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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
337/428

玉座へ

 遺跡へ舞い戻った俺達は、一度建物が問題ないかを確認する。結果として遺跡については問題なく、作戦は成功した。


「ふむ、あなた達の尽力で遺跡は保たれた。ありがとう」


 礼の言葉にカレンを始めとした仲間達は微妙な表情。それはエーレとしてもわかっているようで、


「魔王に礼を言われるのは嫌か?」

「いや、そういうわけじゃなくてイメージとあまりに違いすぎるからな……」


 と、フィンが言葉を濁す。


「一応確認するが、あんた本当に魔王なんだよな?」

「正直私は自分のことを魔王だと名乗る以外に証明する手立てがないな。ただ魔族が魔王であることを騙った場合、重罪であり処分の対象だ。それこそ、地獄へ落ちるよりも辛い苦しみと共に」


 その言葉でフィンは身震いする。


「そういうわけで、わざわざ人間を騙すのに魔王を名乗ったりはしない……とだけ言っておこう。さて、ここで成すべきことは終わった。それでは魔王城へ向かうとしようか」


 エーレの言葉に仲間達の顔が引き締まる。まあ安全な所だと説明しても魔王の城である以上、警戒を抱くのは当然か。

 その間に勇者ロウなんかはパメラと色々と話し合っている。この辺りの事情も魔王城へ向かい説明することになるだろうな。


「リーデス」

「はい」


 エーレの指示に従いリーデスが魔法を構築。空間を歪ませ、その奥には建物が。


「私が先導しよう。全員、ついてきてくれ」


 歩き始める。そこで俺は仲間達を一瞥。なんだか躊躇うような雰囲気ではあったが……これでは埒が明かないので、俺が前に立って進む。

 遅れてカレン達が追随。一瞬だけ見ると、その後方にロウ達が歩き、その後方をクロエにシアナやディクス、アミリースといった面々が歩む。


 俺は歪んだ空間の先に辿り着く。そこにあったのは俺にとってはひどく見慣れた、漆黒の城だった。


「……これが、魔王城」


 後方でフィンの声が。見れば仕掛け人を除く面々は全員デカい城を見上げ呆然となっていた。


「セディはこの城を訪れたってことか?」


 あ、そういえば俺は記憶が曖昧になったけど、ここに入り込んだってことになっているんだった。


「ああ、そうだな……と思う。その時のことはここへ来ても曖昧のままだ」

「……大いなる真実から考えると、セディにそうした処置を行ったのは何かしら事情があるってことか?」

「それについては、他ならぬ魔王から説明してくれるだろ」


 やがて城の中へ。中庭はひどくシンプルで、漆黒の扉を持つ正面玄関までは石畳の道が続くばかり。俺が最初に来た時は造花が植えられていたけど、どうやら形を変えたらしい。

 エーレが手を振ると扉が開く。そこで仲間達は再度尻込み。俺としてもさすがに立ち止まり、


「大丈夫か?」

「……いやあ、さすがに緊張するな」


 フィンが代表して口を開く。俺はそれに頷きつつ、


「そうだな。俺達が本来最終目標としていた場所だ」

「セディの方は落ち着いているな?」

「内心驚いているよ……それじゃあ進もう」


 城の中へ。長い階段が真正面に存在し、俺達は黙ったまま進む。

 後方にいる仲間達を見れば、建物内に視線を漂わせている。どういう造りなのかを含め、興味津々といったところか。


 やがて辿り着いた先にあったのは玉座の間。既に扉は開いており、エーレが扉の前でこちらを手招きしていた。

 本来なら話し合いとかは会議室とかでやるべきなのかもしれないが、玉座の間の方が良いという判断なのだろう……俺達はそのまま中へ。俺とエーレが決戦を行った場所……そして幾度となく顔を合わせて話をした場所。そこに、カレン達がやって来た。


「さて、ここがあなた達人間にとって、一つの終着点……魔王の玉座だ」

「おどろおどろしいものを想像していたけれど、違うのね」


 率直な感想をミリーが述べる。エーレはそれに苦笑し、


「そういう造形を好んでいた魔王もいたな。私の場合は興味がなかったので装飾はほとんどない」

「自由に作り替えられるのかしら?」

「内装はある程度できるぞ。とはいえゴテゴテなのは嫌いだな」


 そう語った後、エーレ達はこちらを一瞥。


「共に戦い、結果としてあなた方はさしたる抵抗もなくここへ来た……頭の中が混乱している者もいるだろうが、そうした中で確認しておくべきことがある」


 前置きしたエーレは、わずかながら目を細める。


「あなた方に大いなる真実を知り、今後どうするかを問わなくてはならない」

「……もし否定的な言葉を投げたら、どうなるんだ?」


 フィンがあえて問う。するとエーレは、


「私としては無下なことはしたくない。というより殺生に関わることはやりたくないのだ。ただし大いなる真実を知ってしまった以上は、こちらとしても黙っておくことはできない……記憶を消す、というのが一番理に適ったやり方だろう」

「記憶を消して、終わりですか?」


 尋ねたのはレナ。そこでエーレは首肯し、


「それ以上でも以下でもない……偶発的に知ってしまったのならば、そういう処置をとるケースが多い。これは管理する上で、秘匿するのに必要だから。そこは理解して欲しい」

「……女王陛下は、どのようにお考えなのかわかりますか?」

「女王アスリについては、大いなる真実を黙って受け入れた。ジクレイト王国は魔族に排斥的な国家であり、魔族が無闇に立ち入ることはできないが、女王アスリとは良好な関係を築けていると思っている」

「……ただ、ジクレイト王国内にも魔族がいる」


 レナの言及にエーレは難しい顔をした。


「魔族全てが真実を知っているわけではない。よってジクレイト王国に干渉する配下がいるのは事実だ……現状、全ての魔族を制御することはできない。無理矢理すれば反発を招き、多大な被害が出てしまうからな。ただ、さりとて今の状況が良いと認識しているわけでないことは、わかってくれ」

「全ては真実を守るため、ってことか」


 俺が指摘。エーレは即座に頷き、


「そうだ。優先順位の問題……あなた方としては反発する部分もあるだろう。その上で問いたい。この真実を知り、どう思いどういう結論に至ったのか。それを忌憚なく、語ってもらいたい」

「――わかったわ。ならまず私から」


 と、ミリーが前に出る。それにエーレは真正面から対峙し――やがて、彼女は話し始めた。


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