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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編
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思わぬ盲点

 さて、ミリーとの話し合いも終わったので次はフィン……帰りを待っていると俺の部屋へ彼が入ってきた。


「話があるんだって?」

「大いなる真実について」

「なるほど。こうして仕事……と呼べるかわからないが、こんな風に神族とか魔王に触れ、どう考えたか気になったと」


 フィンは把握しながら俺の対面に座る。


「ま、そうだな……俺としては事実が判明したからといってやることは変わらない。たぶんレジウスさんとかも同じ事を言うとは思うが……俺としては不快じゃないし、魔王とか女神とかに信用されているのも悪い気分じゃない。よって、仕事はさせてもらうさ」

「不満とかないか?」

「ああ、そこについては心配はいらない。給金が出るのかとか気になることはあるけどな」

「ゼロというわけではないから安心してくれ……ただ、問題としてはこんな仕事だ。予算は付くし仕事中は自分の金で必要物資を買うようなことはない……そういう意味で支障はないけど、最大の問題は給金をもらっても使い道がないことだ」

「ああー、そうか。そこは考えてなかったな」


 と、フィンは笑い始めた。


「確かに、俺達人間の間で流通している通貨をもらっても、魔界や神界では何一つ意味がないな。かといって魔界や神界で通用する通貨をもらっても……」

「俺達にとって必要になるケースはないだろう。そもそも必要な物資は提供してもらえるし。ただ、俺にとっても気になるところだな……ただ働きになるわけじゃないが、なんというか金をもらってもどうしようもない。これは盲点だった」

「報酬次第でやる気が変わるってわけでもないんだが、な。なんというかそういう事とは超越しているようにも思えるし」

「いやいや、報酬というのは大事だぞ。俺についてはまあ、別に構わないくらいに思っているけど。エーレもアミリースもその辺りの感覚はしっかりしているし、こちらが懸念を表明すれば何かしら相応の報酬を用意すると思うぞ」

「魔王がその辺りの感覚が……というのは、面白いよな」

「まったくだ」


 同意すると俺達は双方笑う。


「しかし、セディの言うとおり報酬については考慮すべき話だな。俺達以外にこの管理の世界に携わる人間が現われるのかどうかわからないが……そういうことを今の内に決めておくのは重要だろうな」


 エーレとか、その辺は考慮しているのだろうか……いや、さすがにしていないか。ここについては俺達が指摘するべき部分なのだろう。


「さっきも言ったが、俺については別に報酬がないからどうというわけじゃない。でもまあ、そういうことに気付いたってことで助言するのは良さそうだ」


 フィンからは有益な意見を得ることができたな……なおかつ彼自身、こうして仕事をするのは問題ないと。

 俺としては世界を管理する上で制度設計なども考えないといけない……それを考えるとただ仕事を覚えるだけでなく、フィンのように色々と整えていくべき部分などを探していくことが大切だろうな。


「ありがとう、フィン。なんというか……一緒に旅をした結果がこんな形になってしまい大変だと思うけど」

「貴重な体験ができて良かったと思うことにしているから問題ないさ。それに、女神様とか魔王とかに頼られて個人的には光栄だし」

「レジウスさんはどう思っているのかな……」

「あの人は魔王からの依頼を受けて動いている。つまり従うつもりだろうし、そもそもセディがここで仕事をしている以上、文句は言わないさ」


 笑みを浮かべながらフィンは語る。俺は「そうか」と小さく答えた後、


「レナとかにも、事情は聞こうかな……彼女は立場城の問題もあるし、見解だって違うだろう」

「セディとしては、それぞれの思いを知りたいってことか」

「まあ、こういう機会だからな……勇者ラダンが本格的に動き出せばこういうことも聞けなくなる」

「……勇者ラダン、か」


 フィンはどこか遠い目になる。


「俺も本で知っている人物だが……まさか神や魔王と敵対しているとは」

「そうだな。俺としては予想もつかなかった相手……けれど、俺がもしかすると辿っていた人物像でもある」

「だがセディは正しい方向へ進んだ。違うか?」

「かもしれない……いや、正しいかどうかはわからない。これから正しかったと証明するしか、俺にはできない」

「真面目だなあ、ずいぶんと」


 苦笑しながらフィンは語る。ただその目は俺を信頼しているような雰囲気を見せていた。


「ま、俺は俺なりに楽しくやらせてもらうとするさ……少なくとも衣食住に不自由はないことがわかれば十分だ。けどセディ。いつまでも魔王城に居座るわけにもいかないんじゃないか?」

「その辺り、勇者ラダンとの戦いが終わってからエーレに確認しないといけないんだよな。俺のことは仲間に知れ渡ったし、郷里などに戻っても問題はないし」


 以前エーレの計らいによって故郷の姿を見た際は、仲間に姿を出せない状態だった。けど今は違う。


「ここについては今後、要相談ってところかな……他に何か気になることはあるか?」

「今のところは。ああ、一つだけ言うならカレンとかのことについては、きちんと何かしら決着はつけろよ。いずれ……この仕事が落ち着いてからでもいい」

「それ、ミリーにも言われたよ」

「大変だな、お前も」


 そして互いに笑う……ひとまずフィンについても問題ない。仲間達は俺についてきてくれるみたいなので、良かった。

 その後、フィンは部屋を出て俺はどうするか思案していたのだが……ここでアミリースから連絡が。どうやら敵方が動き出したらしい。


 予想以上に早い動きだったと思いつつ、俺はデュガと話し合いをするべく部屋を出る。カレン達も呼ばれたらしく、俺達は四人で会議室へ。


「俺達がいる間に、決着がつくだろうか?」


 そんな疑問に「どうでしょうね」とどこか懐疑的なミリーの呟き。


「敵としては派手に動きたくないでしょうけど……性急に活動するだけの理由があったということかしら?」

「もしかすると、事態が主神以上に進むかもしれませんね」


 カレンがそう告げる――今回の一件で勇者ラダンに近づけるかどうかはわからないけど、この神界における問題はきちんと解決しておきたい……そんな風に思いながら、俺達は会議室のドアをくぐった。


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