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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編
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神界の夜

 決戦を宣言されて以降、俺達は体を休めながら城へと滞在する……結構長期間になっているけど、デュガ辺りが上手く説明しているのか、怪しまれるようなことにはなっていない。


 変な目で見られていなければ俺たちは問題ないけど……段々と滞在日数が長くなって慣れてくると、神界の城もなんだか居心地が良いように思えてきた。魔王の城についてはまだ慣れていない部分があるのは、魔王の城と神の城とでは受ける印象がずいぶんと違うのだろうか。


 魔王の城は生活感がないのも原因だろうか。こっちの城は規模が広いし天使達が歩き回っているので、廊下を歩いていてもなんだか安心感がある。しかし、魔王の城は廊下を歩んでいても誰も見かけない……どこかで働いているのだろうけど、まだエーレはその辺り見せていないんだよな。


 今度、見学させてもらおうかな……そういえばリーデスが始末書とかで死ぬほど嫌な顔をしていたな。あんまり見られたくないのだろうか。あと、求人をしてもあまり来ないとか言っていたような……魔王の城ということで威厳がないといけないのかもしれないけど、閑散としたところから変えていけば、もう少し仕事が楽になるかもしれないな。


 魔族と神族とでは仕事に対する考え方も違うだろうし、色々と制約をつけているのかもしれないけど……エーレの労働方針とか、今度聞いてみてもいいかもしれない。

 そんなことを考える間に、俺はデュガから連絡を受ける。どうやらその時が来たらしい。


「では、いよいよだが……時刻は夜。この城内が静まった時、幹部クラスが全員目星を付けていた場所に集まるらしい」


 会議室で最後の打ち合わせを行う。とはいえ地図などもなく、すぐにここから離れることができるよう、立ち話だ。


「既に選抜したこちらの面々は動いている。監視しているが、幹部が集ったところで結界を構築する」


 その後、デュガやアミリースが踏み込んで相手を拘束するべく攻撃を仕掛ける。俺達は結界の外側で露払いというわけだが、


「念のために確認ですが」


 俺はデュガへ尋ねる。


「結界の外側で反攻する戦力というのは、どのくらいですか?」

「不明だが、さすがに大人数というわけではないだろう。そもそも護衛や戦力となる側近については会議に参加するだろうし」

「護衛を連れているということは、警戒はしていると?」

「一応な。怪しい集いだ。こちらの監視の目をかいくぐるために護衛などに気配を探らせるわけだ」


 なるほどな。


「相手はまだこちらには――」

「当然気付いていない。演技をしているなどという可能性は極めて低い……というか、気付いていれば会議は中止しているはずだからな」

「もう一つの可能性はあるけどね」


 アミリースが呟く。


「私の毛髪を採取した……対抗魔法を構築しているなんて可能性もあるし、来ても迎え撃てると考えているのかも」

「それだとかなりまずくないか?」

「神魔の力でなければ……同胞の力であればこちらは対抗手段があるわ。懸念はやっぱりそこ。場合によってはセディに戦ってもらう必要性があるかも」


 神魔の力でなければ、か……俺は小さく頷き、


「どういう形でもいい。俺は犠牲者がなく作戦が完璧に遂行するべく、動くだけだ」

「頼もしい発言だな」


 そうデュガは呟くと、彼は笑みを浮かべた。


「主神を打ち破った力、改めて見させてもらうぞ」

「あの、別にあれは……」

「謙遜だな。では、行こうか」


 デュガが号令を掛ける。俺達は会議室を出て、廊下を歩む。


「そういえば――」

「ああ、こうして移動すること自体、問題ないように取りはからっている。廊下に誰もいないのがその証拠だ」


 秘密の会議が行われる場所だけでなく、こちらにも手を入れていると……さすが、周到だな。


 たぶんだけど、こうやって俺達を引き連れて作戦を実行するには様々な障害があって、それを全てクリアしているのだろう。これだけの巨大な城だ。一つ何かをやるのに多大な調整が必要なはずなのだ。

 けれど、デュガやアミリース達はそれをおくびにも出すことなく、俺達に決戦の戦いを頼んでいる。


 改めて……この戦いに至るまでの経緯を思い返すと、見えない部分で相当な労力が使われている。彼らにとって同胞と戦うこと自体、かなり大変なことのはず。しかし俺達に対してはずいぶんと楽観的に話をしている……頭が下がる思いだ。

 エーレとかにその辺りのことを伝えたら、どう思うだろうか――などと考えていると外に出た。そこから俺達は脇道へと逸れて歩き続ける。


 闇夜に紛れて行動するという感じなのだが……さすがに夜となれば神界にも漆黒が生じる。メインストリートは明かりが存在するし、城内も歩きには不便のない光があるのだが、さすがに脇道となるとそうした照明があったとしても心許ない。

「足下に注意をしてくれ」


 デュガが指摘する。彼はずいぶんと慣れた様子で先頭を歩いている。

 事前に調査したのか、それともこういう道を過去に通ったのか……後者かな。主神となってどのくらいの歳月経っているのかわからないけど、この島のことを把握していないとは思えないし。


 少し歩くとデュガに声を掛けてくる者が。どうやら作戦に参加する者のようで、主神はいくらか報告を受けた。


「うん、予定通り幹部クラスが集まった。後は私達が現地に到着すれば良いらしい」


 いよいよだな……カレン達も顔に緊張が浮かんでいる。しかしそれをアミリースが「落ち着いて」と優しくなだめた後、


「では、作戦を実行する。通達し、準備を」

「はっ」


 部下に指示を出したデュガは俺達を一瞥。


「さらに進むとしよう……剣は抜いておいてくれ。敵の動向次第では到着前に結界が発動する可能性がある。現場判断で対処しろと言っているからな。ここからはいつ何時始まってもおかしくない」


 その言葉で俺達は武器を手に取った。金属音と共にデュガとアミリースは再び歩き始める。

 それに追随する俺達だが……先ほどの緊張とは顔つきは違っていた。それはまるで、魔王幹部に挑むかのような……俺と共に戦い続けた仲間達が、確かにいたのだった。


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