力が弾け凄まじい力が剣を通して伝わってくる。


 だが、俺は耐えた……それは魔力強化の面もあるのだが、一番の理由は――


「……な、に!?」


 さすがに呻いた。まさか天使は俺が――神魔の力を所持しているとは思っていなかっただろう。

 まあそもそも、この力を勇者ラダンに連なる存在以外に持っているとは、天使の方は考えていなかったはずだ。


 さあ、どういう反応を見せるか……と思った矢先、天使は顔を歪ませた。


「そうか……この神界に招いたのは、それをくれてやるためか」


 呟いた直後、天使は俺の剣を弾き飛ばす。こちらは反動で一度後退し、天使をにらみつける。

 どうやら天使は、俺の持つ神魔の力がデュガ達によるものだと判断したようだ。まあそういう風に想像するのが無難か。ただ、ここで主神が神魔の力をどうやって得たのか疑問に思うはずだけど……いや、もしかして天使は神魔の力がどういうものなのか完璧に理解しているわけではないのか? そうでなければ神魔――魔族の方の力をどのように得たとか、さらに疑問に思うはずだ。


 それなら、付け入る隙はあるか? 俺としては神魔の力を完璧に把握しているわけだし、そこから何か狙っていけないだろうか。

 そうした見立てをする間に、天使は立ち止まった。こちらの所作を見ているような素振りではあるのだが、


「……主神も、愚かになったものだ」


 そんな言葉が、口をついて出た。


「この力をどこで手に入れたのか知らないが、まさか人間に渡すとは」

「お前は、これがどのようなものなのか理解しているのか?」


 試しに聞いてみた。それに天使はどこか嘲るように、


「人間風情が馬鹿にしているのか?」


 どうやら俺達人間を、完璧に侮っているらしい。もし大いなる真実の枠組みに参加しているのであれば、こんな態度はしないはずだ。


「無論、知っているとも。いや、むしろ主神すらどういうものなのか、完璧に理解はしていないだろう」

「ずいぶんと、自信があるな」

「当然だ……貴様達に言っておこう。この世界には、隠された真実が存在する」


 口調はどこか、俺達を警告するようなものだった。


「主神も女神も、貴様達を言いように使っているだけだ。それを理解できない限り、貴様達はただ神という存在に操られるだけだ」

「ご忠告どうも……けど、申し訳ないが世話を焼く必要はどこにもないぞ」

「ほう? 操られても構わないと?」


 ――言葉と同時、俺はデュガやアミリース達の言動を思い返す。俺達を試しているような雰囲気もあったし、何より俺達に勝負を仕掛けてきた。それを踏まえれば、どこまで認められているのかわからないのは事実。

 しかし、目の前の天使と決定的な違いがある。真実を知るかどうかではない。知った後、どのように感じたのか……それはデュガと話をした際にあった運が良かったということに関係はしているが、少なくとも俺や仲間達は世界をよくするために動こうとしている。


 だが、目の前の天使は――


「……そちらが隠された真実とやら聞いて、どう思ったのかは反逆していることでまあ想像はつく」


 俺は天使へ告げる。


「それが正しいのか、それとも間違っているのかこちらに諭す権利はない……権利はないが、そうであっても俺はこう宣言する」

「ほう? それは何だ?」


 俺は頭に大いなる真実の枠組み……その中で切磋琢磨している者達を思い浮かべ、


「――お前は、間違っている」


 天使は表情を変えない。真実を知らない勇者の戯れ言だと思ったかもしれない。

 だが、それでも……多少なりとも苛立った様子を見せたのは確か。彼にとって下等な存在とも言うべき人間から何かを言われるのは、不快ということだろうか?


「……ふん。力を得たからといって、いい気になるなよ」


 天使はどこまでも態度を変える様子はなく、剣に魔力を集める。強引に押し通る気か。なら、こちらは神魔の力と……仲間との強力で、倒すことにしよう――


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