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その勇者は最強故に  作者: 陽山純樹
勇者試練編
335/428

総仕上げ

 俺はまず、クロエ達と交戦する砂竜の迎撃から始めた。彼女やレジウスの剣ならば十分対応できるみたいだが、俺が加勢してさっさと始末した方がいいだろう。

 刀身に魔力を込め、魔力の刃を放つ。それを受けた砂竜は大幅に動きを鈍らせ、クロエ達が仕留めるに十分な時間を作り出す。


 こちらの援護により、クロエとレジウスは俺の目論見通り斬撃を叩き込む。それで砂竜は倒れ伏し、撃破に成功。


「このペースじゃないと、危ないかもね」


 クロエのコメント。確かに俺の援護が無ければ砂竜が怒濤の如く遺跡へ押し寄せるかもしれない。

 ただ遺跡自体に何かしら仕掛けでもあるのか、遺跡を避けるような動きを見せる個体もいるのだが……その辺り個性の差があるのか、あえて果敢に向かって行く魔物もいる。


 俺はそれに狙いを定めて剣を薙ぐ。それでどうにか動きを縫い止めることには成功し、クロエとレジウスの追撃が敵を沈めることに成功。事なきを得る。


「魔物の動きに合わせて対応しないとまずそうだな」


 その時、砂竜が砂漠の中から現われる。しかもそいつは宙に浮かぶ俺へ目掛け口を開き、迫ってくる……!


「うおっ!?」


 思わぬ奇襲に声を上げながら剣を振った。それにより生じた魔力の刃が口の中に吸い込まれ、ビクンと魔物の体を大きく震わせた。

 突進が力をなくし、俺は横へと逃れる。砂竜はどうやらさっきの一撃で仕留めたらしく、砂漠に倒れ伏した。


「クロエ、レジウスさん、注意を!」

「セディよりは察知できるわよ」


 俺の言葉にクロエはそう応じた。あ、そうか。迫ってきたら地面の震動で感知できるのか。

 一方俺は宙に浮いているからわからない……と。便利ではあるが砂竜との戦いでは微妙だろうか……いやでも、この状況を維持しておいた方が良いか――


 その時、ピシッと乾いた音がした。おそらくリーデス達の準備が完了した……直後、リーデスとパメラがこちらへ急行し、エーレとアミリースが魔法陣に魔力を注ぐ。

 それは巨大な砂漠の主を警戒させるものだったようで、咆哮を上げた。体を軋ませるような音を聞きながら、俺はさらに出現した砂竜を駆逐していく。


「さて、加勢だ」


 リーデスが声を上げ、次いで発したのは闇の魔法――大量の槍だった。漆黒の武器が空から砂竜へと降り注ぎ――その体を貫いていく。


 砂漠の各所から相次いで砂竜の悲鳴が湧き上がった。そこへパメラが追撃の魔法。今度は光。こちらは矢のような細いもので、まるで雨のように砂竜へと降り注いでいく。

 もし夜ともなれば幻想的な光景だったかもしれない……多数いた砂竜は地中に潜りさえすれば回避できる魔法だったはずだが、リーデスが槍を突き立てたことにより動きを制限されていた。彼の魔法はあくまで拘束目的で、本命はパメラの魔法だったわけだ。


 光が砂竜へと突き刺さっていく。一撃一撃は大したことのないものだが、皮膚を貫通するその光は砂竜をしかと弱らせ……相次いで、倒れ伏した。


「よし、上等だね……さて勇者セディ。陛下達の準備はそれほど掛からない。もう行くべきだ」


 リーデスからの言葉。うん、ここは彼とパメラが上手くやってくれるだろう。ならば俺は決戦に臨むべく動こう。

 俺は空中で加速し、エーレの所へと向かう。その間に砂竜はさらに遺跡周辺から這い出てくるのだが、それをリーデスとパメラが動きを止め、クロエ達が撃破していく。


 遺跡に近い位置に出現する個体もあったようだが、フィンやミリー、さらにロウとケイトが援護に入り見事倒す。残るカレンとレナはエーレ達の魔法に合わせて動く必要があるため戦闘に参加できていないが、両者の援護は必要なさそうだ。


 砂漠の主へと近づいていく。遺跡のある場所から見たら現実感のない存在だったが、こうして間近に迫ると……余計わからないくらい、理解できない、でたらめな大きさだ。


「来たか、セディ」


 俺に声を掛けてくるエーレ。そこで俺は、


「ごめん、俺の無理矢理な提案で――」

「どちらにせよ、私は砂竜が出現した時点でここに来ていたさ。遺跡を守る必要性は私自身重々承知していたからな。ただこれほど巨大である以上、倒せるが遺跡倒壊も懸念する必要はあった……が、セディ達のおかげで残せる策が浮かんだ」


 そこまで述べるとエーレは遺跡を一瞥する。いや、より正確に言うならば、遺跡周辺にいる俺の仲間達を見たのか。


「良い者達だ……今はまだ混乱の最中にいるだろう。現時点で説明した内容では矛盾点も生じるからな」

「俺のこととかな。フォローはしたけど……すぐに仕掛け人についても伝えないと」

「ああ、この戦いが終わったら……急展開の末であるため、ちょっとばかり不安もあるが」

「いや、むしろこの方が良いのかもしれないぞ……砂竜が出現したことは悪いことだけど」

「何故だ?」


 エーレの問いに俺は笑みを浮かべ、


「こうやって無茶な展開を見せた後に説明した方が、なんだか勢いで納得してしまうってことさ」

「それは良いのかどうかわからないな……まあいい。セディが言うのならばそうなのだろう。さて、では決着をつけるとしようか」

「俺はどうすればいいんだ?」

「まずは砂竜の動きを止める。その後、魔法陣に収束させた魔力をセディの剣に集める……私がタイミングを見計らって呼び掛けるため、そうなったら剣を掲げてくれ」

「剣を掲げる?」

「理由は魔法陣の力を収束させたならばすぐにわかる」


 ……あー、なんとなくわかった。よって俺は指示に頷くとエーレは、


「よし、では始めようか……総仕上げだ」


 砂竜もまた動こうとする。だがそれをまずエーレが手を振り対処する。


「させない」


 言葉と共に発動させた魔法は、砂竜の体周辺に多数の赤い魔法陣が生じた。直後、その魔法陣から多数の光が現われる。


 形容するなら、鎖……どうやらこれは拘束魔法の類いらしい。砂竜は突然の魔法に対処はできず、完全に動きを止められる。

 加え、さらなる魔法陣が生じる。今度は白く、どうやらアミリースの魔法……二人の拘束魔法で、完全に砂竜の動きをつなぎ止めた。


 女神と魔王という絶対的存在により、砂漠の主は何もできなくなった……いや、むしろ二人の力を合わせて拘束というのが、目の前の砂竜がどれほどの存在なのかを物語る。

 砂竜が吠える。距離が近い分体に響く。いよいよか……そう心の中で思った直後、本命の魔法陣が起動し、爆発的な魔力が周囲に生じた。


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