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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
341/428

核心部分

「色々悩んでいた様子だったけど、それは大いなる真実を知ってどうすべきか考えていたから、だと」


 そしてミリーは俺へ告げ、こちらは頷いた。


「そういうことだ。口外するなと言われ、一人で悩んでいたわけだ」

「まあ、こういう事情なら話せないのは理解できるんだが……」


 と、フィンは濁すような形で俺へ述べる。


「一つ疑問だが、その後どうしたんだ? たぶん二度目に魔王軍幹部と戦うために城へ潜入して……そこから、話をしたんだろ?」


 あ、その後の展開は推測できたか。


「ああ、そうだ……で、俺は魔王城に到達して、魔王……エーレと話をした」

「そこで、どういうことを?」


 ……いよいよ核心部分だな。


「俺はエーレと話し合い、最終的に――」

「ちょっと待てセディ。重要なところを省くつもりか?」


 俺は思わずエーレへ視線を向けた。え、その部分を話せと?


「経緯はきちんと話すべきだろう。私のことは気にするな」


 ……ふむ、ちゃんと全て話をして、わかってもらうってことか。


「わかったよ……俺はエーレと話をした結果、とある要求をすることにした。ただし要求とか命令とかは、魔王の威厳もあるから聞くことはできないと」

「しかし兄さんは筋を通そうとした……どうしたのですか?」


 カレンからの問い。それに俺は苦笑を伴い、


「わかりやすく言うと、エーレにこちらを要求を飲んでもらうためには、戦って勝つしかなかった」


 ……さすがの展開にカレン達は眉をひそめた。で、一歩遅れて、


「……もしや、戦ったのか?」


 フィンの問い掛けに俺は頷く。


「で、どうなったんだ?」

「ギリギリのところでどうにか勝って、俺はエーレに頼み事を一つした」

「……勝ったのか」


 驚きよりも、なんだか呆れている……。


「いやまあ、なんというか決闘して勝ったみたいな感じだから、普通に戦って勝つのとは違うんじゃないのかと」

「私は完膚なきまでに敗北したと思っているのだが、違うのか?」


 エーレからの指摘。首を向けると、腕を組み憮然とした彼女がいた。


「……なぜエーレがそんな顔をするんだ?」

「いいかセディ。私はあなたと戦い、最終的にあなたの願いを叶えここにいるわけだ。私が戦って負けたことは事実で、その結果で今がある。そこは変えようがないし、そもそもなぜ遠慮する必要がある?」

「……この場には事情を知っている面子ばっかりだけど、やっぱり魔王が負けたなんて事実は聞きたくないんじゃないのか?」

「別に私は負けたことで悔しいなどと思っているわけではないぞ。実力勝負で負け、それでもなお恨んでいるというのはただの逆恨みではないか。そちらの方が醜いと思うが」

「というか、そんなことを気にする陛下ならセディとそもそもいないと思うけど」


 リーデスからの指摘が来た。ああうん、まあ。確かにそうかも。


「えっと、話が逸れたな……で、俺はエーレに弟子入りさせてくれと頼んだ。管理する世界は秘匿されているけれど、将来的に人間の手でもできるように……つまり、秘密ではないようにする。それを最終目標として、俺はエーレと一緒に活動している」

「経緯には納得できるけど、その過程が無茶苦茶よね」


 ミリーのまっとうな言葉。うん、俺もそう思う。


「でもまあ、それがセディの選んだ道であったのなら、私達が否定する権利はないわ」

「ミリー……」

「相談もなしに、というのは確かにちょっと不満もあるけど、事情が事情である以上仕方がないわね。いくらセディでも魔王や女神様を裏切るなんてことは、経緯から考えてもあり得ないし」

「――最終的にあなた方を振り回してしまったのは事実だ」


 と、エーレはカレン達へ語る。


「あなた達がセディの持つ道具を頼りにやって来たことについては予定外で、そちらとしても精神的に負担を掛けてしまった。これについてはまず謝罪しよう。加え、ディクスなどを用いてそちらの行動を制限するに至ったのも事実だ」

「あー、現在までも知らず知らずの内に色々とやられていたというわけか……フィン、どう思う?」

「難しいことはわからないが、まあ半ば騙していたのは事実みたいだな。けど、俺としては別に怒る気にもなれないな」


 フィンは肩をすくめ、俺達へ語る。


「そもそも俺達に害をなすようなことではなく、どちらかというと俺達を守っていたなんて節もありそうだからな……で、色々と事情を知ることができたわけだが、俺達はどうなるんだ?」

「多少なりとも仕事をやってもらうかどうか……もっとも、一度にこれだけの人数へ真実を伝えたなんてことは前例がないため、しばらくは何もない」

「この魔王城にいろって話かい?」

「廷臣の中にはそう助言する者もいるが、私としては反対だ。秘密さえ漏らさなければ、当面の間は自由に活動していてもいい」

「――ならエーレ、こちらから提案があるのだけれど」


 そこでアミリースが小さく手を上げる。


「ほら、例の件について」

「ちょっと待て、あれに関わらせるのか? しかし――」

「エーレが懸念することもわかるわ。でもそれが最適だと思わない?」

「なんだか勝手に話を進められているけど……」


 俺が横槍を入れると、アミリースは簡潔に説明する。


「セディ、そちらは次の仕事についてエーレから言及はなかった?」

「多少聞いているけど、詳細までは――って、ちょっと待て。アミリースが関わっているのか?」

「ええ、少しばかりね。ただ詳細を話すのは、仕事をやると返事をするまでは無理ね。ちょっと込み入った内容だから」


 そう言いながらアミリースはカレン達を一瞥する。


「そちらも情報量が多くて困惑しているはず。一度、頭の中を整理する必要があるのでは?」

「そう、ですね」


 応じたのはカレン。ならばと、アミリースは微笑を浮かべる。


「エーレ、少しばかり余裕はあるから、結論が出るまでここにいてもらったら?」

「ふむ、そうする他ないか……セディ、それでいいか?」

「ならカレン達ともう少し話をしてみるよ。これまでの出来事について、詳細も語らなければならないし」


 ミリーは小さく頷いていた。まだまだ気になっている部分はあるだろう。

 なら、それにきちんと応じてから結論を出しても遅くない……ただ、俺としてはどうなのだろう。カレン達を関わらせるべきなのか?


 多少疑問に思ったけど、それは仲間達が結論を出すべき問題だ。そう結論づけ――ようやく、玉座の間の種明かしは終わりを告げることとなった。


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