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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編
362/428

主神との決闘

「勇者セディのやりたい形で魔王エーレは戦いを挑んだ……それは明確な事実だろう。ではそれを仕組んだのは誰か……決して勇者セディは狙っていたわけではないだろうが、勇者セディがどういう選択をするのか……その行く末を見たいがために、魔王エーレは決闘という形で戦いをすることにした」


 なおも続くデュガの考察。俺はそうかな? と内心で疑問に思ったりもしているのだが……。


「勇者セディとしては、首を傾げる内容か?」

「いや……そこまで深く考えた行動ではなかったので」

「そちらは魔王に対しそれこそ物語のように……仲間達と共に暴虐の魔王を倒す、という形の決着こそ、自分の実力を示すことができるやり方だと思っているのかもしれない。しかし、現実の魔王はむしろ人間の味方だ。となれば、そのような形で戦うことは未来永劫あり得ない。だが何かしらの形で決着をつける必要性がある……そこで、決闘を選んだ。流れとしてはこれが一番納得もいくのではないか?」

「まあ、そうですけど……あの、そう大それたことでもない気がしますけど」

「言いたいことはわかる。だが私にとって……勇者セディの力を推し量る材料としては必要だ」


 俺の、実力?


「先も言った通り、運は宿るものだと考えている。そして勇者セディは魔王エーレと戦った……その時の状況や装備などを含め、君は魔王を倒すためだけの力を身につけていた、というわけだ。運や力などを含め、あらゆる面で」

「言いたいことはわかりますけど……」


 デュガとしては魔王を倒せた実力を否定するな、と言いたいのか。


「それで今回の決闘、ですけど」

「そうだな。運などの点を含め、是非とも武器を手に取り戦ってみたかった。体感させてもらいたいと思って」


 ……彼としても、遠距離から魔法をぶっ放せばそれで終わる話だ。しかしあえて武器を手にとって戦うというのは、それこそ魔王エーレを倒した実力を見たいから、ということか。

 で、仮に俺がこの決闘でデュガを倒せば……運などの要素を含め、実力で勝ったのだと彼は言いたいわけだ。


「さて、話がだいぶ逸れてしまったが……是非とも手合わせを願いたい」


 これ、俺に拒否権ないよな? そう思ったが口には出さないでおく。ただ、


「……戦うことについては問題はないですが、懸念が一つ」

「この戦いの行方が露見したらとんでもないことになる、か?」

「そうです」

「そこは心配しないでくれ。こちらも当然そのことについては気をつけている」

「まるで負けるかもしれない、って思っている風ね」


 などと、アミリースがデュガへ横槍を入れた。


「主神と勇者……当然ながらこの決闘では神族であっても主神が勝つと考えている。他の誰だって同じ事を思うわよ? けれど、あなただけは負ける可能性を考慮している風に見えるわ」

「例え魔物であれ、負けるかもしれないと考えるのは当然だ。確かにアミリースの言う通り、絶対に負けるはずがないと思うのであれば、公開試合でもすればいい」


 と、彼女の言葉に同意はしたが、


「しかし今回は他の勇者とわけが違う。仮に魔王を打ち破ったという肩書きがなくとも、大いなる真実を知り、魔王が認めた勇者なのだ。魔王と並ぶ脅威だと思っているし、だからこそこうして密会のような形で決闘を申し込んでいる」


 主神が負ける可能性を考慮している、か……それだけの相手であるとデュガは自認していると。


「……ともあれ、全力は尽くします」


 俺はそう語る。デュガは満足そうな笑みを浮かべ、


「なら早速、始めようか」

「すげえことになったな。とてもじゃないが、話しても信じてもらえなさそうだな」


 そんな呟きがフィンから聞こえた。確かに「神界に赴いて主神と話をした」だけでも信じられない内容なのに、そこに加えて「主神に力を認められ、決闘を申し込まれた」とか非現実的すぎて正直ほらを吹くにしても無茶苦茶である。


 まず俺とデュガが近づく。ある程度の距離で対峙すると、アミリースが審判をする形なのか、横手に回った。

 仲間達はその後ろで観戦する形。本来ならば「絶対に勝て」とか声を掛けてくるところかもしれないが、相手が相手であるためかそういう声援は皆無。


 まあカレン達も当たって砕けろという感じで今回の戦いを観戦するつもりなのだろう。魔王を倒したとはいえ、仲間達もそれが様々な要因によるものだとわかっているわけだし、主神との戦いで負けても仕方がないって思っている、と。

 そこについては俺も別に不服はない……というか、ある意味では主神の胸を借りて戦うような形だし……ともあれ、デュガにも言ったように全力は尽くす。


 まずは呼吸を整える。次いで剣を抜いて構えた瞬間、デュガが放つ圧のようなものを感じ取った。

 それは相手が主神であるが故に俺が感じたのか、それとも実際に魔力を放って威嚇しているのか……槍を握る主神の存在は圧倒的であり、緊張感だけで息が詰まりそうな空気だった。


 エーレと戦った時は、彼女の思いなどを知った上に、自分の中で決意を携えていたからこそ、思い切って戦えた。けれどこの場合、半ば乗せられる形なので、少しばかり集中するのに時間が掛かるか――


「準備はいいか?」


 デュガが問い掛けてくる。こちらの状況を完璧に理解した上での発言だな。

 俺はそれに沈黙する……デュガは合わせてくれるようで待っているわけだが、


「……待たなくてもいいのでは?」

「演技かもしれないだろ?」


 悠長だな……だまし討ちするとはデュガだって思っていないはずだけど。

 ここでようやく呼吸を整えた。俺の剣がどこまで通用するのか……まったく未知数だが、今まで培ってきたものを全てぶつける勢いで挑むことにしよう。


 主神と戦うなんて、きっと人生において今しかないからな……そんな心の声を発した直後、アミリースが叫んだ。


「――始め!」


 訓練場に響き渡る声。それと同時に俺は間合いを詰めるべくデュガへ接近。対する相手は槍を構え迎え撃つ姿勢をとる。

 出方を窺うのか、それともカウンター狙いなのか……ただ俺は様子を見ている余裕はない。まずは全力でぶつかる――そう決意した直後、主神へ向け剣を一閃した。


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