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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編

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未完成の力

「……なるほど」


 こちらの動きを見た瞬間、デュガは納得の声を上げた。


「どういった戦い方をするのか興味深く見ていたが……面白いな」

「俺としては他にとれる手段がないから、ですけどね」

「仮にそうだとしても、主神という存在相手に実行できるというのが面白い」


 デュガは笑い始める……とりあえず、気に入ってくれたようだ。

 肝心の手段なのだが……極めてシンプルである。デュガの罠を強引に突破するには、神魔の力以外に存在しない。それを全身全霊で解放する……つまり、俺の現時点における全力の神魔を主神にぶつけるということだ。


 これはある意味、主神としても言い逃れできない状況ではある。真正面から正攻法で仕掛け、負けた場合どうなるのか……まあ神魔の力が例外なのでは、という考え方もあるにはあるけど、デュガはそれを言い訳にしたりはしないだろう。


「ちなみにだが、神魔の力を全力で……それだけの出力で出したことは?」

「初めてですよ」

「なるほど、初めてづくしだな……私としても神魔の力を直に受けるのは初めてだからな。どうなるのか……興味がある」

「大丈夫かしら?」


 そんな声がアミリースからもたらされた。仮に力押しで負けたら、威厳などもなくなるのでは……そんな不安が見え隠れする。

 彼女としてもさすがに主神が負けるとは思っていないわけだ……と、ここでデュガは、


「負けたら主神失格か?」

「そういう意味で言ったのではないけれど……」

「なら、何も心配はいらないな」


 茶化すような物言いだが、言葉とは裏腹に俺へ投げる視線は途轍もなく鋭い。


 よけてもいいのだが……というかそういう選択肢があってしかるべきなのだが、肝心の主神がそういうことをする気配がない。これこそ、デュガの言う運というやつか。俺は意図的ではないにしろ、勝負から逃げられなくしている。ここにいる誰かが戦いの結果を述べるなんてことは絶対にないけれど、もしデュガが俺の挑戦から逃げれば、アミリースとしては納得がいかない結末、と評価してもおかしくはない。彼女にだけ知られても大した影響はないと思うのだが……何よりデュガ自身、納得はしないってところだろうか。


 だから、俺の攻撃を真正面から受けるしかない……さて、俺としては勝負の舞台に上がってもらえたことは、少なくとも一方的な負けはないってことで良かったと言えるのだが、この神魔の力で勝てるのだろうか?


 そもそも俺とクロエはこの力を扱えるようになったのは半ば荒療治的に使い続けたことにある。しかし力とか技術というのはただ習得しただけでなく、応用なども磨きを掛けないといけない。魔王や神すら到達したことのない領域であるため、教えてくれるような存在もいない……よって手探りでやるしかないのだが、そんな未完成品が通用するのか。


 デュガとしてはこうして対峙している間にも分析を進めているだろう。最悪、神魔の力を防ぎきってしまうかもしれない。これを上回るためには二つ。一つはさらに力を引き出して強引に突破する……といっても相手は主神である。そんな力押しが通用するのか。

 もう一つの方法としては、神魔の力に加えて何かしら策を用いる……といっても俺自身、神魔の力に注力しているために複雑なことはできない。精々かく乱するくらいだろうか……あまり分の良い賭けではないな。


 ならば、ここは――自分の能力に賭ける。それはつまり、

「……行き当たりばったりだよな」

「何か言ったか?」


 デュガからの問い掛けに俺は「いいえ」と首を左右に振った。

 主神相手に力で押し通りながら……自ら神魔の力を戦いの中で昇華する。つまりこの戦いの中で一段強くなって勝つ、ということだ。

 それは正直なところ、策とは呼べない。呟いた通り行き当たりばったりな話である……例えばエーレとの戦いでは結果的に仲間達から託された力を利用して打ち勝った。仮に戦いの中で強くなるにしてもそれには明確な下地が必要だ。エーレとの戦いの場合では偶然、俺には強くなれる要素が手元にあった。だからこそ、勝つことができた。


 今回の場合はどうかというと、正直に言ってそういう要素はない。神魔の力……それが発展途上ではあるし、主神との戦いで何かつかめる可能性も否定はできない。だが、それを当てにして攻撃を仕掛けても手痛い目に遭うだけだろう。

 とはいえ――俺は堂々巡りになっている思考を無理矢理振り払った。とにかく、やるしかなさそうだ。


 呼吸を整える。それでデュガも来る、とわかったらしく、


「受けよう、その戦い」


 宣言。それと同時に俺は足を前に出し――間合いを詰める。

 槍が一瞬にして迫った。それを剣で弾くと、衝撃が槍に伝わり、デュガの目がわずかに細くなった。


 神魔の力がどういうものなのかを俺を通して改めて確認しているような所作……俺はここだと直感し、強引に突き進む。攻防においてデュガは神魔の力を見極めるべき守勢に回っている。であれば多少余裕が生まれるはずで、俺が少し無理をしてもイーブンくらいにはなるはずだ。

 その予測はどうやら当たったようで、俺はデュガを間合いに入れた。そして放たれる刃。剣の速度はまあまあといったところだが、デュガはそれをやや慎重に受けた。


 再び伝わる衝撃。ビリビリという雷撃を食らうような感じだろうか。デュガとしてはまともに食らったら危ないとわかっているとは思うが……反撃はしてこない。

 俺が何か罠でも張っていると思っているのだろうか? そしてデュガ自身が構築した罠については発動しそうな気配はない。神魔の力の前には無力ということか、それとも俺を倒すためにまだ切り札として隠し持っているのか。


 もしここからデュガが反撃で倒そうとしたら、俺の強引な攻めを抑え込んで勝つのが良いだろう。となれば、どこかで神魔の力を食い止めて……と、ここで俺は一つ思いついた。主神の予想を上回る術を。

 ただ、これは相応のリスクがある……というか、やったことがないからな。現在俺は剣に力を注いでいるわけだが、それを体全体にまとわせて保護すれば……罠を受けても突破できるかもしれない。


 もっとも、失敗すればその時点で終了だ。ただ、このくらいはやらないとデュガの裏はかけないだろう。よって俺は覚悟を決め……さらに神魔の力を体の奥底から引き出した!


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