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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編

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完全勝利を目指して

「さて、再び集まってもらったわけだが」


 デュガが口を開く。彼以外は全員着席している状況なのだが……語りながら彼は地図を広げる。それはどうやらこの島全体が描かれているようだ。

 正直入口と白亜の城の部分しか認識できないし、縮尺などもよくわからないのだが……デュガは俺達を一瞥し、


「この地図上で説明させてもらう。ルーノがアミリースの毛髪を採取してから、程なくして動き始めた。潜伏しているアジトに入り込むというわけではなく、彼らが調査研究などをしている場所、といったところだろう」

「そんな場所が?」

「地下にはそういう所が眠っている。実を言うと公開されていないだけで、こちらも把握している」


 今回のように、敵側が何も知らずそこに潜伏していたら、一網打尽にできるわけか。


「今までは見逃していた……というよりは泳がせていたと言った方が正確か。底を利用していることはこちらもわかっていたため、調査資料などを持ち込むことを期待していた……で、だ」


 ここでデュガは笑みを浮かべる。


「そこはどうやら話し合いの場にもなっている様子……ということで、幹部クラスの面々が今回の収穫で集まるような雰囲気だ」

「雰囲気……ですか」


 確証あるのかと疑問だったのだが、ここでデュガは「問題ない」と応じる。


「他の情報を統合した結果、幹部クラスが動くのが間違いないと判断したわけだ。よって、こちらも総攻撃を掛ける」


 まさしく乾坤一擲の勝負だな……そこで敵勢力を全滅できればいいけど、さすがに甘いのではないか?


「無論、大丈夫なのかという疑問はあるだろう。こちらとしても精鋭を引き連れ攻撃を行う。大船に乗ったつもりでいてくれればいい。で、その中には勇者ラダンの居所を知る者だっているかもしれない」

「上手く捕まえることができれば、事態が一気に進展すると」


 俺の言葉にデュガは「まさしく」と答えた。


「ここで問題点は二つ。一つは敵勢力がどれほどの規模なのか。精鋭クラスをこちらは引き連れ行動するわけだが、大々的に動いては敵に気付かれる。幹部クラスにはこの城に常駐する存在もいるようだからな」

「つまり、少数精鋭ということですか?」


 カレンからの疑問。デュガは頷き、


「そうだ。誰もが一騎当千……かつ、大いなる真実を知る者達だ」

「それは凄まじいと思いますが……敵もまた神族ですよね?」

「ああ。単純にこちらの拘束魔法を使用して対処というのも限界があるだろう。リーダー格を拘束することは楽勝だ。敵勢力に壊滅的打撃を与えることもそう難しくはない。ただこちらは……完全勝利が前提だ」

「完全勝利、とは?」

「敵勢力を残らず捕まえること。滅ぼすのではなく、捕まえる」


 難易度が跳ね上がるな……それは。


「神族を拘束する魔法も限度があるからな。そもそも大規模に範囲を拡大するような形で魔法を撃つ想定はしていない」

「ということは、多少なりとも交戦する必要があるということですか?」

「その通りだ。私が拘束魔法で逐一敵を戦闘不能にしていくのだが……それをやる間に敵は当然逃げるだろう? 相手だって拘束されれば一巻の終わりだということは認識しているし、全力で逃げるはずだ。よって、それを逃がさない処置が必要であるため、精鋭クラスの神族においても対処が必要になってくる」

「どう考えても大規模な気はしますが……」

「隔離結界を張ること自体は難しくはないな。強度もまあまあ問題ない。ただ、最大の懸念としては、いくら幹部クラスが集ったからといって、結界の外側に敵勢力がいるということだ。結界を維持する親族が狙われれば、面倒なことになる」

「もちろんできるだけの対応はするけれど」


 と、アミリースが口を開いた。


「敵対勢力の規模が予想よりも多ければ、手痛い反撃を受ける可能性がある」

「……確認だけど、全員捕縛とかでなければ十分対処は可能なんだよな?」

「そうね」


 あっさりと……自らの意思で厳しい戦いをしようとしているのか。

 ただまあ、ここで取りこぼしがあると厄介なのは自明の理……というか、勇者ラダンの所へ連絡がいけば、面倒なことになりそうな気配はある。例えばわざと逃がして勇者ラダンの居所を探るというやり方だってありそうだが……それをするよりも全員捕まえて聞き出すかした方が少なくともリスクはないし、勇者ラダンに気付かれない可能性も高い。


「勇者ラダンと繋がっている一派についてだけど」


 俺はアミリースへ疑問を告げる。


「彼らが俺達の事情を知っている……つまり大いなる真実を知っている存在だという情報は漏れているのか?」

「ここまでの挙動を見て、それはないと判断したわ。演技である可能性はゼロではないけれど、むしろここまで隠し通す理由がないもの。敵からしてみれば神族を狙うより君達を狙う方が、明らかに策として有効だし、成功率も高いはず」


 つまり、あくまで神族に認められた勇者として、後のと何かで利用してやろう……みたいなスタンスに留まっているわけか。それならそれでありがたいけど。


「わかった……で、俺達にも役目が役目が与えられるみたいだけど、具体的に何をすればいいんだ?」

「そう複雑なことはない。勇者セディ達にやってもらいたいのは援護……後方支援といったところか。結界を構築して逃がさないようにした段階で、結界の内側については既に作戦を立てている。しかしそれは戦場を隔離しているからとれる作戦。結界が重要であるため、そこを守るために動いて欲しい」


 デュガが答える。そこでミリーが手を挙げた。


「セディは神魔の力があるので戦力になると思いますけど、私達は?」

「勇者セディの援護だ。さすがに切り札を持っているとはいえ、仮に敵を押し留めるような戦いとなったら、一対一では辛いだろう?」

「なるほど、それなら……」


 ミリーも納得した様子。そこでデュガはまとめに入る。


「作戦の日時については、敵の動きによるが……場合によっては夜になる。敵はこちらが勇者の歓待に気を取られている間に行動するようだから、君達が滞在する間に作戦は実行される。始まるまで、いつでも出撃できるよう、体を休めておいてくれ――」


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