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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者と神界編
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神の大地

 俺達から大いなる真実に関する話をしないことで管理の世界について知らない神族との対応は問題ない。ただ、アミリースの言う勇者ラダンの内通者がどこかにいるのだとしたら、どこかで干渉してくる可能性は否定できない……。


 勇者ラダンが内通者に俺達の情報を伝えていれば、襲撃してくる可能性もゼロではないけれど……それはつまり勇者ラダンが何かしら連絡をとっているということ。となれば必然的にそいつを捕まえれば勇者ラダンの居所をつかむことができるかもしれない。


 用心深いであろうラダンがどう行動しているのか……俺と顔を合わせて以降、エーレやアミリースはかなり同胞にも注意を向けているはずだ。ラダンがそれを見越しているのなら内通者に情報を伝えていない可能性は十分ある。けれどもし、何らかの形で情報を受け取っているのなら、面倒事になりそうだ。


 と、ここでアミリースの口ぶりを思い出す。彼女の話からすれば厄介事なのは確定なのだが……色々と思案する間に浮遊島の真下に到着。間近で見ると確かに先ほどアミリースが解説した通り、日陰にもかかわらずずいぶんと明るかった。


「ここからどうやって入るんだ?」

「慌てないで。まずは……」


 アミリースが船長へ目を向ける。それに相手は小さく礼を示した後、クルーにテキパキと指示を行う。

 すると船の甲板に魔法陣が生じた。ここから転移するのかと思いきや、今度は上から魔力。


 見上げれば、白い光が……船へ向け下りてきていた。えっと、あれはもしや、


「あの光がここへ?」

「ええ、そうよ」


 何でもないように答えるアミリース。


「わかりやすく言うと、昇降魔法ね。さすがに転移魔法で移動することはできないから、地上まで光を下ろして島まで向かうの」


 サラッと言っているが人間の扱う魔法とはかけ離れているなあ……そもそもこんな大掛かりな魔法はあまり見ないし、なおかつ船に魔法陣が存在し、そこへ光を下ろす……根本的に船にそんな仕掛けをするなんてのも聞いたことがない。

 そこまで考えてから浮遊する陸地なんてあるはずないから、現実的に不必要なだけだったと思い直す……まあ神界である以上は人間世界の常識は通用しないということだろう。


 程なくして光が船の魔法陣に触れる。それにより白い光の柱が形成され、アミリースはその光の中へと俺達を促す。


「さ、どうぞ」


 と、言われても……俺を含め仲間達も躊躇っている。

 けど、行くしかないか……俺は意を決し光の中へ。完全に自分の体が魔法陣の内側に入った瞬間、その体が……突如浮いた。


 思わぬ浮遊感に驚いている間に船が少しずつ遠ざかっていく……って、これはかなり怖い。もし白い光の外へ出てしまったら――そんなことを思いながらなんとなく、やらなくてもいいはずなのに好奇心が勝って光の外へ手を伸ばそうとする。

 だが、手は外へ出なかった。光と外側の間には壁ができているようで、脱出することはできない様子。まあこの処置は当然か。こういう結界がなければ下手すると落下してしまうからな。


 やがて仲間達もどうやら少し遅れて光の中へと入り込んだ。ん、なんだかフィンの悲鳴らしき声が聞こえたような気もするけど……聞こえなかったことにしよう。

 俺は周囲を見回す。白い光の壁によって外はうっすらとしか見えない。高所が苦手な人でも外が見えないのでそう問題にはならないだろうか……いやまあ、浮いている現状を考えると恐怖してもおかしくないか。


 そんな思考の間にも、俺はドンドン上へと向かっていく。やがて島が近づいてきた。正直大きすぎて遠近感がおかしくなりそうだった。


「神界の……いや、神の大地かな」


 島、と呼ぶには大きすぎるその陸地を俺はそう表現した。俺は呼吸を整え覚悟を決める……少なくともアミリースが帯同しているわけで悪い扱いにはならないだろう。後は妨害とかなければいいのだが……絶対、一悶着ありそうだよな。


 だからこそアミリースが俺達を連れて来たとも考えられるけど……彼女もまだ喋っていないことは多いが、それが面倒なものであることは断定できる。ただ俺達にとっては勝手がわからない神界という場所である以上は下手なことはできないし、慎重に事を運ばないといけない。

 そうこうする内にいよいよ陸地が間近に迫った。ここで白い光がさらに濃くなり外部が完全に見えなくなる。いよいよかと思った矢先、一度浮遊感が収まった。

そして横へと移動する感覚。それと同時に光の中から脱し、俺は地面――大理石のような石床に降り立った。


「ようこそ」


 そして俺を歓迎するような声。見れば天使らしき男性が俺に対し礼を示していた。

「ああ……はい、どうも」


 咄嗟にそんな風に返答。それに天使はニコリと笑い、


「ここまで遠路はるばる、ご苦労様でした。ですがもう少々お付き合いください」

「えっと……はい、わかりました。それであなたは?」

「この魔法の管理を務める者です」


 丁寧な口調で解説。魔法を管理と言ったが、実質門番的な存在ということでいいのかな?

 会話をする間に仲間達も到達。さらにアミリースもまた現われ、光が消える。そこはどうやら空洞になっており、遠く離れた場所に海が見えた。


「さ、こっちよ」


 アミリースが手招きする。彼女にしたら慣れたものなのだろう。一方で仲間達は思わぬ移動法に相変わらず戸惑っている様子だが、とりあえずアミリースの先導に対し歩き出す。

 俺もまた彼女に従い動き始めるのだが……神界に辿り着いてから驚きっぱなしである。きっとここから先も驚くというか、本番なんだろうな。


 アミリースは俺達の様子を見て微笑んでいるのだが……これからさらに驚くのを期待している素振りすらある。まあ今はまだ俺達も事情を知らない身だ。ここはアミリースを信じ、おとなしく驚くことにしよう。

 通路を進んだ先には階段が。そこを上った先にどうやら神達が住まう地上部分があるようだ。


 一体どういう場所なのか……正直期待とか、緊張とかを通り越してどういう光景が広がっているのか想像もつかない。先ほどの白い光からまだ思考が戻っていないだけかもしれないけど……そんなことを思う間に、俺達はとうとう神の住まう大陸、地上へと立った。


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