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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
340/428

ネタばらし

「……まあ、女神様だけではないかもしれないってなんとなく思ってはいたけれど」


 と、ミリーは頬をかきながら呟いた。


「それはきっと、物事を円滑に……私達のここへ来させようとするために動いていたってことでいいの?」

「そう解釈して構わない。では、それが一体誰なのかについては今から説明しよう」


 と、エーレは今回の概要について語り始める。


「まずは女王アスリについてだな。勇者バルナの騒動を受け、今回の一件を計画したのだが、最初のきっかけとして頼んだのが女王だった」

「勇者バルナの件については、説明してもらえるの?」

「無論だ……では次に、この場における仕掛け人についてだが……そうだな、誰なのか予想できる人はいるか?」


 逆に問い掛けてくる。というか雑談のつもりだろうか。

 尋ねられたのでカレンとかミリーとか、あるいはロウとかが考え始めた様子。ただすぐに答えをばらすので、予想するのもあまり意味はないと思うんだが。


 で、当然ながら何も考えていないヤツもいる。それはフィンだ。


「あー、俺から」

「どうぞ」

「セディとかどうだ? 一番あり得ないって感じの立場だろうけど、そうだったら面白くないか?」


 ほらやっぱり。それが当たっているのが冗談みたいな話である。


「ふむ、面白いか……」


 エーレはその返答に対し興味深そうに呟く。


「仮に勇者セディが仕掛け人であったとしよう。そうであったらあなた達仲間を半ば騙していたような形になるが、それで納得できるのか?」

「そういう立場であったなら、セディなりに考えた結果というやつだろう。何かしら理由があると考えてしかるべきだし、俺は何も思わないが」


 ――これ、たぶんカレンとかミリーとかも同じような見解だろうな。

 変なところで俺は信頼されているというわけだ。


「ふむ、なるほど」


 と、エーレは納得したような返事をした後、フィンを指差し、


「正解だ」


 ――そして、時が止まった。


 というか、たぶん何を言われたのか理解できないというのが真実だろう。そして俺は額に手を当て息を吐く。

 なんというか、事情を話すのならばもっとこう、硬い雰囲気になると思っていた。重苦しい空気の中で語られるものだと思っていた。けれど、こう……そう、軽すぎる。


 これを狙ってやったのならエーレは本当に策士だけど、どこまで想定していたのか。


「……え?」


 で、答えを導き出したフィンが絶句した。そりゃそうだ。テキトーに言及しただけだからな。

 そして次に起こったのは、後方にいたアミリースと近くにいたクロエが手を押さえて笑い始めたことだ。あっさりとした回答に対し呆然となった面々に耐えきれなかったらしい。


「……クロエ、笑うなよ」

「いや、その、反応があまりにも意外で……」


 あははは、と声を上げる。俺はもう一度ため息をつき、仲間を見る。


「え、っと……?」


 困惑している。あまりに唐突な真実によりどういうことなのか混乱しているようだ。

 というか、冗談なのかと疑っている……ただ魔王がそんな冗談を言うのか、という疑問はあるだろう。その辺りのことを考慮した結果、どう解釈していいのかわからないといった感じか。


 よって俺は助け船を出すことに。


「あー、カレン達。俺が操られていた時のことを思い出してくれ」


 そこでカレン達は俺へと視線を注ぐ。


「で、その時のことについてだが……俺が今回仕掛け人であったように、大いなる真実という観点で魔王と繋がりがあるのだとしたら、すんなり納得がいかないか?」


 仲間達は沈黙。といっても数秒程か。やがてカレンは、俺がさっきしてみせたように額に手をやった。


「なるほど……そうであれば、今までの疑問についても解決できます」

「ついでになってしまうが、勇者クロエも仕掛け人だ」


 どこかぞんざいな感じでエーレが補足。ただ反応は薄い。当然か。


「さらに、シアナとディクスの両名も仕掛け人だ」

「……は!?」


 あ、ここはカレンも驚いた。


「というより、再度合流してからは大いなる真実を知るセディがいたのだ。仕掛け人が混ざっていてもおかしくはないだろう?」

「あ、いや、確かにそうですけど……お二人は、どういう経緯で?」


 大いなる真実をどうやって知ったのか、ということなんだと思うのだが――


「いや、二人は私の妹と弟だ」

「……はい!?」


 さすがにミリーも驚いた。というか驚いてばっかりである。

 エーレが述べると同時に、シアナとディクスは魔法により出で立ちを変えた。シアナは黒いドレス。そしてディクスは黒衣に。


「すまないな、色々あって二人にはセディの仲間達と行動を共にするような形をとっていたのだ。驚きの連続で思考が追いついていないかもしれないが、仕掛け人についてはこれで以上だ。といっても今回の一件、仕掛け人が半分くらい混ざっていたわけだが」

「……つまり、私達を見定めるためにこれほど大掛かりなことをやったと」


 ミリーの提言。それに対しエーレは、


「そうだな」

「……パッと話すことはできないの?」

「それは無理だ。真実を伝えることは相当厳重に……かつ慎重に行う必要がある。それはいかなる相手でも……例え同胞であっても、天使であっても同じことだ」


 ――真実の重さについて理解したのか、ミリーは押し黙る。


「で、まだ混乱しているか? 私としてはセディに対し胸ぐらの一つでもつかんで問い詰めるものだと思っていたのだが」

「……期待していたのか?」


 なんとなく尋ねてみるとエーレは、


「そういうわけではないが、色々その辺りのことを想定してどう話すべきか考えていたので拍子抜けしただけだ」

「あ、それじゃあ胸ぐらつかんどく?」


 ミリーの茶化すような言葉に俺は「勘弁してくれ」と応じ、


「で、納得したのか? いや、まだ経緯を説明していないし納得まではいかないか」

「……そもそもなぜ、こんなことになっているわけ?」

「あー、俺については偶然知ってしまったんだよ。フォシン王国……魔族ベリウスとの戦いを通して」

「……なるほど、様子がおかしかったのはそのためか」


 そこでようやくミリーとしては合点がいったようだった。


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